そう願った銀髪の少年は眠りについた。
そして次に目覚めた時、彼が目にした世界はマナとノーマに分けられた人類。そして襲い来るドラゴン。
ライは、この世界で何を思う?
『みんなが僕を忘れますように』
失う事、傷つける事を恐れた銀髪の少年はそう願った。大切な人、大切な場所。大切な思い出の全てから自身の事を綺麗に消し去るよう世界に願う。
『オヤスミ』
その言葉に意識が闇に中で溶けていく中、銀髪の少年の瞳には今まで出会った人達が過ぎ去っていく。
冷静に見えて友人思いの黒髪の少年。
足と目が不自由だが誰よりも優しい栗色の髪の少女。
正義感に溢れ真面目な茶髪の少年。
病弱を装っていたがとても強い赤髪の少女。
いつも元気で周囲を明るくしていた亜麻色の髪の少女。
自由奔放だが母性に溢れる金髪の少女。
物静かだが頭の良い三つ編みの少女。
バイクが好きで楽しげな青髪の少年。
謎ばかりだが助けられる事の多かった緑髪の少女。
顔を隠していたが正義の為に戦うと言っていた仮面の男。
銀髪の少年の瞳には今まで出会った人達が駆け抜けていき、最後には何も映らなくなった。
これで最後だ。そう思った銀髪の少年は重くなった唇を動かして最後の言葉を発する。
「オヤスミ………『』」
その言葉は誰に向けての物だったのか。それは銀髪の少年にしか知り得ぬ事。
そして銀髪の少年の意識は闇の中へと沈んでいく。
もう誰も傷付けぬために。
しかし、それは叶わなかった。まるで沈んだ海の底から這い上がるように銀髪の少年の意識が浮上し始めたのだ。
突然、降りかかった事態に銀髪の少年は思い瞼を開く。
「おはよう、現状を理解できているか?」
「此処は……?」
そこには髪をポニーテールにした背の高い女性が居た。軍服と思しき物を着てタバコを咥えて、銀髪の少年を品定めをする様な視線を送っている。
「まずは自己紹介をしておこうか。私はこの軍事要塞アルゼナルの司令官であるジルだ。キミの名は?」
「僕の名は……ライ。ライです」
見知らぬ世界に舞い降りた銀髪の少年ライ。
「これが……パラメイル」
「そうだ。ライ、貴様が乗っていたKMFとは違う兵器だ」
自身が乗っていたKMFとは違う兵器だパラメイル。
「まさか……ドラゴンが本当に存在するなんて!」
未知の存在のドラゴン。
「ヒルダは……優しいね」
「ど、どう解釈したらそうなるんだよ!……ったく調子が狂うよ」
そこで出会う赤髪の少女ヒルダ。
「マナでもノーマでもない……アンジュはアンジュだよ。タスクもきっとそう思ってる」
「ラ……イ……」
ライの言葉に泣き崩れる元皇国の王女アンジュ。
「私は調律者……世界を統べる者だ!」
「アナタが調律者だろうが神だろうが……僕は抗う!神にだって反逆して見せる!」
ライはこの世界でも反逆を決意する。
「ライが命じる!」
反逆せし銀髪の少年ライの瞳から紅き翼が解き放たれる。
『クロスアンジュ LOST COLORS』
これは新たなる反逆の物語。
スパロボVをプレイしてクロスアンジュにハマって思い付いた短編でした。ロスカラも未だに大好きです。