「ゲホッ……」
爆煙を吸い込んだのか、咳き込む御坂は涙目になりながら辺りを見渡した。
「ちょっと……え?」
「御坂……よかった、無事か」
「あ、あんた……なんで……?」
さすがに至近距離の爆破には硬質化じゃ耐えられないか……色々と吹き飛んだな。上半身の服とか。
「……少々やりすぎてしまったようだな」
「いいや、そうでもない」
内臓にダメージ、十数カ所の完全骨折、および不完全、亀裂骨折……粉砕骨折もか。
まぁ、関係ない。
「俺は偽物だからな」
「……うぐぁっ!?」
木山先生の首筋にスタンガンを当て、俺はスイッチを押す。
「本物はこっちですよ……先生」
能力を解除して、ボロボロになった俺の姿の偽物を元の小石へと戻す。
「いつの間に……!」
「ここに不時着した後には、俺はすでに偽物でしたよ」
能力で変換したスタンガンだからか、それともとっさに能力を使ったのか、気絶させるには至らなかったようだ。
「だが、君は本物だ」
「そうですね。でも、手遅れです」
こちらに注意を向けた木山先生の腰に、何者かの手がまわされた。
「なっ……」
「学園都市最強の電撃、くらってください」
手の正体は御坂で、俺の言葉と同時に青白い電撃が木山先生の体を迸った。大きな悲鳴をあげ、先生はぐったりとうなだれる。
「っ、なにこれ……」
「ん?」
電撃を放ち終わった御坂は、唐突にそう言った。目を見開き、なにか想定していなかったことが起きたかのような顔をしている。
「見られた……のか……っぐぅ!」
「見られた? ……あれ」
頭を抑えながら言った木山先生に首をかしげる。しかし、思案する時間もなく、俺はがくりと膝から崩れ落ちた。
「……能力使いすぎた?」
人ひとり変換するのは負担がデカかったようで、そのまま俺は重力に従い、うつ伏せに倒れ、意識を手放した。
「……ん」
「譲さん!」
目覚めた俺は、ベッドの上にいた。目の前には知らない天井を覆うように涙子がかぶさっている。
「あれ……涙子」
「大丈夫ですか!?」
「それこっちのセリフ……目、覚めたんだ」
そう言いながら起き上がろうとすると、全身に激痛が走った。
「あ……あれ?」
「だ、大丈夫ですか!?」
「んー……少し情けないけど。大丈夫みたい」
「情けなくなんてないです! 誰が助けてくれたと思ってるんですか!」
「そんなセリフ、初めて聞いたよ」
そう言うと、涙子は少し間を置いて吹き出すように笑った。それを見て、俺もつられて笑う。
「っいててて……」
「譲さん!?」
「大丈夫……あっはは、まさか能力の使いすぎでこうなってんのかな……」
「そういえば、譲さんも入院らしいですよ?」
涙子の言葉に固まる。いや、入院費とかそう言う話じゃなくて。
「……も?」
「はい、実は私も検査入院とかで」
「……マジか」
天を仰ぎ、そう呟く。俺の場合、おそらくは能力の使いすぎで脳に負担がかかったことと、高速道路から落ちた際のケガとかのせいだろう。メインの原因は前者だろうが。
さすがに人ひとりを変換するのは負荷がかかりすぎたのかな。俺、原石だからか演算とかあまり必要ない能力だったんだけど……
「あの……御坂さんから聞いたんですけど」
「ん?」
涙子は思いつめた表情で続けた。
「私が相談しなかったから負担をかけてたって……」
「あー……まぁ、ね」
「私、譲さんに元気のないところ見られたくなくて……」
涙子の言ったことに、俺は言葉が出てこなかった。またネガティブな涙子を見たくないので、俺は右手を動かそうとするがピクリとも動かなかった。
「肝心な時に動かないんだよなぁ」
「……え?」
「いや、なんでもない」
笑ってごまかしながら、俺は右手を呪った。
……呪うついでに、言うか。右腕呪われてるやつが言いそうなこと。
「俺も涙子が元気じゃないところを見たくないよ」
「……譲さん」
「だから、困ったことがあったら俺に言ってくれ。どんな悩みも、どんな困りごとも……俺が全部笑顔に変換してやる」
「…………クサイですね」
「やっぱり?」
困ったような笑顔を浮かべそう言った涙子に、俺は聞き返した。やはり、こう言うセリフは上条にしか似合わないのか。
「俺が言うと締まらないな……まぁ、いっか」
「ありがとうございます……おかげで、元気出ました」
そう言った涙子の顔は、一点の曇りのない笑顔だった。
***
「んー!」
「ようやく退院できたなぁ」
病院の外に出れなかった俺たちは、そう言いながらノビをした。御坂とか初春が見舞いに来てくれてはいたのだが、やはり外に出れないというのはそれだけで退屈なのだ。
まぁ、涙子と同時に退院ていう不幸中の幸いのおかげで、退屈はしなかったが。
「あ、御坂さんたちがファミレスで待ってるそうですよ。退院祝いだとかで」
「おぉ……奢りかな?」
「ですかね?」
そう言って俺たちは顔を見合わせて笑い、ファミレスへと向かう。学園都市でファミレスといったら、まぁあそこしかないだろう。
「あ、涙子」
「なんですか?」
「倒れる前……俺になんて言おうとしたの?」
俺の言葉に、涙子は少し顔を赤くし、少し考えた。
「秘密ですっ!」
そう言って、涙子はあっけにとられる俺を置いて歩き始めた。
「あ、涙子!」
涙子の後を追いかけ、俺は小走り気味でついていく。
あの時、なんて言おうとしたのか、俺にわかる日が来るのだろうか。
なんか最終回っぽい終わりかたですけど、続きます。はい。
もしかしたら、明日は投稿できないかもしれません。結構予定がかつかつなので。
次は水着のモデル編を挟んでレベル6のやつかなぁ。となると、次の戦闘描写は一方通行ですかね。かなーり先ですね。
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