とある少年の物質変換   作:まうんてんうちうち

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前話で時間を食ったしわ寄せがきてしまい、1日空きの投稿になりました。
いつの間にかお気に入りが50人を超えていて、感想も4件。感謝の極みです!

かなーり後になるとは思いますが、新しいの書いて投稿しようかなーなんて思ったりしてます。宣伝ですが笑



14話

「ちょっと、もっと速くならないの!?」

「限界だよ! 免許取りたてなめんな!」

 

 そこらへんの小石を変換(トランスフォーム)したバイクをかっ飛ばして、高速道路を限界速度で爆走する。

 木山先生は、どうやら警備員(アンチスキル)と交戦中のようで、なにやら能力を使っているらしい。それも、複数。

 

「……見えた!」

 

 ドリフトをするように機体を横向きにして、ブレーキをかける。ある程度スピードが落ちると、御坂は飛び降りた。少なくとも女子中学生がすることではない。

 

「……あぶねぇ事すんなぁ」

 

 そんなことを呟きながら、俺はバイクのスピードを完全に殺してからおりる。

 青のガヤルドが止まっていて、俺たちの来るのが遅かったか、砂けむりの立ち込める現場は戦闘の凄惨さを物語っており、駆けつけていた警備員は全滅していた。

 

「初春さん!」

「……安心しろ。戦闘の余波を受けて気絶しているだけだ」

 

 車の中を見て、叫んだ御坂に白衣をたなびかせながら木山先生は答えた。

 

「御坂美琴……そっちは赤城くんかな? 超能力者(レベル5)が2人も来るとは」

「俺、木山先生に自分の強度(レベル)を話した記憶はないんですけどね」

「この状況でもまだ先生と呼んでくれるのか……君のことは聞いていたよ。3ヶ月ほど前、ありえないほど優秀な能力の原石が学園都市に入ったとね」

「そりゃ、どーも」

 

 皮肉げにそう言うと、木山先生は目を伏せた。

 

「君の能力の真髄は、触れたものを存在しないものにすら変えられるところにあるんだろう?」

「個人情報はダダ漏れってわけね……まぁ、書庫(バンク)検索すれば1発だから別に驚きませんけど」

 

 そう言って俺はバイクに触る。バイクは変な機械音を発し、2メートルほどのロボットへと変換(トランスフォーム)した。

 

「なら、俺に勝てないことは分かってるはずだ。投降して、すぐに涙子を起こしてください」

「それはできない。すまないが、目的があるのでね。終わったら無事に解放するよ」

「……交渉決裂ってわけか」

 

 大きくひとつ息を吐いて、ロボットを木山先生の元へと向かわせる。

 

「こんなもので止められるとは、思ってもないのだろう?」

 

 木山先生はそう言って手をかざし、火球を出してロボットを焼き尽くした。激しい爆発を残して、ロボットは跡形もなく消え去る。

 

「御坂!」

「分かってる!」

 

 爆発を煙幕がわりに、御坂は死角から電撃を撃つ。

 

「なるほど、超能力者を2人同時に相手しなければいけないのか。つらいな」

「なっ!」

 

 なにかバリアのような能力でもあるのか、そこには無傷で立つ木山先生の姿があった。

 

「……だいぶ分が悪いな」

「なら、投降してください」

 

 戦闘で損傷した高速道路のカケラをいくつか拾い、投降を勧める。

 

「超能力者ってのは軍隊とも対等に戦えるって言われてる……つまり、一国の軍事力に匹敵するんだ。ふたつの国に喧嘩を売って、勝てると思ってるんですか?」

「勝てない戦いでも、私は挑まなきゃならないんだよ……あの子達のために」

 

 静かに、強く言い放った木山先生の足元から衝撃波が放たれた。

 

「んなっ!?」

「うそだろっ!?」

 

 高速道路は崩れ、7、8メートル……下手したら10メートルは下にあるんじゃないかと思われる地面に向かって、俺たちは声を上げ、重力に引かれ自由落下する。

 

「っち!」

 

 舌打ちをして先ほど拾ったカケラを、崩壊しなかった場所に向かって縄に変換したものを放り投げる。

 

「空中なのが災いしたな」

 

 そんな木山先生の声が聞こえた頃には、縄は火球によって焼かれ、断線していた。

 

「くそっ!」

 

 体を目一杯硬化させ、衝撃に備える。御坂はうまく能力を使って壁に着地し、威力を殺したようだ。

 大きな音と、土煙を上げ、俺は瓦礫の上に不時着した。硬化させたものの、ところどころ服は破け、汚れがつき、おまけに体も軽度の打撲を負ったようだ。

 

「あんた、大丈夫!?」

「一応俺も超能力者だ。余裕だよ」

 

 土汚れを軽く払い、御坂の言葉に頷きながら立ち上がる。こと戦闘に関しては不意打ちでも喰らわない限り御坂に負ける気はないが、どうも戦闘経験は俺の方が下だ。とっさの判断は、御坂が何枚も上手なようだ。

 

「さすがは超能力者、といったところか。あの高さから落ちて無傷とは」

「学園都市最強の8人のひとりなんでね」

 

 くそ、アウターが……涙子のデート用に奮発して買ったのに……6桁もしたのに……まぁいいか

 

「あんたは少し休んでなさい……私がやるわ」

「電撃防がれて悔しいのか?」

「うっさいわね!」

 

 大きな声を出し、御坂は地面に手をかざした。青白い電撃が地面に吸い込まれ、代わりに大量の黒い砂が地面から湧き上がる。

 

「うわっ……なにそれ」

「まぁ……チェーンソーみたいなもんよっ!」

 

 そう言った御坂は、黒い砂をいくつかに枝分かれさせ、木山先生に向かってうちだした。

 

「んなっ!?」

「なるほど……君は応用性の高さが強みか」

 

 木山先生は瓦礫を引っ張りだし、盾のように構えて全ての黒い砂を防いだ。

 

「あまり使いたくなかったんだが……仕方ないか」

 

 近くのゴミ箱が浮き、中の大量の空き缶が降り注いだ。

 

「空き缶……?」

「まさか、グラビトン!?」

 

 御坂は焦りを含んだ声でそう言った。

 

「さぁ、どうする?」

「吹っ飛ばす!」

 

 少し前に出て、御坂はそう言って電撃を身にまとった。すこしすると、御坂を中心に、電撃のドームが出来上がる。大量の空き缶は電撃に撃ち抜かれ、音を立てて爆発した。

 

「すごいな……だが」

「……っ、御坂!」

「え?」

 

 木山先生の手に握られていた空き缶が消え、御坂の後ろに現れた。

 

「くっそ!」

 

 足に鞭を打ち、駆け出す。間一髪、御坂と空き缶の間に体を滑り込ませる。

 

「あんた……!」

 

 御坂のそんな言葉が耳に入ると同時、空き缶が大爆発を起こした。


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