工兵のGGO   作:流舞

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本当にすまないと思う

夏の焼けるような直射日光、そして四方八方から響く蝉の鳴き声の中詩乃の家へと歩く。蝉の鳴き声は嫌いではない、うるさいけど。

 

しかし何故蝉はあんな中身カスカスなのに突撃してきた時あんな威力を持っているのだろう、あれで中身も詰まってたらおそらく怪我する人が多数現れるだろう。

 

 

 

「朝田さん!朝田さん!」

 

詩乃の家へ着いた、残念なことにインターフォンには大型のアサダ蝉が鳴いており俺はこれ以上近づきたくない。

 

 

【アサダゼミ】

朝田詩乃にまとわりつく厄介なセミ、体は華奢で大人しそうな顔をしているが朝田詩乃に近づく男には容赦なく鳴き声で威嚇を行い周りの人をドン引きさせる。

他のセミと違い寿命が長くしぶといことで有名。

 

 

 

「はぁ、めんどくせ」

 

 

詩乃にLINEをしてないから別に今日合わずともいい。

 

そう思い回れ右で帰ろうとしたが残念なことに爪先を上げた段階でアサダゼミはこちらに気付き、盛大に鳴き声を上げ始めた。

 

 

 

「仁さんじゃないですか、何の用ですか?今日は僕が先に朝田さんと約束してたんです、帰ってくださいよ」

 

「知らんよ、詩乃は了承したのか? そうじゃねぇとお前ストーカーみたいだぞ?」

 

 

呼んでないのに誕生日会に来る奴とも見えるがやめておこう、偏見で物を言っちゃいかん、ストーカーも偏見だけど。

 

 

「てか何用で来たんだ?」

 

 

「・・・このあいだのことを謝りたくて」

 

新川ボーイは先程の勢いが何処へやら、俯いて蚊の鳴くような声で言う。

 

 

謝る、それができる人間は素晴らしいと思う、だが残念なことに俺にも謝らねばそうとも言えない、まぁ求めちゃいないが。

俺は素晴らしい人間なんかじゃないからこないだの事は謝らんよ?

 

 

「へぇ、ならさっさと終わらせてくれよ」

 

 

「朝田さんに直接謝りたくて、でも家に入れてくれなくて・・・」

 

「そう簡単に女子の部屋入れるか!?」

 

「前は入れて来れたんです、でも最近は・・・」

 

 

女子の部屋。そう、それは秘密の花園。

男子高校生の憧れランキング殿堂入り済み。

 

その場所にこの小僧は入っただと?

 

 

「前は料理作ってくれたりしてて・・・朝田さん・・・」

 

なんやと?

 

男子高校生の憧れランキング繰り上がり一位の女子の手料理を食べただと!?

 

「fuck you」

 

「は?」

 

「いや、なんでもない」

 

 

詩乃よこの現状はお前にも責任があるぞ、決して新川くんのせいだけではない。こりゃ勘違いもしますわ、むしろしなきゃ男かどうかすら疑わしい。

 

ある人は言った、女性が家に上げてくれるのはOKのサインだと。

 

 

やってますなぁ詩乃さん。

 

 

新川くんごめんな、絶対に言葉にはしないけどごめんな・・・なんか、うん、まぁ、うん、ごめんな。

 

現状、詩乃とはそう言う関係とも言えるためあまりこう言う風に言いたくはないが俺は勝者となるのだろう。

 

ただなぁ、詩乃よぉ・・・。

 

ポケットの中で持ったままのスマホが震える、取り出すと暑さとは別の汗でべっとりとしてる。

 

画面には詩乃から『帰った?』とのLINEが来ていた。

 

帰った?じゃ無いったい、きさんやったことやちゃけ自分でどげかせんね!?

 

 

『僕は今だけは新川くんの味方です、顔出してやんなさい』

 

 

今だけだ、今、本当に今この数分だけ新川くんに味方させてもらう。

 

『謝りたいって言ってるんだからそれくらい良いじゃねえか』

 

『それ以外あったらどうするのよ』

 

 

可能性があるってのがおかしいけどな。

 

 

『俺いるから大丈夫』

 

『何かあったら助けなさいよ』

 

やっとの事で詩乃が階段を降りて来る、めっちゃ俺を睨んでいるが俺だって少し言いたい事はある。俺と新川くんが逆の立場なら俺は一生恨むわ。

 

 

「朝田さんごめん、あの時あんなこと言って気が動転しちゃってたんだ、本当にごめん」

 

「良いわよもう終わったことだし・・・」

 

 

心底めんどくさそうな顔で詩乃は謝罪を受け入れる、態度というものがあろう、新川くん以外なら謝った気になれんぞ?

 

 

 

「ごめんね、これから予定あるそうだから帰るけどまたあっちで」

 

「うん・・・時間が合えばね・・・」

 

「うん、じゃあね!」

 

 

 

詩乃が出てきて一分も経たずに話は終わり新川くんは帰って行った。

帰り際、新川くんの表情が晴れやかだったのが救いか。

 

 

「ねぇ、私新川くん苦手なのわかってるでしょ、何でこんなことするのよ」

 

 

見ても聞いてもわかる通りご立腹である、そらもう出てきた時からわかってたけどな。

 

 

「まぁ飯でも行こう、そう睨まれちゃ落ち着いて話もできない」

 

「まぁいいけど、何でいきなり来たのよ」

 

「色々とね」

 

 

ここまで紆余曲折あったがようやく本題に入れる、とここに来るまでは思っていた。しかし最後にまたも横道に逸れてしまうとは、人生山あり谷あり。

 

 

「家来ればいいじゃない」

 

「お前さぁ・・・いや良いや」

 

説教は趣味じゃないが色々言いたい、別に家でいいなら家でいい。

 

実演してやろうじゃないの。

 

 

 

 

 

俺は初めて詩乃の部屋へと足を踏み入れた。




原作の朝田さんみたいな行為をされちゃどんな奴でも勘違いしますって、新川くんが執着見せるのは朝田さんのせいもありますよ。
それにしても新川くんが異常なのはわかりますが。

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