「かくあるして我が校のモットーに・・・」
終業式、それは耐久。
一人ばたりと倒れる、知ってた。
それでも話を続けるのはなぜだ。
ここらでやめるか。と行ったアドリブすらきかんのか?
「夏休み、節度のある生活を過ごしてください」
おそらく感想文を提出しろと言われればどんな優等生でも迷うであろう校長の話も終わる。
校長はここで既に3キルを取っている。
教頭は一人もキルを取れていない、後で説教だろうな。
LHRも終わり何も入ってないカバン片手に校舎を降りる。
予定のない夏休み、甲子園でも見ようかな東京は二つ予選があってるしなんか有名なスラッガーが居るとも聞く、でも優勝は多分桐蔭じゃないかな、名前しか知らないけど。
イベントはなんかゾンビものらしい、掲示板ではBoBまでの繋ぎだって言っててなんか人気ないらしい。
海行きたいなぁ、高台から飛び込みたいなぁ、潜ってなんか取りたいなぁここじゃ犯罪だしここの漁業権とか持ってないし。
映画とかいいかもな、死ににくい男が新作出すらしいし。
そういやもうそろそろ祭りがあるっけ?
「朝田さんでも誘うか?」
「何ですか先輩?」
「ッ!、 静かに素早くか、変わらないな」
昇降口では朝田さんが俺を待ってくれていた、独り言が聞かれたのはいいが背後を取られるとは、俺も年だな。
「は?・・・いや何ですか?」
「この世には知らなくてもいいことがあるんだ、ほら帰ろう」
「・・・そうですか、まぁいいです」
俺の妄言を一々気にしていたら気がもたないことを知っている朝田さんは追求するのをやめる、細かく説明しても特に身にもならない事も知っている。
「朝田さんはどうすんの、夏休み」
「特に何か決まってるわけではありませんよ、どこか連れてってくれるんですか?」
「なんか乗り気やな、久しぶりにバイク乗りたいし・・・どこか行く?」
「本当に連れてってくれるんですか!?」
俺の家には親父の物だがCB400sfが置いてある、俺も中学卒業の時に中型免許を取っているから時たまそれに乗って遊んでいる。
しかし他の人乗せるとはな。
「別に朝田さんがいいならいいけど?」
「やった、こっちにきて遠出とかやってないんですよ、海とか行きたいです」
「いいね、なんかデートみたいだな」
「フフフッ、デートでいいんじゃないですか?」
この後輩は一々可愛らしいこと言ってくるじゃねぇか、妹いたらこんな感じなのかな。
いや現実はそうでもないと聞く。
「盆前には行きたいな、クラゲ出たら面倒だしバイトやりたいし」
バイト(GGO)
いい世の中だぜ。
「朝田さん!!」
「あ・・・新川くん」
俺達が校門から出るとそこには新川くんがアンブッシュしていた、お前さんや他校の生徒だろ? 気まずくなかった?
「久しいね新川くん」
「あっはい・・・こんにちは・・・」
ん?何だ、何で引かれてるの?
俺が片手をあげ新川くんに笑顔で挨拶をするが新川くんは笑うことなく、むしろ表情を曇らせる、返事してくれるだけでもいいか。
「朝田さん予定あったの?」
「いえ、別にそういうことでは・・・」
物珍しさか、校門の前には小規模の人だかりができている、こういうとこの中心に行くのは面倒なんだけどな。
俺が行かずとも新川くんはこちらへズンズンと進んでくる、顔に見合わず積極性のある人だな。
目の前にきた新川くんは口を開く。
「シノ、朝田さんとはどういう関係ですか?」
ヒュゥ!下の名前呼び!?
「朝田さん、隅に置けないっすね」
「本ッ当やめてもらえますか、皆見てるんですし!」
それもそうだ、側から見ちゃ修羅場真っ盛りだよこんなの。
「別に俺たちはご近所さんみたいなもんだよ、今日だって帰り道一緒だから一緒帰ろうや〜的な物だし」
「・・・えぇそんなものですね」
朝田さんだってこう言ってる、やましいことはありません。
「朝田さんにそ・・・ないでください」
途中、ゴニョゴニョっとなって聞き取れなかった。
「は? なんて言ったの?」
俺が聞き返せば新川くんは爆弾を落とす。
「そんな覚悟もない人が朝田さんに近づかないでください!」
マジかよこれめんどくせえやつやん、安いドラマのやつやん。
案外大きな声だったので周りの人だかりが少しざわつく、やめて欲しい、夏休み明けどんな顔して登校すればええん?笑えばいいの?
どうせこんなこと忘れて普通に投稿するだろうけど。
「新川くんやめて!」
心地よく現実逃避をしているが朝田さんの声で俺も現実に戻る。
「でも『こんな人』に朝田さんの苦しみを分かち合えるわけ無いよ、僕ならわかることができる」
「おいこんな人って何だよ」
ド失礼。
何を持ってこんな人と言っているかわからないがまぁ否定できないから反論とか別にいいか。
「まぁそうだけど・・・でもそんなこと新川くんに言われたくはないわよ」
「否定してくれないのね。俺に対しての『こんな人』発言は総意なのね」
さらっと朝田さんの考えも聞けた、なるほどね俺はいい先輩であるようだ、安心したよ。
「いや、先輩だって何か言い返さないんですか!」
「えぇ〜俺にパスするの?この子やばそうじゃん?朝田さんのタイプには付いていけない」
「本気でやめてください、もう!」
そろそろやめとこう、新川くんもなんかやべーし。
「新川くんさぁ、別に俺は『こんな人』でいいけどさぁ、人の交友関係に口出すのはどうかと思うよ?ましてや学生時代の友人とか一生モノでもおかしくないし」
「貴方が朝田さんの何を知ってるんですか!」
「しらねぇよ、聞いてねぇし」
「僕は知ってます」
「あぁそうかい、すごいなぁ」
なんかイラ付いてきた。長いし、めんど臭いし、鬱陶しいし、あのことはこんな大勢の前で言うなよこのクソガキ。
「朝田さんが悩みを抱えてるのを知ってます、朝田さんがそれで苦しんだのを知ってます、貴方はそのことを知ってますか?」
「まぁ薄く?」
「その程度でしょう、そんな人が朝田さんに寄り添うことができるとでも思ってるんですか?」
「寄り添うって・・・何言ってんだお前」
朝田さん、顔青いよ。
そして俺の後ろに隠れないで、新川くんがヒートアップしてるのそれのせいもあるから。
「朝田さんは今も悩んでいるんです、貴方にはそれが一生わかるわけがないんです」
「そんなこと言うお前は人の事わからねぇよ、既に俺のことすら理解しようともしてねぇ」
「その必要がないからです朝田さんのPTSムグッ!?」
「それ以上言うんじゃあねぇよクソガキ」
やっぱこいつやべーわ。
とっさに口を押さえそれ以上の発言を止める。
不機嫌そうな顔をしているが腹パンよりはマシと思え。
「朝田さん帰ろうやさっき人の交友関係に口出すなとは言ったけどこいつは流石にやめといたがいい。新川くんも今日は俺が先約何で諦めてくれんか?」
「・・・近い未来貴方は後悔しますよ・・・」
そう言って新川くんはあっさりと帰って行く。
何だろこの嵐が過ぎ去ったような感覚、ハリケーンは女性名だがこれからはハリケーン新川と呼ばせてもらおう。
「帰ろう、パフェでも奢るよ」
「・・・はい、お願いします」
やっぱ新川くん悪役かぁ、元がアレだからイメージが崩さなかったなぁ。