緋月昇は記録者である   作:Feldelt

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旧47話 焔

「うー、寒...」

 

讃州中学勇者部部室に勇者部が揃う土曜早朝。何か園子以外の全員がいて、全員が疲れた顔をして部室にいる。

 

「夏凜ちゃんひーくんおはよー、およ?何かあった?」

「...あー、昨日帰ったらエアコンが壊れててね、寒くて寝れなかったのよ。」

「嘘つけ俺の胸元ですやすや寝息を立ててたくせに。可愛かったぞ。」

「ししし知らないわよそんなこと!」

 

「相変わらずベタベタね...でも昨日は私たちも大変だったのよ、帰り際に樹が家の鍵を落としたみたいで...」

「お姉ちゃん言わないで...」

 

「私も、家の電灯が切れてすごく困ったわ。」

 

三組三様の些細な不運。

極めつけは東郷のカミングアウトの後にやってきた園子の右手だ。

 

「そのっち、その手はどうしたの?」

「あぁ、今朝お湯を沸かしてたらやけどしちゃったんよ〜、寝ぼけてぼーっとしてたからかな〜」

「気をつけなさいよ全く...」

 

ここまで勇者部に不運があると陰謀めいたものを感じるのだが...いや考えすぎか。

 

「友奈は...」

「友奈ちゃんは何かあった?」

 

東郷に先手を打たれた。友奈が絡むと東郷は行動力の化身である。

 

「なんにもないよ。」

「よかった...友奈ちゃんにまで何かあったらどうしようかと思ったわ。」

「んな大仰な...でも何か一回勇者部でお祓い行った方がいいんじゃない?」

「ちょっと夏凜怖いこと言わないでよ!」

 

とまぁ、少女達がわーぎゃー言ってる中、俺は何かしらの違和感を感じている。何か、何かが変なんだ。でもどこが。先の陰謀めいたものとは違うものだ。

 

「のーぼるん。」

「園子様...」

「様付けは仕事モードになってる時だね〜、また何か考えてたんでしょ〜」

「えぇ、まぁ...ただの思い過ごしだと思うんですけど、どうにも...」

「そっか。でものぼるんのその感覚は当たると私は思うんよ。勇者部五箇条、悩んだら相談だよ。」

「悩んだら、相談...」

 

言うべきか言わざるべきか。

友奈の息を呑む声が聞こえた。

 

 

───────

 

 

1日中部室をクリスマス仕様にする作業をしていた。もう夕方だ。結局俺の考えは思い過ごしで決着をつけた。

勇者部も撤収の時間だ。

 

「樹、ちょっと待っててね。」

「東郷さん、ごめん、先帰ってて。」

 

友奈と先輩が離脱する。

 

「友奈ちゃん...?」

「きっと東郷には知られたくない悩みなのかもしれnへぐっ!?」

「変なこと言わない。とっとと帰るわよ。」

「首、ちょ、引きずるな...!」

 

夏凜に首の後ろの襟を持たれ引きずられるように家路に着く。夕飯何にするかな...

 

 

───────

 

 

帰宅して冷蔵庫を見る。ふむふむ、カレーかな。唐突に食べたくなったし今日はそれで...

 

「昇!!」

「おうどうした夏凜。」

 

カレー以外はどうするかと考えた脳内に夏凜の血相を抱えた声が殴り込んできた。

 

「風が車にはねられたって...」

「は?」

「とりあえず、病院行くわ。昇、あんたも来なさいよ!」

 

それだけ言って夏凜は駆けて行った。

 

なんだって、先輩が車に轢かれた?

待て待て、精霊バリアはどうした。

こう言っちゃあれだが車程度で突破されるほど精霊バリアはヤワじゃない。バリアを突破できるのは《叢雲》くらいなもの......いや待て。だとしたら。

 

大赦からの携帯が鳴る。

 

「はい、緋月です。」

 

嫌な予感しか、しない。

 

 

 




次回、第48話「嘘だ、そんなこと」

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