緋月昇は記録者である   作:Feldelt

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元旦に投稿すると言ったな。あれは嘘だ。(土下座)
陳謝ッ!(切腹)


第13話 星vs花

バーテックスの同時襲撃……残存している七体、牡羊型、牡牛型、双子型、天秤型、水瓶型、魚型、獅子型が壁ギリギリの位置にいる。この戦いは……勇者ならともかく俺は生き残ることすら難しそうだ。それに、たとえ生き残ったとしても書く報告書は二十一枚。どのみち地獄には変わりない。

 

「死ぬ気は毛頭ないけどもうとっくに死んだような気分だ……胃がマジで痛い……」

「まさか、全部一気に来るなんて……」

「逆に考えなさい。こいつら全部倒せば、御役目も終わりよ。」

「いざ、国防……!」

「東郷さん気合い十分だな~。よし!私も頑張る!」

 

勇者部の面々が気合いを入れ直している。風先輩は既に変身して敵の偵察にあたっていた。

 

「敵さん、壁ギリギリの位置から仕掛けてくるみたい!……決戦ね。」

 

先輩の言う通り、やはり決戦なのだろう。

 

「はぁ……けどこう見ると結構壮観ね。やる気もサプリも増し増しだわ。昇と樹もキメとく?」

「表現に気をつけろよ……眠気は覚めてるけれどとりあえず頂くよ。」

「えぇ……その表現はちょっと……」

 

樹の声が少し硬い。やはり緊張は免れないものだろう。それもそうだ。この状況は今までで最悪なのだから。

 

「緊張するのは当然、か。」

「あらぬ心配よ、緋月君。」

「ほう。東郷、その心は?」

 

聞いた直後に場に釣り合わない笑い声がこだまする。おいおい、壊れちまったわけじゃねぇよな……

 

「緊張しなくても大丈夫!みんないるんだから。」

「は……はい!」

 

友奈が樹を励ましていた。そのためにくすぐる必要はあるのかという問いはあるが、ともあれそれで緊張がほぐれたのなら御の字だ。

 

「よし、勇者部一同変身!」

『了解!』

 

勇者部の面々が変身する。外から見ている俺にとっては一瞬の出来事だ。その一瞬の間に、彼女たちは戦う覚悟を決めている。記録するだけの俺には想像もつかない、重い覚悟を。

 

「ひーづーき。」

「なんですか、先輩。」

「そうね……記録するアンタの心境が気になってね。」

 

看過されていた。先輩には記録者の仕事の詳細がわからないけど、部員の心の動きには敏感だった。

 

「仕事ですから。って、割り切れるなら話しかけられてないですよね。……怖いんですよ。戦いから生き残ることができるかもそうですけど……何より、この勇者部の面々に死人ないし怪我人が出るのが、一番……俺はそんな残酷な事実でさえ、記録しないといけないですから。」

「そっか。じゃあ、ちゃんと全員無事に帰らせないとね。」

 

そう言って先輩は残りの勇者四人を集める。

 

「決戦前なんだし、ここはアレ、やっときましょ。」

『アレ?』

 

夏凜と見事にハモったが、それはいい。問題は俺と夏凜を除く四人は円陣を組もうとしていた。見事に二人分のスペースが開けられている。

 

「なるほどそういうことか。行くぞ夏凜。」

「は、はぁ!?ったく、しょうがないわね!」

 

観念して夏凜と共に円陣に加わる。

士気を上げるための集合で、自然と集中力も上がってくる。

 

「あんた達、勝ったら好きな物奢ってあげるから、絶対死ぬんじゃないわよ。」

「やったー!じゃあ私は肉ぶっかけうどんをお願いします!」

「それは敵を全て殲滅した後の話よ、友奈。」

「世界を……国を、護りましょう!」

「私も、叶えたい夢があるから……!」

 

勇者五人が思い思いに口を開く。俺も、触発されたように自分の言葉を口走っていた。

 

「だったら……ちゃんと帰ってこい。俺は帰ってくるまでに勇者部の戦果しか書きたくないからな!」

「それじゃあ行くわよみんな!勇者部ファイトー……」

 

 

『オー!!!!!!』

 

 

──かくして、かつてない規模の決戦の火蓋は切って落とされたのだった。

 

 




次回、第14話「決戦(前編)」

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