「ここちゃんと営業してるんですか?」
その感覚はおそらくここにきたみんなが思ってる。
「一応な、まぁ味はいいから」
そう言ってドアをくぐる、やはり終業式終わりの学生でひしめき合っているが何とかテーブルが空いているのを見つけそこへ座る。
「よう仁カウンターじゃねぇのか?」
「連れがいるんでね、いいだろ?何がいい?」
最後の言葉は朝田さんに向けての言葉だ。
朝田さんはチョコレートサンデー、俺はチーズケーキ。
ナポリタンでもオムライスでもない。
「で、新川くんって何だ?ああ言う子だっけ?」
「いや、私もあんな新川くんは初めてで」
「ああなるほどね、大体わかった」
「えぇ・・・大体は察せます」
「まぁだよね」
そこで沈黙、それはパフェとチーズケーキが机へ届くまで続いた。
「まぁ食べよう、甘いもの食べたら機嫌を直すって何かの雑誌で言ってたし」
「私のこと簡単な女と思ってません? そういうの読んでるんですか?」
「いや、テキトーにありそうなこと言っただけ、朝田さんはどう?」
「まぁあながち間違いでもないんですけどね、先輩の奢りですし」
パフェを口に運びながらそう返す。
図太い。
その言葉が正しい。
「素直なことはいいことだ、海とかいつ行こうか?」
「水着買わなきゃいけないんですよね、まぁ買わなくともいいんですけど」
「絶対買おう」
僕はキメ顔でそう言った。
「見たいんですか?」
「そら朝田さんの水着ならば」
「詩乃でいいですよ?朝田さんだと新川くん思い出しますし」
「ありゃ?新川くんも下の名前で呼んでなかった?」
「え?そんな事ないですけど」
「勘違いかな、じゃこれからは詩乃で」
何か引っかかるな、あやつと一字違いなのがそうなのか?
詩乃も思い当たるフシがあるのか虚空を見つめ何か考えている。
まぁいいや、あやつは多分あの荒野にいるだろう、多分今頭抜いたらよ。
「明日、暇?」
「え?・・・えぇ、明日にでも行きますか?」
「俺はいつでも暇だからさ、早いうちに買っといていつでも行けるようにしたいなって思った」
気が変わって見せたくないなんてのは生殺しにもほどがあるし。
詩乃の水着かぁ、スタイルいいからなぁ何でも映えるだろうなぁ。
「じゃあ明日行きましょうか、何だか楽しそうですね」
思わず口角が上がっていたのを見られ指でほぐす。
そのあとパフェを食べ終わった後は弾む気持ちを心に抑え、家へ帰った。
支払いの時店長がニヤついてたのが腹立つがまぁ良しとしてやろう、今日の俺は寛大だ。