ゼロだけの時間   作:海棠

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なぜザ・ワールドに自立意思を持たせたのかというと最後の最後でディエゴが命令していたので自立意思的なものがあるのではないかと推測したからです。








Act1「自覚/XXI」

「むにゃむにゃ・・・くらいなさい、キュルケ」

「・・・」

「フフフ…いい気味ね」

「・・・」

バサッとルイズの布団がはがれる。するといくら起きるまでに時間がかかるルイズでも起きざるを得なかった。

 

「・・・」

「・・・」

「・・・あんた誰?」

「」ガクッ

どうやらまだ寝ぼけているようだ。ザ・ワールドはがっくりとうなだれた。

 

「・・・あぁ、そういや昨日召喚したんだったっけ?」

「」コクッ

「ねぇ、着替え取ってくれるかしら?」

「・・・」

するとザ・ワールドは射程範囲内なので制服を取るとルイズに持って来た。

 

「ありがとね」

そう言いながらルイズは着替え始める。

そして着替え終わるとぴしっと背筋を張り、寝癖を直しながら言った。

 

「行くわよ!」

「・・・」コクッ

意気込んで外に出るとそこには褐色肌に赤い髪、そして巨乳の女性がいた。

 

「あら、ルイズじゃない。そんなに意気込んでどうしたの?」

「・・・朝っぱらから出ばなをくじかないでくれるかしら、ツェルスプトー」

「うふふ・・・」

彼女の名前はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。ゲルマニアからの留学生で、実家ツェルプストー家は代々ヴァリエール家とはとある因縁がある関係なのだがそれはまたその時が来たら説明するとしよう。

 

「というより、あなた待ち構えてたわね?」

「さぁ、どうかしら」

「否定しないということはそういうことよ」

「・・・ところで」

キュルケはルイズの後ろに守護霊のようにたたずんでいるザ・ワールドを見上げた。

 

「変わった亜人ねぇ」

「…えぇ、そうね」

「名前はなんていうのかしら?」

「さぁ、知らないわ。こいつ、しゃべらないもの」

もちろん名前を知らないというのは嘘である。

 

「でも、こっちの方が便利よ、フレイム~」

そう言いながらキュルケは後ろを向いた。するとそこにはしっぽに火のついた赤いドラゴンがいた。

 

「・・・へぇ、竜、ねぇ」

ルイズは品定めするような目でフレイムを見た。その眼は今から獲物を狩る猛禽類のような目をしていた。

キュルケはその眼に背筋がゾクリとした。やはり何度見てもなれないのだ。この目を最初に見たのは初めて二人があった時だった。その話もその時が来たら話すとしよう。

 

「じ、じゃあ先に行ってるわね」

そう言いながらキュルケはそそくさとその場を去った。

キュルケがいなくなって少しするとルイズはザ・ワールドに話しかけた。

 

「ザ・ワールド」

「・・・?」

「運んだりとか、できる?」

「・・・」

するとザ・ワールドはルイズをお姫様抱っこするとそのまま窓から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~少しして~

 

「余裕だったわね・・・」

そう愚痴りながらルイズは食堂に入ってきた。後ろには当然のごとくザ・ワールドがたたずんでいる。

そして歩いていくと席に着こうとした。しかしその席をザ・ワールドが引く。

 

「あら、気がきくじゃない」

そう言いながら機嫌をよくしたルイズは鶏肉をザ・ワールドに与えようとする。しかし、ザ・ワールドは手にとってじろじろと見るとすぐにルイズに返した。どうやら危険物ではないか調べたみたいだ。

 

「あら、食べないのね」

ルイズはくすくす笑う。そして食事に手を付けた。

しかしザ・ワールドはその間暇だった。すごく暇だったので試しに時間を停止してみた。

 

ドオォ――z_ン!!!

 

するとザ・ワールド以外の時間がすべて停止した。もちろんルイズも例外ではなかった。

 

「・・・」

なんで動かないんだ?とザ・ワールドは思った。あの時もそうだった。あの時に自分はルイズの意思を理解して笑った連中とバカにした連中に石を投げつけたのだ。しかし、ルイズ本人は時が止まったという事実に自覚がない。理解できていない。今も多分恐らく理解できていないんだろう。そこでザ・ワールドはある仮説を立てた。

 

自分とルイズはまだなじみ切っていないのではないか、と。

 

それだったらまだ納得ができる。もともと自分はディエゴ・ブランドーのスタンドだった。しかし本体が死んでなぜか自分がここに召喚された。そして今は一応ルイズのスタンドということになっている。ならば、自分はその本体とまだなじみ切っていない可能性がある。とザ・ワールドは推測した。

だが、ザ・ワールドは気づかなかった。

 

ルイズのナイフがピクリと動いたのを。

 

そして時は動き出す。

騒がしさが戻ってきた。周りの時が動き出す。そんな中ルイズだけが少しあたりを見渡して首をかしげた。

 

 

 

 

 

 

 

~しばらくして~

 

ルイズが教室に入ると全員がこっちを見ながらひそひそ話をし始めた。

耳をそばだてるとどうやら侮蔑の声が多いようである。

やれやれとルイズは思いながら席に着く。

すると色のローブを纏った中年女性教師シュルヴルーズが教室に入ってきて生徒たちに声を掛けた。

 

「皆さん、春の使い魔召喚は成功したようですね。皆さんの姿が見られて私はとてもうれしいです」

そしてルイズの方を向いておや、という風な顔をして言った。

 

「あら、ミス・ヴァリエールは見たこともない亜人を召喚したのですか」

するとマリコリヌが騒ぎだす。

 

「おいおい、ルイズ! そんな使い魔を召喚してどうするんだ! 手伝いさせることしかできねぇじゃねぇか!!」

するとクラス全員が笑いだす。

ルイズは表は平常を装っていたが内側はマグマのように怒り狂っていた。あぁ、このデブを叩き潰したい。黙らせたい。

そんな意思を感じたのだろう。ザ・ワールドは行動に出た。

次の瞬間、マリコリヌはたたきつけられた。時をすっ飛ばしたかのように机の上でぺちゃんこになっていたのだ。全員がそれを見てざわざわと騒ぎ出す。

ルイズはまたもやキョロキョロとし始めた。

彼女は今、疑問に満ちていた。なにかが止まったような感覚がしたからだ。

ザ・ワールドはそんなルイズを見てもう少しだな、と思った。

 

マリコリヌを起こして授業が始まった。ミス・シュルヴルーズの授業をルイズは初めて受けるがなかなかに分かりやすい。そして錬金の話になった。ミス・シュルヴルーズが石に唱えると金色の何かに変えた。

 

「それって金ですか?!」

キュルケが身を乗り出して訊く。

 

「いえ、真鍮です」

彼女がそう答えるとキュルケはつまらなさそうに席に着いた。あまりにも失礼すぎやしないかとルイズは思った。

 

「ではこの『錬金』を…ミス・ヴァリエール、貴方にやってもらいましょう」

すると教室の雰囲気が凍り付いた。

 

「わかりました」

ルイズは何か問題でもあるの?みたいな感じで席を立ちあがった。

クラスから反対の声が上がる。

 

「先生、やめといた方がいいと思いますけど」

「そうです。無茶です、先生!」

「『ゼロ』に魔法を使わせるなんて!」

「危険です!」

 

しかしミス・シュルヴルーズはこういった。

「大丈夫です。ミス・ヴァリエールは授業の態度がよく成績もいいと先生の中でも評判です。彼女ならやってくれると私は信じています」

それしか褒めるところがないからそう言ってるんじゃないか?とルイズは一人邪推した。

 

「やめて!お願い!」

そんなキュルケの声も無視してルイズはずかずかと壇上に上がる。

全員が机に避難する。

 

「ふぅ・・・」

ルイズは少し深呼吸をする。

 

「『錬金』!!」

彼女は杖を石に向けてそう唱えた。すると石がカッと光る。次の瞬間、

 

ドオォ――z_ン!!!

 

全ての動きが制止した。全員が時が止まったかのように動きが止まったのだ。

ただ一つ、例外があるとすれば

 

「え?え?え?どうしちゃったのよ?」

 

ルイズと、

 

「・・・」

 

ザ・ワールドだけだった。

 

「・・・これ、あなたがやったの?」

ザ・ワールドは頷いた。

するとルイズはにんまりと笑った。これは使える!とでも思ったのだろう。

彼女はザ・ワールドにマリコリヌとミス・シュルヴルーズを入れ替えさせ、ザ・ワールドを自分の目の前においてガードさせる。

次の瞬間、時は動き出した。爆発が起こり窓ガラスは全壊、もちろんマリコリヌは吹っ飛ばされ、シュルヴルーズは無傷だ。

なぜか自分が机の下にいるのか不思議そうな顔をしていたが。

 

 

 

 

続く




ここのルイズはなんだかんだ言って黒いです。勝利や目的のためなら平気で何かを犠牲にする性格です。
こんなルイズもいていいかなという感じです。

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