神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
なんでかしらん?
とうとう来ました、無人機戦。
原作同様にいきなり天井(?)をぶち破っての派手な登場をしやがった。
そして、いきなりの先制攻撃ときたもんだ。
「ちぃっ!!」
鈴に向かって放たれた赤いビームを躱しつつ、私は咄嗟に鈴を抱きかかえてその場を離れた。
「か…佳織!?」
「大丈夫か?」
「う…うん(こ…こんな時に不謹慎かもだけど、佳織にお姫様抱っこして貰っちゃった~♡)」
鈴の顔が赤い。
さっきまでの試合の疲労といきなりの襲撃にパニックになっているのかもしれない。
「これでは試合は中止だな」
「当たり前だけどね。にしても……」
「あぁ。さっきからISのモニターに同じ言葉が出続けている」
【ステージ中央に高熱源反応確認。機体登録無し。未確認のISと推定されます】
んな事は分かってるつーの!
問題は、アレをどうやって倒すかだよ!
「どうする?佳織……」
「本来ならば、ここは教職員に任せるのが得策だろうが……」
チラッと観客席を見る。
いきなりの出来事に、案の定と言うべきか、アリーナ全体がパニックに陥っている。
「恐らく、今はあの混乱を鎮めると同時に、生徒達の誘導に手一杯に違いない。あまり期待は出来んな……」
「それじゃあ……」
鈴が不安そうに話し出した……その時だった。
急に私達二人に通信が入った。
『な…仲森さん!凰さん!聞こえてますか!?私です!山田です!』
「山田先生……」
今にも泣き出しそうな声ですけど。
『今すぐにアリーナから脱出してください!すぐに先生達がISに搭乗して鎮圧に行きますから!!』
「と言っても、今は他の事で忙しいのでは?」
『そ…それは……』
「ですので、ここは我々でなんとかします」
『えぇっ!?だ…駄目ですよ仲森さん!!危険すぎます!!もし貴女に万が一の事があったら……』
「大丈夫です。ここは私達を……貴女の教え子を信じてください」
『うぅ~……』
こんな時になんだけど、山田先生の反応が可愛い。
「そう言うわけだ。鈴、君は一旦ピットに戻れ」
「はぁっ!?いきなり何を言ってるのよ!?まさか、私におめおめと逃げろって言う訳!?」
「そうではない。お前の機体のSEはさっきまでの試合で枯渇寸前だろう?」
「それは……」
「私とて、一人でどうにか出来るなんて思いあがってはいない。だからこそ、お前には一度戻って補給をしてきてほしいのだ」
原作では一夏と鈴の二人でどうにかなったが、今回も同じように行くとは限らない。
だから、私はこの時に備えて色々と考えてきた。
寧ろ、この無人機との戦いこそが本番と言っても過言じゃないかもしれない。
鈴には悪いけどね。
「頼めるか?」
「で…でも、その間アンタはどうするのよ?」
「私か?私は……」
鈴を降ろしてから、私はバズーカを携えて煙の中の無人機と向き合う。
「時間稼ぎをしつつ、相手の分析でもするさ」
どこまで出来るかは分からないけど、これだけは言える。
逃げ回れば……死にはしない。
「私が相手を引きつける。行け!!」
「わ…分かったわよ!その代わり、絶対に負けるんじゃないわよ!!」
「無茶を言う」
鈴がピットに向かって飛んでいくのを確認した後、私は彼女を護るように前に出る。
すると、無人機が煙の中から出てくるようにして飛び上がった。
「やはりか……」
全身が装甲に覆われていて、全身にスラスターがある。
腕だけが異様に長くて、そこには先程ビームを撃ったとされる砲口が左右合わせて四砲並んでいる。
そして、頭部はまるで昆虫の複眼を彷彿とさせるカメラアイになっていて、真紅に光っているのも合わせて不気味さを演出している。
「こっちの声が聞こえているかは分からないが、
無人機は何も言わない。
無言のまま、無慈悲な機械兵は私に向かって銃口を向けた。
「ならば見せて貰おうか!天災の造った無人機の性能とやらを!!」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
それは、まさに怒涛の展開だった。
佳織ちゃんと中国の代表候補生である凰さんとの試合は熾烈を極めた。
当初は互角と思われていた試合だったが、途中から一気に佳織ちゃんがリード。
凰さんの敗北は時間の問題かと思われ、試合も佳境に差し掛かった……と思われたが……
「なんなのよ……あれは……」
いきなり落下してきた謎の存在。
土煙に覆われていて姿が見えない。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「そこどいてよ!」
「何言ってんの!私が先よ!!」
分かってはいたけど、荒事に慣れていない生徒達は混乱して出口にごった返している。
このままじゃ、遅かれ早かれ怪我人が出てしまう。
生徒会長として、それだけは絶対に看過できない!
「皆落ち着いて!!慌てずに一列に並んで!!」
先生達も皆を鎮めようと頑張っているけど、効果は薄いようだ。
この調子じゃ、あの存在の制圧にも行けないわね…。
その時、私は視界の端に見た事のある姿を見つけた。
「簪ちゃん!?」
私の妹である簪ちゃんが人込みに揉まれて右往左往していた。
「なんでここに!?」
って、試合を見に来たに決まってるか。
簪ちゃん、一目見た時から佳織ちゃんにご執心だったしね。
私は人込みを掻き分けながら簪ちゃんの元に急いだ。
「簪ちゃん!!」
「お…お姉ちゃん?」
「大丈夫?怪我してない?」
「わ…私は大丈夫。だけど……」
簪ちゃんが不安そうにステージを見る。
そこでは、佳織ちゃんが凰さんと何かを話している。
作戦でも立てているのかしら?
「取り敢えず、ここは危ないわ。急いで脱出を…」
「お姉ちゃんはどうするの?」
「私は先生達と一緒に生徒達の誘導をするわ」
「じゃあ、私も一緒にする!!」
「えっ!?」
い…いきなり何を言い出すの!?
普段の内気で人見知りなこの子からは考えられないセリフだった。
「佳織さんも頑張ってる…。私もあの人みたいに頑張りたい!だから!!」
……凄いわね……佳織ちゃんは。
今までずっと私に出来なかった事を、こうも簡単にしてしまうなんて……。
自分でもおかしいと分かっているけど、不思議と……佳織ちゃんに賭けてみたくなっちゃうじゃない!!
「分かったわ。その代わり、私の傍から離れないでね」
「うん!」
これぐらいの困難、越えられないぐらいでロシア代表や生徒会長や更識家の当主はやってられないのよ!!
今の私には簪ちゃんもいるんだから、百人力よ!!
頑張ってね!佳織ちゃん!!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「鈴!!大丈夫!?」
鈴が疲労を隠しきれない表情のまま、ピットに戻ってきた。
一夏を初めとした面々が鈴に駆け寄る。
「わ…私の事は今はいいから!早くエネルギーの補給をお願い!!」
「補給だと?どういう事だ?」
まさか、また出る気か?
「佳織が言ったんです。自分が引きつけている間に補給をして来いって。だから…」
「成る程な。分かった」
本来ならば真っ先に動くべき教師陣は生徒の誘導を行っていて出撃できない。
かと言って、あのまま戦闘を継続すれば最悪、二人揃って共倒れも考えられる。
だからこそ、少しでも勝率を上げるために鈴を補給に行かせたのか…。
実弾ばかりを使っている佳織はスラスター以外にエネルギーを消費していない。
故に佳織が殿を務めた…と言う訳か。
「織斑、オルコット。二人で凰のISの補給を手伝え」
「わ…分かりました!」
「了解ですわ!」
あの二人ならば大丈夫だろう。
次は……
「……………」
箒が悔しそうに俯いて拳を握っている。
この一大事の時に何も出来ない自分に憤慨しているんだろう。
いきなり箒が顔を上げてどこかに行こうとした。
まさかあいつ……
「お…おい「しののん!!」なっ……!?」
あの布仏が大声を出した…?
「しののん……どこに行くつもり?」
「私は……」
「駄目だよ。ここでしののんが行ったりしたら、かおりんが悲しむよ」
「だが…私は!」
「私だって!!」
「……!?」
泣いている……のか?
「私だって……かおりんの為に何かしてあげたいよ…。でも、私はISの操縦は上手くないし、しののんのように運動神経があるわけじゃない」
「……………」
普段は何も感じて無いように振る舞いながらも、心の中では密かにコンプレックスを抱いていたんだな…。
「私に出来るのは整備だけ。そんな私でもね……かおりんの為に祈る事ぐらいは出来るんだよ?」
「本音……」
「しののんがしようとしている事はここじゃ出来ない事?」
「…………」
箒の動きが止まった…?
「……すまない。私が馬鹿だった…」
「しののん……」
「私はダメだな…。いつも、衝動的になって後先を考えようとしない…」
激情的と言えばそれまでだが、布仏の言葉で留まったところを見ると、こいつも成長しているんだな…。
「ならば、お前達も凰の補給作業を手伝え。今は少しでも人手が欲しい」
「「はい!」」
これで少しでも時間を短縮できればいいが……。
一応、念には念を入れておくか…。
私の手元には、学園から与えられた私専用にセッティングされた打鉄の待機形態である腕輪がある。
見た目は同じだが、機体性能は大幅に向上している。
私が密かに決意をしていると、佳織からの通信があった。
『一夏!セシリア!そこにいるか!?』
「う…うん!私ならここにいるよ!」
「私もいますわ!」
『よかった。ならば、鈴の補給が終了し次第、二人も一緒に来てほしい』
「わ…私達も?」
『そうだ。機動性はともかく、私一人では圧倒的に攻撃力不足だ。かと言って、この場に高火力の武器があるわけではない。ならば、少しでもこちらの手数を増やして総合的な火力を向上させるしかない。現状、今すぐ動けるのは専用機を所持している二人だけだ。頼めるか?』
この緊急事態においても、非常に的確な情報分析だ。
一体何処まで冷静なんだ、佳織は…。
「わ…分かったよ!」
「私も了解ですわ!」
『感謝する。それと、箒と本音はいるか?』
「な…なんだ!?佳織!?」
『……勝利の美酒を君達二人に捧げる。だから、信じて待っていてほしい』
「「……!」」
あいつめ……そんな事を言われたら……
「「うん!」」
こうなるだろう?
そんなセリフを言われて堕ちない女はいないぞ?
『では、こちらは戦闘に集中する。通信終了』
切れたか…。
「お…織斑先生!本当にいいんですか!?」
「本人達がやると言っているんだ。任せるしかないだろう。それに現状…これ以上の方法が思いつくか?」
「……いいえ。悔しいですけど、仲森さんの判断は的確です」
「ならば、今はアイツに託すしかあるまい」
「でも……歯痒いです。本当ならば守るべき立場である私達が生徒達に託すしかないなんて……」
「私もだ。だからこそ、我々は冷静でいなければいけない。今はコーヒーでも飲んで落ち着け」
傍の棚にあったインスタントコーヒーをカップに入れて、近くにあったポットからお湯を入れてスプーンで混ぜる。
その後に砂糖を適度に入れる。
「あ…あの~…織斑先生…?」
「なんだ?」
「それ……七味唐辛子ですけど……」
「なに?」
な…なんでこんな場所に七味唐辛子があるんだ?
本気で意味不明だぞ?
「…………出来たぞ」
「私が飲むんですか!?」
「嫌なのか?」
「それは……」
「私が態々淹れたコーヒーが飲めないと?」
「うぅ~……分かりました!飲みますよぉ~!」
それでいい。
真耶は涙目になりながら一気に辛味コーヒーを飲みほした。
「辛いコーヒーなんて初めてですよぉ~…」
「滅多に出来ない体験が出来てよかったな」
「それを貴女がいうんですか~…」
恨めしそうにこっちを見るな。
私だって態とじゃないんだ。
「あっ!?」
「どうした?」
「ア…アリーナ内の扉が次々とロックされていきます!」
「なんだと!?」
まさか……あのISの仕業!?
こちらからの増援を警戒しているとでも言うのか!?
「遮断シールドのレベルが2に上昇…!このままでは、こちらから出撃出来なくなります!!」
「くそっ!!」
これでは佳織の作戦が無意味になってしまう!!
「まだ補給は終わらないの!?」
「もうちょっと待って!」
「あと少しですわ!」
アイツ等も焦っているな…。
「織斑先生。アリーナにいた三年生がシステムのクラックをしているようです。これで少しは時間が稼げれば…」
「どうだろうな…」
別に生徒達を信じていないわけではないが、あまり期待は出来ないだろう。
こうなれば、時間の勝負になってくる。
凰の補給が終わるのが先か、それとも、遮断シールドが完全に閉じて袋の鼠となるのが先か。
もしくは……佳織が力尽きるのが先か。
いくらエネルギーに余裕があっても、佳織自身の体力は別問題だ。
佳織にとっては二つの戦いを連続で行っている事になる。
蓄積された疲労とプレッシャーは計り知れないだろう。
(こうなったら私だけでも行くべきか?いや、今私だけが下手に動けば全体の士気に関わる。仮に行くとしたら一夏達と一緒の方がいいだろう)
こんな時に立場が私を苦しめるとは…!
「一応、先程から政府に助勢の打診はしていますけど、正直言って……」
「今の政府に過度の期待は禁物だ」
アイツ等は己の保身しか考えていないからな。
私が最も嫌うタイプだ。
「もうちょっと……もうちょっと……」
まだか……まだ終わらないのか……!
モニターの向こうでは佳織が致命傷を避けながら謎の機体と高機動戦闘を繰り広げているが、いかんせん攻撃力が違いすぎる。
ビーム兵器と実弾兵器とでは性質上、威力が段違いだからな。
このままではジリ貧だ。
「ほ…補給が終わったよ!リンリン!!」
「よっしゃぁ!!」
やっとか…!
「それじゃあアンタ等!行くわよ!!」
「「了解!!」」
鈴がステージの方に移動し始め、そこにISを展開した一夏とオルコットが続いた。
「待て」
「「「え?」」」
やはり、待っているだけなんて私の性には合わない。
「私も行こう」
「で…でも、姉さんのISは……」
一夏め、私の心配をするのはいいが、何気に私の事を『姉さん』と呼んだな?
まぁいい。今は特別に許してやろう。
「大丈夫だ。学園側から用意された打鉄がある」
「そんなのがあったんだ……」
本来ならば使わないに越したことはないんだろうがな。
だが、私の目の前で佳織がたった一人で戦っているんだ。
ここで行かないでいつ行くんだ!今でしょ!!
「織斑先生!!ピットの出撃ゲートが!!」
「ちっ!」
私は急いで打鉄を展開して纏う。
服の下に予めISスーツは着こんでいたからな、問題無い。
「お前達!急ぐぞ!!」
「「「はい!!!」」」
私達は閉じかけている出撃ゲートに向かってスピードを上げて飛行する。
今いくぞ!佳織!!
お前は絶対に死なせない!!
思ったよりも長くなってしまい、無人機との戦いは次回が本番に。
千冬の参戦は書いている途中から思いつきました。
その方が面白そうなので。
皆があたふたしている間に佳織が何をしていたかは次回で。