騎士と一角獣   作:un

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一話 一角獣

  宇宙世紀0096年。

 

 赤い彗星の再来が率いる「袖付き」・自らの利権を求める連邦軍達とのラプラスの箱を巡る戦いが終わり、白い角をつけたMSは少年達の手で誰も知らない廃棄されたコロニーの中に隠されていた。

 

 ユニコーンガンダム

 

 貴婦人と一角獣と呼ばれる絵画をモチーフにして作られたこのMSは高度な技術を持つこの宇宙世紀時代でも解明できないサイコフレームと呼ばれる材質で作られ人知を超えた力を持っていた。

 

 その力は、ガンダムの伝説を作りあげた男とたった一機のMSが巨大な隕石を押し返し

 ある時は、人と人の心をつなげ戦いを止めるなど奇跡を起こしてきた。

 

 やがて戦争も終わり月日が流れた。だが、ある日突然ユニコーンが輝き始める。

 操縦者がいないのにも関わらず、ユニコーンの輝きが増していきユニコーンは姿を消してしまう。

 

 そして、後に一角の獣と狂人の趣味人の物語が始まるのであったーー

 

 

 宇宙世紀の世界ではない異世界。高度な科学などないが、その代わり魔法がありさらにザクやジムなどライフルやビームサーベルがなく、どこかの国の紋章を入れた盾を持ち騎士を思わせる機械兵器「幻晶騎士」(シルエットナイト)があった。

 

 この日、フレメヴィーラ王国の学園に通う騎士見習いの生徒達が魔獣の群れに襲われほとんどの生徒達が逃げ惑う中。一つ、小さな影が愛用の杖から魔法を発し次々と魔獣達を撃破していく。

 

 エルネスティ・エチェバルリア

 

 少女のような容姿を持つ彼は、近くにいる幼馴染達と共に魔獣を蹴散らし一段落するとエルは金髪の生徒会長に抱き着かれながら、魔獣の襲撃に思考を走らせるが

 

「っ!?」

 

 突如、エルの頭の中に何かが。一瞬、白い角を持つ何かのイメージが浮かんだ。

 

「ろ、ロボット?」

 

 まぎれもない、自身が前世から愛したロボットだと気づく。エルの様子が変わったことに双子の幼馴染であるキッドとアディが顔を覗き込んだ。

 

「どうしたエル?」

 

「も、もしかして怪我しちゃったの!?」

 

「い、いえ。大丈夫ですが…っ!?」

 

 地響きが起き、その場にいた者達が顔を上げると巨大な何かが動いていた。先ほどまでエル達が撃退していた魔獣達よりはるかに大きい魔獣「陸皇亀」(べへモス)がおり、動くたびに大地を揺らした。

 

「べへモスだと!?」

 

 白い幻晶騎士(シルエットナイト)に乗るエドガーが叫び、他の幻晶騎士(シルエットナイト)たちがベへモスの巨大さと威圧で後ろに下がる。

 

 幻晶騎士に乗る騎士たちが、学生達の避難のためにベヘモスに攻撃を仕掛けた。

 火球や剣でベへモスの足や顔に攻撃するが大したダメージを与えきれない。

 

 そんな様子を遠くから見ていたエルに再び、まるでエルに呼びかけるように「何か」感じエルは馬車から離れ風のように駆けた。

 

「エル!?」

 

「エル君!?」

 

 幼馴染達の静止の声を振り切り、ベへモスの戦闘から離れていく。

 

「誰なんですか? 僕を呼んでいるのは?」

 

 エルはつぶやき、先ほど頭に浮かんだロボットの事を思いながらどんどん加速していく。

 

 もっと、もっと早く!!

 

 風の弾丸と化したエルが木々を抜けると、彼の前に白い何かがあった。

 

「こ、これはっ!!」

 

 まるで、誕生日に欲しかった物をプレゼントされた子供のようなきれいな目と笑顔を浮かべるエル。それは幻晶騎士とは全く違う形をしており、全身がほとんど純白のロボットのだった。

 

 どうしてこんなところにロボットが? 一体、誰が作ったのか? 

 

 気になることが一杯あるがエルはさっそくコックピットを見つけ中に入る。前世からの望みであったロボットに乗ることが叶い歓喜する中、偶然手のひらが何かの機械に触れ画面が動く。

 

「これは...生体認証…なるほど。先ほど触れてしまったのが原因ですか。他は…っ!?」

 

 また頭にビジョンが浮かぶ。エルが今乗っている機体に少年と血を流している男がいた。

 

 男は少年の覚悟を。空から落ちてきた少女を守る覚悟を伝えると男は少年の手を掴み機体の生体認証を登録し自ら火の手が広がる外に出た。

 

「父さん!!」

 

 少年が男に向け叫ぶも男は火に飲まれる。閉じたコックピットの中で少年は男の血で染まった顔を拭く事なく、自分の物になった機体。ユニコーンガンダムを動かした。

 

「ユニコーン、ガンダム…それがこの機体の名前…」

 

 エルは頭に浮かんだビジョンを元に自身の体格にシートを調節し機体を動かしコックピットのハッチを閉め、機体を動かす。

 

「初めて動かすのが幻晶騎士ではないのが残念ですが…それでも、ロボットの中にいて動かせるなんて、僕は、僕は幸せです!!」

 

 これまでに見せたことのない「狂気」を感じさせる笑みを浮かべ、エルはユニコーンのスラスターを吹かせ戦場に向かったーー

 

 

「ひ、ひぃぃ!!」

 

 ベへモスの口から強力なブレスが吐き出され、数機の幻晶騎士が吹き飛ぶ。

 

 紅い装甲を持つグゥエールを操縦者するディーは恐怖で機体の足を止めてしまう。他の仲間たちも賢明に攻撃を続けるが、巨大な魔獣は足を止めない。

 

「機体が、動かない…」

 

「ヘルヴィ!!」

 

 エドガーが叫び、女性騎士が操縦する機体をアールカンバーが支えているとベへモスは再度ブレスを吐くため大きく息を吸い込み始めた。

 

「あぁ…あぁ…」

 

 ディーだけでなく騎士たちは恐怖で機体が動かせない。もうブレスを防ぐ事ができないと諦めた時、どこからか高速の弾丸が飛びベへモスに直撃してブレスが不発に終わる。

 

「な!?」

 

「なんだあれは!?」

 

 エドガーやディー達が上を見ると、角をつけた白い機体がこめかみの部分から高速の弾丸を発射しながらブースターに火を吹かせてベへモスに向け突進していく。

 

 突如現れた見たことのない幻晶騎士とは違う形の機体を見て驚く中、白い機体。ユニコーンが背中に装備された棒を掴む。

 

「バルカンだけでもこの威力...素晴らしいですよユニコーン!!」

 

 刃のない柄から、エネルギーの刃が出現し魔法や剣で傷つけられなかったベへモスの体を簡単に切り付けると、ベへモスが痛みに大きく吠えた。

 

「すごい!! ビーム兵器を搭載しているとは…」

 

 ベへモスがビームサーベルで切られた痛みで暴れ出し、エルはブースターを使いベへモスから離れた。

 

「武装はバルカン・ビームサーベル…あとはビームマグナムがありますね、しかしこちらは弾が15発しかありませんし…ん?」

 

 エルが装備を確認していると、突然画面が切り替わる。

「NT-D」赤い画面にそう表示された時、コックピットの中で変化が起きた。

 

 コントロールレバーがなくなり、シートが動き後ろから体を固定される。

 さらに、機体が変化し赤い光が生まれ、額にあった角が割れ二つのツインアイが光った。

 

 ユニコーン デストロイモード

 

 ニュータイプと呼ばれる存在を消すために作られたシステムが、ベへモスの中にある純度の高い触媒結晶に反応し真の姿と力を現した。

 

「姿が変わった!?」

 

 エドガーがユニコーンの姿を見て目を大きく開き叫んだ。

 

 エルの意思どうりにユニコーンは素早く腕に装備されたビームトンファーでベへモスの体を次々と切り裂き、反撃するベへモスの角や鼻を素手で砕き最後にはベへモスの脳天に向けビームの刃を突き刺しベへモスは動かなくなった。

 

「な、なんなんだあれは...」

 

 ディーがベへモスを一方的に殺戮するユニコーンを見てつぶやき他の騎士たちは、異形の機体であるユニコーンを見て自分達を助けてくれた敬意と恐怖を感じた。

 

 一方で、操縦者であるエルはユニコーンの真の力に打ち惹かれるが、突如彼の頭の中に多くのビジョンが浮かんだ。

 

 宇宙空間で散っていくMSと命、ベへモスと同等の巨大なMA(モビルアーマ)との闘い、そして、黒いユニコーンーー

 

 「こ、これは...」

 

 ユニコーンのこれまで経験したきた事がエルの中に流れこみ、ユニコーンの記憶の渦に飲まれエルは気絶してしまう。 

 

 その後、王国から来た援軍が現れるが彼らが見たのは既に動かなくなったベへモスと元の一本角に戻った見たことのない異形の白い機体だけだったーー

 


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