「
「赤城譲、学生です」
とある喫茶店。白井から
「譲……女の子なのに、男の子みたいな名前をしてるんだな」
「普段は男です」
「なるほど、女装癖というやつか」
「いや、こんな女子の集まりに男ひとりってのは気がひけるんで」
喫茶店の、6人がけのテーブルに座る俺たち。席順はテーブルを上から見て、左から下3人が俺、涙子、木山さん。左から上3人が白井、初春さん、御坂となっている。
女子4人の時でさえ辛かったのに、4人プラスひとり大人となったら、もう俺は爆発するかもしれない。
「あ、脳学者さんなんですよね。もしかして、白井の脳に異常が?」
「それ、さっき佐天さんにも言われましたの」
「くっそ、さすが涙子」
「えへへー」
やはり、涙子は侮れないようだ。俺が必死に考えたギャグを息をするように言いやがる。お笑い
「それより、赤城さんも来たことですし、本題に入りますわね」
「幻想御手のことですよね。それなら」
「黒子が言うには、幻想御手の所有者は
涙子の途中で、御坂が口を挟んだ。音楽プレーヤーを片手に、涙子の動きが止まる。
「なんでですか?」
「幻想御手には副作用がある可能性がありますの。それに、使用者は犯罪に手を染める傾向がありまして」
「はぁ……あ、佐天さん、どうかしました?」
「あ、いやぁ……別に」
わたわたと、手を振ってごまかす涙子。テーブルの上の飲み物入りのグラスが揺れる。
「涙子、危ない」
「えっ、あぁ……すいません、譲さん」
グラスを抑える。涙子は我を取り戻したようだ。食べかけのプリンを、一口すくう。
「ふむ……君たちはあれか、その……なんだったか、こ、こ……あぁ、恋人、とかいうやつか」
「ぶふっ!」
「っなっ……ちっ、違います!」
顔を真っ赤にして立ち上がる涙子。再度グラスが揺れ、今度は中身をぶちまけてテーブルから落ちた。
「あぁ! すみません!」
「……いや、気にすることはない。かかったのはストッキングだけだから、脱いでしまえば……」
「ぶっ!」
木山さんの突然の行動に、俺は再度吹き出す。脱ぎ女が存在するということは人伝いに聞いていたが、まさか木山さんだったとは。
「だぁから、人前で脱いじゃダメだと言ってますでしょうが! えぇ!?」
「……あ、譲さん何見てるんですか!」
「えっ、あ、ごめん涙子ってイタタタタタ!?」
突然のストリップに呆けていると、涙子は突然の俺の頰を引っ張った。
「まったく、しばらく目隠しです。反省してください」
「……ふぁい」
そう言って涙子は俺の視線を左手で遮った。いや、しかし……分かっていたことだが、女の子の手は男よりも柔らかい。
「しかし……起伏に乏しい私の体を見て、劣情を催す男性がいるとは……」
「趣味嗜好はそれぞれですの! 第1、そこに殿方もおりますし、殿方でなくてもゆがんだ情欲を抱く同性もいますのよ!」
それはお前のことだろう、と口には出さないがそう呟く。
……しかし、目隠し長くないか? もうストリップも終わっているだろうに。
「あのー、涙子? そろそろ目隠しを……」
「ダメです」
ツンとして言い返された。いや、そうじゃなくて……こう長い時間涙子に触れてると、変な気分になるというか……
「涙子?」
「ダーメーでーす!」
その後の話は、目隠しのせいかストリップのせいか……あまり覚えていない。
***
「今日はありがとうございました」
「いやいや、教鞭をふるっていたことを思い出したよ」
「教師をなさっていたんですか?」
「あぁ……昔、にな」
そう言って木山さんと別れた。軽く会釈をして、やけに疲れたカラダを伸ばす。
「1度支部の方に戻りませんと……あれ、お姉さまは?」
「ん?」
振り返ると、さっきまでいた御坂と涙子の姿がなかった。
「……俺、探してくるよ。2人は支部に戻ってて」
「じゃあ……そちらは任せましたの」
そう言って俺たちも別れる。2人は支部へ、俺は2人を探しに向かう。今さっきまでいた喫茶店のエリアを通り抜け、どんどんと町外れの方へと向かう。
探すこと十数分、高架下のような場所に2人はいた。涙子はお守りを持っていて、御坂は何やら相槌を打っている。なにか、真剣な話をしている様子だ。
とび入るのも悪いし、近くの茂みに腰を下ろす。
「期待が、重いこともあるんです。いつまで経っても
「強度なんて、どうでもいいことじゃない」
聞こえてきたのは、そんな会話。元気に笑ったり、おんぶした時にはしゃいだり、空き缶を踏んづけて転びそうになったり……そんな元気な顔の裏で、そんな悩みを抱えていたのか、と考えると、悩みを話すような相手になれなかった自分が悔しくなる。
しかし、
それに、涙子には広い交友関係がある。超能力者の友人が2人もいる人なんて学園都市中探してもそうはいないだろう。というか、いないんじゃないだろうか。
「あれ、あんた何してんの?」
「御坂と涙子を探しにきたんだよ……急にいなくなったからな」
どうやら話は終わったようで、御坂は俺に声をかけた。俺の言葉に納得したようで、相槌を打つ。
「さ、帰ろ」
そう言って俺は立ち上がる。御坂を見送った後、俺は涙子の学生寮前までついていった。
なぜだかその間、涙子と会話はなかった。
うーん、やっぱり地の文が少ない。でも多くしたらしたでくどくなりそうだし……うーん。