とある少年の物質変換   作:まうんてんうちうち

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一方通行の口調がむずいのなんの……変な感じかもしれませんが、なにとぞお許しください。あまりにも変なら直します。直せるかどうかですが……
あ、お気に入り80件突破してました!評価してくれた人もありがとうございます!
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19話

 8月21日。夏休みも終盤になってきた。

 連絡こそつかないものの、上条はどうせ宿題をやってないんだろうなーと考えつつ、すでに日の沈んだ街をコンビニ目指して闊歩する。

 

 以前、涙子とマネーカード探しをしたのは10日あたりだったので、1週間以上経過したのか。事件がないと、時の流れって早いもんなんだな。

 

 そんなことを考えながら歩くこと数分、目当てのコンビニについた。適当にファッション誌やマンガ、雑誌などを立ち読みして気に入ったのをカゴに放り込む。コーヒーでも買おうかと、飲み物の棚に向かうと、そこにコーヒーはなかった。

 

「……あいつか?」

 

 短く呟き、以前出会ったコーヒー中毒であろう白髪の少年を思い出す。たしか反射の能力者だったか。

 

 ないものは仕方がないので、諦めてレジへと向かう。

 

「あれ?」

 

 ふと外を見ると、見知った姿を発見した。

 常盤台中学の制服を着た、茶髪で短髪の少女。

 

 会計を済ませた俺は、コンビニを出てなんとなく後を追う。すでに常盤台の門限は過ぎているはずだが……まぁ、あいつのことだし抜け出してんのかな。

 

 御坂を追って歩くこと数分、俺は操車場についた。辺りを見回すが、人気はなく、女子中学生が来るような場所ではないことは一目瞭然だ。

 

「……あれ、どこ行った?」

 

 辺りを見回していると、御坂の姿を見失った。

 

「……うーん?」

 

 こんなところに来て、何をやるのかは知らないが嫌な予感しかしないので、御坂の捜索を始める。

 

 捜索を始めて数分。ひとつひとつコンテナを開けて中にいないか、なんて確認している時だった。乾いた破裂音が連続して響き渡った。

 

「ん?」

 

 パパン、パン、パパパパパ……と、リズミカルな破裂音。それと、何か金属を貫くような甲高い音。

 音の正体が気になった俺は、その発生源へと向かう。

 

「……なんだよ、これ」

「あァ?」

 

 音の正体は、銃だった。マシンガンのようなものを握りしめた御坂が、血だらけで倒れている。

 

「おい、御坂!」

「っ……あ、あなたは……」

「御坂……妹の方か?」

 

 近くに駆け寄り、傷を確認する。頭からの流血、全身打撲……その他諸々。重症だ。

 

「はい……と、ミサ、カは返答します」

 

 心なしか光のない瞳に、少し丁寧な口調。御坂妹のようだ。

 

「めんどくせェ……秘密を知った者の口は封じるとかってェお決まりの展開かァ?」

「……コーヒー少年が、まさかこんな悪役だったとはな」

 

 煮えきった頭と裏腹に、俺は冷静に戦力分析をしていた。

 御坂妹は常盤台中学……と、いうことは強度(レベル)は3より上……そんな御坂妹をここまでボロボロにしたコーヒー野郎は無傷。息を切らしている様子もないことから……強度は4の上位から……まさか5か? それとも、体術のバケモノか……いや、あんな細い腕から考えるとそれはない。確実に能力者だ。

 

「だとしたら、負けはないな」

「……はァ?」

「御坂妹はどっか避難しといて」

「何を……」

 

 何か言いたげな御坂妹をおいて、不快そうに顔を歪めた少年に向かい歩いていく。

 あいつの能力は、分かっているところ反射。こちらから仕掛けるのは得策ではない。

 

「こいよ、先手をくれてやる」

「なめてンのか?」

「そうだよ。おら、こい」

 

 少年の数歩手前で止まり、そう言うと少年は愉快そうに口を歪め、コツンと軽く地面を蹴った。激しい音を立て、地面はえぐれ石のつぶてが襲いかかる。

 

「へぇ……それも能力か。面白いね」

「……なにをした?」

「さあね。ほら、こいよ」

 

 襲いかかる石のつぶてを、体に触れた瞬間全て酸素に変換(トランスフォーム)した俺は、当然無傷。

 

「それが能力か……? 面白ェ」

 

 今度は地面に敷かれているレールを蹴った。レールは鈍い金属音を響かせながら折れ曲がり、蛇のようにうねる。

 

「愉快な死体(オブジェ)に変えてやンよ!」

 

 レールの蛇を軽く叩き、俺に向かって発射する少年。俺はそれを全て変換しやり過ごす。

 

 しかし……少年の能力はなんだ? 反射、石つぶて、レール蛇……関連性がない。

 

「……また倒れるかもな」

「あァ? レールが……消えた?」

 

 怪訝そうに呟く少年。俺は足元の石を拾い、能力解析機へと変換する。

 

 こんなとき、俺の能力は便利だ。実際に存在しない物でも変換できるのだから。

 

「……能力名、一方通行(アクセラレータ)超能力者(レベル5)、名前は……」

 

 名前の欄の下、俺は驚きの情報を見つけた。

 

「学園都市第1位」

 

 能力はベクトルの操作……なるほど、反射も石つぶてもレール蛇もできるわけだ。クソチートじゃねえか。そりゃ1位なわけだ。

 

「でも、勝ちは見えた」

「人の個人情報をベラベラベラベラ……ストーカーですかァ?」

 

 あっけらかんに言う少年。しかし、その顔は歪んでいる。

 

「お前の反射、何でもかんでも反射するってわけじゃないんだろ? 例えば光を反射してたら姿が見えないだろうし……重力もだな」

 

 そして、と付け足し俺は手元の小石を変換する。

 

「酸素も……な」

 

 結晶化した酸素に変換し、少年に軽く放る。予想通り、結晶化した酸素は反射されなかった。少年に当たった酸素の結晶は、カーテンにものを投げた時のように少年の足元へと落ちる。

 

「よっし……こっから先は短期決戦だ」

 

 小石をいくつか拾って、そう呟く。人間ひとりを変換したときでさえあの反動があったんだ。現実に存在しないものに変換した時の反動は未知数。決着は早めにつけないとまずい。

 

「勝ちが見えたとかなンとか言ってたなァ……その愉快で素敵な妄想を絶望に変えてやンよォ!」

 

 先ほどとは比べものにならない本数のレールの弾幕を張る少年。少しでも反動がくるのを遅らせるため……といっても、遅らせられるかはわからないが、距離をとって避けられるものは避け、当たりそうなもののみを酸素に変換する。

 

 学園都市の1位といっても、ベクトルの操作という相性柄、俺の能力とは相性が悪いようだ。どれだけ高威力な攻撃をしようと、俺は全てを無傷でやり過ごせる。

 まぁ、やりすぎると反動がくるけど。

 

「どうやらオマエの能力には制限があるようだなァ! 時間制限か質量の制限か回数制限か知らねェが、自分の演算能力の低さを恨めや三下ァ!」

 

 足元の石を蹴り上げ、石つぶてを放つ少年。それを全て避け、離れてしまった距離を縮めようと画策するが、石つぶての第2波によって阻止される。

 

「石を避けるってこたァ質量制限じゃねェな……時間制限か回数制限かァ」

 

 だが、と少年は続ける。

 

「タイムリミットだとかでゲームオーバーなんて楽な死に方させねェ! その表情を後悔と恐怖で埋め尽くしてから殺す!」

 

 そう叫び、再びレールの弾幕を張る少年。距離が離れていたこともあり、俺はその全てを避けきる。

 

「バァカ」

 

 俺の体が大きな影に包まれる。上を見ると、大きなコンテナが複数、重力に従い落下してきていた。どうやら、今のレール攻撃で高く積み上げられたコンテナの山がいくつか崩れたようだ。

 

「さァ選べ……圧死か、毒手か、苦手か、それとも全部か」

 

 少年は距離を詰め、俺に掴みかかろうとしていた。

 

 さすがに人を酸素に変換するわけにはいかないので、身をひねり少年をかわす。コンテナは自分にあたる部分だけ酸素に変換。

 

 まずい……いつ反動がくるのかわからない以上、早く決めないと。

 

「っち……避けやがったか」

 

 コンテナの下敷きになった少年は、コンテナを吹き飛ばしながらそう言った。やっぱ無傷か。

 

「……コンテナの中身は小麦粉みてェだな」

 

 ニヤリ、と少年は口を歪める。そのイタズラを思いついたというような表情を見た俺は、寒気に襲われた。

 

「粉塵爆発って知ってるかァ?」

「うそだろ!?」

 

 そう言って少年はコンテナをひとつ上に吹き飛ばす。体を縮ませ、爆発に備える。せめて表面積を減らし、変換する面積を少なくしないと。

 

 コンテナとコンテナがぶつかり、激しい爆発が起こった。真っ黒な爆煙が辺りを包み込む。

 

「っ……あぶね、酸素に変換してよかった」

 

 自分にあたる爆発を酸素に変換し、酸欠状態を免れる。もし酸素に変換していなかったら……どうなっていたかはわからない。

 

「御坂妹は無事か?」

 

 今の爆発に巻き込まれていなければいいけど……

 

「どこ見てんだ、三下ァ」

「っ!」

 

 後ろからの声に、先ほど拾っていた石を変換し投げつける。しかし投げつけた程度では大したダメージにはならなかった。

 

「面白かったぜェ、オマエ」

 

 少年の手のひらが俺の視界を埋め尽くす。勝ちを確信したのか、少年の声は少し楽しそうだ。

 

「がっ!?」

 

 少年の手が触れようかという一瞬。鈍い音を響かせて、少年は倒れた。少年の後ろには、酸素の結晶をバットのような棒状にして握る俺の分身。

 間一髪、先ほどの石の変換が間に合ったようだ。

 

「ありがとよ……戻れ」

「あいよ」

 

 短い返事を残して、俺の分身は石に戻った。少年は今の一撃で気絶したようで、動く様子はない。

 

「何をやってるのですか……とミサカは問いかけます」

「御坂妹……お前が1番寝てるべきだろ。重症なんだから」

 

 だんだんと痛み始めた頭を抑え、どこからか現れた御坂妹にそう答える。肩口からの出血を手で抑えながらヨタヨタと歩くその姿は、あまりにも痛々しい。

 

「あなたの行動は理解しかねます。ミサカは必要な機材と薬品があればボタンひとつで自動生成できるんです」

「……ん?」

 

 ボタンひとつで自動生成?

 

「どういうこと?」

「ミサカは、実験のために作られた実験動物(モルモット)です」

 

 その言葉に、俺は言葉を失った。頭の痛みも、忘れるほどの衝撃だった。

 

「作り物の体に、借り物の心。単価にして18万円。在庫にして9968も余りある。そんなモノの為にあなたは──」

「ちょちょ……え? 18万円云々は置いといて……あと9968人も妹さんいるの?」

 

 ひとり18万円で、9968人。約18億円?

 

「……まぁ、よく分かんないけど。知り合いなんだし、助けるでしょ」

「しかし……あなたと接触したミサカと、このミサカは別人です。それに、知り合って日も浅いミサカを助ける義理はないかと」

「あ、別人なの? って分かんねぇ……それに助ける義理……助けるのに理由なんているのかな」

 

 首をひねって考える。助けるのに理由なんて必要ない……学園都市に来る前の俺ならありえないよな。銀行強盗の時に白井たちを助けたのも気まぐれが大きかったしな。

 

「んー……あ、じゃあさ」

 

 財布を取り出し、俺は中身を確認する。ひぃ、ふぅ、みぃ……19枚。よし、ギリギリ足りる。

 

「ほい」

「これは……? と、ミサカは首をかしげます」

「18万円。助ける理由、これでできたでしょ」

「どういうことでしょうか、とミサカはさらに首をかしげます」

「これでお前は俺のモノってわけ。自分の所有物を傷つけられたら怒るでしょ」

 

 それを聞いた御坂妹は、驚いたように目を見開いたあと、手を叩いて納得したような表情を浮かべた。

 

「しかし、18万円というのは製造費であって売値ではありません。せめて消費税を払ってください。とミサカは要求します」

「えぇ!? ってことは18万円プラスの8パーセントだから……」

「19万と500円です。とミサカはちゃっかり水増しした金額を伝えます」

「やべ、500円足りねぇ。ど、どうしよう」

「はぁ……カッコつかない人ですね、とミサカは予想の斜め上をいく締まらなさに文句を言いたい気持ちを隠し、ため息を吐きます」

「隠せてないって!」

 

 そんなやりとりをしていると、後ろで何やら物音がした。少年が復帰したのかと身構えると、そこには予想外の人物が立っていた。

 

「あれ……」

「離れろよ」

 

 明らかに怒気のこもった声で、黒髪の少年は言った。

 

「御坂妹から離れろっつってんだ! 聞こえねぇのか三下ぁっ!」

 

 上条が、見たこともないような表情をしてそこに立っていた。




あれ、主人公が金でなんでも解決みたいなゲス野郎に……
なってるのかな、なってなかったらいいな。主観でしか見れないから、どんな印象になってるのかがわからない。

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