とある少年の物質変換   作:まうんてんうちうち

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連続投稿なう。
かけるときに書いて、書けないときは書けないので、投稿は不定期になると思います。ご了承ください。
はやければ、こんな感じで連続投稿とかあるかもですが。


4話

 7月ももう17日となり、今日を含め、あと3日学校へ向かえば夏休みになるという日になった。

 昨日の銀行強盗のせいか、少し体が痛い。そういえば最近運動してなかったな、と無駄に割れた6つの腹筋を見下ろす。体型や顔を自由に変えられるという能力のコンプレックスからか、バカみたいに鍛えた時があった。その気になればボディービルダーよりもムキムキになれるが、能力には頼りたくない。

 

「つっかれたぁ……」

「どうしたんだにゃー赤やん。もしかして……昨日のことか?」

「ちょっ、怖い怖い怖い。いきなりマジトーンになんなよ」

 

 普段おちゃらけている土御門の声が、突然殺気ともとれるような真剣みを帯びた。朝から出す声じゃないだろ、と内心焦る。

 

「赤やん、女の子とデートしといて疲れたはないわぁ」

「お前に説教されたくないわ」

「あんなぁ赤やん。ボクぁ落下型ヒロインのみならず、義姉義妹義母義娘双子未亡人先輩後輩同級生女教師幼なじみお嬢様金髪黒髪茶髪金髪ロングへアセミロングショートヘアボブ縦ロールストレートツインテールポニーテールお下げ三つ編み二つ縛りウェーブくせっ毛アホ毛セーラーブレザー体操服柔道着弓道着保母さん看護婦さんメイドさん婦警さん巫女さんシスターさん軍人さん秘書さんロリショタツンデレチアガールスチュワーデスウェイトレス白ゴス黒ゴスチャイナドレス病弱アルビノ電波系妄想癖二重人格女王様お姫様ニーソックスガーターベルト男装の麗人メガネ目隠し眼帯包帯スクール水着ワンピース水着ビキニ水着スリングショット水着バカ水着人外幽霊獣耳娘まであらゆる女性を迎え入れる包容力を持ってるんよ?」

「……もう分かったから、な? そんだけ守備範囲広くても彼女いないんだろ? ひとつ女じゃないし、な?」

「うっさいわ赤やん! 一回デートしたからって調子乗ったら痛い目見るぜい!」

「なんで土御門が絡んでくんだよ。お前には妹がいるじゃねぇか」

「む、そういえばそうだにゃー」

 

 それに、と俺は付け加える。

 

「デートじゃなくて、向こうは女子4人だったんだからな。気まずかったわ」

「おっけー赤やん。やっぱり許せんわ」

「赤やん、友達だと思ってたにゃー」

「……もう、つかれた」

 

 このバカ(変態)達の処理班(上条)の到着を、心から願った。

 

***

 

「あれ、赤城さん。なにしてるんですか?」

「……おー、佐天さんか」

 

 放課後。朝から先ほどまで、バカ2人の後処理に燃え尽きた俺は公園のベンチでボーッとしていた。たまたまだろうか、佐天さんが通りかかった。

 

「いや、ボーッとしてるだけ」

「日向ぼっこですか。じゃあ、私も」

 

 そう言って佐天さんは俺の隣に腰掛けた。2人から3人用のベンチのため、距離は近い。

 

「赤城さんって、いつもここ通るんですか?」

「帰り道はね。いつもボーッとしたり本読んだりしてる」

 

 俺の言葉に、へぇっと佐天さん。そんなに興味のあることでもあるまいに。

 

「あ、今日初春さんとかいないんだね」

「初春は今日風紀委員の方があるって、そっちに行きました」

「ふぅーん」

 

 そして訪れた沈黙。風に揺らされる葉の音のみが支配する空間。少し気まずい。

 

「飲み物でも買ってこようか。佐天さん、なに飲みたい?」

「あ、いや、大丈夫です! ありがとうございます!」

「あ、そう? でも、熱中症とか」

「いえ、大丈夫です!」

 

 そう、と呟くように言って、少しあげていた腰をおろす。気まずさが2割くらい増したような気がした。

 

「あ、あの。赤城さん」

「ん?」

 

 少し、顔を赤らめた様子の佐天さん。

 

「できれば、さん付けやめてくれませんか? その……年上にさん付けで呼ばれるって、なんかむず痒くって」

「ん……じゃあ、なんて呼ぼうか」

 

 佐天、だと最後が『ん』のせいか呼びにくいんだよな。さん、とか。ちゃん、とかなら気にならないんだけど。かといって……涙子って呼ぶのもなぁ。だけどちゃん付けって子供扱いしてそうな感じだし、さん付けはイヤって言われたし。

 

「し、下の名前でもいいですよ?」

「……それは心の準備が……それしかないか」

 

 代替案を探すが、見つからない。まぁ本人がいいと言うならいいのだろう。

 

「じゃあ、俺も涙子って呼ぶから、俺のこと譲って呼んでよ」

「えぇ!? さ、さすがに年上を呼び捨ては……」

「いや、いいって。俺が涙子って呼ぶのに涙子が赤城さんのままだったら、なんか距離感じるし」

「え、えっと……じゃあ、せめてさん付けで! さすがに年上を呼び捨ては……」

 

 その言葉に、俺は頷く。まぁ、俺も年上を呼び捨てにできるような勇気は持ち合わせていないしな。

 

「じゃあ……涙子?」

「えっと、なんでしょうか譲さん」

「……こっちのがむず痒いな」

「あはは……」

 

 俺の言葉に、苦笑いを浮かべた涙子。気がつけば、日は傾きかけていた。

 

「そうだ。メルアド交換しとこっか」

「あ、はい!」

 

 携帯を取り出し、メールアドレスを交換する。念のため、確認の空メールなどを送信しあう。

 

「よし、おっけーだね」

 

 携帯をしまって、ベンチに根付いたんじゃないかと思うくらい重い腰を上げる。家に帰って、夕飯を食べて風呂入って歯磨きして寝よう。

 

「それじゃ、またね涙子」

「はい! また会いましょう譲さん!」

 

 嬉しそうに携帯を握りしめる涙子を見送って、俺は後ろを振り返り、歩きだす。

 

「さて、赤やん。事情聴取だにゃー?」

「そうやねぇ」

「あっはは……不幸だ」

 

 幸か不幸か、上条はいなかったが、心の底から不幸だ、という気持ちが湧き上がった。

 

 その夜は、土御門による事情聴取のため、夕飯も食べれず、風呂にも入れず、歯磨きもできなかった。

 


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