「じゃあ私落ちるね〜」
既に時間は夜の8時、フェイスとニックは途中で落ちて今リッツが落ち残るはスカーと俺の二人。
「何するっすか?」
「俺としてはまだ出足りないんだが」
「じゃあ適当にフィールドで狩りでもするっすか」
「やね」
久しぶりのGGOということもありなかなかテンションが落ちない俺はスカーと共にフィールドへ出ることにする、既に今日の稼ぎは10万を超えておりいつもと比べてなかなかの物だ。しかしまだ終わらない、金は稼げば稼ぐほど気持ちがいい。
弾薬の補充が済んだ俺たちは場所を変え砂漠フィールドへ転移する。
所変わってグロッケンのどこかのバー。
「あのクランがまたやり始めやがった」
「本当か?」
「あぁ市街地、森林、遺跡と場所を変えながら戦場を荒らし回ってやがる」
「・・・皆を呼べ、徹底的に叩き潰す」
「わかった」
被害者の会が何をされたかは言うまでもない、その復讐が今始まる!
場面はジン達に戻る。
「あぁ美味しいな、やっぱ運営はFPSゲーってもんをよくわかってるほどほどの平地にほどほどの遮蔽物、応用の効くオブジェクトにぽつぽつある頭出しポイント、おかげでドロップが美味しいこと美味しいこと」
「いや〜これはやばいっすね、エネミーからのドロップも合わせてだいぶな稼ぎじゃないっすか?」
俺たちはウハウハと盛り上がっている、周りには一戦交えた後の名残で弾痕や倒壊した家屋がある。
ここは砂漠ステージに点在するオアシスポイント。
休憩所っぽい名前だが残念なことに容赦なくバトルフィールド、初心者がここで休憩して襲撃を受けて全滅するのはよくあること、俺だって似たような経験がある。
まぁセーフティが張られてないだけで休憩ポイントというのは間違いではない。武器の切り替え、弾薬の補充、非戦闘時のみグロッケンへの転移がここではできる。
まぁ激戦区なのはそれのせいでもある。
マップも中心は半径50mほどの広場になっており真ん中には水場とその側に墜落したヘリコプターが鎮座しており戦闘をするには十分な配置。
俺は変わらずにM14を使っているがスカーは乱戦になることを見越し武器をAK5Cに変えている、安定感がありどの距離でも安定して使える良い銃、欠点はレートが低く瞬間火力に乏しい事。
端的に言うと器用貧乏。
まぁ近距離はサブのG18で対応するためあまり問題はないとのこと。
クイックうまいからSR使ってりゃ良いのに。
「先輩、お客さんっすよ」
「歓迎しよう、盛大にな」
スカーは車両が通る場所にT-UGSを設置しているため直線で来るものはもれなくセンサーに引っかかってくれる。
「何人?」
「一両・・・いや二両・・・いや・・・」
スカーの言葉ははっきりとしない、
「わかんないっす」
最終的には思考放棄。
「だいたいは大隊規模で来てるっす、お疲れ〜っす」
そう言ってスカーは屋根の上に仰向けに寝転び足を組んで空を眺める。
もう嫌な予感しかしない、俺も急いで屋根に登り敵の方向を見るとハンヴィー五台に敵がフルで乗り込んでいるのが見える。
「お疲れ〜」
なるほど、あれは諦めがつくわ・・・と言うわけにもいかない。
「おいスカー迎撃するぞ!」
屋上に伏せ車列に射撃を開始する。
先頭の一台の運転席に向け連射し運転席を抜くとハンヴィーの巨体がトップスピードで横転して脇に転がる。
しかしその後の四台は射線が切れたため後はこの狭いオアシスの村の中で迎撃をするしかなくなる。
「おい、スカーやる気出せって、稼ぎゼロでも良いのかよ!」
「結局限界ってもんはあるんすよ、先輩も知ってるっすよね無理なもんは無理っす」
「バカそれは足掻いてから言えってバカ、ほらお前もCQBは案外好きだろ!」
そこで俺たちがいる家に銃撃が始まる、壁に弾が当たる音や弾ける音が四方八方から聞こえ完全に包囲された。
「じゃあお前はここで死んでろ!俺一人でやる」
銃撃の合間をくぐり抜け隣の屋上に飛び移り急いで階段を降りる、動くたびすぐ後ろを弾丸が掠めるがまだクリーンヒットは食らってない、しかし制圧効果のせいで視界にモヤがかかる。
銃撃の方向からある程度の位置はわかる。
一階の窓を開け放つとそこに二人の敵兵の姿が見える、まだ屋上に気をとられているため先手を取りM14で狙い撃つ。
一人はキルを取ったがもう一人は二発目がカス当たりだったためせいぜい瀕死程度だろうそのため追撃としてフラグを数秒持って隠れた場所へ放り込む。
多分だが死んだろう。
窓には制圧射撃が行われているためこれ以上の追撃は出来ない。
微かにドアの方向から足音が聞こえたため急いでそちらに銃口を向けるとちょうど敵が入って来て互いに銃口を向けた形となった、その瞬間俺は伏せ撃ちをすることによりなんとか打ち勝つことができた。
困った時は伏せ撃ち、意外と有効。
その後すぐにもう一人入って来たがもう一人は俺が伏せたままのためすぐに気づくことができず俺が二点射することによりあっけなくポリゴンの欠片と消えてゆく。
物陰に隠れ回復剤を撃つ、伏せ撃ちしたは良いが完璧に敵の弾を躱すことは出来ず数発まともに食らってしまったためHPが六割まで減少していた、そのついでに心許ないM14のマガジンを交換しておく、焦ったら余計入れづらくなるから落ち着いてマガジンをガチリとはめ込む。
まだ体力は回復しきってないがドアから周囲を伺う、ドアは小道に配置されており余計な射線を通すことなく出ることができる。
右はいない、左もいない。
街の中心から、敵の大隊が来た方向とは逆に離れるように移動を始める。
一人で島津のような捨てがまりとかできるわけないから大人しく迂回をする、あんなん個人でできるか。
道中スカーがいる屋根に射撃を続けている敵兵にこちらから銃撃を加えキルを取る、チェックシックス。
十分離れたところの家に入り中心の様子を伺うとハンヴィー四台と降りてきた敵兵十数人がスカーかいた屋根に向かい射撃を続けている。
スカーもあんなこと言ってまだ迎撃を続けており敵兵どもは攻めあぐねている。
流石、やるな。
装備の確認をしているとスカーの方で動きがあった、スカーはスモークを焚き一直線にヘリへと走りこむ。
あのまま家の中で戦っていても家が倒壊してどっちにしたってゲームオーバなのは目に見えていた。
そのため勝負に出た。
俺もスカーのスモークに紛れヘリへと飛び込む。
「スカーやっぱりやる気じゃねぇか!」
「結局こうなるんすよ!弾無いっすか!?」
「待ってろ!お前も俺の弾出してくれ!」
ストレージを開きこれまでのドロップ品から5.56mmを取り出し足元に出現させる、現状落ち着いてトレードしている暇がないからこのような事態になっている。
「ほらスカー使え!」
「あざっす!」
スカーは俺が投げ渡したマガジンを銃に叩き込みマガジンストップを押して射撃を再開した、その足元に残りの数個を投げるが俺の方にも敵が接近してきたため最後の一本を残したまま迎撃する。
「クソが死んどけや、ハイエナどもが」
俺がいるところはヘリで崩れた塀の内側、遮蔽物に囲まれてはいるがこちらからも反撃の手段は少ない。
チラと視界の端で何かが動く、そちらを見るとスカーの死角に敵がいた。
「スカー伏せろ!」
スカーが伏せるのを確認せずトリガーを引く、一発目はスカーの後頭部をすり抜け敵の頭に命中する、しかし二発目はスカーに当たらないように気をつけ過ぎたためヘリの機体に当たる、7.62mmの貫通力の恩恵でなんとか倒すことは出来たが危ないところだった、サンキューシャーリーン。
そう考えている間にまたもスカーの後ろに敵が迫る、M14で殺そうとするが数発射撃したところでホールドオープンしてしまう、残弾管理を怠ったがすぐにホルスターから抜いたUNICAでトドメを刺す。
「スカー弾くれ!」
「はいっす!」
スカーから投げられたマガジンを掴み取り素早く装填してロックをリリースする、M14を構えつつUNICAのリロードは進める、くそこんなときはリボルバーじゃ困るんだよな・・・。
今度はまともに俺の方に突っ込んできた敵に数発お見舞いする、エイムの調子がいいとはいえ多すぎる、今も十発と撃ってないのに二人まとめて来られたから俺もまともに食うことになってしまった。
そうしているとまたスカーの死角に敵が来たためそちらに撃ち込む、数発謎の判定でヘリの機体に吸われたがなんとか倒すことが出来た。
「先輩弾無いっすか!」
スカーはAK5Cを背中に回しG18を使っている、もう弾切れたのか。
「使え!最後の弾倉だ!」
「了解っす!」
「M14はねぇか!」
「こっちもラストマグっす!」
あ、これマジで終わったわ。
最後の弾倉も勿体ぶって使うことなどできず迫って来た敵に撃ち込む、そして弾が切れたM14を背中に回しUNICAを抜く。
「先輩もう無理っ・・・!」
スカーが死んだ、残るは俺一人。
俺に敵兵がなだれ込む、UNICAを先頭に全弾打ち込み二人目には殴りつけ三人目を掴んだところで俺も回り込んだ敵に体を銃弾で貫かれる。
BHDごっこやりたかったんです。