工兵のGGO   作:流舞

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思わぬ戦い

今はポイントマンをシノンが務めている、二人分隊でポイントマンもクソもねぇだろうけど。

 

「シノン、グロックの方がいいんじゃねぇか、SRじゃ不意打ち対応できないだろ」

 

「・・・」

 

「おいシノン」

 

「・・・」

 

「どこに向かってんだよ、敵の襲撃が増えてるんだから気をつけてくれよ?」

 

「・・・」

 

 

はぁ。

 

 

俺が何を言おうともシノンは見向きもせずFR-F2を持ったまま進み続ける、さっきから襲撃の数も増え弾薬も半分を切ってしまった、そしてシノンは研究室の探索をすることなく進んでいるため補充も出来ない。

 

 

このご立腹のお嬢様をどうなだめるべきか、帰ってパフェとか甘いものでも買うてやろうか・・・。

 

そう考えているとまたも敵襲。

 

 

「バカタレ!伏せろ!」

 

 

襲撃であろうと気にせず前へと進もうとしたシノンを脇にある研究室へ押し倒す、背中に数発当たった様な気もするが気にしてはいれない、防護フィールドがあろうとダメージは食らう。

 

 

「馬鹿野郎、お前の為に来てんのにお前が死んでどうする、頭おかしいんじゃねぇの?」

 

 

「・・・」

 

 

シノンは研究室で仰向けになったままこちらに目線すらやらず天井を眺めている、先程から様子がおかしいのは気付いているがこれはあからさまにおかしい。

 

「おいシノン、大丈夫か? 一回帰るか?」

 

 

「いい、このままで」

 

 

やっとこさ返事を返すが言葉に感情が乗っておらずまるで口から音源だけを出している様な感覚に陥る。

 

しかし敵が迫っている為そんなことを言及する余地もない。

 

 

 

ドアから入って来た敵の銃を掴み射線を外しつつ首のコードを引き千切るとガクガクと身体を震わせる、ロボット兵は装甲が硬いのが特徴だが剥き出しのコードが弱点のため接近が出来れば素手でも十分相手できる。

 

最後にコードを引き千切ったロボットの装甲の隙間にフラグを詰め込んで外へと蹴り出す。

 

 

 

「シノン伏せろ!」

 

「・・・」

 

「動けやクソが!」

 

 

首根っこを捕まえデスクの裏へと投げると、それと同時に通路から爆発音が響き開いたドアから来る爆風で身体が壁に叩きつけられる。

 

 

 

「いってぇ・・・シノンマジでふざけんなよ」

 

だんだん口調が荒くなって来ているがシノンが悪い、動かぬ喋らぬ抵抗せずとパーティを組んだ意味が無いし誰のためのクエストだよ、別に見返りを求めているわけではないが目的意識というか何故にこんなにも急にやる気を無くした?

 

 

「ほんとに何やってんだよ、せめて身を隠すくらいやってくれよ、さっきもそれくらいしてくれてたら別にあの場で敵も倒せたし俺が変にダメージ食らうことも無かったんだよ」

 

「・・・」

 

「おいマジでいってんだよ、その綺麗な顔フッ飛ばされたいか?」

 

我慢の限界とはこの事か。

 

襟首を締め上げシノンの顎下に右手で抜いたUNICAの銃口を突きつける。

 

 

「お前がそんな適当にプレイするならそれでいいさ、だが俺と組んでる時は無しにしろよ、こっちも我慢の限界ってもんがあるんだよ」

 

「・・・」

 

「めんどくさくなってんならもう帰るぞ、そんなん・・・」

 

 

俺は途中で言葉を無くす。

 

 

何故かと言われたらナイフが右腕から突き出ていたからだ、ナイフを辿って行けば左手、左腕、左肩、そして感情の見えない水色の瞳。

 

 

俺がゴトリとUNICAを地面に落としたと同時にシノンの右手がバックサイドホルスターに伸びG18を俺へと向ける、俺は襟首をつかんでいた手を離しG18を持つ手を弾くとG18の弾丸が室内にばら撒かれる。

 

 

 

さっきから様子がおかしいとは思っていたがやはりこいつはシノンではない。

 

俺が減らず口を叩いてもシノンの返しが下手くそだったし無視すらしていた、それが普通すぎて何も感じなかったがよくよく考えればシノンが怒っていたとしても皮肉って来たりとそんな事はこれまで一回も無かった。

 

はず。

 

 

 

まぁ理由なんでどうでもいいや、ムカついたから殺す。

 

 

 

弾き飛ばしたG18の弾は既に撃ち尽くしておりホールドオープンしている、左手で髪の毛を掴み膝蹴りを顔面へと叩き込むが表情に変わりはない。

 

以前シノンが格闘術教えて欲しいと言って来たので容赦なく地面に叩きつけ顔面への踏みつけをしてやったらガチ泣きさせてしまった、それに比べシノンっぽいこいつは表情を変える事なく後退する。

 

やっぱ違うんか。

 

 

離れ際ナイフを抜いて行ったためシノンの武装は右手にG18と左手にナイフ、俺は右手は動かず左手は問題無し、武装も無し。

 

さぁどうしようか。

 

 

右手のG18はホールドオープンしたままでリロードするような気配はない、そら対面した状態でリロードとか殺してやる自信しかねぇ。

 

 

ジワジワと詰め寄る、思いっきり手を伸ばせば届く距離までに近づくとシノン(偽)はG18を投げつけてくるという意外な手段に出た、それを払うと同時に足元からは煙が立ち昇りシノンは研究室の割れた窓から飛び出て行く。

 

 

追おうとしたが外には敵がどこにいるかわからない、ため追うのは危険、シノンが持っているのはSRのみ、研究所の立地で言ったらこちらが有利、だがこちらは右手が使えない、しばらくすれば使えるようになるがいつ攻められるかわからない。

 

 

ひとまず落としたUNICAをホルスターへと直しM14を担ぎ直す、思わぬ戦いになったが意外と面白そうだ、相手はプレイヤーかもしくはNPCか、どんな手を使ってくるんだろうか。

 

 

研究室から頭を出した時、予測線が走りすぐさま頭を引っ込める。

 

トリガーから指を離さずかけっぱなし。

 

 

割れた窓を鏡のように使い通りを偵察すると奥の研究室の陰からこちらを狙っているのが見える、勿論武器はいつものFR-F2。

 

 

しかし俺が持つガラスを撃ち抜こうともしない、そして隠れようともしない事で敵だという事がわかる、プレイヤーなら妨害するか身を隠すだろう。

 

 

M14だけをドアから出し大体の当たりをつけ盲撃ちで牽制したのち研究室から出る、NPCは銃弾が飛んでくると頭を隠すから相手がしやすい。

 

前方にある研究室の窓は先程のフラグでことごとく砕けており足元にはガラスが散らばっている。

 

まだ右腕は動かないためM14を左手に持ち片手で保持して通路を進む、進むたびガラスが割れる音が響き接近は確実に気づかれている。

 

シノンの陣取った場所を見れば後方に階段がありそこに行くには唯一の通路である中央を通らねばならない、進みたくば我を倒せと言わんばかりの形である、

 

 

 

俺がジワジワと進んで行く、レティクルを合わせるはシノンが隠れた角に合わせておりいつでも撃てる。

 

しかしシノンは出てこない、階段を降りたかな?

 

 

そう思いサイトから目を離すと同時にシノンが頭を出し射撃してくる、必死で飛び退くがしっかり胸に当てHPバーは残り三割、同時に俺も撃ったが飛んでいる姿勢で当てられるわけもなくシノンは無傷で壁に隠れる。

 

 

飛びのいた先は別の研究室、こんなに小分けにして何を研究してたのか。一応このゲームも色々と設定はあるがよく知らない、グロッケンが宇宙船って事は知ってる。

 

 

 

そんなことを考えつつも回復剤を体に打つ、最近のゲームは体力自動回復が流行っているがこのゲームはそんなこと知らんと言った風に回復はスキル、もしくは道具任せにされている。

 

 

フラグは全て使い切っておりスモークもない、部屋の中を探すが時に有用そうなものもない・・・あ、あった。

 

 

パソコンが乗っているデスクの下で見つけたものは昔懐かし消火器、皆様もやる事は分かっているだろう。




一度切ります。

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