神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
こうも晴れないと、ちょっと気分が落ち込みますね。
「えっと……大丈夫?」
「「うぅ~…」」
昼休み。
私を初めとしたいつもの面々は、揃って食堂に向かっていた。
実はこの二人、午前の授業中に二人揃って6回も出席簿の餌食になっている。
それと言うのも、授業中に箒とセシリアはなんだかずっと『心ここに非ず』状態だったみたいで、妙にポケ~っとしていたようなのだ。
最初は本音ちゃんも似たような状態だったらしいが、途中からいつもの調子に戻った。
「ははは~…。二人とも、姉さんの授業で呆けるなんてなかなかに度胸があるんだね」
「なんで一夏さんは大丈夫だったんですの!?」
「そうだそうだ!お前はアイツについてなんにも思わないのか!?」
アイツ?ああ……鈴の事ね。
「別に?鈴のああいった態度は今に始まった訳じゃないし」
「昔からなのか…」
そうだったね~。
なんつーか、行動派なんだよね、あの子って。
思い立ったが吉日っていうか、なんて言うか。
「それに、朝も言ったでしょ?私はあんな言葉一つで揺らぐほど、軟な想いは抱いてないって」
「それは……」
「私達も同じつもりですけど……」
一夏は昔から一途なところがあったからね~。
良くも悪くも真っ直ぐなんだよね。
そこら辺は性別が変わっても一緒みたい。
何に何の想いを抱いてるかは分からないけど。
「で、本音ちゃんはさっきからなんでニコニコしているの?」
「ん~?ないしょ~♡」
……なにこの子可愛い。
持ち帰ってもいいかしら?って、同じ部屋だった。
そんな事を話しているうちに、気が付けば食堂前に到着。
食堂はお昼時と言う事もあって、非常に賑わっている。
けど、結構早めに来たお蔭か、まだまだ席に余裕はあった。
いつものように券売機にて食券を購入。
今日の私のお昼ご飯はかつ丼定食。
午後からに備えてガッツリといきたい。
因みに、箒はきつねうどん、セシリアは洋食ランチ、一夏は日替わり定食、そして本音ちゃんはTKGセット。
TKGとは、T(たまご)K(かけ)G(ご飯)の略。
御飯に味噌汁にお漬物。そこに獲れたて新鮮な生卵とTKG専用の醤油が付いている。
前に私も試しに一回食べてみたが、これが滅茶苦茶美味しかった。
本気でTKGにハマりそうになったっけ。
「待ってたわよ佳織!ついでに一夏も!」
そんな叫び声と共に私達の前に現れたのは、既に昼食のラーメンを注文し終わった鈴だった。
手に持っているトレーの上には湯気が立っている出来立てのラーメンが鎮座している。
「私はついでなんだ……」
「当たり前じゃない。アンタだって、私の立場なら似たような事を言ったんじゃない?」
「それは否定しないけど…」
しないのかよ。
「待っててくれたのは純粋に嬉しいけど、別に先に食べててもいいんだよ?ラーメン、のびちゃうでしょ?」
「だ…大丈夫よ!多少のびたぐらいでラーメンの味は変わらないわ!」
「いや、結構変わると思うが…」
ナイスツッコミ、箒。
「そもそも、別に佳織さんは貴女と待ち合わせなんてしてませんわよ?」
「べ…別にいいじゃない!そんな細かい事を一々気にしてたら大成しないわよ?」
「えぇ~?」
なんか微妙に会話が噛み合ってないような…。
「と…とにかく、私達はこの食券を出して来るから」
「わかったわ。じゃあ、アタシは先に行って空いている席を確保しておくから」
「ありがとう」
私は鈴のこういうところが好きだったりする。
なんていうか……阿吽の呼吸?って言うのかな?なんとなく、お互いの言いたいことが分かるって言うか…。
「な…なんですの…今の…」
「まるで、熟年の夫婦みたいな会話だったぞ…」
「私はもう慣れたけど」
「ふえ~…。リンリンは凄いんだね~」
リンリン?あぁ…鈴のこと?
もう早速、鈴の渾名を考えたのか、本音ちゃんは。
揃って食券をカウンターに出して、注文の品を受け取る。
「おや、噂の『赤い彗星』のお嬢ちゃんかい?」
「こんな所にまで浸透してるんだ…」
一体何処まで広まってるんだ…?赤い彗星の名前は…。
「こっちこっち~!」
少し離れた場所で鈴が手を振っている。
どうやら、あそこが確保した席のようだ。
確かに、今いる皆が座っても余裕がある広さだ。
そこに向かって私達も歩いて行くことに。
「こ…ここいいわよ」
「んじゃ遠慮無く」
「「あぁ~!?」」
鈴が譲ってくれた席は、丁度彼女の隣だった。
で、箒とセシリアはなんで叫んでるの?
「余裕があるのかないのか」
「だね~」
本音ちゃんにまで言われてるぞ、二人とも。
「にしても、本当に久し振りだね。あれから一年ぐらいになるんだっけ?」
「そ…そうね。一年と言っても、私にとっては凄く長く感じたけど」
「そう?」
大袈裟だな~。
私にとってはあっという間な一年だったよ。
「でも、佳織の元気そうな姿を見れて安心したわ」
「それはこっちもだよ。何も変わってないようで、ちょっと嬉しかった」
「あ…ははは……そう…なんだ……。(嬉しかったって言われちゃった…♡)」
言えません!鈴の事は本当に忘れなかったけど、君がこの時期に転校してくることをすっかり忘れていただなんて言えません!
「にしても、佳織には驚かされたわよ。なんなの?あの『赤い彗星』って」
「それに関しては、こっちの方が聞きたいぐらいだよ…」
本当に…一体誰が言い出したんだ?
別に私は家族を殺されてはいないし、復讐なんて物騒な事も考えてない。
ましてや、変な仮面なんてつけたくも無い。つける理由も無いし。
勿論、後に名前を変えてサングラスを付けたりもしないし、総帥になって隕石落としなんかもするつもりはない。
「あれって誰が言いだしっぺなのよ?」
「さぁ?いつの間にか色んな人から言われてたんだよ」
「そうなんだ。ま、異名なんてそんなもんでしょ」
軽く片付けられてしまった。
昔から鈴はサッパリとした性格の女の子だったが、それは今も変わらないようだ。
「あ~…佳織?もうそろそろソイツとどんな関係か話してほしいんだが…」
「そ…そうですわ!佳織さん!もしやこの方とお…お付き合いをしていらっしゃるのではないでしょうね!?」
「「お付き合い?」」
なんの?過去に買い物の付き添いなら何回も行った事があるけど。
「残念だけど、まだそこまでには至ってないわ。告白はしたけど」
「「こ…告白!?」」
もうそろそろマジで食べ始めようかな。
一夏と本音ちゃんはもう食べてるし。
「へ…返事は?」
「まだよ。っていうか、私の方から言わないようにお願いしたの」
「なんでだ!?」
「だって、こっちだけが一方的に好きになっても仕方が無いじゃない。アタシは両想いになりたいの。だから、佳織が私の事を好きになってくれたら、改めて告白するつもりでいるの」
んん~♡
ここのかつ丼は最高だな~♡
出来ればおかわりがしたいぐらいだよ~♡
って、この三人は何を話してるの?
食べるのに夢中でよく聞き取れなかったけど。
「お…大人ですわ…!」
「く…悔しいが、こいつの方が私達よりも一枚も二枚も上手だ…!」
何を話してるか知らないけど、早く食べないと時間が無くなっちゃうぞ~。
「というか!なんで一夏さんと本音さんは平気そうに食事をしてるんですか!?」
「いや、私も鈴と同じ気持ちだし」
「私は~、今はまだかおりんと一緒にいられるだけで幸せかな~」
まさに三者三様の反応だな。
見てて面白い。
「あのさ、なんか話しが逸れてない?私と鈴がどんな関係か話そうとしてなかったっけ?」
「「「あ…」」」
完全に忘れてたな…。
「鈴は私の幼馴染だよ」
「お…幼馴染…だと…!?」
「そうそう。丁度、箒が転校した後に入れ替わるようにして転校生として来たんだよ」
「懐かしいな~。あの頃は私と佳織と鈴とで一緒に遊びまわってたっけ」
「そうね~」
いやはや、高校生ともなれば、半分子供で半分は大人だ。
昔を懐かしむような余裕さえ生まれるか。
「って事は、このポニーテールの子が?」
「そう。前に私と一夏が話した篠ノ之箒。一夏と千冬さんが通ってた剣道場の師範の娘」
「ふぅ~ん……アンタが……」
鈴はまるで舐め回すかのように箒を見ている。
……気のせいかな。鈴の視線が箒の胸に集中してるような…。
「初めまして。これからどうぞよろしく…とだけ言っておくわ」
「こちらこそ。これから先、お前とは色々と顔を合わせる事が多くなりそうだ」
「奇遇ね。私もそんな気がしてるわ」
「「ふふふ……」」
な…なんかこの二人が怖い!?
鈴の背後に龍が、箒の背後に虎が見るんですけど!?
「んん!私の事をお忘れではなくて?凰鈴音さん?」
「え?アンタは……」
おや?鈴はセシリアの事を知ってるのか?
「思い出した!確か、佳織との試合でボコボコにされてた奴でしょ!」
「ボコボコになんてされてませんわ!……苦戦はしましたけど…」
「それを世間一般ではボコボコって言うのよ」
「クキィ~!!」
マンガみたいな反応したよ、この子。
「って、なんで私が佳織さんと試合をしたと知ってるんですの?」
「あれ?知らないの?二人の試合はネット上に動画として流れてるわよ。アタシもそれを見て知ったんだし」
「「ええっ!?」」
そ…それって大丈夫なの?
「なんかヤバくない?機密の保持とか、色々と問題があるんじゃ…」
「その辺はIS学園やIS委員会がちゃんと規制をすると思いますけど……」
「そ…そうだよね?大丈夫だよね?」
流石に、そこまで学園も馬鹿じゃないか。ははは……
「と…とにかく!一応の自己紹介はさせてもらいますわ。私はイギリスの代表候補生のセシリア・オルコットと申します。以後お見知りおきを」
「こっちこそよろしく。ま、同じ代表候補生でも、アタシの方が強いと思うけど」
「へぇ~……言いますわね……」
「事実でしょ?」
今度はセシリアと鈴の睨み合いなの~?
セシリアの後ろにはペガサスが見えてるし。
「いつか雌雄を決してあげますわ…!」
「望むところよ」
勝手に試合の約束までしてるし。
当人同士がいいのなら、私は別に口出しはしないつもりだけど。
「そんで、そこで幸せそうな顔で卵かけご飯を食べてる子は誰なの?」
「もぐもぐ……ゴクン。私は「本音ちゃん、口の周りに卵ついてる」え?どこどこ?」
ご飯粒もついてるし…。
「ほら、こっち向いて」
「は~い♡」
テーブルに備え付けの紙で拭いてっと。
「布仏本音だよ~。これからよろしくね~、リンリン~」
「アタシはパンダか!?」
おう……鋭いツッコミ頂きました。
「ねぇ…一夏。この子って……」
「うん。今のところ、一番のダークホース」
「やっぱり……」
二人して何をこそこそと話してるの?
「よ…よろしくね?本音って呼ばせて貰ってもいいかしら?」
「いいよ~」
「なんか調子が狂うわね…」
気持ちは分かる。
けど、慣れちゃえばこれも可愛いよ。
「そう言えば聞いたわよ。佳織ってクラス代表なんですって?」
「だ…誰に聞いたの?」
「事務のお姉さんに」
この学園……情報の伝達速度が速すぎじゃなかろうか?
「よかったらアタシがISの訓練を見てあげようか?」
「「!!!」」
いきなりだな…。
箒とセシリアが面白い顔でフリーズしてる。
「う~ん…実に有難い申し出だけど……」
「…?どうしたのよ?」
「いやね、私達ってお互いにクラス代表な訳じゃん」
「そうね」
「と言う事は、今度のクラス対抗戦でぶつかる可能性が非常に高い」
「うん」
「そんな二人が一緒に訓練してたら、周りの皆はどう思う?」
「あ……」
どうやら気が付いてくれたようだ。
鈴は物分りがいいから、とても話しやすくて助かる。
「はぁ……しゃーないわね。じゃあ、クラス対抗戦が終わるまでは自重するわ」
「それがいいよ。お互いの為にもね」
「でも、訓練じゃなかったら問題無いわよね?」
「そりゃあ……まぁ…」
クラス代表って言う称号が無ければ、私達は同級生になるんだし。
「じゃあ、それまでは『普通』に接する事にするわ」
「うん…?」
なんで『普通』を強調した?
「「はっ!?」」
二人が戻った。
「よ…よく言った佳織!」
「それでこそ、一組のクラス代表ですわ!」
「何を慌ててるのやら」
「だね~」
……本当に、見てて飽きないな。このメンバーは。
「いつもこんな感じなの?この子達って」
「えっと……その……うん」
としか言えない。
「そうだ。弾は元気にしてるの?」
「そうじゃない?少なくとも、最後に会った時は凄く元気だったよ」
「その言い方だと、まるで弾が死んじゃったみたいだよ、佳織」
彼の場合は殺しても死なないでしょ。
元気だけが取り柄みたいなもんだし。
「今も『彼女が欲しい~!』って言ってるんじゃない?」
「へぇ~…。(この様子……弾の気持ちを全く知らないっぽい?アイツも哀れね)」
鈴はなんで哀愁に溢れた目でこっちを見るの?
「今日も訓練をするの?」
「そのつもり」
「ふ~ん……そっか~…」
この表情……何かを考えてる時の顔だ。
「その通り。佳織は放課後も忙しいんだ。残念だったな」
「特に私は佳織さんと同じ専用機持ちですから、佳織さんとはいつも訓練をしていて忙しいんですのよ」
「密かに私を勘定から外さないでくれるかな」
一夏も立派な専用機持ちですよ?
「あっそ」
そっけなく答えると、鈴はいつの間にか食べ終えかけていたラーメンのスープを一気に飲み干して、トレーを持って立ち上がった。
「もう食べたから行くわ。これからよろしくね、佳織。後、一夏と本音も」
「「私達は!?」」
完全に存在無視だったな…。
二人のツッコみに反応せずに、鈴は食器を片づけて食堂を後にした。
「「佳織(さん)!!」」
「は…はいっ!?」
「彼女にだけは絶対に勝ってくださいね!」
「今日もガンガン訓練するぞ!いいな!?」
「りょ…了解……」
こ…この二人には逆らえない……!
今の箒とセシリアは、一度『やる』と言ったら絶対にやる『凄味』がある!!
「一夏ぁ~…本音ちゃ~ん…」
「大丈夫。私がちゃんと二人のブレーキになるから」
「がんばれ~、かおりん~」
うぅぅ~…一夏の言葉と本音ちゃんの応援が嬉しいよぉ~。
でも、クラス対抗戦と言えば……『アレ』が来るのかな…?
私的には、鈴との試合よりもそっちの方が心配だな…。
そんな馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?
まさか、食堂の話だけで一話潰れるだなんて!
こんなつもりじゃなかったのにぃぃぃぃぃぃ!!