夕陽が沈み、月が顔を出す。
幻想郷は闇に包まれ、人間は妖怪を恐れて家に籠る。
対する幻想の存在達は、この時を待っていたと言わんばかりに闊歩していた。
逃げ遅れた人間はいないか、呑気に出歩いている間抜けは見つからないか、と。
妖しい空気がそこかしこで流れる中、私達は瀟洒なメイド──咲夜に連れられ、紅魔館の前まで赴いていた。
月光を浴びて泰然と佇む紅い館は、全ての存在を歓迎するかのようだ。
同時に、足を踏み入れて生きて帰れると思うな、といった恐ろしげな雰囲気も伝わってくる。
「いやー、荘厳ですねぇ」
パシャパシャと写真を撮っているのは、記者の顔を張りつけた文だ。
用があるのは私だけなので、彼女がここに来る必要はなかったのだが。
なにやら面白そうな匂いがする、なんて言葉と共についてきたのだ。
まあ、私は別にどちらでも良かったのだが、咲夜があまり良い顔を見せなかった。
ただ、あらかじめレミリアから仰せつかっていたのか、文の加入を拒否しなかったが。
「お待たせいたしました。ただ今より、滝涼様方をご案内いたします」
「はいはい。よろしくねー」
無言で頭を下げる門番──美鈴に見送られ、私達は悪鬼蔓延る悪魔の館へと足を踏み入れた。
妖精さんの視界越しに見ていたので、ある程度は察していたが。
やはり、内装も紅ばかりであった。
普通なら気味悪い配色と思うのだろうが、不思議とそんな気持ちは抱かない。
頭にレミリアの姿が浮かぶからか……いや、もっと根本的な物だろう。
エントランスに入ってから私目がけて送られている、喉元に真紅の槍を突きつけられているかの如き、深みがあって威厳に満ちた威圧。
隣にいる文がいつも通りな事から、この威圧の主は精密なコントロールで、私だけに悟らせているようだ。
恐らく、レミリアがプレッシャーを放っているのだろう。
この程度なんともないだろう──そういった、彼女の言葉が嘲笑と共に思い浮かぶ。
実際、常人なら失禁してショック死しそうな圧迫感だが、紫や幽香といった大妖怪を知っている私からすれば、鼻歌を歌いながら受け止められる。
やっぱり、嘘。
まだまだ余裕なのは間違いないが、流石に鼻歌をするほどのものではない。
「かりちゅまじゃなかったか……」
思わず呟きが漏れると、身体にのしかかる威圧感が増した。
どうやら、レミリアに勘づかれてしまったらしい。
うーうー言っているレミリアを、こっそりと見てみたかったんだけどなぁ。
小さな吸血鬼が頑張っている姿を、こう微笑ましく眺めるような感じで。
残念だ。
内心で気落ちしていると、無言で案内していた咲夜の足が止まる。
「到着いたしました」
「君の案内はここまで?」
「はい。中で、お嬢様がお待ちです」
そう告げると、もう話す事はないと示すように。
咲夜は目を伏せてドアを開き、慇懃にお辞儀を披露した。
隣で頻りにペンを動かす文を見て、私はため息を漏らす。
相変わらず、文は全く意に介した様子はない。
これから当主と会うというのに、この図太さは見習いたいものだ。
まあ、メインは私だから、文自身は気負っていないだけなのだろうが。
「さあ、早く行きましょう!」
「はいはい。あ、案内ありがとねー」
咲夜にお礼を言いながら、私達は部屋に入った。
内装は玉座の間のようになっており、豪華な椅子が視線の先にある。
煌びやかな真紅の玉座で、そこに一人の少女が座っていた。
蒼ががった銀髪は月光を纏い、辺りに神秘的な雰囲気を漂わせている。
椅子とは不釣り合いな、小さな体躯。
しかし、私はもちろん、文ですらその姿を侮る事はできない。
質量を伴った威圧感──今までのが児戯だと思わせるほど、感じるプレッシャーには重みがあった。
髪から零れ落ちた光を絡めとり、魔性の輝きを秘めさせる真紅の双眸。
妖しく揺れる魔眼を細めると、紅い悪魔は悠然と笑みを浮かべる。
「歓迎しよう。幻想郷の妖怪達よ」
肘掛けに頬杖をつき、傲慢に振る舞った吸血鬼──レミリア。
友好的な挨拶とは反対に、瞳からはありありとこちらを嘲る色が見えている。
いや、あえて見せつけているのだろう。
大妖怪特有の仮面を、レミリアは被らない。
何故なら、彼女は吸血鬼だからだ。
孤高で、誇り高く、高慢であり──そして、気高くもある。
建前でも、自分を下に置かない。
常に全ての存在を見下し、傍若無人に嗤う。
レミリアはそう考えていると、根拠もなく私はそんな確信があった。
横目で窺ってみれば、笑顔の文の額から一筋の冷や汗が垂れていた。
霊夢に退治されたから、侮っていたのだろう。
所詮、博麗の巫女に負けた弱小の妖怪だ、幻想郷に逃げ込んだ負け犬だ、と。
しかし、実際のレミリアを目にした文は、その考えを改めせざるを得なかったはずだ。
彼女も、自身に並ぶ大妖怪だ、と。
……まあ、私だって、長年を生きた妖怪である。
人並みにプライドもあるし、また侮られる事を良しとしない。
ここは一つ、吸血鬼と楽しいお話と洒落こみましょう。
「歓迎ありがとーございます。しがない河童ごときに用があると聞きましたが、何用で?」
あえて気安い口調を心がけ、おざなりに手を挙げて反応を窺う。
文がギョッとこちらに目を向け、信じられない者を見るような眼差しを送ってくる。
確かに文の前では、こんな挑発的な行動をした事はなかった。
いや、一度だけあったか。
あの時は挑発的というより、ただの無知であったが。
ともかく、私の行動を見たレミリアは、片眉を上げて足を組む。
同時に、瞳の中で苛烈の意思を宿し始め、険が乗った口調で告げる。
「これはこれは。どうやら、貴様は礼儀を知らない愚者のようだ」
「いやいや。私は呼ばれた側で、君が呼び出した側。つまり、本当は君が私に礼を尽くす場面だからね? むしろ、初っ端から殺気を叩きつけてきてびっくりしたよ」
「ほぅ……それが、貴様の言い分か?」
「言い分もなにも、マナーの話」
へらへらと笑って告げるたびに、レミリアの目つきが険しくなっていく。
対して、私は気にせず、大仰に両手を広げて言葉を繋ぐ。
先ほどの文のような、きめぇ丸の表情を意識して。
「あんまり言いたくないけどさ、私は君より歳上だと思うんだよね。先輩なの。そっちこそ、少しは立場を弁えたらどう?」
レミリアの妖気にあてられたからか、どこか身体がふわふわする。
自分の想定以上に鋭い言葉が飛び、また胸中で愉悦を沸かせていく。
私には、レミリアに殺されない確信があった。
この場で短絡的に手はくださないだろうし、仮に殺しに来られても凌ぐ自信がある。
それに、私に大切な用があるのだから、この場で戦闘にはならないだろう。
保証された命をベットに、私は今の状況を思う存分堪能していた。
まあ、若干罪悪感はあるが、それ以上に楽しい。
小物のような残念な思考なのは、ご愛敬だ。
こっそりと笑んでいると、レミリアは手で顔を覆って哄笑を上げる。
「……くくっ、この私に説いてきたか。たかが木っ端妖怪が、誇り高い吸血鬼である──この、レミリア・スカーレットにッ!」
瞬間、紅魔館が激震した。
地響きがとめどなく訪れ、室内の壁に巨大な亀裂が走っていく。
レミリアの背に紅い満月を幻視し、感嘆した私は殺意の眼差しを感じ取る。
黙り込んだ彼女の顔に視線を転じると、指の隙間から覗く鮮烈な真紅の眸が、こちらを鋭利に射抜いていた。
思わず、膝をつけて頭が垂れそうになる。
自然と目の前の吸血鬼を仰ぎ、産まれた事を後悔しながら自決したい衝動に駆られてしまう。
黙ってやり取りを聞いていた文も、微かに足が折れかけていた。
しかし、直ぐに気を強く持ち、感情を窺わせない笑顔に戻るのは、流石だと言うべきだろう。
私達を戦慄させた部屋の主──レミリアは、濃密で禍々しい殺気を放出していた。
想像以上だ。
これほどの殺気を放つ妖怪が、たかだか五百年しか生きていない?
冗談ではない。
妖怪は、年月を経て強くなっていくのだ。
それは、私はもちろん文だって、紫ですら例外ではない。
しかし、目の前にいる吸血鬼は、年齢に見合わない風格を纏っていた。
「これが、吸血鬼……」
口の中で言葉を転がし、思わず苦笑いを漏らす。
甘くみていなかったと言えば、嘘になる。
前世の知識もあり、どこかレミリア自身を侮っていた。
つい最近、別の吸血鬼にやられたばかりなのに。
我ながら情けなくなり、同時に胸の内から別の感情が顔を覗かせ始める。
甘く抗いがたい、戦闘欲求が。
「──ッ!」
口内を噛み締め、己の欲望を抑える。
もう、懲りたではないか。
死闘は楽しかったが、あんな痛い目には遭いたくない、と。
ほどほどの平穏と、たまの刺激で良いと自分に誓ったではないか。
やるならば、弾幕ごっこだ。
紫の思惑とも合致するし、ちょうどいい塩梅で戦える。
だから、我慢をしなければ。
そう感情を鎮めていると、レミリアは顔を上げて口を開く。
いつの間にか、痛いほどの殺気は消え失せていた。
「お前、名は?」
「メイドから聞いてないの?」
「二度は言わせるな。私の気は長くないぞ」
「……はぁ、降参降参」
「なに?」
これ以上の問答は、無駄であろう。
レミリアの凄さは身にしみてわかったし、あまりやりすぎるのも問題だ。
対抗して噴出していた妖力を引っ込め、苦笑いを零した私は恭しく礼を示す。
「流石、誇り高い吸血鬼なだけはあります。
「ふんっ。見え透いた世辞はいらん」
「これは失礼いたしました。私の名は滝涼みずは。妖怪の山に住んでいる、しがない河童であります」
「滝涼、みずは……」
噛み締めるように復唱したレミリアは、次に文の方へと目を向ける。
込められた意に気づいたようで、天狗の少女は朗らかな笑顔で言う。
「申し遅れました。私は射命丸文。記者をしております」
「記者か。ふむ……咲夜」
その言葉に、考え込む素振りを見せていたレミリア。
暫くしてなにか思いついたのか、両手をパンパンと鳴らして咲夜を呼ぶ。
すると、唐突に咲夜が現れ、手に持つ新聞紙をレミリアに渡す。
「こちらです、お嬢様」
「下がっていいぞ」
「御意」
幻のように消え失せた咲夜を尻目に、レミリアは新聞紙を広げて目を走らせていく。
こちら側から見える文面によると、どうやら文が執筆している文々。新聞のようだ。
自信があるのだろう。
文は胸を張っており、レミリアの言葉を尊大に待っている。
やがて、新聞紙を閉じたレミリア。
自慢げな文の表情を見つめたかと思えば、ニヤリと悪鬼の形相を浮かべる。
「鍋敷きには使えそうで、中々良かったぞ」
「な、鍋敷きっ!?」
「喜べ。私が定期的に購読してやろう。泣いて小躍りしたくなったか、ん?」
「い、いや……えっと、ありがとうございます」
額に青筋が浮かびそうになっていたが、文は見事な笑顔で頭を下げた。
どのような用途に使われようと、鋼の意思で我慢する記者の鑑。
目頭が熱くなってしまう。
密かに文に同情している私に、新聞紙を脇に置いたレミリアが声を掛ける。
「さて、茶番は終わりだ。本題に入るが構わないな?」
「ええ、もちろんです」
「お前も知っているかと思うが、呼び出した内容は私の妹……フランについてだ」
やはり、フランドールか。
私に用があるとしたら、彼女を置いて他にないだろう。
私達の間に漂う雰囲気が固くなったのを感じたのか、蚊帳の外の文は静かに静観するようだ。
微かに目を伏せた後、レミリアは威厳に満ちた顔つきで口を開く。
「私が異変を起こした時、お前はフランの部屋にいたな?」
「……なんの事でしょうか?」
「惚けても無駄だ。フランの部屋にお前の残骸が落ちていたからな。それに、お前の右目からはフランの力を感じる」
目を細めたレミリアの視線の先は、私がつけている眼帯にあった。
フランドールの能力を受けた残滓が、私の右目に残っていたのだろう。
察知能力の高さは流石だ……いや、フランドールの姉だから気がついたのか。
家族の力を、感じられないはずがない。
頭を掻いた私は、右目を撫でて頷く。
「ご明察です。それで、無断侵入した私を罰するために呼んだのですか?」
「……否、それは違う」
返答までに、間があった。
口篭ったように言葉を転がし、逡巡した様子で目を泳がせているレミリアからは、先ほどまで醸し出ていた重い貫禄が感じられない。
「では、何故?」
言葉を選んで端的に尋ねると、頬杖を解いて目を瞑ったレミリア。
両手で肘掛けを握り、ビキリと亀裂ができる。
なにかと戦っているのか、引き締められた表情は深い苦渋の色を帯びていた。
数瞬今までで一番の妖気が放たれ、直ぐにレミリアの身体に戻る。
次に瞳を開いた時には、真っ直ぐに私を見つめていた。
「私には、運命を操る能力がある」
紅い悪魔としての威容が、紅魔館の当主としてのプライドが、剥がれ落ちていく。
ゆっくりと玉座を下りた一人の吸血鬼は、気品溢れる所作でこちらに近寄る。
「お前の残骸に触れた時、私はある運命が見えた」
徐々に、レミリアの見せつける貌が変わる。
大きい姿だと錯覚していた体躯が小さくなっていき、私の前にたどり着いた時には、幼い少女にしか見えなくなっていた。
「お前と私とフランの三人で、笑い合う未来だ」
「……それで?」
問うと、レミリアは唇を噛み締めた。
一筋の血が垂れ、先ほどまでの優雅さが微塵もない。
大きく深呼吸をした後、レミリア──妹を思う一人の姉は、私に向かって頭を下げる。
「頼む。フラン……あの子を救ってほしい」
思わず目を見開き、動揺を露わにしてしまう。
まさか、レミリアが私に頭を下げるとは。
さっきまで感じていたのは、吸血鬼らしく冷酷で傲慢な姿。
しかし、今はどうだ。
肩を震わせて私の返事を待つ様子は、なにかに怯える幼子のようではないか。
いや──違う。
レミリアの本当の姿は、これなのだろう。
誇り高い吸血鬼だから、紅魔館の主だから、なによりフランドールの姉だから。
精一杯虚勢を張って、自分が舐められないようにする。
部下の品位を落とさないために、幻想郷で自分達の居場所をなくさないために。
ああ、私はなにを見ていたのだ。
目の節穴さに、反吐が出る。
先ほど、レミリアは五百年しか生きていない、と思ったばかりではないか。
彼女の本質を見抜けず、こうして大切な誇りを汚してしまった。
額に手を置き、天を仰ぐ。
初めは、好奇心だった。
原作キャラだとはいえ、所詮は対岸の火事。
フランドールがどうなろうと、言い方は悪いがどうでもよかった。
だから、私がフランドールにちょっかいをかけた時、自分本位の野次馬的思考だったのは否めない。
しかし、しかしだ。
高潔なイメージのある吸血鬼が、我が儘で横暴で──そして、孤高であるレミリアが。
たった一人の妹のために頭を下げて、私に助けを乞うているのだ。
ここまでさせたのに彼女の願いを無碍にするほど、私は落ちぶれていないつもりだった。
「頭を上げて」
もう、レミリアには挑発的な口調も、礼を示した他人行儀も必要ない。
その言葉にこちらを見上げた彼女へと、私は本心からの笑みを向ける。
「一緒に、貴女の妹を助けよう」
そう告げて手を伸ばした私を見て、レミリアは微かに目を丸くした後。
「──ありがとう」
柔らかく、破顔した。
私の手を大切そうに握り、瞳に涙を湛えながらも微笑んでいる。
その嬉しそうな笑顔は、少女らしい可憐な物であった。
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咲夜にみずは達を案内させ、室内に一人取り残されたレミリア。
玉座に戻って座り、肘掛けに手を置く。
「……滝涼みずは」
レミリアの脳裏に過ぎる、飄々とした片目の少女。
こちらを試すような真似をしたかと思えば、今度は本心から敬意を示してきた。
また、レミリアに合わせて迸らせていた妖力。
吸血鬼である自身をして、油断できないほどの物であった。
あらかじめ入手していた情報では、河童にあそこまでの力はない。
むしろ、彼等は手先の器用さが警戒する要素のはずである。
明らかに、みずはは河童の中でも異質であった。
「それに、あの天狗」
みずはに気が向かいがちだったが、文も底知れない雰囲気だった。
上手くみずはの妖力に紛れ込ませていたようだが、レミリアはしっかりと見抜いている。
文も、みずはに並ぶほどの強さを持っていると。
幻想郷に来てから、レミリアは驚きの連続だ。
胡散臭い幻想郷の賢者に、自身を退治した博麗の巫女。
また、パチュリーから聞いた話によれば、自称普通の魔法使いが彼女を倒したと言うではないか。
短期間で面白い者達に会え、そして今日の二人の妖怪。
特に、レミリアが気になるのは、博麗の巫女と例の河童だ。
博麗の巫女は、人間の可能性を魅せてくれたから。
対して、河童は……
「面白いわ」
レミリアは笑みを零し、窓から覗く月を見上げる。
この部屋は夜しか使わないので、こうして窓が取り付けられていた。
窓から月がよく見え、ここはレミリアのお気に入りである。
残念ながら、今日は満月ではなかったが。
しかし、レミリアの目には、不思議といつもより月が綺麗に映った。
「フラン……」
近いうちに、妹と一緒に月を仰げるだろうか。
昔、フランドールが地下室に行く前に、一度だけ二人で見上げた満月。
思わず手を伸ばし、視界に納まる月を握り込む。
もちろん、手のひらに月はない。
届かないとわかっているのに、みっともなく幻想を掴もうとするなど──
「無様ね」
自嘲を漏らして、右手を翳す。
月光に照らされて影が差し、同時に手の輪郭が白く光る。
子供のような、小さな手だ。
しかし、吸血鬼としての力を加えれば、途方もない握力を生み出すだろう。
妖怪の中でも、恵まれた種族。
だが、他人が羨む能力があっても、フランドールは救えなかった。
地下室に行くように告げる事しかできず、今でも彼女の寂しげな笑顔が思い浮かぶ。
「いつか、フランと一緒に……」
頭を振って思考を切り替え、レミリアは玉座から降り立つ。
未来ばかり考えていても、仕方がない。
今考えるべき内容は、みずはと共にフランドールの狂気を取り除く事。
最後にもう一度月を眺めた後、レミリアは部屋を後にする。
主がいなくなった部屋を、月はいつまでも優しく照らすのだった。