とある少年の物質変換   作:まうんてんうちうち

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御坂妹がヒロインになってきちゃってる……
佐天を出す機会が最近あまりない……まぁ、話的に仕方がないんですけれども。


26話

「……うまかったな」

「……はい、とミサカは肯定します」

 

 膨れた腹に、肥えた舌。しばらく、庶民的なものが食べたい、と思う給食セットだった。

 

「しばらくインスタントラーメン食べたい」

「ミサカはあなたの手料理が食べたいです」

「あー……じゃあ、朝飯のお礼にとびっきりのを作ってやるよ」

 

 そんな話をしながら、俺たちはゲーセンに向かう。しかし、明日っから御坂妹の昼飯をどうするか。

 

 最悪お金はあるし外食させてもいいけど……なんか悪いしな。作り置きでもしておくか。

 

「ほう、ここがゲーセンというところですか……とミサカは期待に胸を膨らませます」

「おう、俺もあんまこないけどな。何かやりたいのある?」

「では、レースゲームというのをやってみたいです、とミサカは希望します」

 

 その言葉に、俺は辺りを見回してレースゲームを探す。しばらくして、峠を走るタイプのレースゲームが見つかった。

 

「これでいいか?」

「はい、とミサカは頷きます」

 

 レースゲームなら少しはやったことあるからな……マンガも読んだことあるし、知識もあるから……まぁ、負けないかな。

 

 コインを入れ、適当に車を選択する。マンガを見てるといっても車のことはよくわからないので、1番かっこいいのを選んだが、性能はいいのだろうか。

 

「よっしゃ、かかってこい」

「ふふ、ミサカのテクニックで一瞬にしてちぎってみせます」

 

 ギアはうまくできそうにないのでオートにし、レースのカウントダウンが始まった。

 コースは碓氷峠。俺がマンガで1番好きだったところだ。

 

「ミサカの偏った知識を見せつける時がきたようです……とミサカはヒールアンドトゥをします」

「うおっ、曲がり切れん」

「いいんですか? ちぎりますよ?」

「か……慣性ドリフト……?」

 

 レース開始直後、コーナーを3つ4つすぎると、御坂妹の姿は完全に見えなくなった。

 コースを変えて何度かやったが、俺が白星をあげることはなかった。

 

「ふぅ……とミサカは走り屋の伝説を作る前に切り上げて浮かんでいない汗を拭います」

「なんでそんなに速いんだよ」

「ミサカの知識はかなり偏ってますからね、マニュアル車の運転はお手の物です」

「んな知識いらないだろ……」

「よければ教えましょうか? とミサカは上から目線で言ってみます」

「……また今度な」

 

 本当に御坂妹の知識は偏りすぎだと思う。この前は紅茶はどうたらこうたらとか言ってたし。

 

「あ、プリクラありますよ。とミサカは撮りたいことをアピールします」

「んー? ああ、プリクラか……コスプレプリクラ?」

 

 御坂妹が撮りたいと言ったプリクラは、どうやら無料で衣装貸し出しをしているようだった。外のプリクラでは、少なくとも俺は見たことはないが……学園都市ではこれが普通なのだろうか。

 

「ミサカはメイドがいいです」

「じゃあ俺は執事かなぁ」

「それでは主人は誰でしょうか」

「……御坂あたりでいいんじゃね?」

「お姉さまが主人というのは何か嫌です。とミサカは素直な気持ちを述べます」

「それ、御坂の前で言ってやるなよ?」

 

 御坂妹は案外毒舌なんだなぁなんて考えながら、俺は更衣室へと入る。

 

 それに続いて、御坂妹も入る。

 

「……え?」

「はい?」

「いや、なんで入るの?」

「効率がいいからですが、とミサカは答えます」

「効率云々より倫理観を持て。マニュアル車の運転技術なんていらんから」

 

 そう言うと、御坂妹は頰を膨らませた。言葉以外でも感情表現するんだな……なんか、新鮮というかなんというか……

 

「では、ミサカは外で待っています」

「え、先に着替えれば?」

「あなたはミサカをひとりメイド服姿で待たせるつもりでしょうか」

「すぐに着替えます」

 

 そう言って俺は御坂妹を追い出し、できるだけ早く着替え、外の御坂妹と交代した。

 

「……おーい、まだか?」

「もう少しです。とミサカは返答します」

「周りの目線がつらいんだけど……」

「それを狙ってました。とミサカは本音を暴露します」

「おいコラ」

「冗談です」

 

 その言葉と同時、更衣室のカーテンを開いた御坂妹。メイド服姿で、俺特製の変装マスクは身につけていなかった。

 

「プリクラぐらいは素顔で写りたいのですが、とミサカは許可を求めます」

「おう、んじゃ撮るか」

「……似合ってるかどうかくらいコメントをくれたらどうでしょう、とミサカはダメ出しします」

「あ、悪い……うん、似合ってるよ」

「それは良かったです……あなたは微妙ですね」

「うっさいわ」

 

 執事の格好が似合うやつ……上条は多分似合うな。土御門も……サングラス外して髪の毛なんとかすればいけるかな。

 

 ……俺の周りにはイケメンしかいねーのかよ。羨ましいな。

 

「それじゃとりましょうか……意外と狭いんですね。とミサカは初めてのプリクラにとまどいを隠せません」

「あー、そっか。初めてのプリクラか……あれ、ゲーセン自体初?」

「はい、とミサカは肯定します」

「初ゲーセンが俺で良かったのか?」

「問題ありません。とミサカは答えます」

 

 ならいいけど、と返してお金を入れて撮影を開始する。

 ふたり並んでピースサイン、戦隊モノのようなポーズをとったり、ミサカ妹の頭に手を置いたり……まぁ、普通のプリクラ撮影が終わった。

 

「ふぅ、とミサカは初のプリクラのプレッシャーから解き放たれた安息の息を吐きます」

「どんだけ緊張してたんだよ……」

 

 そんな話をしながら、俺たちは元の服へと着替える。

 もちろん最初に着替えたのは御坂妹で、俺はしばらく人の視線に体を貫かれていた。


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