工兵のGGO   作:流舞

69 / 74
AMIDA


お化け屋敷

特にプレイヤーの襲撃もなくダンジョンへ到着した。

 

前情報を流し読みしたが遺跡を改造した近代的な研究施設と言う設定らしい。

この施設で作られたモンスターやロボットなどがダンジョン内を跋扈しておりその中のラスボスとも言える最下層に配置された大型モンスターは作った研究員にも制御できず暴走し研究所から人を殺し尽くした。

 

と言う設定。

 

 

まぁ敵はロボット兵士と生物兵器。

 

このゲームの生物兵器は皆敬遠しがちだが俺としては案外嫌いではない、楕円の形で口?の周りに脚が付いている、時には飛ぶ個体もおり見る人を楽しませてくれる。

 

「ジン!早く!」

 

 

その中でもまだ未成熟の個体の攻撃手段は飛びつきだけのため見方を変えればサイズも相まって胸に飛び込んでくるワンコみたいに感じる、成熟した個体は容赦なく溶解液を飛ばしてくるため悲しいことに殺さなくてはならない。

 

 

「なにやってんのよ!」

 

 

悲しいけど、これって戦争なのよね。

 

 

 

「ギャー!!ジン!早く殺してって!」

 

 

シノンの脚に小型の生物兵器がよじ登っている、喚くでない、この子らはただじゃれついているだけだ。あぁ、そんな乱暴に。

 

堪らずシノンは銃を逆に持ちストックで殴り飛ばす、そして俺をも殴り飛ばす。

 

 

「助けてよ!」

 

「え?虫苦手?」

 

「苦手とかじゃないけどあれは誰だって嫌がるわよ!」

 

 

若干涙目で俺に詰め寄る、正直言うとふざけ過ぎた。

 

大体あんな虫可愛くねぇよキモいだけだよ、ナウシカでも怖くない、怖くない、っていいながら騙し討ちで踏み潰すわあんなもん。

 

 

「はーっ、はーっ、はーっ」

 

 

 

手に持つG18の空弾倉を交換しつつ潤んだ目で睨みつけ肩で息を整える、器用なもんだ。

 

研究所内は狭く作られておりSRでは取り回しが悪いため入ってからずっとシノンはG18を使っている、俺もサブを使うかと思ったが研究所ということで普通の家よりも道やドアは広く作られているためM14でも問題はない。

 

UNICAの悪口ではないが襲いかかる軍勢にはM14じゃないと間に合わないということもある、ましてや7.62mmの貫通力のおかげで効率的に敵を倒せているということも事実、シノンがG18で倒しているのは足元をくぐり抜けてきた手負いのロボットか小型の生物兵器だけなので現状は問題なく進めている。

 

 

まぁ問題ないのは体力的な面であり精神的にはだいぶキテいるっぽい、現に横を歩くシノンの銃口はカタカタと震えている、ここまで弱るのは珍しい。

 

「シノンはお化け屋敷苦手?」

 

「いや・・・苦手じゃないけど、怖いのとビックリは違うのよ・・・後ろの方が怖いから先に行かせてよ」

 

 

あぁわかる、ホラー映画で言ったら洋画と邦画の違いみたいな、最近は洋画の方も素直に怖いのがあるけどジャパンホラーってカテゴリ分けされてることで方向性の違いがわかりやすい。

 

言うて俺はホラー苦手だからわからんけどな!

 

 

「・・・もうちょっと寄ってよ」

 

「ホラー映画のパターンだと俺が敵になってもおかしくないんだけどな、ここの設定ならロボットと入れ替わってる。とか?」

 

「そんなバカなこと言うロボットがいたらバグとしか思えないわよ」

 

「・・・さ、行こうか」

 

 

いたずら心でそれっぽいこと言ってみたら逆に俺にダメージが入った。

 

「前行かせて・・・後ろ怖い」

 

「虫の相手しなきゃいけなくなるけど?」

 

「・・・やめとく」

 

 

続けて俺がポイントマン、さあダンジョンに戻ろう。

 

敵は研究者のロボット。という設定のためか防護フィールドを纏っていた、安牌と考えて光学銃を持ってきていたら狩られていた所だった、しかし図らずも持ってきたのは実弾のため敵を狩るのにも余裕がある。

 

実弾防御は低いようで二体貫通させても余りある威力のM14は案外最適武器なのではないだろうか?

 

「ジン来たわよ」

 

「うぃ」

 

前方からはロボットと虫が入り混じった部隊が来た、銃を持っているが遮蔽物が多くロボットの射撃は片手で行なっており制御がうまくいってないため弾がバラけ躱すのは容易、立ち位置を変えつつ効率重視でロボットをまとめて壊す、一発撃つごとに数台のロボットが部品を撒き散らしながら倒れマガジンの半分を使うまでもなく部隊は全滅する。

 

最後に足元を進んでくる虫はUNICAで一匹ずつ倒す。

 

 

被弾なし、無駄弾なし。

 

シノンが撃つこともなく戦闘を済ませた。

 

「さぁシノン、前進もうか」

 

 

「」

 

 

 

返事がない、振り向くがそこには誰もいない。

 

周りや脇の部屋を見回すがやはりシノンは見当たらない。

 

 

「シノーン!!どこいったー!」

 

 

「・・・」

 

 

 

残響だけが研究所を走り抜けて行く、メニューを開きメッセージを送っておくか、あとで返信があるだろうし。そう思い研究所内を進み続ける、時たま襲撃はあるが容易に撃退できる、弾薬の減りも気になる程でもない。

 

そして下層へと足を進めて行く、段々と敵の射撃も正確になっており少しばかし被弾があったがこちらも防護フィールドはつけているため微々たるもの、自動回復でフォローできる。

 

 

 

 

しかし敵ロボットよりも厄介なものを見つけた。

 

足を踏み出そうとした所でギリギリ気付く事が出来たがワイヤーが張ってある、ワイヤーの根元にはクレイモア地雷。

 

イキリオタクみたいな癖だが後ろに体重をかけて歩くためなんとか止まる事が出来たがそれにしても危なかった、これまでゲーム内のエネミーがトラップを使うようなことはなかったため想定外だった。

 

ワイヤーを切って回収しておく、何かに使わせてもらおう。

 

 

それからはトラップにも警戒を持ちつつ研究所内の探索を続ける、ダンジョンには時たま弾薬が落ちてあるから探索は必須、元から持てる数が少ないため探索も必死だ。

 

 

 

そして階段を見つけ下層へと進む、ここまで来たら敵のレベルもなかなかなものだ、武装もアサルトライフルの形をした長物てそれを両手でしっかりと保持し射撃をしてくる、狙いも正確に頭を狙って来ている。

 

めんどくさい、シノンがいればまだ楽だったろう。

 

 

 

敵を全滅させ一息ついた所で休憩を取ろうと座ろうとした時、研究所の一室から何かを叩く音が響く・・・もしかして。

 

 

 

「シノンか!?」

 

音が聞こえる部屋に入りロッカーの中からその音が聞こえている事が判明した、ただシノンとは限らない。

 

 

照準はロッカーに向けたまま足を進める、未だにロッカーから音が鳴り続けている。

 

足元を見ればまたもワイヤー、そして踏み越えようとしたところにもワイヤーと二段重ねのトラップ、ここまで防御を固める『何か』がここにある。

 

クレイモアを無力化してバックパックに詰め込む。

 

目を凝らすがもうトラップは無さそうだ、椅子を転がしてロッカーまでの道の安全を確かめるがやはり問題はない。

 

 

 

ようやくロッカーに手をかける、ロッカーは一つしかない、音が出てるのもここなのはわかっている。

 

UNICAを構えたままロッカーを開け放つと同時に跳び退き、中にへと銃口を構える。

 

 

「ん〜んんん〜ん〜!」

 

 

出て来たのは後ろ手に手錠をかけられ口をテープの様なもので塞がれたシノンとFR-F2。

 

 

「あ〜良かった、お前かよ」

 

「んんんーん!」

 

「はいはい、今から剥がすから」

 

「ぷぁ、早く来てよバカ!」

 

 

口のテープを剥がし最初に出て来た言葉は罵倒だった、ロッカーに戻してやってもいいんだぞ?

 

「俺だって頑張ったんだよ、抱きしめてキスしてほしいくらいだよ」

 

正直怖かった、一人で研究所とか経験ねぇよ。

 

 

「ジンならもっと早く来れるでしょ!」

 

「わかったって、手錠外すぞ」

 

「早く!」

 

 

手錠のつなぎ目にあるボタンを押せば手錠が消えシノンはすぐにFR-F2を拾い上げる。

 

 

「もう、真面目にやってよね!」

 

「真面目にやってるよ、知ってるだろ」

 

言葉がキツい、どうしたよそんな怖かったか?

 

「ほら、先に行って!」

 

「はいはい」

 

 

合流したはいいがやはり俺が前なのは変わらず・・・なんでSRもったままついてくる?

 

「おいシノン」

 

「何よ!」

 

「・・・いや、後でいい」

 

 

まだご立腹の様で声がトゲトゲしい、怒りの感情しか無いのだろうか?

 

あぁ敵来たか。

 

 

「シノン来たぞ」

 

「分かってるわよ!」

 

 

そうですか、分かっていらっしゃいましたか。

 

 

敵の射撃を遮蔽物で躱わしつつ若干苛立った感情を抑える、ありがとうの一言さえねぇのか?

 

そんなシノンは遮蔽物から顔を出しロボットを壊して行く、足元がお留守だぞ?

 

 

足元の虫は俺が殺しておく、しかし怒りからかシノンは見向きもしていない、そのまま次々と敵を倒しシノンのみで敵を全滅させる。

 

虫も近くまで寄っていたが先ほどと同じ様に気にもとめず殺す。

 

 

 

全滅させたところで探索を続ける、道中に会話は無くシノンは俺を通り越しズイズイと進み続ける、俺がトラップに警戒している間にそんなの関係ねぇみたいに進みそして戦闘になれば凄まじい精度で敵を倒す。

 

 

怒りのシノンBot説。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。