工兵のGGO   作:流舞

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釣り人

サラサラと流れる清流、日差しが若葉で遮られ木漏れ日となって俺の麦わら帽子に降り注ぐ、暑さも風で流され不快に感じる事はなく快適に過ごすことができる。

 

風情があるとはこんなことなんだろうな。

 

たまにはエアコンとか使わず自然のままに過ごすのも悪くない、実際風鈴吊るして団扇で扇いで縁側で過ごすとかもやりたいが自分の家にはそんなものはない。

 

 

こういう所じゃ腕に止まる蚊ですら愛おしくなる・・・わけない。

 

天に滅せい。

 

世紀末覇者な気持ちで虫除けスプレーをかいくぐってきた蚊を潰す。

 

まぁそんな多くはないし寧ろ都会の方が多いかもな。

 

足元には蚊取り線香、身体中には虫除けスプレーと完全防備を展開しているし、少々刺されているが気にはならない。

 

「詩乃どうっすか?」

 

 

「これ釣れるの?」

 

 

俺たちはテントを立てた後は適当に遊んで来いと親に追い出された。

 

そのためとりあえずは釣りをしている、この川は鮎、イワナがメインのヘラブナやらハヤやらいろいろ釣れる。

 

「コツコツしとる?」

 

「たまにね、まぁのんびり待ちましょうか」

 

「せやね」

 

釣り人あるある。

 

浮きから目を離さずに話をする奴は結構楽しんでる

 

例にもれず詩乃は麦わら帽子の位置を直し、浮きを真剣な眼差しで見つめている。

 

 

俺は竿を立て仕掛けを見ると餌がとられていたため練り餌をハリに付け直す。

 

因みに川にさらしているタモの中には二匹の鮎が入っている、全部俺が釣った。そのため詩乃も意地になってるんだろう、負けず嫌いなとこあるもんな。

 

他の人がいるときは、釣りする人もいるから泳ぐのは少し遠慮したりするしかし今日は誰もいない、泳ぎたいときに泳げばいいや。

 

 

「ねぇ仁、餌だけ取られるんだけど」

 

「浮きが沈んだ時に竿クッ!ってあげてみなよ」

 

「そのタイミングがわかんないのよ」

 

 

そろそろ詩乃も飽きて来たか、そら結局のところ釣れなきゃ面白くねぇわな。

 

 

「言ったら合わせて」

 

「ん」

 

 

自分の浮きから詩乃の浮きに視線を移しまた待つ。

 

釣りはGGOと一緒、待つ時は待つ、動く時は動く。

 

 

 

 

そこでコツンと浮きが動く。

 

 

「ねぇ仁」

 

「まだまだ」

 

「仁?」

 

「まだまだ」

 

 

浮きは動く程度で、魚の動きはまだ突く程度。

 

 

その後何度か浮きが動く。

 

 

 

 

「・・・今!」

 

 

 

浮きに入ってる線が沈んだ瞬間俺は詩乃の肩を叩き合図をする。

 

 

 

「うわぁ本当に釣れた!ちょ!?これ取って取って取って取って!?」

 

 

「はいはい落ち着いてお嬢様」

 

 

ハリに食いついた魚が空中でピチピチと暴れる。

 

 

思いっきり合わせたため水面から飛び出した鮎は詩乃めがけて飛んで来てそれをみた詩乃は結構テンパってた。

 

 

それを引っ掴んでタモへと入れておく。

 

 

「詩乃慌てすぎじゃね?」

 

「うるさいわね、初めてならこんなもんでしょ」

 

「俺の落ち着きを見てたか?」

 

 

まるで細かすぎてのフナ釣り名人シリーズのような落ち着きを。

 

 

 

「経験者のくせして心が狭いわね」

 

 

詩乃は先ほどの慌てっぷりが嘘のような落ち着きで俺が練り餌をつけた仕掛けを水面へと投げ入れる。

 

 

 

「・・・なんかいつもより穏やかだな」

 

「落ち着きのある女はお嫌いでして?」

 

「救いようのねぇ阿保よりは好きだ」

 

「素直に好きっていいなよ」

 

「言っちゃう? 俺の昔夢見てたシチュエーションは釣りしながらしれっと告白するって奴だけど今考えたらセンスねぇかもな」

 

「そうね」

 

「はっきり言うな、もうちょっとフォローしてくれても良いんじゃね?」

 

「そうね」

 

「・・・なぁ」

 

「そうね」

 

「・・・」

 

 

 

俺の言葉を川の流れに任せ、返事も適当に返してくる。

 

そんな詩乃の横顔わ見ると、口が少し開いたまま浮きを一心に見つめていた、俺には詩乃が既に一流の釣り人のオーラを纏っているように見える。

 

 

 

 

いや、そろそろ泳ぎたいんだけど?

 

だが前のめりになりながら釣りを楽しんでいる姿を見るとそうも言えなくなる。

 

 

みんなで食うにも後一匹足りねぇし時間もまだ10時だから良いけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

「よし、良い型ね」

 

 

時間が過ぎ、既に昼時。

 

詩乃はコツをつかんだらしく俺が一匹釣る間に二匹上げている。

 

詩乃の余裕のある横顔にはオーラどころか貫禄さえ出て来た。

 

 

 

「もう良いだろ?」

 

 

 

「もう少しやりましょう」

 

 

 

泳ごうよ?


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