とある少年の物質変換   作:まうんてんうちうち

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毎度のことながら、新しく登場させるキャラの口調がむずい。


25話

「霧ヶ丘女学院から来た姫神秋沙さんでーす、仲良くしてあげてくださいねー」

 

 始業式前のホームルーム。小萌先生がそう言った。その言葉に、クラスの入り口付近に立っていた黒髪ロングの少女が頭を下げる。

 

 しかし、新学期早々いろいろなことがあった。

 この教室にインデックスさんが入ってきたり、上条の知り合いということで青ピが上条を問いただしたり……やはり、このクラスは賑やか過ぎる。

 

 それより気になるのが、土御門だ。寝坊かもしれないとのことだが、いたらいたで迷惑だが、いないはいないで物足りない。

 

「ええなー、黒髪ロングか」

 

 そういえば、と青ピは付け足した。

 

「黒髪ロングといえば……赤やん、年下彼女は?」

 

 その言葉に、上条以外のクラスの男子全員がこっちを向いた。

 

「赤城ぃ! テメェ彼女いたのか!」

「しかも年下だぁ!? うらやま……殺すぞコラァ!」

「死ねリア充!」

「……ほんと、賑やかだなこのクラス」

 

 男子生徒全員の怒声罵声を浴び、ついには小萌先生まで俺に生活指導をしてくる始末。

 転校生そっちのけで、話題は涙子のことばかりだった。

 

***

 

「……疲れた」

「私は誤解される赤城にも原因があるとは思うけどね」

「まあなぁ」

 

 始業式後。御坂妹との待ち合わせ場所に向かう途中、帰る方向がたまたま一緒だった吹寄と俺は話していた。

 普段は帰る方向が違うもんな。寮の方向的に。

 

「にしても、吹寄が俺を誘うなんて珍しいじゃん。何かいいことでもあった?」

「たまたま帰り道が一緒だったからよ。それ以上でも以下でもないわ」

「ですよねー」

「赤城は、なんで今日はこっちの道なの?」

「親戚と飯食いに行くから」

「……ふぅん」

 

 思い返せば、吹寄とこんな風に話したことなかったな。あんまり話さないし、最低限の事務連絡と挨拶くらいしかしてなかったな。

 

「なに、その間」

「赤城のこと、なにも知らないと思ってね。今まであまり話してなかったからかしら」

「あぁ……」

「それじゃあ、私はこっちだから。また明日」

「おう」

 

 軽く手を振り、吹寄を見送る。

 

 ……俺の周りだけか、それとも学園都市全体なのか……女子のレベルが高いよな。御坂とか白井とか初春さんとか固法さんとか……涙子とか。

 

「何をしているのでしょうか、とミサカは背後から確認をとります」

「うおっ! ……クラスメイトと一緒に歩いてただけだよ。いきなり後ろから話しかけるのやめてくれ。ビックリする」

「そんなことより、今日はどこへ行くのでしょうか、とミサカは問いかけます」

「そんなことって……」

 

 まぁいいや、と流して俺は御坂妹に今日の予定を伝える。ちゃんと俺特製のマスクを被って、服もこの前買ったやつだ。

 

 とりあえず、地下街で飯食って適当に遊ぶか。あそこならゲーセンもあるし飯屋もあるしな。

 

「あれは……お姉さまでしょうか」

「ん? ……あ、ほんとだ」

 

 御坂妹の視線を追うと、そこには白井に抱きつかれた御坂がいた。

 

 相変わらず仲がいいなーなんて考えながら、俺はふたりに近づいて行く。よく見ると、白井は足に怪我を負っているようだ。

 

「おっす」

「ん? あぁ、あんたか。なんか用?」

「いや、白井が怪我してるからなんかあったのかなぁって」

「先ほどまで少し……侵入者と思われる方と交戦してましたの」

「侵入者? 学園都市の警備もザルだな」

 

 たまに酔っ払いとか放浪者が迷い込んでくるらしいが……ここにまで侵入を許すなんて、警備員(アンチスキル)は何をしているのか。

 

「てか、そっちは誰よ」

「ミサカです、お姉さま」

「……あんた」

「何を思ったか知らないけど、顔は特製マスクだし、手も出してないからな」

 

 ジト目を向けた御坂にそう答える。白井はなんのことか分かっていないのか、首を傾げている。

 

 それから適当にやりとりをして、別れて俺たちは目的地である地下街へとついた。

 

 ゲーセンやレストラン、アパレルショップなど、いろいろな店が軒を連ねている。

 

「御坂妹はなに食べたい?」

「そうですね……ミサカはあの学食というのを食べてみたいです。とミサカは指さします」

「学食か……いいな。行くか」

 

 GAKUSHOKUと書かれた店に入り、適当に席に着く。

 

「しかし、学食の専門店なんてあるんですね、とミサカは驚嘆します」

「馬鹿みたいに学校あるからな。学食だけで一軒店が出せるんだろ」

「なるほど……では、ミサカはこの常盤台中学の給食が食べたいです、とミサカは希望します」

「この前のステーキより高いな……ま、いっか。すいませーん! 常盤台中学給食セットふたつ!」

 

 店員に注文を伝え、俺は常盤台中学給食セットの説明に目を落とす。ズワイガニだとか、一口の幸せだとか……最上級和牛だとか、説明欄から漂う高級感。

 

 改めて、御坂や白井がお嬢様なのだと痛感した。あいつらどんな食生活送ってんだ。

 

「あなたのサイフは底なしですか、と御坂は開いた口を塞ぎつつ問いかけます」

超能力者(レベル5)の経済事情はアホみたいにすごいからなぁ……奨学金は文字通り桁が違うし」

「それでも、ランチで1食4万円、合計で八万円が消えるのを躊躇しないのは頭のネジが外れてるとしか思えません」

「いや、1食4万円の給食セットを作る常盤台中学のが外れてるだろ」

 

 そんな話をしていると、かなり豪華な食事がふたつ運ばれてきた。

 

「……美味しすぎです」

「……御坂は毎日これ食ってんのか」

 

 文字通り口の中で溶ける肉に、今まで食ってた野菜は賞味期限が切れてたのかと思うほど美味しい野菜、鮮烈な香りを放つカニ。

 

 そして、頼んでから気づいたのだが、常盤台中学の給食セットはコース料理だった。前菜だとかメインだとかがある給食なんて、他にはないだろう。

 

「これは……食べてはいけませんね。とミサカは遠慮を覚えます」

「だなぁ……味覚を狂わせるわ、これ」

 

 うますぎる給食セットに、そんな感想を言いながら俺たちは飯を済ませた。




先日、評価のコメントが来ていることに気づき、見た所、更新楽しみと書かれていて超絶喜びました笑
体育祭で疲れがたまっていたのですが、吹き飛びました

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