IS 彼の日記帳   作:カーテンコール

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 隆景のマークする要注意生徒、一部名前変更。
 こっちの方がしっくりきた。


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 ♪月◎日 雲量0、だが曇りだ!

 

 

 生身でのエアリアル・ワルツは無理があった。

 下半身を苛む筋肉痛に、悲鳴を上げそうだ。

 

 されど、今の俺に悠長な休み時間など存在しない。

 学園祭が終わり授業も通常運行に戻った今、次のイベントが控えているのだ。

 

 そう、その名はキャノンボール・ファスト。

 秋開催のISによる高速バトルレース。

 本来は国際大会として扱われるが、ここにはIS学園があることから市の特別イベントとして学園の生徒達が参加する催し物なのだ。

 

 あえて言おう。俺の見せ場であると。

 ロシア代表候補生にして、国家機動部門代表候補筆頭の俺の為にあるような催しではないか。

 なので早速一般生徒の中でも要注意とすべきライバル達の情報を洗い出す。

 操縦ログから1組の鷹月、2組のハミルトンが最近頭角を現し始めている。この大会で一気に台頭してくるかも知れない。

 後は5組の四楓院と、7組のテスタロッサ、8組のヴィルヘルミナ……一般生徒の中で頭ひとつ抜けているのはこの辺りか。

 

 ……なんかこの3人、どこかで見たような連中ばっかりだが……気のせいだろう。

 気のせいったら気のせいだ。統一性も無いし。

 

 情報収集と平行して、当然訓練もしなければ。

 高機動戦闘訓練用の第6アリーナは、しっかりと使用許可を受けている。寧ろ常連と言っても差し支えない。下手すればヌシだ、管理担当官とも普通に顔見知りだし。

 後は使うパッケージ。当然使用機体はラファールだからな、それを踏まえた選択が肝要だ。

 

 やはり機動特化型仕様の『サウンド・レイト』か、燃費こそ悪いが加速と最高速は第2世代最速と謡われる高出力後付ブースター『アフターバーナー』のどちらかだろう。

 妨害ありのルールを考えれば機動戦想定の『ソニックハーピィ』も有用ではあるが、戦闘行為そのものが得意じゃない俺には向かない。外見は好みなんだがな。

 

 それにしても楽しみでしょうがない。俺の持ち味が最大限に活かせるし、ここで結果を出せば山田先生や会長さんの名にも箔が付く。

 本国も、俺に期待している様子だった。既に雑誌で優勝インタビューを企画していると例の甘ボイスな担当官が言っていたが、流石にそれは気が早いと思う。

 

 何せ勝負とは水モノ、何が起きるか分からない。

 最近は多少マシになったが、織斑のように「やれば何とかなる」と思えるほど楽観的にはなれないのだ。

 人事を尽くして天命を捕らえる。やってやり過ぎということは無い。

 そしてそれでも、勝てるかどうかは分からない。

 

 だが、今の俺には立場というものがある。立場には実績が伴わなければならないのだ。

 最低でも、上位入賞。狙うはもちろん優勝。

 さて、『アフターバーナー』の貸し出し申請をしなければ。

 

 

 

 

 

 ♪月凹日 晴れやかな曇り

 

 

 中々な暴れ馬だぜ、『アフターバーナー』は。

 スピードは間違いなく第3世代級だが、エネルギー効率が恐ろしく悪い。

 制御も高機動パッケージの中では群を抜いて困難、少しでもスロットルワークを間違えればあっと言う間にエネルギーが尽きる。

 大会が近いこともあってか、いつもより人の多い第6アリーナにちらほら見える生徒の中でも、コレ使ってるの俺だけだし。

 

 ついでに言えばこのアフターバーナー、取り付けに武装の大半を外さなければならない。

 武器、特に銃の扱いが下手な俺にはそもそも高機動時の射撃なんぞ、あっても無くても同じようなもんだが。

 要するに今大会、純粋な機動技術のみで向かう必要があるのだ。

 

 あと、ロシアから連絡。

 新星(ノーヴァ)は完成を急いでいるそうだが、キモであるスラスターとブースターの調整がやや難航しているらしく、装甲をコアに馴染ませる作業もありキャノンボール・ファストにはやはり間に合わないとのこと。

 専用機持ち達とスピード勝負してみたかったが、間に合わないのでは仕方ない。

 なので、機体受領時に大会の優勝トロフィーを手土産として持参する心積もりで臨むことにしよう。

 

 そう言えば簪は大会をどうするのか聞いてみたけど、まだ機体のフェーズが最終調整段階で、いきなり高機動での運用は不安があるから止めておくとのこと。

 武装も、せめて荷電粒子砲は完成させておきたいと言っていたし。

 

 

 

 

 

 ♪月凸日 空が青い? いやいや、あれは青い雲だよ

 

 

 パッケージ装備状態でのスロットルワークも、山田先生と会長さんのアドバイスによりだいぶモノにできてきた。

 

 ただ元々エネルギーを食うエアリアル・ワルツの使用は、できることなら控えた方がいい。

 簪監督の下で行ったエネルギー分配効率セッティングと俺の節約技術を以ってしても、ちょいと厳しいものがある。

 

 あと、最近気付いた。

 この後付ブースターがあれば、個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)ができるのではないかと。

 無論難易度はAの螺旋起動瞬時加速(スパイラル・イグニッション・ブースト)より上の特A、つまりエアリアルと同等の技術ゆえにそう簡単には行かないが。

 コレが使えれば、奥の手として心強い。早速練習しよう。

 

 先ずはアメリカ代表であるイーリス・コーリングのIS操縦映像記録を、片っ端から見ることにした。

 ……むむ。2回に1回は失敗しているが、それでも不発に終わらせず途中で二段階加速(ダブルイグニション)に移行している。

 素晴らしい技術だ。専用機のファング・クエイクの仕上がりも見事だし、何より基礎的な技術が会長さん並に高い。

 こいつは勉強になる。もうこうなったら、各国の歴代国家代表や機動部門代表の映像も集めるだけ集めよう。

 

 途中から簪と、あと遊びに来た会長さんも交えて3人で批評会になっていた。

 あれ、俺何が目的で映像記録見てたんだったっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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