工兵のGGO   作:流舞

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ダンジョンへ

「先輩、あん時帰っとけばよかったじゃ無いっすか」

 

「うるせえ」

 

「あんな大部隊勝てるわけないんすよ、自分は最終的に弾切れなるってわかってましたもん」

 

「うるせえ」

 

「俺たちは二階級特進とかないんすよ、ドロップ品パァじゃないっすか」

 

「うるせえ」

 

「・・・UNICAかっこいいっすね」

 

「うるせえ」

 

あ〜あドロップも全部なくなったよ、大体なんであんな大部隊で来てやがるんだよめんどくせぇ完璧俺ら狙いだろ、掲示板に晒されてるし。

 

 

バカはずっとぐちぐち言うしうっとおしい。

 

 

「まぁお疲れっす、欲かくとロクなことにならないって教訓っすね」

 

 

バカはそれだけ言い残し光となって消えてゆく、なんで去り際こんなかっこいいんだよ。

 

 

メニューを開き時計を見ると時間は夜の20時。

 

エイムの調子良いからって調子乗ってやり過ぎた。

 

ホームに戻りソファーへ寝転ぶと睡魔がじんわりと体をめぐる、それに身を委ねつつメニューを開きニュースを見ると第三回BoBの開催が決定したとのニュースがあった、早くね?

 

 

前回、前々回とスパンが短くなって来ている、多分毎月やってくことにしたんだろうな、ネット配信での視聴率もいいらしいし儲けがデカイんだろう。俺はいいとしてシノンはどうするんだろうか、まぁ出るだろうけど。

 

 

 

そう考えている内にいつの間にか寝てた。

 

夜中アミュスフィアが目に突き刺さりその痛みで目を覚ましたため壁に投げつけておいた。

 

 

 

 

 

次の日も特に用事はない、詩乃から「何かする?」とLINEが入っていたが何をしようか困りどころだ、この間泳いだから海はいい、夏のレジャーとしても海関連しかないし釣りは臭くなるから遠慮しておきたい。

 

 

 

以下LINE

 

 

「何しようか」

 

「さぁ」

 

「海?」

 

「うーん」

 

「釣り?」

 

「うーん」

 

「買い物?」

 

「んー」

 

「散歩?」

 

「ん〜」

 

 

ここまでLINE

 

 

「はっ倒すぞワリャ!」

 

全部だめじゃねぇか!

 

 

何言っても暖簾に腕押しで返事は芳しくない、いわタイプに電気ぶつけるみたいな感覚。

 

電光石火でも効果は薄かろう。

 

 

これ以上はニワカがバレるから掘り下げないでおこう。

 

 

 

 

そうしていると詩乃からLINEが帰ってくる。

 

「じゃあ今日も休みで、見たいテレビあるんで」

 

「はい、了解しました」

 

既に疲れた、俺はあの子が求めているものがわからない。

 

 

 

 

最近タクが廃墟ステージに店を出したとか聞いた、少し顔出してみるるか、そう思いGGOにログインする、グロッケンでフラフラしているとシノンがいつの間にかインしていた。

 

たまにはデートとしゃれこむか?

 

 

「よう彼女、デートしない?」

 

 

メッセージをシノンに送信する、するとすぐに返事が届く。

 

 

「死ね」

 

 

 

張っ倒すぞあの糞餓鬼わりゃ。

 

 

 

「なんでだよ、暇だろ?」

 

 

「最近新しい対物出たらしいからそれ取りに行きたい」

 

「どうする一緒に行く?」

 

「それ以外に何があるの?」

 

 

あいちゃあこげ勝手なこつ言いくさって。

(あいつめ、勝手なこと言いやがって)

 

 

まぁ暇だし予定があるのは喜ばしい。

 

その後ホームで集合することにして俺は最近減っていた弾薬の補充のためタクの店を訪れる。

 

 

「いらっしゃいませこんにちわ」

 

 

久しぶりにゲームの中で会うな、と思いつつ中に入るとカウンターにいたのはタクの趣味全開のNPC、プレイヤーショップでは店主が留守にしているとこのように店主が持つNPCが店番をすることになっている。

 

 

大体プレイヤーはNPCに店を任せ自分は遊んでるってのが基本のあり方のためこれはおかしくは無い。

 

 

「7.62mmを500発ボックスに送っといて、それと別に120発は現物で」

 

 

そう言うと目の前に購入のボタンが現れOKを押す。

 

 

机の上に現れたM14の20連弾倉をポーチに詰め込む、弾数で表すと多く感じるがマガジンの数は6本、途端に少なく感じる。

 

357magもスピードローダーで10個購入してポケットへ詰め込んでおく。

 

普通のオートなら専用のポーチにセットできるためもっと弾を持てるんだがリボルバーはアダプターが無いと素早く装填できない、しかしだいぶ嵩張る構造だから所持数に制限がある。

 

まぁ使い切ったこととか無いから問題ないが。

 

基本ダンジョン攻略の時は実弾を持って行くより光学銃の方が効率的ではある、弾代勿体無いし防護フィールドを持つ敵も居ないし。

 

しかしながら俺は光学銃を持ったことは無い、光学銃もM14と似た性能を持つ物もあり弾代をケチりたいならそちらを使えばいいのだが俺の趣味が悪いから仕方がない。

 

おそらくだがあの賢明な娘なら光学銃を持って来るだろう、だから別に弾に関しては心配することもないだろう。

 

 

タクの店から出てホームへ戻ると既にシノンは部屋の中にいた。

 

 

 

「準備できましたよ〜」

 

「ん、じゃあ行くわよ」

 

だらりとソファーに寝転んでいたが俺の準備を待っていただけで、俺が帰ってくるとすぐさま立ち上がる、しかしその手にはいつものFR-F2があった。

 

 

「おいシノン、なんでその銃なんだ?」

 

「は、何が?」

 

「何がじゃなくて、今からダンジョンに潜るんだろ?」

 

「ええ、そうよ? 何か問題でも?」

 

「弾数足りんだろ、いつも思うけどお前そんな服でどこにあんな弾数隠してるんだよ?」

 

「知りたい?」

 

 

シノンは蠱惑的な表情で体にしなを作る。

 

 

「興味はあるけどそれでまた牢獄入れられちゃたまらねぇよ、前科一犯だっての。もうそのままでいいから、行くぞ」

 

「・・・待ってよ」

 

 

相手が面倒になってしまった俺は先にホームから出るとすぐにシノンも追いかけて来る、ポーターまでの間話は無いが別に不機嫌とかではなくただ考えを巡らせていた。

 

 

えーっと、俺のM14が今つけてるマガジン合わせて7本の140発でUNICAの357magが66発、いつぞやシノンが言ってたが50発持っていけるんだっけ?

一往復くらいなら絶対に足りないってほどではないが少し不安な気もする、光学銃持って言ってもいいんだけどなぁ、やっぱダンジョン用にチェストリグ変えようかな。

 

 

 

そうしているうちにポーターへ到着する、ダンジョンがあるのはいつもの砂漠ステージで新しく配置された遠くの地方にあるらしくいつものハンヴィーを借りダンジョンへと向かう。

 

 

助手席にはシノンがライフルを持ったまま着席しアクセルを踏み込みダンジョンへ出発する。

 

「シノンはダンジョンとかよく潜るっけ?」

 

 

ダンジョンに向かうのが珍しいと思った、別にしなくてもいい質問だが暇だしいいだろう。

 

 

「いやそれほど潜らないわよ、今回は対物出るって聞いたからよ」

 

「じゃあ取るまでマラソンするの?」

 

「もちろん」

 

 

マジか、詩乃の相手もしねぇといかんのに。

 

 

「現実の彼女さんにはたっぷりサービスしてあげたんでしょ、たまには私に付き合いなさいよ」

 

「・・・なんか浮気みたいだな。だがお前とはゲームの関係だからな、これは浮気じゃ無いからな・・・」

 

 

詩乃はこういうことどう思ってるんだろうか、浮気かどうかの線引きはイジメと似たものがある。この場合詩乃が浮気してると言えば浮気になる。

 

 

あれ、この状況やばくね?

 

 

ハンドルを持つ手が車の振動とは別の意味で震えだす、あの娘に弱みを握られてはどんなことをさせられるかわかったもんじゃ無い。

 

 

「そんな気にしなくたっていいのに」

 

「シノンは浮気とかどう思う?」

 

「ぶっ殺す」

 

 

苦し紛れにシノンに尋ねる、しかし状況は悪化、やはり浮気は犯罪だ。

 

 

「シノンってどこまでが浮気じゃないってライン?」

 

 

もちろん自分がするつもりはないが女性としてはどこまでがセーフなのか?参考程度にそれを知りたい、そんなつもりで聞いてみたのだが。

 

 

 

「他の女に見とれたらアウト」

 

「流石にそれは束縛ひどくね?」

 

「・・・冗談よ」

 

 

返事に少し間があった、その間は何だ?

 

 

「生物学上男が浮気するのは仕方ない事とは言え私たちは人間なんだから束縛し合うのが人間でしょ、いいじゃないこれくらい可愛いものよ」

 

「男としてはこれくらいのレベルを考えて欲しいけどな、じゃあシノンと付き合う男の人はアイドルのコンサートとか行っちゃダメなんだ?」

 

「私を連れて行くならいいわよ、一人じゃダメ。ジンもこの間昔の人達と遊んでたわね、私もちゃんと呼びなさいよ」

 

「えぇ、たまには一人でも・・・」

 

「ダメ」

 

これはあれだ、かまってちゃん的な奴だ。

他の人と遊ぶだけでもなんか言ってくるし

 

「嫌い?」

 

 

 

気付けばシノンの顔が近い、やめろって俺はまだ詩乃に殺されたくはねぇ、まだってか普通に殺されたくねぇ。

 

 

「オンゲーで苦手な奴は喧嘩する前に疎遠になってる説。と言うものがあってな、連れ回されてるってのもあるけど別に嫌っちゃいねぇさ、それとすぐ忘れる俺の鳥頭に感謝しろよ」

 

「そういうとこが好きなのよ」

 

 

・・・はいはい忘れた忘れた。


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