工兵のGGO   作:流舞

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ハーフタイム

「ジンさん、あんなこと言いながらAGI特化の人に負けましたね。」

 

 

「そうだね、闇風先輩強かった」

 

 

現在、カフェにて一服。

 

 

「ジンさんAGI特化って弱いんじゃないんですか?」

 

 

 

「闇風先輩強かったなぁ」

 

 

マジで悔しいなぁ、反転した時にちゃんと狙えてれば勝ってたのになぁ。

 

 

「僕と戦うときも同じ感じで倒してあげますよ。じゃあ本戦で」

 

 

 

「あぁ期待してるよ」

 

 

 

着地狩りできたときももう一発当ててたら勝ってたのになんで当たらなかったんだろ、ちゃんと反動制御できてなかったかな。

 

 

 

 

「ねぇ、ジン大丈夫?」

 

 

 

「うん、大丈夫」

 

 

 

最後もなんで庭に出たんだろ、別にやりおうあったよなぁ。

 

 

 

 

「ねぇジン、ほんとに大丈夫?」

 

 

 

「ほんとに大丈夫」

 

 

 

あぁ悔し、いと悔し。

 

 

 

「もう帰らない?」

 

 

 

「あぁだいじょーぶ」

 

 

 

頰に衝撃、なお硬い。

 

見ればシノンが拳を握っている。

 

 

 

 

 

「あれ?シュピーゲル君は?」

 

 

「もう帰ったわよ、それより本当にどうしたのよ」

 

 

人を殴ったというのに何だこの表情は、罪悪感の欠片すら見えん。

 

 

 

 

どうしたもこうしたも、どうしたよこうしたよ。

 

 

 

 

 

「何?何か言ってた?」

 

 

「はぁ、何でそんなにヘコんでるのよ、いつもだったら『うへへ〜負けちゃった〜』とか言いそうなのに」

 

「お前の俺に対する扱いもそろそろ考えねぇとな」

 

人を何だと思ってるんだ。

 

「そんなもんでしょ」

 

「・・・そんなもんか。まぁ帰ろうや、流石に疲れたから落ちたいし」

 

 

まぁ明日になっちゃ忘れてるだろうし。

 

 

「そうね、もう遅いし」

 

 

メニューで時計を見れば時間は19時。

 

そろそろ飯だし、なんか萎えたし。

 

 

萎えたってか・・・萎えたか。

 

 

「じゃあお疲れ、ちょっとしてから落ちるわ」

 

「何かするの?」

 

「いや何もしないけどさぁ・・・、何か、心の整理?」

 

「えぇ? ほんとに大丈夫なの?」

 

 

珍しく心配してくれてる、あぁこれがツンデレとかいうやつか?

 

 

狙撃系女子のシノンにそんな属性あったんだなぁ、多いなぁ。

 

 

「大丈夫大丈夫、風呂入って寝たら戻ってるって」

 

「そんな形状記憶合金みたいな物なのね・・・」

 

 

大体あってる。

 

 

「まぁいいわよ、先落ちるわよ」

 

 

「あーう」

 

 

 

シノンは落ちてその場から消えてゆく。

 

 

 

 

俺はホームまで歩いて戻りソファーに横になり考える。

 

 

 

 

でも懐かしいなぁ、昔ゲームマジでやって本当に勝てなくて、色々勉強してそこそこの強さにはなったけどそれでも上位の人達には敵わなくて、それが悔しくて悔しくて。

 

 

で、俺にはそんなの無理なんだってわかって遊び始めたら本当に楽しくて。

 

 

 

結局のとこ俺もガチ勢崩れの一部だしなぁ、エンジョイ勢(笑)みたいな。

 

 

 

シュピーゲル君の悩みも良くわかるし、本気でやりたくて勉強してその途中で、俺みたいなやつと関わって。

 

 

まぁ怒るわな。

 

 

 

 

 

落ちよ。

 

 

 

 

 

アミュスフィアを外し外を見ると夏のまだ明るい夜。

 

 

 

詩乃いねぇかなぁ、そう思って家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、先輩」

 

 

マジでいた。

 

 

 

正直この娘がいればとは思ったがマジで居るとは・・・。

 

「先輩、どうしたんですか?」

 

ニヤニヤとこちらを見つつ問いかける。

 

「俺の予想が当たった時はなんか嫌なことがあるんだよ」

 

「先輩って変なジンクスあるんですね」

 

「元広島の前田健太さんのルーティンより多いと思う」

 

「誰ですかそれ?」

 

「それ広島で言ったらぶち殺されるぞ?」

 

「えぇ」

 

 

なんか久しぶりな気がする、1、2日合わなかっただけなんだけどな。

 

「先輩は今悩みがありますね?」

 

「・・・いきなりだな、まぁそうだけど」

 

「それはゲームのことでしょう?」

 

「そうだけど、なんだ? なんで知ってんだ? ストーカーしてる?」

 

 

怖いな〜怖いな〜って思ってたんですよ。

 

稲川淳二さんが思い浮かんだ。

 

 

稲川淳二の俺に詩乃は得意げな笑みを浮かべる。

 

 

「そんなわけないでしょ、いつか私にした心理テストの真似ですよ」

 

「うわぁ〜やられたわ、なんで現実でも敗北感感じないといけねぇんだよ」

 

「まぁまぁ、悩みくらい聞きますよ」

 

 

ニッコニコしおって、やってきた本人がその気持ちはわかる。

 

 

すごい気持ちいい。

 

 

 

まぁ別に詩乃だからいいか、昔の話くらい。

 

 

 

俺は自分のガチ勢時代の話、そしてその終わりを詩乃に話した。

 

 

詩乃は茶化すことなく静かに聞いてくれた。

 

 

「・・・だから今はガチ勢崩れ程度のプレイヤーってわけ、最近会った子とか自分に似ててさ、結局言うと同族嫌悪みたいなものだなぁって思っちゃってさ」

 

「そうなんですね」

 

「こんなもんかなぁ、ご静聴ありがとうございます」

 

 

詩乃はパチパチと拍手をくれる。いいね、悪くない気分だ。

 

 

「今はガチ勢に戻ろうとか思わないんですか? 闇風さんと戦って楽しくなかったんですか?」

 

 

戻るかぁ戻ってスキル云々よりも・・・。

 

 

「キツイ、その一言に尽きる。ゲームは遊びとか言ってるけど結局はこれじゃないかな。新しい情報出たら頭に詰め込んで、マップも頭詰め込んで、めんどくさいことこの上ない」

 

「そうだと思いました、先輩ですし」

 

 

よくわかってる、シノンもこの物分かりのいい後輩を見習ってほしい。

 

「詩乃はどう思うよ、今組んでる奴がガチ勢寄りなんだよ、ガチ勢のやつとか、他に居るしそっち行かせた方がいいんじゃねって思うんだけど」

 

 

「その人に聞いてください。私はその人じゃないんで」

 

 

あらま、急に梯子外すね。

 

 

「でも同性の人だからさぁ、同性の人がクラマスの・・・」

 

「その人に聞いてください」

 

「あの」

 

「その人に聞いてください」

 

「その人に聞きます」

 

「はい、そうしてください」

 

 

どうやら詩乃は梯子を外したまま助けてはくれないようだ。

 

 

 

まぁちょうどいい機会、大会終わったら聞いてみるか、クランのこととか。

 

 




ガチ勢トークは先輩の意見です、自分はガチ勢のガすらつかない養分枠でした。

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