神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

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今回はオリジナル回。

少し早く『あの姉妹』を出そうと思います。







第14話 水色の姉妹

 五月。

鈴が転校してきて数週間が経過して、来週にはクラス対抗戦が始まる。

 

今日も今日とて私は皆と一緒に訓練をしよう……と思っていたが……

 

「すまない。今日は剣道部に顔を出そうと思ってるんだ」

「私も一緒に行って、ちょっと見学をしようかな~って。本当にゴメンね!」

 

箒は少し前に入部した剣道部に行って、一夏はそれに付き添って見学に。

 

「先程本国から連絡があって、今日はレポートを作成しなくてはいけないんです。この時期にこんな事になってしまい、本当にすいません…」

 

セシリアは代表候補生としての仕事。

国家に所属している人間は大変だ。

 

このように、今日に限って皆はそれぞれに用事が出来てしまった。

それならば一人で訓練しようかなって思ったけど、アリーナは全部が使用されていて使用不可能。

じゃあ、トレーニングルームにでも行って体を動かそうと思ったら、そこには見知らぬ先輩が沢山。

そんな中に堂々と入っていける程、私はコミュ力高くない。

 

だからと言って何もしないわけにはいかないし、私自身が時間を無駄にしたくないと思った。

今日はどうしようかと考えていると、なんと本音ちゃんから提案が出て来た。

 

「それじゃあ、今日はISの整備でもしたらいいんじゃないかな~?」

「それだ!」

 

そう言えば、私はラファールⅡを受領してから、まだ碌に整備もしていない。

いい機会だから、ちゃんと整備してクラス対抗戦に備えるのも大事だと判断した私であった。

それに……

 

(これから先もISの整備をする事はあるだろうから、ちゃんとやり方を学んでおくのも大切だよね)

 

確か、整備マニュアルが入った端末を前に貰ったっけ。

軽く見たけど、複雑すぎてすぐに端末を置いちゃった。

 

そんな訳で、私は今、本音ちゃんと一緒に整備室に向かっている。

 

「でも、私に出来るかな?」

「だいじょう~ぶ。私もついてるから~」

「え?」

 

ど…どゆこと?

 

「私ね~、実は整備班なんだよ~」

「せ…整備班?」

 

な…なんですと?

 

「整備班って……整備をする人の事……だよね?」

「それ以外にあるの?」

「いや……ないけど」

 

あ…あれ?原作でも本音ちゃんって整備士だったっけ?

よく思い出せない……。

 

「む~…かおりんってば疑ってるな~?」

「そ…そんな事は無いですよ?」

「目が泳いでるよ~」

 

ごめんなさい。

 

「じゃあ、かおりんの目で直接確かめればいいよ~」

「う…うん」

 

本音ちゃんに背中を押されながら整備室に足を進める。

せ…背中に本音ちゃんの密かに大きな胸ががががががが~!

 

余談だが、鈴も今日は忙しいようで、昼食時以外には姿を見かけなかった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 自動式の重厚なドアが開き、整備室に足を踏み入れる。

 

「おぉ~…」

 

ここが整備室か~…。

色んなロボットアニメに出てくるような、絵に描いたような場所だ。

なんか……『これぞ整備室!』って感じ。

 

機体を固定するハンガーが幾つもあって、そこには訓練機であるラファールや打鉄が幾つも並んでいて、それ以外にも空いているハンガーがある。

あそこはきっと、私を初めとした専用機を固定して整備するために設けられた場所なんだろう。

 

壁側にある棚には色んな整備の為の道具が置いてあって、名前は分からないけど、うかつに使えないような雰囲気を漂わせている。

 

「本音ちゃんはここにはいつも来るの?」

「いつもって訳じゃないかな~。でも、入学してからはアリーナ以上に来る事が多かったかな?」

「わぉ……」

 

本音ちゃんがここの常連……。

今日から彼女を見る目が変わるかも…。

 

「それじゃ、早速かおりんのISを整備しよっか?」

「わ…わかったよ」

 

『はじめてのおつかい』ならぬ『はじめてのせいび』だな。

すっごく緊張する……。

 

取り敢えず、適当に空いているハンガーに行って、そこにある機器にラファールⅡの待機形態であるペンダントをセットする。

 

「あれ~?」

「どうしたの?」

「隣……」

 

隣とな?

よく見てなかったけど、誰か先に来てたのかな?

 

「誰かいるの?」

「うん」

 

誰ざんしょ?

ちょこっとだけ見てみよう。

 

「「そ~っと」」

 

隣にいたのは、どこかで見た事のあるような水色の髪の女の子だった。

 

「かんちゃん?」

 

あれ?本音ちゃんが『かんちゃん』と呼ぶ人間と言えば……

 

「ほ…本音?」

 

あ、こっち向いた。

 

「あっ!?」

 

え…えぇ?私を見た途端に驚いた?

 

「あ…あ…あ…あ……」

「「あ?」」

 

凄く目を見開いてこっちを見てる。

例えて言うなら、街中で大好きな芸能人を見たファンの女の子のような反応。

 

「赤い彗星の仲森さん!?」

「またそれか……」

 

もういいや……好きなだけ言ってくれ。

 

「ど…どうしてここに!?」

「かおりんはISの整備に来たんだよ~」

「せ…整備に?」

 

顔を真っ赤にして体を震わせて、もう彼女の目線が別の意味で痛い…。

 

このままでいるのはちょっと失礼だと思って、ちゃんと彼女の前に出る。

 

「えっと……本音ちゃん、この子は……」

 

一応知ってるけど、ちゃんと聞いておいた方がいいだろう。

これからの為にも。

 

「えっとね~、この子は~「さ…更識簪って言います!」…だよ~…」

 

被せるように言ってきたし…。

こんなにこの子って自己主張が激しい女の子だったか?

 

まさか、この時期に彼女と会うなんてね…。

原作には無い行動をとっている時点で、ある程度のイレギュラーは覚悟していたけど、まさか、後になって登場する筈の更識簪と会うとは思わなかった。

でも、こんな所にいるって事は、まさか専用機は……

 

「え…えっと……更識さん「簪って呼んでください!」あ……うん。簪さん「呼び捨てでいいです!!」……簪はここで何をしていたの?」

 

原作通りなら、名字で呼んで欲しくないのは彼女の姉である更識楯無の妹として見てほしくないからって予想出来るけど、この目は……

 

「機体の整備をしてました…。(キラキラキラキラ…)」

 

この、まるで特撮番組のヒーローを見るような純粋無垢な子供のような目からは、全くそんな感じがしない。

 

「ねぇ…本音ちゃん。この子は一体どうしたの?」

「かんちゃんはね~、あのせしりんとの試合があってからずっと、かおりんのファンなんだよ~」

「ちょっと本音!それは言わないでって言ってるでしょ!」

「え~?」

 

ファ…ファン?

誰の?私の?

 

この現実から目を逸らそうと思い、ふとハンガーの方に目を向けると、そこには薄い水色のISが鎮座していた。

 

「このISは……」

「わ…私の専用機の『打鉄弐式』…です……」

「かんちゃんはね~、日本の代表候補生なんだよ~」

 

うん、それは知ってます。

 

「か…完成してるん……だよね?」

「…?はい、そうですけど……」

 

やっぱりそうかぁ~!

なんとなくだけど、そんな気がしてたんだよな~!

 

「えっと……他のISに開発スタッフが取られて機体の完成が凍結されかけたって事は?」

「ないですけど……」

 

あれぇ~?

もしかして、白式と打鉄弐式はほぼ同時期に開発されて、そして完成したって事?

そんなにうまく行くもんなの?

 

「この打鉄弐式はね、倉持技研が開発した打鉄の正当後継機で発展機でもあるんだよ~」

「正当後継機って事は……」

「うん。かおりんの『ラファール・リヴァイヴⅡ』と同じだね」

 

私のラファールⅡも、ここに配備していあるラファールの後継機だからね。

 

「二人は同じだね~」

「お…同じ!?」

 

簪の顔が一気に真っ赤に。

同時に顔を伏せてしまった。

 

「ど…どうしたの?」

「恥ずかしいんじゃないかな~?」

 

私見て恥ずかしいって思われてもな……少し複雑。

 

「あ…あの…その……えっと……」

 

モジモジしてどうしたのよ?

 

「サ…サインください!!」

「ふぇっ!?」

 

サ…サインだって!?

 

今度は私が驚いていると、簪はどこからか色紙を取り出してから、こっちに差し出してきた。律儀にペンまでついている。

 

「急に言われても……」

「駄目……ですか……?」

 

そんなウルウルとした目で見ないで~!

罪悪感でどうにかなっちゃうから~!

 

「してあげれば~?」

「で…でも、私サインなんてしたことないし……」

 

しかし、ここで下手に断れば、連鎖的にあのシスコンの生徒会長を敵に回す事になる!

それだけは絶対に避けなくては!!

 

「変になると思うけど……いい?」

「はい!」

 

そんなハッキリと言わなくても…。

 

「じゃ…じゃあ……佳織いきます」

 

震える手で色紙とペンを受け取りキャップを取る。

 

(お…思い出せ…!家には確か、昔貰った某有名漫画家のサイン色紙があった筈!それを参考にすればなんとか…!)

 

「え…ええい!ままよ!」

 

私はそれっぽいやつを適当に書き殴った。

ついでに端っこの方にジオン公国のマークを書いておいた。

 

「これでいいかな…?」

 

……泣いたらどうしよう。

 

「あ……あ……あ……」

 

こ…今度はどうした?

 

「ありがとうございます!!一生の宝物にします!!」

「そこまで大切にしなくてもいいよ?」

 

私みたいな素人の小娘のサインなんて、一銭の価値も無いでしょ。

速攻で押し入れに放り込んでほしい。

 

「よかったね~、かんちゃん」

「うん……うん……♡」

 

泣く程の事か?って、結局は泣くんかい。

見られてないだろうな?

 

「ねぇ……整備は?」

「「あ」」

 

忘れてたんかい。

 

「時間も限られてるし、早くやろうか?」

「そうだね~」

「お…お詫びにお手伝いします!仲森さん!」

「助かるよ。それと、私の事は佳織でいいよ」

「そ…そんな恐れ多い!」

 

私はどこのお偉いさんだ?

特典の元になったキャラは最終的に総帥まで上り詰めるけどさ。

 

その後、整備マニュアルと睨めっこをしながら、なんとか頑張った。

その最中に本音ちゃんや簪がアドバイスを何回もしてくれて、本当に助かった。

簪はともかくとして、本音ちゃんの秘められた才能の一片を垣間見た気がする。

 

整備の最中、簪ってばずっとこっちを見てなかったか…?

すっごく熱い視線を感じたんだけど…。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 四苦八苦しながらの整備はなんとか終わり、私は廊下にてトイレに行った本音ちゃんを待っている。

因みに簪は、まだもうちょっとだけ整備をしておきたいらしく、整備室に残った。

 

「ん?」

 

なんか……どこからか視線を感じたような気が……。

 

「気のせいか?」

 

色々と注目されるようになってから、少し視線に敏感になりすぎているのかも。

こんなんじゃ、まともな生活は送れない。

もうちょっと余裕のある心を持たないと。

 

「あら?気が付かれちゃったかしら?」

「え?」

 

この声は……。

 

「はぁ~い♡」

 

物陰から出て来たのは、簪によく似た二年生で、その手には機械的な扇子を持っていた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 密かに噂に聞く仲森佳織ちゃんを付けていたら、なんと気が付かれてしまった。

これでも尾行にはそれなりに自信があったんだけど、まさかバレるなんてね…。

ちょっと侮っていたわ…。

 

「ふぅ~ん……」

「な…なんですか?」

 

少し近づいて観察してみる。

こうして見てみると、確かに美少女ではあるわね。

 

「えっと……貴女は……」

「あら失礼。自己紹介がまだだったわね」

 

適当に咳払いしながら離れて、彼女と向き合う。

 

「私は更識楯無。このIS学園の生徒会長をしているの」

「知ってます」

「え?」

 

な…なんで?私と彼女って会うのは初めてよね?

 

「だって、入学式の時に壇上に上がって挨拶してるのを見ましたし」

「うっ!」

 

そうだった…!

 

「あと、入学の時に貰ったパンフレットにも写真が載ってましたよ」

「そうだった……!」

 

それもあった……!

 

「ついでに言うと、貴女ってロシアの国家代表でもありますよね?」

「そこまで知って!?」

「いや…IS学園のウェブサイトに軽いプロフィールが載ってましたよ?」

「……………」

 

は…は…は…は…恥ずかしぃ~!!!

完全に忘れてたぁ~!!!

 

「よ…よく見ていたわね!合格よ!」

「はい?」

「よく入学した事に浮かれて、パンフレットとかを見てない生徒が多いから、佳織ちゃんをテストしたのよ!おほほほ……」

 

ご…誤魔化せた…わよね?

 

「なんで私の名前を?」

「あぁ…それ。貴女って今や、学園中の有名人よ?一年生はいざ知らず、二年生や三年生にも知れ渡ってるのよ?」

「う…うへぇ~…」

 

あ、心底嫌そうな顔。

気持ちはよ~く分かるけど。

私も自由国籍でロシア代表になった時は同じ感じだったし。

 

見てる感じでは至って普通の女の子ね。

本当にこの子が、あの超人的な動きをしたのかしら?

今でも信じられないわ…。

 

「ところで……」

「はい?」

「貴女……さっき整備室にいたわよね?」

「はい……」

「そこで、私の妹の簪ちゃんと会ってたわね?」

「い…妹……見てたんですか?」

「ばっちりと」

 

この私が簪ちゃんを見逃すわけないじゃない。

って、今はそれはいいのよ。

 

「簪ちゃん……泣いてたわね?なんで?」

「それは……」

 

いかにこの子が人気者でも、私の大事な妹である簪ちゃんを泣かせたとあっては許せない。

さぁ、理由を聞かせて貰おうかしら?

 

「お待たせ~かおりん~。あれ?かいちょ~?」

「「本音ちゃん」」

 

このタイミングで本音ちゃんの登場か…。

さて、どうなるかしら?」

 

「どうしたの?」

「いや、さっきの整備室の事でちょっとね……」

「あぁ~!かんちゃん、かおりんのサインを貰って感動で泣いてたね~」

「サ…サイン?」

 

え…?どういう事?

あの時、私からはよく見えなかったけど、そんな事をしていたの?

声から簪ちゃんが泣いていると判断したんだけど、あれは感動の涙だったの?

 

「なんで言っちゃうかな~…」

「え?言っちゃ駄目だったの?」

「別にそんな訳じゃ……」

 

ここは空気を呼んで、適当な言い訳をする場面だったわよ、本音ちゃん。

ここだけは佳織ちゃんに同情するわ…。

 

「ご…ごめんなさいね?なんか誤解してたみたいで…」

「別に気にしないでください。姉として実の妹を心配するのは当然ですし、私も怒ったりとかしてませんから」

「佳織ちゃん……」

 

何この子……いい子過ぎる!

どうして佳織ちゃんが皆に慕われているのか、分かった気がするわ。

これはクラス代表に推薦されるのも分かる。

こっちが仕入れた情報だと、中学時代も学級委員をしながら生徒会役員もしていたらしいし。

私には無い、独特のリーダーシップがあるんでしょうね。

 

「ん~……決めた!」

「何が?」

「佳織ちゃん。お詫びに今度、生徒会室に招待するわ!」

「え……?いいんですか?」

「いいのいいの!私が生徒会長なんだから!」

 

職権乱用って言われればそれまでだけどね。

でも気にしないわ!

だって私、佳織ちゃんに興味が出てきちゃったし!

 

「え?かおりん生徒会室に来るの?」

「そうよ!本音ちゃん!」

「やった~♡」

 

ふふ……これで本音ちゃんもこっち側ね!

 

「えっと……クラス対抗戦が終わってからでいいですか?」

「勿論。今は貴女も忙しいでしょうし」

 

ふふ……暇があれば佳織ちゃんの試合を見に行こうかしら?

赤い彗星の公式戦デビュー、今から楽しみだわ!

 

「それじゃ、今日はここで失礼するわね」

「あ…はい。お疲れ様でした…」

「それじゃあ、かいちょ~。またね~」

 

二人に別れを告げながら、私はその場を後にした。

 

私としたことが、少しテンションが上がってる?

こんな気分になるなんて、もしかしたら生まれて初めてかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まずは軽くフラグを。

簪はまだ憧れ、楯無は興味の対象でしかありません。
ここから佳織に対する姉妹の想いがどう変化するのか?
それはこれから次第ですね。

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