・・・ところで、オリジナルスタンドは出してもいいんですかね? 皆さんはどう思いますか?
その後ルイズは1週間の謹慎をくらった。
そしてぶらぶらと部屋の中で生活していた。その間部屋に入ってきた小動物を処理していた。その中に白いネズミもいた気がするが気のせいだろう。
食事はシエスタが持ってきた。ルイズが直々に頼んだのだ。
それでも噂というのは耳に流れてくるというものである。そしてルイズのゼロには新たな意味が付け加えられていた。
いわく、「容赦情けゼロのルイズ」。
彼女はふっと笑う。今まで自分を馬鹿にしておいて今度は怖がるのか。その手のひら返しに彼女は思わず笑ってしまうのだ。
そして謹慎されてから7日目、シエスタがいつものように朝食を持ってきた。しかし心なしか表情が暗い。
「・・・どうしたのかしら、シエスタ」
それを見逃すルイズではない。気になることにはとりあえず首を突っ込むのが彼女の癖であった。
「・・・実は」
シエスタは話し始めた。自分は夜、モット伯のところに連れていかれることを。
するとルイズは微妙に眉間をしかめた。
モット伯にはあまりいいうわさがないのは彼女も知っているのだ。女癖が悪い、性的嗜好の幅が広いのもうわさに入っている。彼女が個人的に嫌いなのもあるが。
「ふむ・・・」
ルイズは考え込むふりをする。なぜ考え込むふりをするのかというと、もう言うことは決まっているからだ。
「ところで、シエスタ」
「はい、なんでしょう・・・?」
「人はなぜ怖がると思う?」
「・・・?」
「怖がるのはどうしてだと思う?」
「なんででしょう・・・?」
「ちなみに私は怖がったことは一切ないわ」
「そうなんですか・・・?」
「えぇ。私は疑問に思ったの。なんで今この状況で魔法が使えない私の方が怖がらずに魔法が使える周りの方が怖がっているのか・・・。それは『未来への不安』があるからよ」
「未来への、不安…?」
「えぇ。人は『不安』を感じると同時に『恐怖』も感じるようにできているの。だから不安を殺せば恐怖もなくなる」
「・・・」
そしてルイズはシエスタの胸に手を置いてつぶやいた。
「そしてあなたには、その不安を殺すだけの『力』がある」
「ッ?!!」
バッとシエスタが離れる。そして床に着地すると体を低く構える。
「GRRRRRR…」
そして低くうなった。その声はまるで猛獣がうなっているようだった。
「そんなに怖い顔してもいいじゃない…私は事実を言っただけよ・・・フフッ」
そう言いながらルイズはゆっくりとシエスタに近づく。ここでザ・ワールドを使わなかったのは警戒心を解くためでもあった。
そしてルイズはそっとシエスタの頭を抱きしめると耳元でつぶやいた。
「・・・怖いんでしょう? 誰かが離れていくことが。だけど大丈夫よ。その時は私がいてあげるわ」
「ッ!」
「『力』があるときは使わないとだめなの。その『力』を制御するためにはまず使わないとだめなの」
「でも・・・私・・・人を殺したら・・・」
「シエスタ、いい言葉を教えてあげるわ」
「・・・?」
「ばれなければ犯罪じゃないのよ?」
「!!!!!!」
シエスタははっとした顔になった。
「フフフフフフフフフ・・・・・」
ルイズは満足そうに笑うとスッと離れた。
「終わったら時間を空けてここに来なさい。ある程度体に傷をつけたら尚いいわ。あなたは悲劇のヒロインを演じればいいの。私がそれを助ける王子様(?)役をしてあげるから」
「・・・ハイ!!」
シエスタは力強くうなずいた。
「フフッ、いい返事ね。元気のいい子は好きよ? それに」
「それに・・・?」
「あなたはその力をあと一回くらい使えば使いこなせると思うわ」
「ほんとですか?!」
「えぇ。昨日あなたはその力を抑え込んでいた。つまり制御には成功しているのよ。あとは操るだけよ?」
「・・・わかりました」
「気分はよくなったかしら?」
「ハイ、おかげさまでよくなりました」
「それだったらこっちも言ったかいがあったというものだわ。頑張ってらっしゃい?」
「ハイ!」
そう言ってシエスタは出て行った。
「さて・・・」
ルイズは時計をチラッと見る。まだまだ夜までには長そうだ。朝食を終えるとルイズは背伸びして二度寝した。
~その日の夜~
シエスタは連れていかれた。しかし彼女の目は何か覚悟をしたかのような強い目をしていた。
彼女は今、部屋にいる。もうすぐ呼ばれることだろう。廊下からかすかに足音が聞こえる。
あのドアが開いたと同時に自分は怪物になるだろう。
ビキビキビキビキビキ・・・・・
彼女の皮膚にヒビが入り、色が変色し始める。目つきが鋭くなる。爪や歯が鋭くなり、口元が裂け始める。体勢が前のめりになり始める。
「・・・SYAAAAAAAAAAAAA」
今、シエスタは彼女の中の『怪物』を解き放った。
その衛兵達はモット伯の館の門の前にいた。
「しかしよー、この仕事もいつまで続くかねぇ」
「たぶん長いだろうさ。モット伯が生き続けている限りだがな」
「・・・おい、お前の後ろにいるやつ、なんだ?」
「え?」クルッ
次の瞬間、衛兵が首を裂かれた。
「な、なんだこの怪物はぁああああああ?!!!!!!!!」
「SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!」
その怪物は叫び声をあげながらもう片方の衛兵にとびかかる。
「く、来るなぁああああああああああああああ!!!!!!!」
叫びながら衛兵は槍を振り回す。しかし怪物はそれをスイスイッとよけると同じように首を切り裂いた。
「GRRRRRRRRRRRR・・・・」
怪物はそのまま屋敷の方に駆け出した。
~しばらくして~
モット伯は待っていた。今日新しく入ってきたシエスタという子を待っていた。
「お邪魔します」
するとコンコンという音と共にシエスタが入ってきた。
「おぉ、よく来てくれたね。佐々、こちらにいらっしゃい」
するとシエスタはすすっと近づいてきた。しかし次の瞬間
彼女は怪物になった。
そして彼の首を裂くとそのまま窓から出て行った。屋敷に火の手が回る。メイドや執事たちは慌てて屋敷から出て行った。
森の中をシエスタは全力疾走していた。すると自分の正面から何か馬の走る音が聞こえてきた。彼女は足を止める。
その者は帽子を深くかぶっていた。そしてマントを羽織っていた。しかし、何より目を引くのはそのピンク色の髪だった。
「あなた、シエスタよね?」
「ハぃ・・・」
「迎えに来たわ」
そう言いながらその人はルイズは手を差し出した。
「あ・・・あぁ・・・」
その差し出された手をシエスタはカサカサになった手で握った。そんな彼女の目はまるで救世主にでもあったような目をしていた。
「・・・まるで竜みたいね、その肌」
そう言いながらルイズはくすくすと笑う。つられてシエスタも笑ってしまう。
「家に・・・帰るわよ・・・」
そう言いながらルイズはシエスタを乗せると再び馬を走らせた。
続く
迎えに来たのはその時間にはもう1週間がたっていたからです。