君の名は〜結ばれる筈の二人に近付く影   作:レモンシャーベット

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01話

「ずっと何かを、誰かを、探している」

 

「そういう気持ちに取り憑かれたのは、多分あの日から」

 

「あの日、星が降った日、それはまるで」

 

「まるで夢の景色のように、ただひたすらに」

 

「「美しい眺めだった」」

 

 

二人の少年少女が紡ぐ純愛物語。

 

 

 

 

♢♢♢♢

 

と思うじゃん?

必ずしもそうなるとは限らない。

俺の名前は――桐生(きりゅう)真也(しんや)、転生者である。

現代日本から何の因果からなのか「君の名は」の世界に生まれて変わってしまった。

赤子の頃に前世の記憶を思い出した時はパニックになったもんだ。

赤子ながら周りを見渡しても普通の現代日本にしか思えなかった。

ただ、過去の日本に転生したのか?ってくらいだった。

転生したアドバンテージがあるから努力を惜しまず、今ではある程度の資産を築いていた。

その矢先、両親が事故死した。両親の遺産や自ら築いている資産で生活に困る事はなかった。

二度目の両親に愛情があったのだろう。暫く、放心状態で堕落した生活を送っていた。

 

中学生になり()に出会うまでは。

 

 

 

♢♢♢♢

僕は中学の入学式を終え、割り振られた自分のクラスに向かっていた。

クラスメイト達が出席番号順に指定された座席に座った。

教員が前扉から現れ開口一番に放った。

 

「えー入学おめでとう!君達は晴れて中学生になりました。そんじゃ、まず一人ずつ自己紹介からはじめようか」

 

「先生!自己紹介は出席番号順でいいですか?」

 

「そうだな、まずは俺からだな。俺の名前は倉橋健吾だ!お前らの担任な」

 

手を挙げた生徒に答えた教員はおもむろに自己紹介をはじめた。

担任の倉橋の自己紹介から順々に皆が自己紹介をしていく。

自分の番になり無難に自己紹介を済ませ、席に着いた。

 

 

「僕の名前は立花(たちばな)(たき)です。よろしくお願いしま」

 

「え?」

 

立ち上がって今名乗った少年をまじまじと見つめてしまった。

立花?瀧?え?ちょっと待てよ。

それってあの、劇場版アニメの主人公の名前だよな?

ちょっと待て、落ち着け、俺。

もう一度考えよう。チラリともう一度立花瀧を見て深く頷いた。

そうか、この世界は現代日本は現代日本でも「君の名は」の世界だったか。

 

「おい、どうした桐生。立花と知り合いか?」

 

「いえ、すいません。人違いでした」

 

軽く倉橋先生に注意され、頭を下げて席に座った。

立花はこちらを疑問符を交えて見ていただけだった。

 

こうして僕の転生した世界を知った1日目が終えた。

 

 

 

♢♢♢♢

 

あれから3ヶ月経過した今、俺たちは友達になっていた。

今ではこうして弁当を一緒食べる仲である。

もう明日からは夏休みだったりする。

 

「瀧、唐揚げをくれ」

 

「なら真は卵焼きとウインナーな」

 

「おい、ちょっと待て!トレードの比率がおかしいだろ」

 

「チッチッチ。唐揚げはそれだけ価値があるんだよ」

 

「まぁ仕方ない交換な」

 

パクっ。うん、やはり美味い。瀧の作る唐揚げは美味い。

俺は両親と死別し一人暮らしの身で弁当は自分で作ってる。

瀧は父子家庭で忙しくて家事は分担制だが、弁当は俺と同じように自分で作ってるみたいだ。

 

「そういや〜さ、進路決めた?」

瀧に尋ねた。

 

「まだだけど、どうして?」

 

「どうせなら同じ高校行かないか?」

 

「まだ1年生だよ。早くないかな」

 

「進路は早く決めた方がメリハリが付いて頑張れる……と思う」

 

「まぁ、いいけどどこの高校?」

 

スマホを取り出して瀧に見せた。

 

「ここだ!」

 

「へー設備は良さそうだね。名前は『都立神宮前高校』か」

 

「そうそう。まぁ偏差値高いから早くから取り組んだ方がいいだろ?」

 

この都立神宮前高校は「君の名は」の主人公である立花瀧が通っていた学校。

原作通りにある程度は勧めたい俺からすると是が非でもここに通ってもらいたい。

 

「考えとく。それより夏休みどこか遊びに行かない?」

 

「すまん。夏休みは用事がある」

 

「へ?全部?」

 

「そう、全部」

 

寂しそうに苦笑する瀧に申し訳なく思いながらも行動する事にした。

 

 

 

♢♢♢♢

 

携帯の着信音が鳴り響く。手を伸ばそうにも寝ぼけ眼の私には中々辿り着けない。

徐々に覚醒していく私は布団深く被り意識を飛ばす事にした。

まだ寝ていたい。ただ、それだけ。だって夏休みなんだよ。

 

「もう、お姉!うるさい」

 

案の定、妹――四葉の声で完全に眠気から覚めることとなった。

 

私――宮水(みやみず)三葉(みつは)はこの街が嫌い。

何にもないこの街が嫌い。夏休みに入っても何処かに出掛けようにも、出掛ける場所がない。

だから、私は寝る事だけが唯一の息抜きになっている。

 

「お姉、バスケはいいの?」

 

「夏休みの初日に部活はいやや」

 

「もう!お姉はそうやってゴロゴロしてる太るかんね!」

 

バシッと戸を閉めて四葉は部屋から出て行った。

はぁ〜。家を出掛けるかな。

 

 

 

 

 

♢♢♢♢

 

 

夏休みの初日に電車やタクシーを乗り継いでここに来た。

糸守町。原作で彗星が落ちる場所であり、物語のヒロインである宮水三葉が住んでいる町。

両親が既にいないから長期間、旅行に出掛けても咎める人はいない。

 

糸守町を徒歩で町並みを眺めながら進む。

劇場版アニメでは詳しく描写されなかったので逆に新鮮だった。

 

 

前方から自転車がこちらに向かってくる。スピードが出ている所為か驚愕の顔をしながらなんとか避けた。

道の端を歩いていたのに酷い仕打ちだ。

 

「すまん。ブレーキが壊れていたっぽい」

 

「あ、いえ、大丈夫です。何とか避けられたの……で」

 

絶句した。目の前にいる人物をよく知っていたから。

坊主のヘアスタイルの彼である。

 

「お、すまん。俺は勅使河原(てしがわら)克彦(かつひこ)って言うんだ、本当にすまない」

 

「もういいって。俺は桐生(きりゅう)真也(しんや)。真也って呼んでくれ」

 

「なら俺はテッシーとでも呼んでくれや。それより真也はどこから来たんだ?」

 

「東京から観光に来たんだわ」

 

「東京もんか……」

 

「テッシー一つ頼みがある」

 

「なんや?」

 

「宿屋を紹介してくれ」

 

頭を深く下げて頼み込んだ。

 

「どれくらいの滞在を予定してるんだ?」

 

「夏休みを全部」

 

「そんなにかんな。でも、学生の未成年を長期も泊めてくれる宿泊施設はないと思うぞ」

 

「やっぱりそうか……。どうしよう」

 

「よし、あそこに行くか!ちょっと付いてこい!」

 

克彦に手を引かれてドナドナされて行った。

 

 

自転車を放置して行っていいんかよ?と疑問を残しながら克彦の後に続いた。

 

 

 

♢♢♢♢

 

 

「ここだ」

 

克彦に連れられた場所は立派な佇まいの家だった。

すると戸を開けて誰かが出てくる。

え?宮水三葉……。まじかよ。

さっとくの登場で気分上々だった。

やはり、間近で見ると可愛いな。

 

「テッシー……?どうしたの?」

 

「お?すまん。三葉のとこの婆ちゃんに用があってね」

 

「テッシーの横の人の事で?」

 

「そうや」

 

「ふーん。何か面白そう。私も一緒にいていいかな?」

 

「構わないよ。それより婆ちゃんはどこにいる?」

 

「それじゃあ居間で待ってて」

 

 

 

♢♢♢♢

 

 

「何や、勅使河原の所の子か。用件はなんだね?」

 

「こいつ、東京もんなんやけど、観光でここに一人で来たみたいで宿を探してる所を俺が発見して婆ちゃんの所まで案内したんよ」

 

「と、東京!?」

三葉が立ち上がり俺に詰め寄った。

 

「三葉!大人しくしておれ。宿屋ならあるからそっちに行きゃよかったんちゃうか?」

 

「いや〜。こいつ夏休み丸々この町にいるみたいなんだよ」

 

「そう言うことか。よし、仕方ないか。うちの余った部屋を貸してやるから好きに使いな」

 

「お婆ちゃん……私、これでも高校生の思春期真っ只中なんやけど?」

 

「坊主は何歳や?」

 

「中学1年の13歳さんです」

 

「歳下やったんか」

 

「今から敬語に直した方がいいかな?」

 

「そのまんまでいいわ」

 

 

それから自己紹介をし、俺は宮水家に夏休みの間、滞在する事となった。

色々な説明は三葉がしてくれる事になって、観光云々は三葉やテッシー、それと二人の友人のサユちん?がする事となった。

原作開始前にメインの人らと繋がりを作る事は取り敢えあえずは成功。

これからはどうするかな。当面は宮水三葉と仲良くなる事だな。

 

 


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