最初は絹旗最愛か食蜂操祈にしようかと思ってたんですが、それだと完全に私の趣味になるので、普通にいい子だなー、と思っていた佐天にしました。
この後、時間を空けてもう1話投稿する予定です。
「上条、お前……隠し子か?」
「違うわ!」
待ち合わせ場所のセブンスミストに着くと、そこには待ち合わせした上条と、可愛らしい少女がいた。おおかた迷子なのだろうが、まぁいじっておいて損はない。
「おねーちゃん、おにーちゃんの彼女?」
「んー? こんな奴の彼女になるくらいだったら、舌噛み切った方がマシだな」
「どーいうこと?」
頭を撫でて、その話題を水に流す。少女は不思議そうな顔をして首をかしげた。
「それより、その格好なんとかなんないんですか?」
「仕方ねーだろ」
上条の指摘は、俺の格好のことだった。黒髪ロング、華奢な体。普通に女の子だ。
「レディースの買い物なんだから」
変身能力のある俺は、たまにこうして女物の服を買いにくる。その理由としては、女子として過ごした方が便利な場合もあるからだ。まぁ、そんな場面あまりないが、用意しといて損はない。
「そういや、誰が昨日の食事代払ったんだっけ?」
「赤城さんですごめんなさい」
全速力で頭を下げた上条に、よろしい、とため息を吐く。昨日、ATMにカードをのまれたと言って、ファミレスでご飯を奢ったのだ。まぁ、御坂が来てカードは戻ってきたらしいが。
「おにーちゃん、なんでごめんなさいしてるの?」
「あははー……」
雑談もそこそこ、俺たちは店に入る。
「ねーねーおねーちゃん、おにーちゃん。私あっち見たい!」
「いいよー、見よっか」
頭を撫でて、少女に従う。どうやら、少女も服を見にきたようだ。
「おねーちゃん、これどうかな?」
「んー? あ、いいじゃん」
自分の服も物色しながら、少女の問いに答える。上条は慣れない女物の店だからか、店の外で待っている。入ってくれば、思う存分いじれるのに。
「んー……おねーちゃん、あっちも見たい!」
「おっけー、これだけ買うわ」
そう言っていくつかの服をレジに運ぶ。思っていた以上に高かったが、まぁレディースだし、と自分に言い聞かせる。
「上条も服買うか? 俺もメンズ買うから、少しなら買うけど」
「マジですか!?」
俺の言葉に、上条が飛びつく。やはり上条は世間一般的には
「なんか、おねーちゃん男の子みたいな喋り方だね」
その言葉に、俺と上条は目を合わせて苦笑いを浮かべる。男の子みたいじゃなくて、男の子なんだよな。
「じゃ、あっち見に行こー!」
「はいはーい」
少女に手を引かれ、あっちこっちへ連れ回される。何店舗か回ったところで、男物のいい服屋があったので、着替えるついでに上条と服を物色する。
「譲はなにを買うんだ?」
「俺は今着替える分だから……Tシャツとズボンと……あと薄手のジャケット」
「え、今着替えんの?」
「うん。上条の彼女と思われるのも癪だし」
そう言って自分の分の会計を済ませる。上条はさいですか、とジト目を向ける。
「あとで右手だけ貸して」
「はいよー」
上条の返事を聞いて、試着室に入って着替える。一応いつもの自分っぽい顔、体格をつくる。が、やはり自分のみでは本当にこんな顔だったか自信が持てない。
「上条、右手」
「ん」
肩に触れてもらい、鏡を見る。うん、確かにこんな顔だった。まぁ、気の持ちようの問題なのだろうが。
「あれ、おねーちゃんは?」
「えっとねー……おねーちゃん用事があるんだって」
「そうなの?」
「うん、だからこれからは代わりにおにーちゃんが増えたけど、いいかな?」
「うん!」
よしよし、と頭を撫でる。将来小学生か幼稚園の先生にでもなろうかな、なんて思いを馳せてると、上条の服選びが終わったようだ。
「ん、これだけでいいの?」
「いやいや、さすがにこれ以上は悪いし……」
「そう。店員さーん。これくーださい」
会計を済ませて、今買った服が詰め込まれた紙袋を渡し、店を出る。
「じゃ、あっち!」
まだ見るのか、なんて無邪気な笑顔に言えるはずもなく、俺たちは再び手を引かれるまま少女についていく。
「っそれ!」
その先には、パジャマ専門店なのだろうか。小学生が着るようなパジャマのマネキンが一番に目に入る店で、御坂は誰にも見られたくないのか、急いでパジャマを体に合わせていた。
「……なにしてんだ? ビリビリ」
一瞬の間が空いて、声にならない声をあげ、真っ赤な顔で御坂は振り向いた。
「なんであんたらがここにいんのよ!?」
「いちゃいけないのかよ」
「服買いにきたんだけど」
「あ、常盤台のおねーちゃんだ!」
知り合いだったのか、少女が元気な声でそう言った。
「え? ……あぁ、カバンの!」
少女を見て、思い出すように言った御坂は、こちらに視線を戻した。
「え、どっちの妹?」
「違う違う。洋服店探してるっていうから、案内してきただけだ」
御坂の問いに、上条が答える。やはり、迷子という予想は概ね間違っていなかったようだ。
「あのねー、おにーちゃんに連れてきてもらったんだー。途中までおねーちゃんも居たんだけど……途中でこっちのおにーちゃんにかわっちゃったんだー」
「おねーちゃん……もしかしてあんた、また女装したの?」
「その言い方だと、俺が変態みたいじゃん」
俺の言葉に、変態でしょ、と御坂。だから、時と場合で性別変えてるだけなんだけど、と声には出さない言い訳をする。
「あれ、譲さん」
「涙子……と、初春さん」
おっす、と軽く挨拶をする。ここ数日、毎日涙子と会っている気がするが、こんな偶然もあるのだろうか。
「あれ、佐天さん。赤城さんのこと下の名前で呼ぶんですね」
「あー、あははー、ちょっとねー」
「そういやあんたも、佐天さんのこと下の名前で呼んだわよね」
「うん。まぁ、ちょっとね」
「ほほう」
俺の言葉に、上条がなにやら変な表情を浮かべた。
「なんだよ」
「土御門の話は本当だったんだな」
「話って?」
「赤やんは、年下彼女がいるゲス野郎だにゃーって話」
「はぁ!?」
てめーも妹がいんだろうが! と、ここにはいないパツキンサングラスに怒声をあげる。次会ったら、あいつの髪の毛全部青く染めて、ピアス開けさせて、サングラスぶっ壊して、まぶた縫って青ピと変わんねぇ見た目にしてやる。
……あ、そんなことしなくても触れれば1発だ。
「まぁ、上条さんは応援しますよー」
「お前に言われると腹立つ。1発殴らせろ」
「なんで!?」
はぁ、いきなり叫んだからか、顔が熱いな……絶対真っ赤になってるよ、これ。
「黒髪のおねーちゃんは、このおにーちゃんのこと好きなの?」
「えぇ!?」
「おいおい……」
少女の言葉に、涙子の顔は真っ赤になる。まぁ、そりゃ俺なんかを好きかなんて聞かれたら……怒って顔も赤くなるわな。会って日も浅いし。
「えっと……えっと」
こちらを見ながら、頭から煙を出す涙子。そんなにショートするほど怒ってるのか……でも、嫌いな相手に下の名前なんて呼ばせないよなぁ。少なくとも、俺は好意を持ってない相手に呼ばれたくない。
「……あ、おにーちゃん。次あっち見たい!」
「あ、おう、分かった」
上条の服の裾を引っ張り、少女は催促した。
「えっと、上条。俺トイレ行ってくるわ。ちゃんと面倒見てあげてね」
「分かった。俺ら適当にぶらついてるから、メールしろよ」
逃げ出すように、俺はトイレへと向かった。あの後、うやむやにならなかったら涙子はなんて答えたのだろうか、怖いが、聞いてみたくもある。
お気に入りが20件、感想一件。本当にありがたいです。
ネット小説は初めてなので、今の時点にしては早いのか、普通なのか、遅いのか分かりませんが、最低でも20人の読者様が楽しみにしていると思うと、言葉にできないような感謝の気持ちが溢れ出てきます笑
誤字報告や、このキャラこんな喋り方じゃないなど、なんでもいいので感想をお待ちしております。なんだかんだで、息抜きで始めたこの二次創作ですが、感想がつくととても嬉しいです。