とある少年の物質変換   作:まうんてんうちうち

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ほんとーに息抜きの息抜き程度に書き始めました。普段は、新人賞に応募する用の小説などを書いていて、賞をとったことはないですが、一次審査や二次審査に通ったことは何度かあります。
息を抜きすぎて、手抜きにもほどがあると言われるくらい適当に書いてますので、ご了承ください。さすがに手を抜きすぎだという意見が大量に来ましたら、力を入れて書きます。二次創作自体も初ですので、キャラの口調、性格などが違うということもあるかもしれません。
そこまで見てくれるかが問題ですが笑


1話

「あ、お兄ちゃんいたいた!」

「へ?」

「あぁ?」

 

 黒髪ツンツン頭の少年に声をかけると、周りに群がっている不良らしき少年達もついでに反応した。よく見ると、常盤台中学の制服を着た少女もいるので、どうも不良少年達がナンパをしていて、少年が助けに入った……と見受けられる。

 

「お兄ちゃんがお世話になりました……ほら、お兄ちゃん行こー?」

「……いや、誰?」

「やだなーお兄ちゃん、可愛い妹の顔忘れたの?」

 

 はい、これ忘れ物と言って、少年に一枚のプリントを渡す。プリントに書かれた文字は、話し合わせろの6文字。

 

「……あぁー、ごめんなぁちょっとうっかりしてたー」

「もー、お兄ちゃんったらぁ」

「……なんであんた男もんの制服着てるのよ」

 

 棒読みの少年のセリフをうまくカバーしたつもりが……この常盤台中学の子、とんだ伏兵だったようだ。

 

「おぉ、言われてみればそうだな」

「そういやこいつ、やけに棒読みだったぜ」

「このツンツンとおんなじ制服だな」

 

 ポク、ポク、ポクと、なぜか木魚のような音が頭の中に響いた。

 

「……おまっ、うまく合わせろよ! 兄妹のふりして連れ出す作戦が台無しだろ!」

「なんでそんなめんどくさい事しなきゃなんないのよ」

「せっかく女に変身してきたってのに、ふざけんなよ!」

「まぁまぁ、落ち着けって」

 

 そう言って少年が俺の体に()()で触れた。俺の体は、元の黒髪、176センチ76キロの少年の姿に戻った。そのせいか、全身から嫌な汗が吹き出る。

 

「……あぁ? なんだテメェ、ナメた真似しやがって」

「うぇ、あんた女装してたの? 気持ちわるっ」

「やかましい! こっちはお前とこのウニを助けるために必死だったんだ!」

「誰がウニだ!」

 

 俺らが言い争っているうちに、不良たちは俺たちのことを囲い込んだ。何がおかしいのか、下卑た笑みが顔に張り付いている。

 

「はぁ……あのさぁ、お前らムカつくんだよなぁ」

「はぁ?」

「よってたかって女の子をいじめて、100歩譲らなくてもこのウニは好きにしていいけどなぁ」

「おいコラ」

「100歩譲っても譲れねぇ、女の子いじめるとは何事だ!」

 

 俺の言葉に驚いたのか、少女は目を見開いた。ウニは俺を睨んでるが。

 

「まだ反抗期も抜けてないちんちくりんじゃねーか! さっき俺が変身してた女の子のがまだ可愛いだろ! お前ら揃いも揃ってロリコンか!?」

「……あの、譲さん? 赤城譲(あかぎじょう)さん?」

「んだよ上条!」

 

 俺の言葉に、上条は親指で常盤台中学の少女を指し示した。

 

「私が一番ムカつくのは……」

 

 何かが弾ける音と、青白いスパークが少女の体を包んでいる。その姿は、彼女が電撃使い(エレクトロマスター)であることを端的に示していた。

 

「お前だぁ!」

 

 叫ぶ少女。それと同時に、放たれる電撃。上条はとっさに右手を出したので、俺は上条を盾にする。

 

「……ん?」

 

 少女の周りには、こんがり焦げ目のついた不良が数人。上条はうまく打ち消せたのか、無傷。もちろん盾にした俺も無傷。

 

「なんで……?」

「なんだかんだと聞かれたら」

「……あ、答えてあげるが世の情け」

「反応おせーぞ上条」

「振り方雑すぎやしませんか?」

 

 某アニメの某敵役を演じていると、少女は再び電撃を身にまとった。

 

「あ・ん・た・た・ち・はぁ……」

「……さてさてさーて、逃げるか!」

「あ、おい待てよ譲!」

 

 全力で駆け出した俺に、数歩遅れながら上条はついてきた。その数秒後、全身をバチバチと怖い音を鳴らしながら、少女もついてくる。

 

「待ちなさーい!」

「足速いなあの子……しょうがない。上条、作戦その1だ」

「おう、どうするんだ?」

「とりあえず、次の角を曲がってくれ」

 

 そう言うと、上条は路地裏へと曲がって言った。俺はそのまま真っ直ぐ進み、きちんと曲がるのを見届けて、聞こえるギリギリでこう言う。

 

「そっち行き止まりだから、囮よろしく」

「嘘だぁあ!」

「私がムカつくのは……お前だぁ!」

 

 少女は青白い電撃を、槍のようにとばした。狙いは行き止まりの上条ではなく、現在進行形で全速力の俺。

 

「嘘だろ!」

 

 ただでさえ速い電撃を、不意打ちにも似た形で撃たれては避ける術があるわけもなく、俺の体は電撃に貫かれた。

 

***

 

 目を覚ますと、そこに天井はなかった。代わりに、街の明かりで少なくなった星々がのぞいている。

 

「あ、起きた起きた」

「……」

「なかなか起きないから心配したわよ……はい、ヤシの実サイダー」

 

 体を起こし、あたりを見渡す。どうやら場所は公園らしく、俺はベンチに寝ていたらしい。近くには茶髪少女とウニの他には人ひとりいない。

 

「そりゃあ、ねぇ。電撃をまともにくらって無事ってのはそこのウニくらいなもんでしょ」

「あのー、譲さん。今日はご機嫌ななめなんでしょうか?」

「当たり前だろ。何が悲しくてお前のことを媚びた声で『お兄ちゃん』って言わなきゃなんねぇんだよ」

 

 ブツブツと文句を言いながら、少女からヤシの実サイダーを受け取りプルタブを起こす。プシュッと空気の抜ける音を鳴らしたそれを、二口、三口と飲んで話を続ける。

 

「てかあんた、肉体変化(メタモルフォーゼ)? 珍しい能力者ね」

「あー……ちょいと違うんだよなぁ……まぁ、似たようなもんだよ」

「へぇー……いいわね、便利そうで」

 

 そう言って少女は黒豆サイダーに口をつけた。思うのだが、ヤシの実サイダーといい黒豆サイダーといい、変な飲み物が多すぎる。レインボートマトジュースとかじゃなくて、もっとこう、普通のコーラとかないものか。

 

「いやいや、電気のがいいだろ。ケータイ充電できるし」

「そーかな、私はそっちのがいいと思うけど」

「……」

 

 俺と少女の能力談義に、口を挟めない上条。お前は女にモテる能力レベル5なんだからいいだろ。

 

「都市伝説、しらない?」

「都市伝説? ……あまり」

「そしたら帰りにコンビニで雑誌でも見てみな。カオナシ男とか、怪人100面相とか、そんなこと書いてあったら大体俺のことだから」

 

 あの手の雑誌の都市伝説は、大体存在している。どんな能力も効かない能力とか、脱ぎ女とか、クローンはどうか知らんが。

 

「そんじゃ、帰るか」

「そーねぇ……私は門限すぎてるし、迎えに来てもらおうかな」

「それじゃあ……迎えが来るまで待った方がいいよな?」

「だな」

 

 上条の言葉に頷く。身にしみてわかったが、少女は高位の電撃使いだろう。ただ、一応中学生だ。夜遅くに一人ぼっちにさせるわけにいかない。

 

「いいわよ別に、自分の身ぐらい自分で守れるわよ」

「それでも……一応、ねぇ?」

「いいって。見られたらめんどくさいのが来るから」

「そう? じゃあ……帰るか上条」

「あ、ちょっと」

 

 帰ろうとした俺たち、正確には俺を、少女は呼び止めた。

 

「その……悪かったわね」

「あぁ、いいよいいよ。気にしてないから」

 

 そう言って再び家に向かって歩く。家に着いてから、名前を聞いてなかったことを思い出した。


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