ナオジとヨリコ   作:鈴本恭一

6 / 9
第6話:赴く武装

 

 

 

 週末の休日、ナオジはヨリコの家を訪れた。

 

 小さなアパートの二階、その端にある一室がヨリコの家だ。

 

 玄関の扉にかかった表札でナオジは再度、ヨリコが現在住んでいる住居であることを確認する。

 アパートはナオジの住んでいる団地からそう離れた場所ではない。

 自転車で数十分の距離だった。

 会おうと思えばいつでも会える距離かと思いながら、ナオジはインターホンを押す。

 

 しばらくして、玄関の入り口が開かれた。

 

 顔を出したのは、ヨリコの母親だった。

 

 

「ナオちゃん?」

 

 

 四年ぶりに会ったヨリコの母親は、驚きの表情でナオジを出迎える。

 娘と同じ瞳や髪の色は昔と変わらなかったが、ナオジの記憶にあった頃よりも、どこかしっかりした面立ちになっていた。

 

 ヨリコの母親は、懐かしげに表情を崩す。

 

 

「久しぶりね。

 ずいぶん大人っぽくなっちゃって」

 

 

 その笑顔は団地住まいだった頃よりも屈託がなく、その当時によく浮かべていた弱々しい笑みとも違っていた。

 

 大人の笑顔だ、とナオジは思う。

 

 

「これ、うちの母から」

 

 

 経た歳月を想いながら、手に持っていた包みをナオジは見せる。

 母親が用意した菓子折だ。

 団地時代、ナオジはこうして母親の代わりにヨリコの家へ贈り物を届けていた。

 その頃と変わらない無愛想さで、ナオジはその菓子折を手渡す。

 

 

「ありがとう」

 

 

 ヨリコの母親は、感慨深そうな顔でそれを受け取った。

 そして

 

「あがっていって」

 

とナオジを誘う。

 こういったところも、昔と変わっていなかった。

 ナオジは素直にそれへ従う。

 

 アパートの中は、ナオジの住む団地のそれよりも狭かった。

 当然だが、家具の配置も間取りも昔と異なっている。

 そのことがナオジには違和感となり、流れて隔てた時間の幅を感じさせた。

 

 

 

「他には誰もいないのか」

 

 

 人の気配のしない室内は最低限の家具しかなく、装飾に乏しい殺風景な部屋だった。

 団地時代のヨリコの家は、もっと飾り付けを施していた。

 引っ越しをして間もないせいか、でなければ心境の変化でもあったのか。

 詮索する気はナオジにはなかった。

 

 

「ヨリコは今、出かけての」

 

 

 ヨリコの母親は急須を取り出し、ナオジには居間のソファに座るよう促す。

 ナオジはそのソファに座り、尋ねる。

 

 

「あんたの旦那は?」

 

「……別れたの」

 

 

 ヨリコの母親が言った。

 

 

「ヨリコが中学にあがった頃くらいに離婚して、それから私はなんとか職に就いたわ」

 

 

 ヨリコの母親は急須から茶器に緑茶を煎れ、それを二人分用意すると、居間にいるナオジのもとへ運んだ。

 

 ナオジが器を受け取ると、ヨリコの母親はナオジと対面するソファへ自分も座った。

 互いに一口だけ茶を啜る。

 その後、ヨリコの母親が溜息をついた。

 

 

「ヨリコももう子供じゃないから、私は仕事に専念できるけど、あなたのお母さんはすごかったのね。

 子育てと仕事を両立できて」

 

「いや、あれは充分に育児放棄だったと思う。

 両立させる気はなかったよ」

 

「でも、私があの頃にひとりでいたら、どうすればいいのか分からなかったわ。

 あなたのお母さんみたいに割り切れないでおろおろするばかり」

 

 

 ヨリコの母親の台詞に、ナオジはあまり納得できずにいた。

 しかし、少々美化する気があるにせよ、ヨリコの母親は変わらずナオジの母親を慕っているのが分かった。

 

 ナオジは訊く。

 

 

「どうして、この町に?」

 

 

 ヨリコの母親は、ナオジのその問いかけに表情を強張らせた。

 しかし彼女は両手の指を絡め、しばし間を置いてから応えた。

 

 

「通勤場所に近かった、っていうのが建前」

 

「本音は?」

 

「……今なら、あなたのお母さんに謝れる気がしたから」

 

 

 そう言うと、ヨリコの母親は深々と、ナオジに向かって頭を下げる。

 

 

「ごめんなさい」

 

 

 ナオジはヨリコの母親が何について謝っているのか理解していた。

 そのため、ぶっきらぼうに応じてしまう。

 

 

「別に。

 あれは私が勝手に暴れた挙げ句、間の抜けたことをしただけだ。

 謝られる事じゃない」

 

「でも、謝りたいの。

 ずっと謝りたかった。

 あの頃は、もうあの場所にはいられないと思ったから、何も見たくなくて、誰にも会いたくなくて、私は逃げたの」

 

 

 その言葉に、ヨリコの母親がナオジに対して何を謝りたいのか分かった。

 

 ヨリコをナオジと別れさせたことに、彼女は頭を下げているのだ。

 

 唐突に離ればなれになったことをナオジはなんとも思わなかった。

 しかしふと、ヨリコはどうだったのだろうと思う。

 

 

「ヨリコは、中学の頃どうしてた?」

 

 

 ナオジはヨリコの母親へ問う。

 ヨリコの母親は頭を上げ、ナオジから目をそらしつつ過去を思い返し始めた。

 

 

「あの子は、よく家に帰ってこなかったわ。

 一応、留守電で外泊することは分かったけど、友達の家に泊まるとしか言わなかった。

 私も仕事に慣れるので大変だったし、家に帰るのも遅かったから、あの子が何をしてたのか、詳しくは知らないの」

 

 

 母親なのに、と彼女は独りごちる。

 

 それから、ヨリコの母親は自嘲気味に表情を変えた。

 

「私は駄目な母親ね」

 

と言う。

 

 

「家の中から離れて、あの子から離れて、やっとあの子のことを考えることができた。

 私は子育てに苦痛しか感じなくて、どうしてこの子を生んだんだろうって思ってた」

 

「……」

 

「そう思ってたことを、あの子はきっと感じていたんだと思う。

 だから、私には懐かなかった。

 私もあの子のことを好きと思わなかった。

 ナオちゃんは、そのことを知ってたかもしれないけど」

 

 

 ナオジは何も返事をしなかった。

 ヨリコの母親も返事を期待してはいなかったのか、そのまま言葉を続ける。

 

 

「あの子はどれだけさびしかったのか、今、とても後悔してる。

 どうして私は、あの子をひとりぼっちにしてたんだろうって」

 

「……今だから、言えることだ」

 

 

 ヨリコの母親の言葉を切らせ、ナオジは言う。

 

 

「あの頃はどうしようもなかった。

 あの頃と今を交換できるわけでもない。

 そんなことを考えても仕方ない」

 

 

 深く考えて出た言葉ではないが、ナオジは自分の台詞に慰めの色があることを発見した。

 

 慰めている。

 この私が? ナオジは自分でも少々狼狽えた。

 

 どうしてそんな気分になっているのだろう、とナオジは自分を振り返る。

 別段、ナオジはこの女性に懐いていたわけではない。

 気を許していたわけでもない。

 

 おそらく、ヨリコのせいだ。

 

 自分と同じく、ヨリコの存在を無視できない、数少ない同類だからだとナオジは解釈する。

 

 そう思ってから、ナオジはヨリコの母親へ本題を切りかかった。

 

 

「あいつ、退院した後、何か変じゃないか?」

 

 

 ナオジのその言葉に、ヨリコの母親は、はっとして顔色を変える。

 その様に、ナオジは目を細める。

 

 

「見えるんだな、あんたにも。

 あれが」

 

「……あれは、だれ?」

 

 

 ヨリコの母親は、肩を震わせながら言った。

 

 

「魔物だとか魔界だとか、分からないことばかり言うの。

 見た目は小さな女の子だけど、私には何がなんだか、まるで理解できない」

 

「だろうよ」

 

 

 それはナオジも同様だった。

 手の込んだ誘拐事件の可能性もあったが、ナオジはあの金色の双眸を思い出し、とても人間を相手にしているとは思えなかった。

 

 

「あの子、他のみんなにはナオジにしか見えないあれは私に言ったわ。

 ヨリコは自分で願って、別のところに行ったって」

 

 

 ヨリコの母親は、両手で自分の目元を押さえる。

 何かが溢れてくるのを防いでいるようでもあった。

 

 

「返してほしければ、魔物の城というところに来ればいい、って言われた。

 けど、あの子が自分で願ったこと、決めたことだから、私には行く勇気がないの」

 

 

 あの子に会って、何を言えばいいのか分からない、とヨリコの母親は小さく震える声で言った。

 

 そう、あいつが自分で決めたことだ。

 ナオジは思う。

 

 自分で決めたことに、他人が口出しすることをナオジは良しとは思わなかった。

 他人の言葉に耳を貸さずに生きてきたナオジには、ヨリコの決断の方が正しいと思った。

 

 なら、放っておけばいい。

 それがヨリコの望みのはずだ。

 

 そう自分に言い放つナオジ。

 だが彼女の中で、別の疑念が浮かび上がるのを止めることが出来ない。

 

 ヨリコは、相談する相手がいないだけではなかったのか?

 

 

「……」

 

 

 ナオジはその疑念を心の中で振り払う。

 相談するということは、ひとりでは解決できないこと、他人に助けを求めることだ。

 ヨリコが自分と同じようにひとりで生きたいのなら、相談するという発想には至らないし、相談したくもなかっただろう。

 

 ヨリコはひとりで生きていた。

 ひとりで生きたかった。

 しかし、そうは生きられなかった。

 

 自分の生き方をどう決めればいいのか、ヨリコには自分でも分からなかったのかもしれない。

 

 ナオジには、父親の遺言があった。

 その遺言のことを考えようと思うと、母親に父のことを尋ねた。

 父がどう生きて、何を思っていたのか、それを知るのは母しかいなかったからだ。

 

 これは相談に入るのだろうか。

 ひとりで生きていないことになってしまうのだろうか。

 違う、とナオジは思った。

 決めるのは結局、自分だった。

 ただ、考える材料のひとつとして、知っておきたいから尋ねただけだ。

 

 ヨリコには、何か知っておきたいことはなかっただろうか。

 考える材料は本当に充分だったのだろうか。

 ナオジは思う。

 どうして、自分はこんなにもナオジのことを考えているのだろう。

 

 

「私は」

 

 

 ナオジは口に出す。

 その声に、ヨリコの母親は顔から手を離し、ナオジをまじまじと見た。

 その母親へ、ナオジは言う。

 

 

「私は、ヨリコが嫌いだ」

 

 

 ヨリコのようには生きたくない。

 それがナオジの本心だった。

 

 そのことを、ヨリコの母親には知っておいてもらいたかった。

 

 だから、ナオジは告げた。

 

 

「私達は友達じゃない。

 友達だったことは一度もない。

 ただ、近くにいただけだ」

 

 

 言葉ひとつひとつを意図的に強めて、ナオジはヨリコの母親へ言う。

 

 その言葉を受けて、ヨリコの母親は目を瞑った。

 その目蓋の裏でなにを思い描いているのか、ナオジには分からない。

 

 しばらくして、ヨリコの母親が目を開け、ナオジに言った。

 

 

「あなたは、どうしてあれが見えてるの?」

 

「……」

 

 

 言われ、今度はナオジが目を閉ざす番になった。

 問われ、否が応にも自問しなければならない。

 

 本当のところは分かっていた。

 

 ヨリコは、ヨリコでなければならない。

 そう思う者にしか、あの銀髪の魔物は見えない。

 

 ヨリコであろうとそうでなかろうと構わない者には、あれは見えない。

 そういう魔性だ。

 

 ナオジは、どうして自分がヨリコにそこまでこだわるのか、自分に尋ねる。

 

 戻ってきたヨリコ。

 変わってしまったヨリコ。

 消えてしまったヨリコ。

 

 ひとりだったヨリコ。

 

 ヨリコ。

 

 

「……あいつは、あのとき、笑ってた」

 

 

 無意識が、ナオジに言葉を作らせる。

 

 

「父親に殴られて、あいつは笑ってた。

 私がどんなに殴っても、平気な顔をしてたくせに」

 

 

 あのときの、涼風に似た笑い声が蘇る。

 

 

「あいつは私の味方じゃない。

 あいつは最後には、自分の家族の方につく。

 それが私には、心底許せなかった、と思う」

 

「何が、言いたいの?」

 

「私もあの馬鹿もテンガイコドクじゃないし、死んだわけでもない。

 あんたがヨリコに会いたいのなら、連れてきてやる」

 

 

 言いながら、自分は逃げているな、とナオジは思った。

 

 あの魔物がナオジにはどうしてヨリコに見えないのか、その理由を深く考えることから逃げていた。

 

 古傷がうずく。

 ナオジは左頬を手で押さえた。

 ヨリコを助けた時に負った傷。

 その仕草を見て、ヨリコの母親は尋ねる。

 

 

「あなたはヨリコの友達でもないし、ヨリコのことが嫌いだって言ったけど、なら、どうして」

 

 

 ナオジは耳を閉ざしたかった。

 心も一緒に閉じてしまいたかった。

 

 しかしそれは叶わない。

 

 ヨリコの母親は問う。

 

 

「どうして、そんなに傷ついてまで、ヨリコを助けたの?」

 

 

「―――」

 

 

 ナオジはおもむろに席を立った。

 

 そして無言のまま、玄関へ進む。

 靴を履き、乱暴に出入り口の扉を開けた。

 

 そのまま外へ出るナオジ。

 彼女は結局、問われたことに応えることが出来なかった。

 心の中が渦巻く。

 それは虚言と魔物は言っていた。

 

 ナオジは足早にアパートから去った。

 訳の分からない無力感を覚えながら。

 

 

 

 

 

    ***** ***** *****

 

 

 

 

 

 裏切られた、とナオジは思いたくなかった。

 

 あの笑い声。

 ヨリコの笑顔が脳裏に浮かぶ。

 ヨリコはあのとき、確かに喜んでいた。

 父親からの暴力を受けて。

 

 裏切られたと思えば、それはヨリコを有象無象と思っていなかったということだ。

 ヨリコはヨリコだと思うこと。

 そして、自分にとって不必要な存在ではない、と思ってしまうことだとナオジの心が言う。

 

 

「あいつが消えようがどこに行こうが、知ったことか」

 

 

 ナオジはヨリコのアパートから去った後、近場のホームセンターに入りながら、誰にも聞かれない声でこぼす。

 自分に言い聞かせるように。

 

 しかしそうするたびに、左頬が痛んだ。

 ナオジは不愉快だった。

 

 

「私はあいつのことなんかどうでもいい」

 

 

 魔物の嘲笑が聞こえた気がした。

 周りを見回す。

 ホームセンターの大工道具コーナーには、ナオジ以外に誰もない。

 

 ナオジは頭を振り、舌打ちをした。

 

 

「私にあいつは必要ない」

 

 

 だがナオジには分かってしまう。

 自分に言葉を重ねるごとに、その言葉を反転させたものが本心なのだと。

 

 それでも自分に言い聞かせなければ、自分の足下が崩れてしまう気がした。

 こんな不安定な気持ちを解消する方法は、やはりひとつしかないように思われた。

 

 ナオジはホームセンターで物色し、とりあえずロープと防災ヘルメット、軍手、懐中電灯、電池、十徳ナイフ、金槌、ライター、殺虫剤、懐炉、方位磁針、保存食、飲料水、ベルトポーチを購入する。

 

 それから帰宅し、押し入れにしまわれた古い新聞紙を数束ほど手に入れた。

 救急箱からは常備薬と包帯、絆創膏を。

 台所から包丁、タオルを拝借する。

 最後に鉛筆を何本か削って尖らせ、未使用のノートや灯油も用意。

 

 そうして入手した品々を、バックパックやベルトポーチに入れ、出来るだけ動きやすい配置に調整した。

 

 格好はデニムのジャケットとパンツ。

 色は黒。

 使い慣れた衣服は体に馴染む。

 

 

 

 そうこうしているうちに、日が暮れてきた。

 ナオジはその装備のまま、自転車にまたがる。

 

 

 

 暗闇の中、ナオジの自転車は前照灯を点しながら駆け抜ける。

 

 

 

 ペダルを漕ぎ、ナオジは思う。

 自分は何をしているのか。

 何のために、こんなことをしているのか。

 

 ヨリコの母親にあの魔物が見えている理由は分かった。

 悔いているからだ。

 

 では、自分は?

 答えたくない、とナオジは考えをねじ伏せる。

 今はただ、何も考えず行動に身を任せたかった。

 

 

 

 

 そうしているうちに、ナオジの自転車は辿り着く。

 昼間訪れた場所、ヨリコのアパートだ。

 

 呼吸を整えながら、ナオジはアパートの階段を昇る。

 錆びた金属製の階段を踏む音が、妙に大きく響いた。

 二階にあがると、足を止めることなく目的の部屋へ進んでいった。

 

 

 

 ヨリコの部屋。

 

 そのインターホンを、ナオジは昼間と同様に押そうとする。

 

 

「やあ」

 

 

 しかしインターホンのボタンを押す直前、扉の方が先に開かれた。

 

 ナオジは身を強張らせる。

 

 開かれた扉の向こうに、金の眼をした銀髪の少女がいた。

 魔物の人形。

 黒い生地で出来た、袖のない大きな上着に身を包んでいる。

 はっきりとした形のない、抽象的な文様が上着に縫われていた。

 少女はその上着に付けられた頭巾で小さな頭を覆いながら、ナオジを見上げる。

 

 そして、金色の瞳が微笑んだ。

 

 

「準備は万端だね。

 勇気も充分あるのかな?」

 

「私は勇者じゃない」

 

 

 煙草をポケットから取り出しながら、ナオジは魔物に言う。

 ライターで煙草に火を点け、煙を吸い込んだ。

 

 

「むしゃくしゃしてるんで、ぶん殴るのにちょうど良いのを探しに行くだけだ」

 

 

 ナオジは紫煙を吐き出し、魔物を眇める。

 

 

「じゃ、とっとと連れてけ」

 

「生きて帰れる保証はないけど大丈夫?」

 

「私の分も演じといてくれ」

 

「向こうで魔物に出会えたら、頼んでみるといいよ」

 

 

 そう言い、少女は上着の下から真っ白な細腕をナオジへかざす。

 雪のように白いその手が、大きく開かれた。

 

 硬質な何かが割れる音を、ナオジは聞く。

 

 それと同時に、彼女の視界全てに罅が入った。

 まるでナオジに見える世界が硝子に描いた絵であるかのように立体感を消失させた。

 そしてその罅割れた風景が、一瞬で粉々に破砕される。

 細片となった景色が激しい渦となってナオジを包む。

 ナオジは反射的に腕で顔を覆った。

 そのせいで彼女の視界がふさがれる。

 

 何の音もしなくなってから、ナオジは腕を下ろす。

 

 そして、ぞわりとした汚臭を感じ取った。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。