◎月◎日 真実は、いつも曇り!
いつか織斑に襲われるんじゃないかと、戦々恐々している世界で2番目の男性IS適性者、藤堂です。
ハジメテが男だなんて死んでも御免だ。そんなことになるくらいなら、いっそ舌を噛んで自害する。
ロシアに連絡して、音声認識を外せと抗議した。
俺の戦闘センスの無さは誰もが知っている。一朝一夕で移動中の『雷来黒雲』使用ができないことなど、百も承知だ。
だが、だからと言ってあんな中学2年生丸出しな台詞で代用なんかしたくない。ただの羞恥プレイだあんなもん。
要求は却下された。あの魔性菩薩、いつか報復してやる。
もういい、使わなければいいんだあんなん。
それよりも、サムライガールズ5人の問題が切実だった。
なんだよラブ師匠って。恋愛経験の無い俺に師事してどうするんだよ。
そもそもお前達、自分が何で駄目なのか全然分かってない!
まずサムライガール! 口より先に手が出るのを何とかしろ!
いや、手ならまだいい。真剣や木刀を持ち出すな!
見ろ、織斑のあの顔を! まるで潰れたアンパンみたいになってるぞ、元がイケメンだっただけに悲惨すぎるだろ!?
次、お蝶夫人! サーブの際の手首にスナップが足りてない、もっとこう鞭のように!
ボールの回転が弱いからツイストサーブが完成しないのだ、某テニス漫画だと最初期の技だぞ!
そんなことで竜巻サーブや竜巻スマッシュができると思ってるのか、グラウンド10周走って来い!
ミニ子! 貴様は酢豚以外のものを作れ、延々同じものだと相手だって飽きる!
あと暴力を振るうな暴力を! お前の場合は、言葉の暴力まで殺傷性が高いのだ!
穏やかに、楚々と咲く花の如く振舞え! 体の小ささを利用して相手の保護欲を誘え!
あざとかろうが何だろうが知ったことか、萌えだよ萌え!
んで、オスカル! お前は一見問題無いように見えるがその実大問題だ!!
普段大人しい奴ほど怒ると怖い、そんなマイナスのギャップを完全にイメージとして持たれてるじゃないか!
猫被るんならずっと被ってろ! 頭に縫い付けとけ!
そしてお前はなんと言っても間が悪いんだよ! 空気読み過ぎて逆に深読みし過ぎなんだよ!
最後に柳生! じゃ無かった薔薇水晶! いや、やっぱりもう柳生ちゃんでいいわ!
歯の治療費はもういいから、取り敢えず俺にひと言謝れぇぇぇぇぇっ!!
などなどなどなど。
喋るの苦手だから、そんな感じでメルマガ風に5人全員に送り付けた。
そしてメルマガ風にしたのが悪かった。全員定期購読を申し出てきたのだ。
かくして、HN『毛利家の三男』たる俺の発行する『隆景恋愛指南虎の巻』が、世に羽ばたくことに。
これが後々会員数2万を超え、俺にひと財産築かせるなど、本人である俺さえも今は知り得ないことであった。
どいつもこいつもアホばっかりだ。
◎月※日 ド派手なcloudyになりそうだぜ
ガールズ共には期待できそうに無いので、自分からも手を打つことにしよう。
とにかく奴の興味を女にだけ向ければいいのだろう? やって見せようじゃないの。
同性であることを利用し、異性の好みなどについての話に持って行く。
俺の手振りを理解できないあ奴との会話は骨が折れたが、身の安全の為だ。
だが……だ・が!
よりによって「特に考えたことも無い」だと!? おま、それ人としてどうなんだ! 十代男子としてどうなんだ!
アレか、「俺女に興味ないから」とか、中学生男子みたいなことを未だにほざいているのか!? あんなの思春期の照れ隠しに決まってるだろうが!!
それともやはり男がいいのか貴様! もう嫌だ部屋を変えてくれ!!
挫折して簪の所に逃げ込む。
弱音など吐きたくも無いが、今回ばかりは話が別だ。
誰か助けて。
◎月△日 ピカチュウ、曇りだ! できない? 雷落とせるなら曇りくらいどうにかしろ!
生徒会室で仕事をしていると、見たことの無い生物が現れた。
人間に似ているが、服の袖がやたらだぶだぶしている。
もしや妖怪『袖余り』かと思ったら、布仏先輩の妹だった。
てか、クラスメイトらしい。初めて見るけど。
織斑との同室に耐え兼ね、会長さんに相談した。
事情を話すと、あの人は「それなら私と一緒の部屋になる?」と提案してくれたが。
そこまで迷惑はかけられない。でも気持ちはとても有難かった。
昼のメロンパンを頬張りつつ、この問題についてどうしたものかと考える。
いざとなったらノーヴァのスタンガンで撃退できると言えど、精神衛生上とてもよろしくない。
四楓院に護身術を習うことにした。
蹴りだけやたら筋がいいと褒められた。
何故か、練習中に物陰から会長さんが恨めしそうに見てるけど。