とある少年の物質変換   作:まうんてんうちうち

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もうお気づきだと思いますが、メインのヒロインは佐天涙子でいきます。
最初は絹旗最愛か食蜂操祈にしようかと思ってたんですが、それだと完全に私の趣味になるので、普通にいい子だなー、と思っていた佐天にしました。

この後、時間を空けてもう1話投稿する予定です。


5話

「上条、お前……隠し子か?」

「違うわ!」

 

 待ち合わせ場所のセブンスミストに着くと、そこには待ち合わせした上条と、可愛らしい少女がいた。おおかた迷子なのだろうが、まぁいじっておいて損はない。

 

「おねーちゃん、おにーちゃんの彼女?」

「んー? こんな奴の彼女になるくらいだったら、舌噛み切った方がマシだな」

「どーいうこと?」

 

 頭を撫でて、その話題を水に流す。少女は不思議そうな顔をして首をかしげた。

 

「それより、その格好なんとかなんないんですか?」

「仕方ねーだろ」

 

 上条の指摘は、俺の格好のことだった。黒髪ロング、華奢な体。普通に女の子だ。

 

「レディースの買い物なんだから」

 

 変身能力のある俺は、たまにこうして女物の服を買いにくる。その理由としては、女子として過ごした方が便利な場合もあるからだ。まぁ、そんな場面あまりないが、用意しといて損はない。

 

「そういや、誰が昨日の食事代払ったんだっけ?」

「赤城さんですごめんなさい」

 

 全速力で頭を下げた上条に、よろしい、とため息を吐く。昨日、ATMにカードをのまれたと言って、ファミレスでご飯を奢ったのだ。まぁ、御坂が来てカードは戻ってきたらしいが。

 

「おにーちゃん、なんでごめんなさいしてるの?」

「あははー……」

 

 雑談もそこそこ、俺たちは店に入る。

 

「ねーねーおねーちゃん、おにーちゃん。私あっち見たい!」

「いいよー、見よっか」

 

 頭を撫でて、少女に従う。どうやら、少女も服を見にきたようだ。

 

「おねーちゃん、これどうかな?」

「んー? あ、いいじゃん」

 

 自分の服も物色しながら、少女の問いに答える。上条は慣れない女物の店だからか、店の外で待っている。入ってくれば、思う存分いじれるのに。

 

「んー……おねーちゃん、あっちも見たい!」

「おっけー、これだけ買うわ」

 

 そう言っていくつかの服をレジに運ぶ。思っていた以上に高かったが、まぁレディースだし、と自分に言い聞かせる。

 

「上条も服買うか? 俺もメンズ買うから、少しなら買うけど」

「マジですか!?」

 

 俺の言葉に、上条が飛びつく。やはり上条は世間一般的には無能力者(レベル0)ということもあり、奨学金が少ない。普段からセールで食費を浮かしているところを見て、服を買う余裕がないんじゃないかと思ったら、どうやら大当たりのようだ。

 

「なんか、おねーちゃん男の子みたいな喋り方だね」

 

 その言葉に、俺と上条は目を合わせて苦笑いを浮かべる。男の子みたいじゃなくて、男の子なんだよな。

 

「じゃ、あっち見に行こー!」

「はいはーい」

 

 少女に手を引かれ、あっちこっちへ連れ回される。何店舗か回ったところで、男物のいい服屋があったので、着替えるついでに上条と服を物色する。

 

「譲はなにを買うんだ?」

「俺は今着替える分だから……Tシャツとズボンと……あと薄手のジャケット」

「え、今着替えんの?」

「うん。上条の彼女と思われるのも癪だし」

 

 そう言って自分の分の会計を済ませる。上条はさいですか、とジト目を向ける。

 

「あとで右手だけ貸して」

「はいよー」

 

 上条の返事を聞いて、試着室に入って着替える。一応いつもの自分っぽい顔、体格をつくる。が、やはり自分のみでは本当にこんな顔だったか自信が持てない。

 

「上条、右手」

「ん」

 

 肩に触れてもらい、鏡を見る。うん、確かにこんな顔だった。まぁ、気の持ちようの問題なのだろうが。

 

「あれ、おねーちゃんは?」

「えっとねー……おねーちゃん用事があるんだって」

「そうなの?」

「うん、だからこれからは代わりにおにーちゃんが増えたけど、いいかな?」

「うん!」

 

 よしよし、と頭を撫でる。将来小学生か幼稚園の先生にでもなろうかな、なんて思いを馳せてると、上条の服選びが終わったようだ。

 

「ん、これだけでいいの?」

「いやいや、さすがにこれ以上は悪いし……」

「そう。店員さーん。これくーださい」

 

 会計を済ませて、今買った服が詰め込まれた紙袋を渡し、店を出る。

 

「じゃ、あっち!」

 

 まだ見るのか、なんて無邪気な笑顔に言えるはずもなく、俺たちは再び手を引かれるまま少女についていく。

 

「っそれ!」

 

 その先には、パジャマ専門店なのだろうか。小学生が着るようなパジャマのマネキンが一番に目に入る店で、御坂は誰にも見られたくないのか、急いでパジャマを体に合わせていた。

 

「……なにしてんだ? ビリビリ」

 

 一瞬の間が空いて、声にならない声をあげ、真っ赤な顔で御坂は振り向いた。

 

「なんであんたらがここにいんのよ!?」

「いちゃいけないのかよ」

「服買いにきたんだけど」

「あ、常盤台のおねーちゃんだ!」

 

 知り合いだったのか、少女が元気な声でそう言った。

 

「え? ……あぁ、カバンの!」

 

 少女を見て、思い出すように言った御坂は、こちらに視線を戻した。

 

「え、どっちの妹?」

「違う違う。洋服店探してるっていうから、案内してきただけだ」

 

 御坂の問いに、上条が答える。やはり、迷子という予想は概ね間違っていなかったようだ。

 

「あのねー、おにーちゃんに連れてきてもらったんだー。途中までおねーちゃんも居たんだけど……途中でこっちのおにーちゃんにかわっちゃったんだー」

「おねーちゃん……もしかしてあんた、また女装したの?」

「その言い方だと、俺が変態みたいじゃん」

 

 俺の言葉に、変態でしょ、と御坂。だから、時と場合で性別変えてるだけなんだけど、と声には出さない言い訳をする。

 

「あれ、譲さん」

「涙子……と、初春さん」

 

 おっす、と軽く挨拶をする。ここ数日、毎日涙子と会っている気がするが、こんな偶然もあるのだろうか。

 

「あれ、佐天さん。赤城さんのこと下の名前で呼ぶんですね」

「あー、あははー、ちょっとねー」

「そういやあんたも、佐天さんのこと下の名前で呼んだわよね」

「うん。まぁ、ちょっとね」

「ほほう」

 

 俺の言葉に、上条がなにやら変な表情を浮かべた。

 

「なんだよ」

「土御門の話は本当だったんだな」

「話って?」

「赤やんは、年下彼女がいるゲス野郎だにゃーって話」

「はぁ!?」

 

 てめーも妹がいんだろうが! と、ここにはいないパツキンサングラスに怒声をあげる。次会ったら、あいつの髪の毛全部青く染めて、ピアス開けさせて、サングラスぶっ壊して、まぶた縫って青ピと変わんねぇ見た目にしてやる。

 ……あ、そんなことしなくても触れれば1発だ。

 

「まぁ、上条さんは応援しますよー」

「お前に言われると腹立つ。1発殴らせろ」

「なんで!?」

 

 はぁ、いきなり叫んだからか、顔が熱いな……絶対真っ赤になってるよ、これ。

 

「黒髪のおねーちゃんは、このおにーちゃんのこと好きなの?」

「えぇ!?」

「おいおい……」

 

 少女の言葉に、涙子の顔は真っ赤になる。まぁ、そりゃ俺なんかを好きかなんて聞かれたら……怒って顔も赤くなるわな。会って日も浅いし。

 

「えっと……えっと」

 

 こちらを見ながら、頭から煙を出す涙子。そんなにショートするほど怒ってるのか……でも、嫌いな相手に下の名前なんて呼ばせないよなぁ。少なくとも、俺は好意を持ってない相手に呼ばれたくない。

 

「……あ、おにーちゃん。次あっち見たい!」

「あ、おう、分かった」

 

 上条の服の裾を引っ張り、少女は催促した。

 

「えっと、上条。俺トイレ行ってくるわ。ちゃんと面倒見てあげてね」

「分かった。俺ら適当にぶらついてるから、メールしろよ」

 

 逃げ出すように、俺はトイレへと向かった。あの後、うやむやにならなかったら涙子はなんて答えたのだろうか、怖いが、聞いてみたくもある。

 




お気に入りが20件、感想一件。本当にありがたいです。
ネット小説は初めてなので、今の時点にしては早いのか、普通なのか、遅いのか分かりませんが、最低でも20人の読者様が楽しみにしていると思うと、言葉にできないような感謝の気持ちが溢れ出てきます笑

誤字報告や、このキャラこんな喋り方じゃないなど、なんでもいいので感想をお待ちしております。なんだかんだで、息抜きで始めたこの二次創作ですが、感想がつくととても嬉しいです。

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