その後二人は帰ってすぐさま布団の中にもぐりこんだ。
次の日、モット伯の屋敷が全焼したことがうわさとして流れてきた。そしてルイズは書類を書きつけるとシエスタとともに学園長室に向かった。
「・・・ということでいいですか、オールドオスマン」
「・・・うむ、構わんぞい」
その返事に二人は内心ガッツポーズした。
「ウフフ・・・面白いわね、その話」
「でしょうでしょう?!」
そして二人で部屋で楽しいティーパーティーを朝っぱらからやっていた。
「ところでシエスタ」
「はい、なんでしょう?」
「武器買いに行きましょう?」
「武器、ですか・・・?」
「えぇ。あなたは正式に私の従者となった。つまるところ何かしら武器を持っておいた方が何かと言い訳できるじゃない」
「…確かにそうですね」
「それに」
「?」
「最近『土くれのフーケ』が世間を騒がしているみたいだし、ね?」
「はい、わかりました。行きましょう」
「えぇ。何事も行動からよ」
そう言いながら二人は紅茶をのどの奥に一気に流し込むと部屋を出て行った。
「ところで」
「なにかしら?」
「馬、私が運転しましょうか?」
「いいのかしら?」
「えぇ、大丈夫です」
「なら任せるわ」
それを聞くとシエスタはルイズを前に乗せると馬を動かした。
「ハイヤー!」
タバサの休日をもっぱら本を読んで過ごす。恋愛小説にしろ何にしろ本を読むこと自体が好きな彼女はこの時間が至福なのだ。ページを一枚一枚めくるたびにいつもの気分からどこか救われている気分になるのだ。
「ちょっとタバサ!」
そしてそんな気分を一人の来訪者はぶち壊した。その来訪者の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。彼女の唯一無二の親友である。
タバサは少しムカッとしながら杖を彼女に向けて何かを詠唱する。すると彼女から音が消えた。彼女から発せられるすべての音が消えたのだ。
「・・・!!・・・!!――――――!!」
「・・・」
すると身振り手振りで何かを伝えようと必死になるキュルケ。
それを見てまだ魔法を行使するほど彼女は冷酷な人間ではないが、今回ばかりは別件である。
彼女は無視してまた本を読み始めた。
「~~~~~~~~~~~~!!!!」バッ
「わっ、まって」
するとタバサの本をキュルケは取り上げてきた。ただ律義にも読んだところにしおりを挟んでいる。ここまでされると読書もろくにできないので彼女は仕方なく魔法を解除した。しおりを挟んでくれたことには感謝した。
「―――――――アぁーーーー・・・? あぁ、よかった。解除してくれたのね」
「・・・何しに来たの?」
「あぁ、そうだったそうだった!忘れるところだったわ!!」
いっそそのまま忘れてくれた方がよかったとタバサは心の中で一人愚痴った。
「あの子よ! あの子が出かけるの!」
「・・・?」
「ルイズよ! あの変わった亜人を召喚した子よ!!」
「ああ、あの・・・」
「しかもメイドもつれてるときたわ!」
「そう・・・」
「気になるじゃない!」
こいつバカなのか、とタバサは思った。あれだけ怖い思いをしたのにまだ興味でそんなことを言うのか、と。
「それに」
「?」
「あのルイズが平民と一緒だなんておかしいと思わない? あの子プライドの塊みたいな子よ?」
「・・・」
確かに気になる。タバサはすぐに踵を返すとドアへ向かう。
「あら、行くの?」
さすがに願いを聞き入れてくれるとは思わずキュルケはぽかんとする。
「・・・あの使い魔が気になるだけ」
それに対してタバサはそう簡潔に答えると早足で廊下を歩いた。
「あなたなかなかうまいのね」
「お褒めの言葉ありがとうございます」
そんな会話をしながら二人はブルドンネ街に来ていた。人が多く少し歩きづらい。
「ここら辺は魔法を使ったスリが多いらしいわ」
「へぇ、メイジがするんですか?」
「没落貴族とかがよくいるのよ、ここは。あまり治安がいいとは言えないわね」
そう言いながらルイズはザ・ワールドを発動した。
ドオォ――z__ン!!!!
ルイズは止まった時の中を振り向くと早足で去ろうとする人間の懐からザ・ワールドで財布を取り出した。さっき自分の財布を持っていこうとした人間である。むかついたのでふくらはぎをスパッと切り、懐にあったもう一つの財布から金貨を抜き取るとルイズは再びシエスタの隣に戻った。そしてつぶやく。
「そして時は動き出す」
すると全員の時が動き出す。男は倒れ、足から血が噴き出す。周りの観衆は悲鳴を上げる。シエスタは後ろを振り向いた。
「どうしたのかしら?」
「血の匂いが…」
「どうやら後ろの方で流血沙汰があったみたいね。でもそこまで気にすることはないわ」
「確かにそうですね」
二人はそのまま歩きだした。しかしシエスタは気づいていた。
ルイズから血の匂いがしたのを。
恐らく鋭利なもので足を切ったりとかしたのだろう。どうやってしたのか自分にはわからなかったが。
そんなことをしていると少しごみが散乱している細道にたどり着いた。石畳には苔が生えており、少し匂う。シエスタはすごい顔をしかめながらルイズに訊く。
「ここの向こうに、お目当てのものが…?」
「いや、わからないわ」
「ゑ」
「・・・私の
(?!)
「
(?!?!)
ザ・ワールドにとってはいい迷惑である。
ちなみになぜスタンドをシエスタが知っているかというと、ルイズがたのしいたのしいティータイムの時に説明したからだ。情報共有というのは大切である。
そして歩いていくと剣のマークが描かれた銅の絵看板がぶら下がっている店が目に付いた。
「ここね、私のスタンドが言ったことは正しかったのね」
「はい、そうですね」
そう言いながらルイズとシエスタは店の中へ入っていく。
「き、貴族様?! う、うちは真っ当な商売をしてまさぁ! 貴族様に目を付けられるような事はしてませんぜ、断言します!」
「違うわ。そんなに慌てなくてもいいじゃない。フフフフフ・・・・」
するとお店の店主は幾分か落ち着いたようだ。
「はぁ・・・、そうですか。では、何の御用で・・・」
「武器よ。武器が欲しいの。この子に持たせる武器を頂戴。あとナイフがあれば買いたいの」
「ナイフ・・・ですかい・・・?」
「私、ナイフの投擲が得意なのよ」
「それはそれはまた珍しい」
「あなたもそう思う? 実を言うと私自身が一番そう思ってるの。フフフ・・・」
「ハハハ、そうですかい。」
そう言うと店主は奥の方へ戻っていった。ルイズがシエスタの方を見ると彼女はじっと一本の剣を見つめていた。
少し不思議に思ったルイズは彼女に声をかける。
「あら、シエスタ。どうしたの?」
「え、いや・・・、この剣から何か匂いを感じるんです」
「におい? どう見ても少し錆びついてる剣じゃない」
「いや、なにか鉄の匂いとは別の匂いを感じるんです。なにか、こう何て言うんでしょうか。・・・加齢臭?」
「プッ、加齢臭ってw 剣に加齢臭なんてあるわけないじゃないw」
「そうなんですけどねぇw」
「ヤイ、姉ちゃん! 失礼なこと言うんじゃねぇぜ!!」
「「キャアアアア?!!!」」
急に剣が叫んだので二人はびっくりしてしまう。シエスタは驚きすぎて剣を落としてしまった。
「イデェ!!」
「け、剣がしゃべりましたよぉ?!!」
「こ、これは『インテリジェンスソード』よ。そんなものがあるとは知ってたけど、まさかこんなところで会えるなんてね…気に入ったわ、貴族にも物怖じしないその姿勢。あなたに私は『価値』を見出したわ」
そう言いながらルイズはザ・ワールドにその剣を持たせる。すると剣は驚いたような声を出した。
「・・・おでれーた。この亜人、使い手か?」
「「「・・・?」」」
こいつ何を言ってるんだ、みたいな目で3人(?)は剣を見た。
すると店主が戻ってきた。そしてザ・ワールドを見るとルイズの予想通り驚いた。
「あ、あの・・・」
「ああ、この亜人のこと? 私の使い魔よ。遅れてきたの」
「な、なるほど。そういうことですかい。で、そのデル公がどうしたんですかい?」
「そのナイフとこの剣を合わせていくらかしら?」
「か、買うんですかい?!」
「フフッ、何か悪いのかしら?」
「いえいえ! 厄介払いができるってもんでさぁ!! 全部で120エキューです!!」
「ふむ・・・」
余裕で足りる。ルイズは120エキュー払うと店から出て行った。
すると二人は空を見る。
「・・・あれね」
「・・・あれですね」
「堕とす?」
「堕としましょう」
「じゃあ馬のところへ戻るわよ」
「ちょっと速足ですね」
「行くわよ。GO! シエスタGO!」ダッ
「YES!YES!YES!」ダッ
二人は走って馬に戻った。
「気づかれた・・・?!」
「こっち見たわよ?!」
「きゅいきゅい!!」
「お、追って!」
「私は後ろに乗るわ! 迎撃は私がするわ!」
「はい!」
そう言ってシエスタは右手を一部恐竜化させると馬に軽く突き刺した。するとビキビキと音を立てて馬は恐竜化した。
「行きますよ!」
「(・・・?!)えぇ、行くわよ! ザ・ワールド!!」ヒュオンッ
すると二人を乗せた馬恐竜は走り始めた。
続く
スケアリー・モンスターズ
破壊力:B
スピード:B
持続力:A
射程距離:D
精密動作性:C
成長性:B
特性
・傷つけた生物を感染、恐竜化させて手駒として操ることができる。死体を傷つけても恐竜化させることができる。
・常時身体能力や五感が強化される。特に嗅覚が鋭くなる。
・欠点として完全に恐竜化しているときは動いていない物体は一切見えないのでその時は音で探知するしかないというところである。
個人的にこのスタンドの一番の脅威となるのはパンデミック的なところだと思う。