俺が家に入ると同時に二階からドゴン!と物を落としたような音がした。
屋根から二階に降りたか、それとも何か他の要因か。
どこで待たれている、敵の武器は、敵は誰だ。
色々な不安を抱えつつ階段を上がる、肩がまだ満足に動かないため片手でUNICAを構える。
扉から部屋の中をカットパイで確認するが誰もいない、扉の向こうを見るがそこにもいない、二階に別の部屋もない。
じゃあどうやって屋根に上がってたのか?。
よく見れば部屋の隅に銃が落ちている、それを拾い上げればよく別のゲームでも見慣れた消音狙撃銃のVSS、なんか他にかっこいい名前があったはずだが覚えていない。
この銃の特徴はサプレッサーが最初から埋め込まれていること、確かに撃たれた時に銃声は聞こえなかった、そして何よりも『軽い』。
あぁ大体わかったぞ。
よくぞそのビルドでここまで生き延びたなぁ。
「シュピーゲル君か」
その瞬間、背中に悪寒を感じる。
悪寒というか殺気というか、とにかくここに居ちゃ死ぬ。
そんな予感。
俺は階段へ一目散に走る。
すると背後から銃撃、闇風先輩の時もこんな感じじゃなかったっけ?
ただ武器はわかりやすい、あの軽い発射音とレート。
イングラムにしては音が軽くレートも遅い、UZIにしても軽い、となれば38ACPのVz61スコーピオン、重量的にもそれしか装備できなかったんだろうよ、1kgちょっとだもんなそれ。
「ジンさん、どうしたんですか?腕は動きますか?」
「こっちに来て確かめたらどうだ?」
「いえ、結構」
まぁあの煽りはいいや。
「器用だな、AGI特化にしてはいい狙撃だったじゃん、シノンかと思ったよ」
「あの人を例えに出すなぁ!」
急に怒るよねぇ、俺の後ろの壁にはスコーピオンの弾が当たっているが貫通はしていない、弱く設定しすぎでは?。
「あの人は、あの人はあなたのそばにいたらダメ・・・」
これは話すのをやめたのではなく俺が階段を降りて声が聞こえなくなっただけ。
一階に降りればやっと銃撃を終え、地面に降りる音がする。
「僕から逃げるんですか!?」
「勝手に言っとけ」
安い挑発に乗るつもりはない。
裏口に手を掛ける。
「シノンの仇は取らなくていいんですか!?」
なに?
ドアノブに手をかけたまま手が止まる。
「お前シノン倒したのか!?」
「えぇ!後ろから近づいて倒しました!やるでしょう!!」
マジか・・・。
裏口から表へ回る、足音はある程度消す。あんな大声で話しちゃ気づかないだろうし。
「かかって来てくださいよ!あなたを倒して僕の強さを証明する!」
「なんかお前目標変わってねぇ?」
「ハッ!?」
俺が家の横にある道から声をかければシュピーゲル君はビックリしたのか後ろへ飛び上がる。
だからただのAGI特化はダメなんだ。
俺はシュピーゲルが元いた場所には銃口を向けていはいない、その背後に最初から向けていた、これが闇風先輩ならすぐに判断して地面に足が着く高さくらいにしか飛ばずに地面を滑る。
そうやって高く飛んだら着地狩りのいい的だろ。
格ゲーでも最初はあまり飛ばないように教わるだろ。
着地の硬直に合わせてトリガーを引けばシュピーゲル君は典型的なAGI特化型と同じようにノックバックに固められ二発で沈む。
「まぁ狙撃して来たのは面白かったけどね、俺が一発食らった時点で攻めてこなきゃ、いくら俺の武器が天敵とはいえ場所も場所だし・・・まぁいいか」
正直あとはシノンと違うくらいが楽しみだったからあんまりやる気はない。
そこで唐突にアラームが鳴る。
驚いたがスキャンの時間と気付き家に歩きつつマップを開く。
マップの中心は俺、そして対面の街には後一人。ゼクシードか闇風先輩か、俺の街には俺の光点と先ほど丘の上に陣取っていた敵が近づいている。
二階に上がりそちらを確認する。
あの真っ青な髪、持っているいびつで訳わからん形をした銃。
「ゼクシードじゃん」
ダメだ、膨らまない。