とある少年の物質変換   作:まうんてんうちうち

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大変お久しぶりです。
今年受験生なので、これが最後の投稿になると思います。しばらく更新停止いたしますので、ご容赦ください。


29話

「選手宣誓?」

「なのです」

 

 放課後、小萌先生に呼び出された俺は大覇星祭の選手宣誓をしないかという打診を受けていた。

 どうやら、大覇星祭というのは能力ありの運動会らしい。今回は何か特別な事情があって、超能力者(レベル5)に選手宣誓の打診をしているようだ

 

「俺が?」

「全世界に配信されるんだからデモンストレーションも兼ねて、とのことで赤城ちゃんに運営委員からの依頼がきてるのです」

「人前に立つの好きじゃないんですよね……」

「赤城ちゃん、これはチャンスなのですよ?」

 

 やんわり断ろうとした俺に、小萌先生はたしなめるように言った。

 

「はぁ」

 

 間の抜ける返事をした俺。それを見て、指をたて小萌先生は続けた。

 

「この学校の知名度を上げるチャンスです。制服は見たことあるけど、名前を知らない、という不名誉なランキングで学園都市1位を脱却するのです!」

「いや、そんなランキングあったのかよ」

 

 固く拳を握りしめ、どこか遠くを見つめながら言った小萌先生。気のせいか、小萌先生の周りには熱意というオーラが見える。

 

 しかし、高校の名前を知らないのに、どうやって投票したりするんだよ。制服の写真でも載せてるのか?

 

「んー……考えておきます」

「無理にとは言わないですけど、いい返事を期待してますよー」

 

 その言葉に、適当に会釈をして職員室を出る。9月14日、学校が始まって2週間が経ち、ようやく生活リズムを取り戻してきたところだ。

 

 まぁ、9割がた御坂妹のおかげだけど。毎朝起こしてくれて美味しい朝ごはんを作ってくれて、そして弁当まで。なんでそこまでしてくれるのか? と以前聞いたところ、やりたいからやってるとのこと。いい同居人を持ったものだ。

 

「あれ、上条」

「あぁ、赤城か」

「職員室の前でなにやってんの?」

「小萌先生に呼び出された」

「……このまえ小テスト0点だったもんな」

 

 抜き打ちテスト、というわけではない事前に通知していた、簡単な小テストで0点って、どうやってとるんだか。50点満点で平均が約40点で、上条が0点ってことは……上条、記憶無いとはいえ、勉強しなかったのが悪い。

 

「赤城は職員室でなにやってたんだ?」

「大覇星祭の選手宣誓やらないかって。俺は今回の大覇星祭っての自体初だし、できればゆっくりしたいんだけどね」

 

 どうも超能力者(レベル5)に声かけしているらしいが、あの白髪の少年も声をかけられたのだろうか。あいつに交渉しに行く人が死なないことを祈ろう。

 

 ついでに、あいつが選手宣誓することを願おう。絶対面白い。

 

「まぁ、こってり絞られてこい」

「……不幸だ」

 

 その言葉に苦笑いを返し、学校の外へと向かう。

 あ、そういやなんか買ってくものあったかな。

 最近の俺の部屋の冷蔵庫は御坂妹が管理してるので、俺はあまり中身を知らない。何か切れてるものがあるか、と思い俺は携帯を取り出し、メールを打つ。

 

「こら」

「あでっ」

 

 取り出したところで、後頭部が誰かに叩かれた。

 

「歩きスマホはあぶないわよ」

「吹寄か。今帰り?」

「ええ。赤城も?」

「あぁ。もしかしたらスーパー行くかもしれないけど……っと」

 

 手の中でスマホが震えた。画面を開くと、そこには『牛乳をよろしくお願いします』と短い返信があった。

 

「うん、スーパー行く」

「そう。私も行くけど、一緒に行く?」

「おう、断る理由もないだろ」

 

 ケータイをポケットにしまい、カバンを担ぎ直す。

 

「最近吹寄と帰るの多い気がするな」

「そうかしら?」

「あんま絡んだことなかったからかな」

「そうね。そう考えると赤城とはあまり話してなかったわね」

 

 そして訪れる沈黙。あまり話してなかったからか、気まずいタイプの沈黙だ。

 

「そういえば」

「ん?」

「噂の年下彼女とはどうなの?」

「おうこら吹寄さんといえどもその発言は看過できないぞいきなり俺のこといじるとか一体全体どういった風の吹き回しでどうしたんだい?」

「っふふ……落ち着きなさいよ。少しからかっただけじゃない」

「いや、いきなりそんなこと言われたらこうなるわ」

 

 吹寄なりに気をつかってくれたのかな? いきなりそんなこと言われるとは思わなかったけど、話のきっかけができてよかった。

 

「あまり赤城と話さないからね。こういう時に話そうかと思って」

「それでいきなり恋バナか。っとはいっても俺に彼女はいないけどな」

「彼女『は』ね……好きな人はいるのね」

「……そういう吹寄は、好きな人いないのか?」

「誤魔化したわね」

「うっせ」

 

 再び落ちて来たカバンを担ぎ直す。動揺したからか、落ちてくるのがいつもより早い。

 

「ほら、上条とか」

「なぜそこで上条当麻が出てくるのかは分からないけど。私は上条当麻のことは好きではないわ」

「……意外」

 

 あいつモテるからなぁ。吹寄のこともすでに落としてると思ったんだが。

 

「でも、こと『は』ってことは、好きな人はいるんだな」

「……今何時かしら」

「誤魔化したな」

「うっさい」

「あでっ」

 

 肘で脇を小突かれる。こういう話を振って来たのはそっちだろうに。

 

「しっかし、吹寄に好かれてるやつは幸せ者だね」

 

 俺がそう言うと、吹寄は不思議そうに首を傾げた。

 

「美人で頭のいい優等生。性格もいいし」

「ふん、褒めても何も出ないわよ?」

「いや、素直な感想」

「……赤城」

「ん?」

「たまには赤城と帰るのもいいわね」

「ん? そうだな」

 

 その後、スーパーでムサシノ牛乳を購入し、家に帰った。

 吹寄もムサシノ牛乳を買っていた。そういや、固法さんもムサシノ牛乳を飲んでたっけ。胸がでかいのって……いや、考えるのやめよう。


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