ユニコーンの記憶に飲み込まれ、気絶したエルは夢を見ていた。
宇宙にて四枚の羽根を持つロボットと操縦者である女性との闘い。
赤い巨大ロボが都市を破壊し、涙を流しながら親から受け継がれた信念を通そうとした女性の最後。
黒いユニコーンとの闘い。そして、巨大な深紅のロボの姿を見て
「すごい!! 僕の見たことのないロボットが一杯です!!」
「それがあなたの望みなのか?」
興奮して叫ぶエルに誰かが声をかけた。
「あなたは...」
エルは声をかけてきた少年を見て驚いた。目の前には初めてユニコーンを動かした時にユニコーンが見せてくれた少年がいた。
「あなたの望みは戦う事なのか?」
「いいえ、僕の望みは...」
エルが自らの望みを。前世では潰えた夢を告げた。
少年はどこか納得した顔をしエルに向け指をさすと、光が生まれた。
「人は誰もが自分の中に神を持っている。可能性という神が...もし、あなたがこの世界で自らの可能性を信じ続けるなら...」
やがて光が強くなり、目が覚めたエルはベッドの上に寝かされていた。
「ここは...っ」
エルは気絶する前の戦いを思いだし、傍にあった杖を掴み部屋の窓から身を乗り出すと風魔法で体を浮かせ移動する。
「僕の...僕のユニコーンは...」
「くそ!! どうやって調べればいいんだよ!?」
ベへモスとの闘いが終り数時間後。
幻晶騎士の技術者であるドワーフの一人がユニコーンを見て怒鳴った。
この世界に元から存在しない機体を見て、ドワーフだけでなく戦闘に参加した騎士たちも驚きを隠せないでいた。しかも、幻晶騎士ですら太刀打ちできなかったベへモスを一方的に蹂躙した力を聞き、王や貴族たちもユニコーンに関する情報が欲しいと声が上がっていた。
コックピットは開いておりシートにはベへモスと戦っていた騎士の一人。エドガーが乗り適当にボタンやペダルを踏むが何も起こらない。
「どうやって動かせばいいんだ...」
ベへモスが倒れた後、動かなくなったユニコーンにエドガー達が近づくと突然コックピットが開いて、中には意識のないエルの姿がありさらなる衝撃をうけた。
どうして彼がこんな機体に?
この機体はどこから手に入れたのか?
様々な疑問があるが、当の本人は意識が戻らず聞ける人間などいない。
ため息をつきながらエドガーはコックピットから出た。
「それにしてもあの子、どこからこんな物を...」
「...」
エドガーの仲間であるヘルヴィーがユニコーンを見つめディーは何も言わずユニコーンをにらむ。
「いた!! 僕のユニコーン!!」
突然風が吹き。気づけばユニコーンのそばに銀色の髪をした人物が着地しコックピットを除いた。
「え、エルネスティ!?」
「あぁ、エドガー先輩、こんにちは!! 先輩もユニコーンに乗られたのですか!? 乗られた感想はどうでしたか!?」
「あ、いや...」
「僕も一度しか操縦してなくて、まだまだ足りないくらいです!! 魔法ではなくビーム兵器を使った機体をこの手で触れる事なんて感激です!! では、さっそく僕も操縦を...」
エドガーの静止を無視しコックピットに乗り込むエル。すると、さっきまで反応がなかった機器類が動きだしエルはパネルを操作する。
「推進剤や弾薬には十分余裕がありますね...一度慣らし運転を...」
「エル!!」
「エル君!!」
外から二人分の声が聞こえ、近づいてきた。エルの幼馴染であるキッドとアディがコックピットまで近づき、シートに座るエルを見て。
「何やってんだよ!?」
「突然いなくなって、心配したんだからね!!」
二人の真剣な顔を見てエルは「すみません」と謝り、コックピットから降り電源が切れる。
双子の説教を受けしばらくしてから、エルはユニコーンについて話した。
さすがに森に落ちていたと正直に言って誰もが最初は信じなかったが、未知なる機体は確かに目の前にあり信じるしかなかった。
それから周りにいたドワーフや騎士たちから質問攻めを受けるが、突如一人の老人がエルに声をかける。
老人の名はラウリと言いエルの祖父であり学園の長でもあった。
ラウリから話を聞き、エルは名残押しそうにユニコーンを見た後。用意された馬車に乗り城に向かうのであったーー
今回は戦闘も何もなく短めです。