インフィニットストラトス return of calamity リメイク版 作:アルバロス
ガンッ ギィン
「これが全盛期?……いや、紛い物だから劣化していると見る方が正しいか。」
アリーナでVTシステムと戦っている終夜は、VTシステムに攻撃をすることなく、ただただ受けに回っていた。攻撃している側のVTシステムはその方法しかないのか、多少道筋が違っても最後が同じ決め方をするので、最初は擦る程度に当たっていた攻撃は全て捌ききられていた
「劣化版なら仕方がない。我慢するしかないし……もう殺るか」
終夜が殺気を出したとき、VTシステムは一瞬止まった。恐怖か、単なるバグか……その一瞬を逃さず、終夜は剣を振るった。
バチッバチチッ
「あ?核でも斬ったか?」
人の体で丁度胸の辺りから縦に一閃。それを受けたVTシステムは全体から電流が弾け、斬った場所からスーツ姿のラウラが出てくる。
「よっと」
「何故だ……何故あなたはそれほどまでに強……」
「質問を返す前に気絶したか………目が覚めたら教えてやるよ」
ラウラを受け止めたとき、ラウラは終夜にその強さの理由を問いかけた。だがその答えを聞く前に気絶。終夜は少し困った顔をしたあと軽く笑い、ラウラを背負ったままピットへと戻った
「よくやった、零童。ラウラはこちらで預かろう」
「わかりました。そこに寝かせればいいですよね?山田先生」
「は、はい。私が保健室へと運びますので」
ピットに入り、まず出迎えたのは千冬と、台(病院で運ぶときに使うアレ)を用意していた山田先生だった。終夜がラウラを台に乗せると、山田先生は揺らさないよう気を付けながら小走りに運んでいった
「それと零童」
「はい?」
「劣化版のアレが不満なら私が直々に相手をしてやろう。全力でな」
「あー、聞こえてたんすね……アハハ。ま、気が向いたときにでも。」
「安心しろ。日時はこちらが決めてやる。ああ、それと。今回のことは機密事項になるので、あまり言いふらさないでくれ。あれの詳しい説明は……」
「そこにいる馬鹿に教えて貰いますよ。ていうか、拒否権無いんですね」
そういいつつピットの入り口に目を向ける。そこには、タッグトーナメントでまた会おうと約束したシュトロハイムが立っていた。だがその顔は友人としているのではなく、ドイツ軍人としてここにいる。そう物語っていた
「シュトロハイム大佐。お久しぶりです」
「ああ、久しいな。いきなりで悪いのだが、席を外して貰いたい」
「わかりました。それでは、零童。あとでその掠り傷の治療をしておけ。紺野たちが心配する」
「わかりました」
「それでは、失礼します」
千冬はシュトロハイムに挨拶をしたあと、ピットを出ていく。ピットのドアが閉まると、シュトロハイムが口を開いた
「まず、ラウラ・ボーデヴィッヒの救助、感謝する」
「要点だけでいい。アレはなんだ」
「あれは、ヴァルキリー・トレース・システム。通称VTSと呼ばれるものだ。モンドグロッソ優勝者の動きを再現するものであるが、いくつか欠点があり、現在では開発すら禁止されている代物だ」
「欠点?」
「優勝者の動きを再現する際に問題となる操縦者の安全は考えられておらず、最悪の場合死に至る」
「………早く勝負を決めておけば良かったな」
シュトロハイムからの事実にもう少し早く決着するべきだったと少し後悔する終夜だった
「しかし、なぜそれがボーデヴィッヒに?」
「それはわからん。誰が組み込んだのか等についてIS委員会からの調査がある。だが……」
「トカゲの尻尾切りか……」
「ああ。そうさせないために急いで向こうに戻らねばならんのでな。ゆっくりとするのは、また今度だな」
「そうか」
互いに別れの挨拶を言うと、共にピットを出て、シュトロハイムはドイツへ戻るため、終夜はラウラの元へと最後に拳をぶつけて、別れた。
「うっ………ここは……」
「気がついたか」
「教…官……私…は」
「全身に無理な負荷がかかったことで筋肉疲労と打撲が多々ある。しばらくは無理をするな。まぁ、動けないだろうがな」
天井から降る光でラウラは目を覚ます。そのまま体を起こそうとするが、全身に痛みが走り、おとなしく横になる。そこに、ラウラへと千冬が声をかけていた。ラウラは千冬に何が起きたのか問いただした
「一体……何が」
「一応重要案件であり、機密事項だが当事者が知りたいと思うのは無理もないか……VTシステムは分かるな?」
「はい……正式名称はヴァルキリー・トレース・システム。ですが、あれは……」
「そうだ。IS条約でどの国家、組織、企業においても研究、開発、使用の全てが禁止されている。それがお前のISに積まれていた。巧妙に隠されてはいたがな。操縦者の精神状態、機体のダメージ、そして操縦者の……願望が全て揃って発動するようになっていたらしい」
ラウラは話が進むにつれ段々と俯いてゆき、最後にかすかに呟いた
「私が…望んだからなんですね」
千冬はラウラの言いたいことが何も言わずとも伝わっていた。千冬は励ますため、ラウラの名前を呼ぶ
「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」
「は、はい!」
「お前は誰だ?」
「わ…私は……私……は」
いきなり名前を呼ばれ、驚きながら顔をあげるラウラ。そのあとに聞かれた千冬からの問いにラウラは自分はラウラ・ボーデヴィッヒだと言うことができなかった。そのため、どうしても、言葉が詰まり、何も言えないでいた
「誰でもないのなら、今からラウラ・ボーデヴィッヒになればいい。時間は山程ある。たっぷり悩めよ」
「え………」
ラウラは口をポカンと開けたまま呆けていた。自分を励ましてくれるとは思っていなかったからである。千冬は最後にラウラへ「私にはなれないぞ」と言い放ち、教師としての仕事に戻っていった。それと入れ替わるように終夜が部屋に入ってきた
「大丈夫そうだな」
「終夜殿か……迷惑をかけたそうだな。申し訳ない」
「気にするな。それと、気絶する前に言った質問を覚えているか?」
「ああ、教官に聞くまでは何が起こっていたのか知らなかったが、そこは覚えている」
「その答えだが……『守るものがあるから強い』」
「守る……もの」
「そうだ。まぁこれは俺の持論であって正解ではない。これに当てはまらない人間を俺は知っているしな。答えは自分で探してみろ。これだと思うものが、お前にとっての強さだ」
ラウラは終夜の答えを聞いたあと、少し俯き自分の守るべきものを思い出していった。そのあと……
「少し聞いていいだろうか」
「ああ、何だ?」
「『カタスフィア』…これは貴方の名前だろうか?」
ラウラの口から出た名前、それは終夜を驚かせることに充分な威力をもつものだった
「なぜ、その名を知っている?」
「VTシステムに取り込まれているとき、ある夢を見ていた。それを見ていたときに、そう呼ばれた男が姿を変えたとき、変わった姿が貴方と同じだったからだ。今までの私が理想とした力を持つ貴方がその答えを得た理由を教えてほしい」
「はぁ……俺の正体をこういう形で知られるとはな。まぁいいか。………俺がこの答えを得た理由はやっぱり木綿季のお陰だな。まぁ、詳しくはお前の体調が元に戻ったら教えてやるよ」
ガラッ
「うおっ、鈴!?」
「…………」
「鈴?どうかし」
「ねぇ、さっきの話ってなんなの?」
「別に隠す気は無かったんだがな……ボーデヴィッヒが回復したら一緒に教えるから、それまで待ってくれ……な?」
「わかった。ちゃんと話なさいよ」
「わかってる」
終夜は鈴と約束すると、食堂で待つ木綿季のもとへ手を繋ぎながら歩いていった
「はぁ……わたくしはこのまま一夏さんといていいのでしょうか」
この騒動があった日、セシリアは一人浴槽に浸かりながら、自分の揺れている心境に頭を悩ませていた。今のセシリアは、今まで持っていた一夏への思慕はほぼ無いと言っていい。なぜなら、以前は恐れた終夜の強さに今は惹かれているからだ
「わたくしはどうすれば良いのでしょう……」
これからを決めるかもしれないこの問いに答えるものはおらず、セシリアも一旦区切りをつけるためか、浴槽を出ていった。その顔は思い詰めていたが
ふぅ……今回も終わったぁ!
さて……終夜と千冬の戦闘フラグを建てたけど、どうしよう……いっそのこと飛天御剣流でも使わそうかな……
正直に言うと、次回のことを一切考えてませn(ry
更新を早くすると言った途端のこれ……ホントすいません
明日の台風に皆さん気をつけてくださいね〜