「それじゃあ、話を聞かせてもらおうか」
「えっと……その、なんていうか」
「なんでも選んでいいの? 本当にいいの!?」
「おーう、なんでもいいぞー」
「わーい、とミサカはバンザイして喜びます」
「バンザイしてないし、棒読みだし。なにより太るからやめときなさい」
いつものファミレス。時刻は午後6時。
メンバーは、上条、俺、御坂妹、そしてインデックスさん……とかいう銀髪のシスターさん。
席の配置は、窓側に俺、隣に御坂妹。反対側は窓側に上条で、隣にインデックスさん。
絶対偽名だろ、と思ったが本名らしい。世の中には色んな名前があるもんだな。
「……ほら、宿題貸せよ。やっとくから」
「え、いいんでしょうか?」
「上条の頭で終わるんならやらないけどな。どうせ無理だろ」
そう言って宿題をひったくり、ペンを走らせる。
しかし、読書感想文は桃太郎か。なるほどな。上条らしいや。
「……その、実は記憶をなくしてまして」
「うん、それは想定内。どこからどこまで覚えてないんだ?」
「それが、なにもかも」
顔を寄せ耳打ちする上条。インデックスさんと御坂妹はメニューに夢中なので、特に怪しがられることもなかった。
「……なるほどね、通りで俺に挑んできたわけだ」
記憶があるなら、俺に挑むわけがないもんな。友達だし、なにより色々奢って恩も売ってるし、貸しもあるし。
……我ながらクズだな。
「はい、読書感想文終わり。古典も終わったし……あとは数学か?」
「……早すぎやしませんか?」
「選択肢しかなかったし、読書感想文も途中まで書いてたしな。こんなもんだろ」
そう言って上条に宿題を渡したところで、俺は窓の外にたたずむひとりの男を発見する。
葬儀屋のような、黒スーツに身を包んだ糸目の男。その男は、右手についた小さな弓のようなものをこちらに向けた。
反射的に、俺は御坂妹を守るように、被さって盾になる。
「断魔の弦」
衝撃波が走り、窓ガラスが割れガラスが襲いかかる。
その全てを体を硬質化して受けきる。近くに上条がいる場合、酸素にすると無効化されて再びガラスが……なんていうことになりかねない。
「あ、読書感想文が」
桜吹雪のように舞う読書感想文。それ以外の宿題は無事のようだ。
「……これさえ手に入れば用はない」
「インデックス!?」
「とうま!」
「透魔の弦」
一瞬の出来事で、糸目の男はインデックスさんを抱え、姿を消した。
「くそっ! 待てこのロリコン!」
そう言って上条はレストランを飛び出した。
「……行っちゃった」
「守ってくれてありがとうございます、とミサカは頭を下げて感謝の意を述べます」
「どうってことないよ。それよりケガないか?」
「おかげさまで、服にもダメージはありません、とミサカは一周回ってみせます」
うん、無事でよかった。
「追わなくていいのですか? と、ミサカは首を傾げます」
「上条なら大丈夫だろ。弱ってたとはいえ1位に勝ったんだし、そこらのやつにやられはしないって」
「では、ご飯はどうしましょうか」
「んー……そうだな、何食べたい?」
「そうですね、外食という気分ではなくなりました。とミサカはあなたの手料理を食べたいと暗にアピールしてみます」
「暗に出来てないからな。わかった、家で食うか」
そう言って俺たちも店を出る。弁償とかなんとか言われる前に出れてよかった。
まあ、言われたら言われたで上条に押し付けるけどな。あいつならなんとかするだろ。
「じゃあ、何食べたい?」
「あなたの作るものならなんでも、とミサカは良妻を演じてみます」
「妻ってなんだよ妻って。まぁいいや、新同居人のお祝い兼ねて、ステーキでも食うか」
「ほう、もちろんA5ですよね、とミサカは知識にある限り最高級の肉を言ってみます」
「売ってたらな」
「……冗談だったのですが」
少し声のトーンを落として言ったミサカ妹。下世話な話だが、俺にはそんぐらいの金はある。
数分歩いて、普通のスーパーではなく、高級食材などが売っている、普通のスーパーよりもゼロの多い値段のスーパーについた。
たしか、ここは御坂から教えてもらったんだかな。いいものが売ってるって。
「お、A5あった。1万5000円か、意外と安いな」
「……これを安いというあなたの神経がわかりません、とミサカはあなたの頭を心配します」
まぁ、学園都市に来る前の俺ならひっくり返ってたけどな。肉2枚で1万5000円って。
今は金あるからな。感覚が狂ったかも。
「あとはサラダとスープでいっか」
適当な野菜とスープの具材をカゴへ放り込んで、レジを通して店を出る。
現在時刻は……あれ、ケータイが……
あ、ファミレスだ。
「ごめん、ケータイ忘れたから先帰ってて」
「わかりました、とミサカはお肉が楽しみなのをひた隠しにして頷きます」
「ひた隠しにできてないって。すぐ戻るから」
そう言って具材の入った袋を渡し、ファミレスへと引き返す。歩いて数分の距離なので、そんなに遅くはならないだろう。
「……まさか、尾行に気づくとはうわさ以上に超やりますね」
「は?」
アニメでよく聞くランキングで上位にランクインしそうなセリフを言いながら、路地裏からパーカーを着た少女が現れた。
「ついてきてもらいます、第8位」
「……えっと?」
状況の飲み込めない俺は、立ち尽くした。
九月以内には新作を投稿したいと思ってます。なので、更新速度がもしかしたら落ちるかもしれません。