神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
早くリバーシブルガンダム発売しないかなぁ~。
佳織とオルコットさんとの試合は、佳織の勝利で幕を閉じた。
試合をした本人は静かにピットへと帰ってきたけど……。
「か…佳織?」
「大丈夫か…?」
「かおりん?」
ISを纏ったまま、直立不動のまま動かない。
少しした後にISが粒子化して、ISスーツ姿の佳織が降り立つ。
佳織のラファールⅡは機体に描いてあったエンブレムを模したペンダントになって、佳織の首から下がっている。
私達がどうすればいいのか分からずに困惑していると、千冬姉さんが前に出て佳織に近づいた。
「初陣にしては上出来だ。よく頑張ったな」
「……ありがとう…ございます……」
あれ?いつもの佳織に戻ってる?
さっきまでの強い感じは今目の前にいる佳織からは全く感じない。
よく見たら、佳織の顔は赤くなっていて、息も荒いように見える。
汗も沢山掻いていて、どれだけ大変だったかがよく分かる。
(そっか……当然だよね)
あれだけの動きをしたら、誰だって疲労困憊になるのは当たり前だ。
お世辞にも体力がある方とは言えない佳織ならば、猶更キツく感じているだろう。
「疲れているところで悪いが、少しだけ聞いていいか?」
「なんで……しょうか……」
「試合中、急に言葉使いなどが変わったように見えたが、あれはなんだ?」
「………私にもよく分かりません。ただ……」
「ただ?」
「ファースト・シフトが終わった瞬間、頭の中が急にクリアになって、思った言葉が口に出るようになって、それで……」
「……そうか、分かった」
姉さんはまだ納得していないようだけど、当の佳織本人の疲労がかなりのレベルだと判断したのか、途中で話を切り上げた。
「えっと……今、ISは待機形態になっていますけど、仲森さんが呼び出せばいつでも展開が可能です。でも、ちゃんと規則があるので気を付けてくださいね?」
「規則に関する本を本当は渡すつもりだったが、今は自分の体を休める事を優先した方がいい。本はルームメイトの布仏に渡しておく。お前もそれでいいか?布仏」
「あ……はい」
本音ちゃんも佳織の様子を心配したのか、珍しく呆けていたみたい。
気持ちは凄くよく分かるよ……。
「それじゃあ……お先に失礼します……」
そう言うと、佳織はゆっくりと奥に下がっていった。
「織斑先生……」
「あぁ……」
二人な何やら悩んでいる。
多分、試合中の佳織の事だろう。
「もしや、佳織はアレなのか?」
「アレって?」
「ほら、よく漫画やアニメなどであるだろう?車のハンドルを握ったら急に性格が変わる……」
「こち亀の本田さんみたいな?」
「そうだ。佳織もISに乗ったら性格が変わるのではないか?」
「でも、最初に乗った時は何ともなかったよね?」
「む……言われてみれば確かに……」
でも、箒の言った事が一番納得するかも…。
って言うか、箒も漫画とか読むんだ…。
「いや…存外、篠ノ之の言った事が正しいかもしれんぞ」
「「「え?」」」
まさか姉さんがそんな事を言い出すなんて…。
「仲森の試合中に見せたアレは、一種の自己暗示かもしれん」
「自己暗示?」
「そうだ。恐らく、ISの一次移行が切っ掛けになって、あのような事になったのだろう。無意識の内に自分に暗示をかけて、自らの能力を強制的に底上げしたのかもしれん」
一次移行が切っ掛け……。
それなら、最初に乗った時になんともなかった説明はつくけど……。
(だが、私の知る限りでは佳織にそんなスキルは無かったはず。だとすれば、あれは外部からの影響で……?)
また姉さんが真剣な顔で顎に手を当てている。
最近はよく悩む姿を見るな。
「かおりん……大丈夫かな……」
「心配だな……」
「うん…」
凄く辛そうにしてたし、倒れてたりしてないよね…?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
頭が凄く痛い……。
目が霞む……。
足元がふらつく……。
混乱している頭を少しでもスッキリさせようと思い、私はアリーナに設置された共同のシャワー室に向かった。
ISスーツを脱いで籠に入れて中へと入る。
既に誰かが使用中のようだが、幸いな事に現在の使用者は私を覗けば一人だけ。
折角だし、隣を使わせてもらう事にしよう。
シャワーからお湯を出して、頭から流す。
すると、ボーっとしていた頭に活力が少しだけ戻ってくる。
(なんなんだよ……アレは……)
試合中に『神』の野郎が無理矢理寄越した転生特典……あれってモロに……
(シャア・アズナブルじゃねぇーか!!!)
なんでよりにもよってシャアなんだよ!?
マジで意味わからねぇよ!!
口調や態度まですっかりシャア擬きになってたし!!
しかも……
(あれは……確かに
傍から見たら、あの状態はまるで別の人格が乗り移ったり、二重人格のように見えたかもしれない。
けど、それは違うんだ。
あの時、私の意思は存在していた。
つまり、試合中に言った言葉は全部、私の言葉なのだ。
でも、体は自分の意思を完全に無視して話したり動いたりしていた…。
エロゲとかでよくある『ダメ…!体が勝手に……!』ってヤツだ。
更に、口調とかだけじゃなくて、戦闘能力もシャアを模していたし……。
だって、今の私にあんな高機動戦闘なんて絶対に不可能だし!
実際、心の中じゃずっと目が回りっぱなしだったよ。
下手したら酔ってたかもしれない…。
なんせ、無理矢理体を動かされたようなものだし。
けど、ISを降りた瞬間に、あの感じは無くなったんだよな…。
貰った特典は恒常的なモノじゃないって事か…。
つまり、総合して私の転生特典は……
【IS搭乗時限定で赤い彗星(笑)になる程度の能力】
ってことになるのか…?
ふざけんなよ!!
ISに乗る状況って、殆どが人前に晒される時ばっかりじゃんか!!
しかも、ISって授業でも乗ったりすることがあるんだよ!?
どうしてISに乗る度に、あんな恥ずかしい言い回しをして黒歴史を量産しなくちゃいけないのさ!!
羞恥プレイにも限度ってものがあるだろう!!
私を恥ずかしさのあまり悶絶死させる気か!!
「はぁ……」
絶対に変な目で見られてたよね……。
明日からどんな顔をして皆と会えばいいんだろう…。
しかも、試合中の出来事だったとはいえ、セシリアのお腹を思いっきり蹴ってしまったし……。
女の子の腹を蹴飛ばすとか、どこの外道だよ……。
あぁ~!バラの学園生活に一気に暗雲が立ち込めてきたよぉ~!!
本当にどうすればいいのさぁ~!?
……にしても、今日はすっごく疲れた……。
明日…筋肉痛とかになってないといいけど……。
「……出よ」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
シャワーの暖かなお湯が私の体を濡らす。
試合が終わってから、私は疲れた体を癒すためにシャワー室へと足を運んでいた。
(今日の試合……)
最初は私が圧倒していた。
負ける可能性なんて全く考えていなかった。
でも、実際には……
(負けてしまった……)
試合の流れが劇的に変わったのは、彼女のISが一次移行してからだった。
まさか、初期状態の機体で挑んできていたなんて夢にも思わなかった私は、少なからず動揺してしまった。
常に冷静でいようと心掛けている私にしては、実に恥ずかしい失態だった。
機体が真っ赤に染まってから、仲森さんの動きが一気に変化した。
ステージ全体を凄まじい速度で駆け抜けていき、動きに全く追いつけなかった。
あの姿はまるで……
(赤い彗星のようでしたわ……)
こちらの攻撃を全て紙一重で回避して、自分の攻撃は絶対必中。
しかも、私自身が知らない癖まで見抜かれた。
でも、仲森さんの途中から変わったあの口調……どこかで聞き覚えがあるような気が……。
なんだったかしら…?
「はっ!?」
そうだ……思い出した!
あれは確か……お母様がよく、お父様が仕事でいなくて自分が休みの日にいつもリビングで見ていたDVDで見た映像……!
お母様がよく口にしていたのを思い出す。
『セシリア。よく覚えていきなさい。これこそが世の女性が最も理想とする男性像よ。え?お父様?それはそれ、これはこれよ』
見目麗しい女性であるにも拘らず、誰よりも凛々しく雄々しい口調と姿。
あれこそ正しく……
(ジャパニーズタカラヅカ!!)
もしや……仲森さんもお母様が大好きな『ヅカキャラ』なのかしら!?
だとしたら、あの口調にも納得がいくような……
『改めて見せて貰おうか……イギリスの代表候補生の実力とやらを!!(キラ~ン)』
「……!?」
な…なんですの!?この胸の高鳴りは!?
彼女の言葉を思い出しただけでこのような……
『これで
また……この胸を焦がす感情は一体……。
『ISの性能の差が、戦力の決定的差ではない。それをよく肝に銘じておきたまえ(キラキラキラ)』
ま…まさか……この私が……?
でもでも!彼女と私は同じ女性同士!
同性同士でそんな……。
「……出ましょうか」
こんな所で悶々しているなんて、オルコット家の淑女として恥ずかしいですわ。
あ、因みに言っておきますけど、私の両親は健在でしてよ。
今でも年甲斐も無くいちゃついてますわ。って……私は誰に言っているのかしら?
溜息交じりに個室を出ると、いつの間にか隣にも誰かがいたようで、同時に出てきた。
だが、その姿を見て私は固まってしまった。
「「あ」」
そこにいたのは、私と同じように一糸纏わぬ姿の仲森さんだったのですから。
「な…な…ななななななななななんで貴女がここに!?」
「いや……汗を流そうと思って……」
そ…そうですわよね!それ以外の目的なんて普通はありませんわよね!?
私は何を考えているのかしら、オホホホホホ…。
考え事に夢中で全く気が付きませんでしたわ…。
「ど…どうしたの?大丈夫?」
「な…なんでもありませんわ!」
試合中の凛々しさはどこへやら。
今の仲森さんは教室で見かけるいつもの仲森さんでした。
普段の優しくて可愛らしい仲森さんと、試合中に見せる格好いい仲森さん。
これがもしや……ギャップ萌えと言うヤツですの!?
「このままじゃ風邪を引いちゃうね。早く出ようか」
「そ…そうですわね」
普段は結んでいる髪が下してあって、少しだけ大人びて見えた仲森さん。
なのに、表情はどこまでもあどけなくて…。
あぁ~…もう!本当になんなんですの!?
自分の気持ちが分からないまま、私達は一緒にシャワー室を出た。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
私と仲森さんは一緒に更衣室で着替えていたが、お互いに言葉を一言も交わさない。
何を話せばいいのか分からないし、なにより恥ずかしい…。
どうしてこんな事になってしまったのかしら…。
「……今日はごめんね」
「え?」
なんでいきなり謝るんですの…?
「試合中に偉そうな事を言っちゃって、しかもお腹まで蹴っちゃったし…」
そう言えば、色々と仰っていましたわね。
何故か一言一句覚えてますけど。
あと、あの鋭いキックは本当に痛かったですわ。
「別に気にしてまいませんわ。あれは全て自分の未熟さが招いた事。私が反省する事はあっても、貴女が気に病む必要はありません」
「うん……ありがと」
なんか……沈黙が痛いですわ…。
「寧ろ、謝罪するのはこちらの方です」
「それは……」
「仲森さん」
着替え終わった私は、隣で着替えている仲森さんの方を向いた。
彼女はまだ着替えている途中で、上だけ下着姿だった。
改めてよく見ると、結構大きいですわね…!
「この度は…本当にすいませんでした」
「え…ええ?」
私は腰を折って彼女に謝罪した。
「自分がクラス代表に推薦されなかったとはいえ、その事を貴女にぶつけるのはお門違いでした。本当にごめんなさい…」
「…………」
「あの場で私の名が出ずに貴女の名が出たと言う事は、それはクラスの皆さんが仲森さんこそが相応しいと思った証拠。それなのに私は……」
あの時、私が思った感情は『嫉妬』だ。
私は選ばれた彼女に対して嫉妬しまったのだ。
けど、時が過ぎるにつれて心が冷静になって、自分の犯した過ちに気が付いた。
でも、少なくとも試合が終了するまでは引っ込みがつかない。
だから、本当は勝敗に関わらず謝ろうとは思っていた。
それなのに、試合中にまたあんな事を言ってしまうなんて……私と言う人間は……。
「……もう気にしてないよ」
「仲森さん?」
顔を上げると、そこには着替え終わった仲森さんが優しい笑顔でこちらを見ていた。
「きっと、今までの自分の努力が否定されたような気持ちになったんだよね?」
「私は……」
「オルコットさんは代表候補生になるまで、私なんかが想像出来ない程に頑張って来たんだと思う。多分、あの時だって代表候補生だから自分がクラス代表になって当然だって思ったんでしょ?でも、何故か選出されたのは私のような無名の女子。そりゃ、怒って当然だよ」
なんで……なんでそんな事が言えるんですの…?
今回の事は完全に私の子供じみた嫉妬と我儘から始まった事。
仲森さんは寧ろ被害者と言っても過言ではないのに…。
それなのに……
「だから、もういいよ。試合は終わったんだしさ。全部水に流そうよ。お互いにシャワーを浴びた事だし」
「それ…洒落のつもりですの?」
「あ、バレた?」
「全く…ふふ……」
「ははは……」
この時、私は確信した。
彼女こそが本当の意味でクラス代表に相応しいと。
試合中に見せた強さとカリスマ。
そして、この聖母のような包容力。
仲森さんにならば、ついて行きたいと私も思う。
「仲森さん。私の事はセシリアと呼んでくれませんか?私も貴女の事を佳織さんと呼びますから」
「……うん、いいよ」
仲森さん…じゃなくて佳織さんは私の手を握って微笑んだ。
「これで私達は友達だね」
「友達……」
私と佳織さんが友達……?
「そう……ですわね…」
私の学園生活の友達第一号が、まさか試合をした相手だなんて……皮肉ですわね。
でも、それがいいと思っている自分がいますわ。
「佳織さん。私……友達で終わるつもりはありませんことよ?」
「ど…どういう事?」
「さぁ?」
私の中に芽生えたこの気持ち……佳織さんと一緒にいる事で確かめさせて貰いますわ!
いつも彼女と一緒にいる方々にも宣戦布告しなくてはいけませんわね。
「まずは、クラスの皆に謝らないとね?」
「はい。分かっていますわ」
きっと、とても勇気がいる事だと思いますが、今の私なら出来ると信じています。
だって、佳織さんが一緒にいてくれるから。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
佳織とセシリアの試合は、アリーナで見ていた全ての生徒に色んな影響を与えた。
その中には、佳織に対して強い印象を持った人物も複数存在する。
例えば……
「仲森佳織…ね。今まで目立った噂が無い少女が、これ程の実力を隠し持っていたなんてね……。これは注視しておくべきかしら…」
どこぞのロシア代表と生徒会長を兼任している少女だったり……
「赤くて強くて格好良くて……まるで本当のヒーローみたい……」
その妹の日本の代表候補生な四組のクラス代表だったり……
「へぇ~……暇つぶし感覚で来てみれば凄いものが見れたな…。おもしれぇ…!」
金髪美人な三年生のアメリカの代表候補生だったり……
「なんか凄かったスね……。私が一年の頃とは大違いっス…」
その個人的なパートナーである二年生のギリシャの代表候補生だったり……
佳織が知らない所で、色んなフラグが乱立していることに、彼女はまだ知らない。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
次の日。
私は早朝から大ピンチに陥っていた。
「う…うぅぅ……」
い…痛いよぉ~…。
「うぅ~ん…?かおりん~?」
「本音ちゃ~ん……」
「か…かおりん!?」
あ…珍しく一人で起きて、しかも私に気が付いてくれた…。
本音ちゃんはマジで女神なのかもしれない。
「ど…どうしたの!?大丈夫!?」
「大丈夫……じゃない~(泣)」
「えぇぇぇぇっ!?」
慌ててこっちに来てくれた。
こんな時は本当に有難い。
「じ…実は……」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
朝のホームルーム。
いつものように千冬が教壇に立ち進めていき、真耶が隣に立っている。
「と言う訳で、昨日の試合の結果、一組のクラス代表は仲森に決定した」
「「うんうん」」
一夏と箒は嬉しそうに頷く。
「で、当の仲森本人はと言うと……全身筋肉痛で今日は休みだ」
「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~!?」」」」」
就任当日にクラス代表がまさかの欠席。
流石にこれには全員が驚かずにはいられなかった。
余談だが、この日にセシリアはクラスの皆に謝罪した。
少し渋った面々もいたが、当初とは打って変わっての誠心誠意の謝罪を聞いて、結果として彼女の謝罪を受け入れた。
一夏と箒は微妙な顔をしていたが、謝罪の提案が佳織からだと聞くと、仕方が無いと言った感じの顔をしていた。
実は佳織は勝敗に関わらずクラス代表を辞任する気満々だったが、色々とあって完全に忘却していた事に、復帰してから気が付くのだった。
そんな佳織はと言うと…?
「にょ…尿意がぁ~……。でも動くと体が痛いぃ~…」
人知れず別の意味で再びピンチになっていた。
佳織の明日はどっちだろうか?
ちょっと無理矢理でしたかね…?セシリアの改心と和解。
一般人の素人の少女がいきなりシャア様と同じ動きをしたら、そりゃあ筋肉痛になりますよね。
それと、これだけは言っておきます。
佳織は決してチートではありません。
確かに、今回の試合は勝ちましたが、それだけです。
いかに特典が凄くても、負ける時は負けます。
常勝はあり得ません。
強くはなりますが、一定以上の敵に対しては苦戦は必至でしょう。