IS 彼の日記帳   作:カーテンコール

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 $月◆日 あなたが落としたのは金の曇り? それとも銀の曇り?

 

 

 経過は中々だ。

 新星(ノーヴァ)の奴はかなりの御転婆さんだが、技術基礎をほぼ完全にマスターしている俺の技量なら、慣れ次第で理論上は言うことを聞かせられる筈だと担当官が言っていた。

 てか、あの甘ボイス技術者だったのね。考えてみれば、直に会うのも初めてだ。

 

 ちなみにノーヴァの待機形態だが、なんと色眼鏡だった。

 俺の目のことを考慮に入れてくれたエンジニアの方々が、男が派手なアクセサリーもないだろうと設定してくれていた。

 レンズの色は前のライトブルーからダークブルーに変わったが、寧ろ前より良く見える。

 どうやら待機状態でも機能の一部が使えるようで、UVカットだけでなく透過光量の自動調整、視力補正など大変ハイテクな色眼鏡に変貌した。

 これでもう、レプリカの方が高いなどと言わせない。コイツは言うなれば、世界一高価な色眼鏡だ。

 超便利。もう手放せない。

 

 あとどうでもいいが、兄貴がアミエーラお嬢さんから口癖の「どん引きです」を、今日だけで13回食らってた。

 ほんっとどうでもいいわ。

 

 

 

 

 

 $月◎日 曇ることから逃げるな! これは、命令だ!!

 

 

 機動訓練中に、偶然とんでもないことをしてしまった。

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)を応用し、動きの緩急を高めようと試行錯誤していたら、なんと残像を残していた。

 

 リアル残像拳。何度か繰り返し試してみたところ、他のISでも可能な動きらしく、そして明らかに新しい機動技術として教本に載せられるレベルのモノだと。

 名称は『残影瞬時加速(クロス・イグニッション・ブースト)』。難度は推定A-。

 更にこれは、当然だが本来センサーを誤魔化すことまではできないのだが、ノーヴァの場合限定で『あること』をすれば、コンマ4秒ハイパーセンサーを錯覚させられるらしい。

 

 その数字を聞いて愕然とした。高機動型のISなら、それだけあれば2発は殴れる。

 通常の瞬時加速よりやや反動と負荷が大きい為に連発こそ難しいが、俺の睨みだと3連はイケる。

 

 こいつはいい。学園に戻ったら会長さんに教えてあげよう。

 後織斑にも。ちと難しいが、瞬時加速が得意なあいつならもしかしたら覚えられるかも。

 前にドラゴンボール好きだって言ってたし、きっと必死に練習するぞ。

 それと、新しい技術を確立したら、それだけでも結構なおひねりが入ってくるとのこと。

 ……内緒で兄貴のぶっ壊した車の修理代差っ引いてくれと、頼んでおいた。

 

 アミエーラお嬢さん、いくら兄貴がうざいからって俺の後ろに隠れるのをやめて下さい。

 だって俺もうざいんだもの。

 

 

 

 

 

 $月☆日 雲は出ているか!!

 

 

 半ば訓練と化したテストを終わらせたら、帰る前に顔を出す予定だったんだが。

 親父とお袋が、わざわざ向こうから会いに来た。

 

 慣れないロシアで少し痩せ……てはないな。

 寧ろ、親父に限っては太ったんじゃないのか。

 ロシアの漬物は旨い? 前菜とスープの種類が多くて毎日飽きない?

 ……あっそ。いや、満足してるならいいんだよ別に。

 

 軽く話した後、帰って行ってしまった。

 半年近く会っていない次男に対して、これはないんじゃないだろうか。

 

 兄貴、アミエーラお嬢さんは脈無いからやめとけ。

 下乳なんて単純な色気に引っかかりやがって、別に見下げ果てはしないが。

 だって元々見下げ果ててるし。

 

 学園(むこう)はどうかなーと思い、会長さんに連絡する。

 簪が、俺が居なくなって禁断症状を起こしている以外は順調とのこと。

 織斑と会話する際の距離も、5メートルから4メートル80まで縮まったらしい。

 ……誤差だろ、それ。

 

 

 

 

 

 $月¥日 ソロモンよ、私は曇ってきた!

 

 

 約束の期日が過ぎ、今日から武装のテストに入る。

 実はこいつのデータ取りが、今回1番の目当てだったりするんだが。

 

 機動の方は、一応満足できるレベルには達した。

 残影瞬時加速(クロス・イグニッション・ブースト)含め学園のアリーナで更なる研鑽を積むのは当然だが、少なくとも受領終了前としては水準に達している。

 専用機なのに稼働率5割以下とか、許せんし。

 

 ……しかしながら、改めてアレな武装だな。

 誰が考案したんだこんなもん。特殊兵装の中でも更に頭ひとつ抜けて異質だぞ。

 ちなみに考案と設計をしたのは、例の甘ボイス担当官だった。

 声がとろっとろの癖に、存外凶悪だなオイ。

 

 軽く稼動してみた。

 思ったよりは使いやすい。展開する必要がない(・・・・・・・・・)ってのも大きいし、何よりまっとうな武器ですらない(・・・・・・・・・・・・)から俺には寧ろ合っているのかも知れない。

 

 射程の分類としては、近接と中距離ってとこか。

 『飛ばす』のは少し難しいが、この分なら射撃の命中率上げるよりは遥かに楽だ。

 それに、これひとつで攻防一体ってところもいい。

 なんと言うか、機動と回避で誤魔化しているから武器に比べて余り目立ってないが、俺は防御も下手なんだよ。

 織斑と夏休みに戦った時、シールドで変な逸らし方して内蔵してた盾殺し(シールド・ピアース)破損させちゃったし。

 まあ、アレは運の悪さもあったんだが。

 

 アミエーラ氏との朝晩の会食にも慣れてきた。

 俺が偏食するのをどこで聞いたのか、メニューも上手く選んでくれてるし。

 

 つーかアミエーラお嬢さん、なんで服が全部下乳なんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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