工兵のGGO   作:流舞

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事後

長かったか、短かったか、どうかは俺は分からない。

 

離れた後再び目が合うが今度はシノンが逸らしてくれる。

 

 

「今度は捕まっとけよ」

 

俺は背中に回した腕に力を入れればシノンの息が耳元で漏れる。

 

砂煙で周りは何も見えないその中で、唯一見えるバイクのライトを目掛け走り出しバイクで作られたバリケードへ突っ込むと驚いたヒャッハー共は先程までと違い隊列が崩れ簡単に通り抜けることが出来る。

 

 

隣を見ればリッツが目を見開いている。

 

 

「うわぁ〜ジン君そういうことするんだ」

 

 

「やめとけ! いらんこと言うな」

 

 

少し強めに言うがニヤニヤとした顔は崩さない。

 

 

「何もやってないですよ、誤解を招くこと言わないでくださいよ」

 

 

「えぇ〜?本当かなぁ〜?」

 

 

「だから、そんなこ「キスしましたよ。」したぅぇぅぃお」

 

 

 

シノンはドヤ顔でそうお構いなく言い放つ、リッツさんが地雷を踏むならばシノンは爆撃、俺は落ちた爆弾。

 

被害者は全員。

 

 

 

 

 

 

 

あれ以降車内は沈黙に包まれていた。

 

ポーターについて車を降りてやっと息苦しさからは解放されか気がする。

 

リッツさんはメニューを開いて何かを見ているようだが目が泳いでいる、ダインはなんか得意げだった、猿はどこを見るとなくどこかを見ている、シノンは俯いていた。

 

 

 

「じゃあ、今日はこれで解散ってことで・・・」

 

 

 

「あ、うんじゃあね?」

 

 

「お疲れっす、、、はい」

 

 

「じゃあな若者!」

 

ダインは死ねばいい。

 

 

 

 

俺の音頭で皆が解散となる、残ったのは2人、本日の反省大賞。

 

 

 

「どうする、ホーム戻る?」

 

 

 

「ちょっと・・・今日はムリ・・・ちょっと猫にエサやらなきゃ」

 

 

 

「急用だ、早急に対処すべき案件だな」

 

 

 

それは大変だ、エサがない猫はこれ以上ないほどやかましくなる、そうなる前に落ちて猫を救わなければ。

 

 

「うん、ちょっとごめんね、今日は、これで・・・」

 

「おう、お疲れ」

 

「お疲れさま」

 

 

シノンは猫を救いに行った、いいね。

 

俺も同じくGGOから出るが時刻はまだ夜の8時。

 

何か夜風に当たりたいと外へ出て公園に向かう、途中コンビニでジュースとアイスを数個買っておく。

 

 

しかし7月となると流石に暑い、都会の夏はなんでこうもムッシリするのか。

 

コンビニの袋から袋のかき氷を取り出し(以後ぶっかき氷あとがき参照)手で固まった氷を一度崩す。

 

ぶっかき氷の口をちぎりかき氷を口に入れれば少し冷えた気もする、かき氷はやっぱいちご味がええなぁ。

 

 

 

「仁先輩?」

 

 

おろ?

 

 

「女の子が夜分遅くに無用心ですね?」

 

 

「仁先輩がいたから来たんですよ、1人じゃ寂しいでしょ?」

 

 

振り向けば朝田さんが公園に1人で来ていた、殊勝なことを言ってくれるじゃないかこの後輩は。

 

 

「いい子やね、ご褒美にこいつをくれてやるよ」

 

家で食う予定だったぶっかき氷を朝田さんへ放り投げる。

 

「わ、なんですかこれ?」

 

「こうやって食えばいいよ」

 

 

そう言って自分の袋を見せればなるほどと言った感じで同じように食べ始める。

 

「あぁ美味しいですねこれ、屋台で食べるのより美味しいです」

 

 

「だろ、最近学校はどうだ? ミホ達とは仲よさそうだけど?」

 

 

「はいまぁふざけすぎることもあるんですけど本当に嫌なことはやってこないし」

 

 

「なら良かった、食堂とかでしか見ないから安心したよ」

 

 

「なんか保護者みたいなこと言うんですね」

 

 

 

朝田さんに対する心配とバカどもに対する心配は別物ではある。

 

 

 

 

「まぁね、朝田さんは我慢出来る娘だから気になるんだよ」

 

 

「そう見えます?」

 

 

「俺オリジナルの性格診断、眼鏡をかけてて目を見て話す子は我慢強い」

 

 

「へぇ、そうなんですね」

 

 

朝田さんはこちらに身を乗り出す、こう言う話は大抵誰でもノッてくれる。

 

 

「まぁありそうなこと言ってるだけなんだけどね実際」

 

 

「なんですかそれ」

 

 

「性格診断とかテキトーにそれっぽいこと言って一つでも当たれば違うとは言えないからそうなんだ〜って思っちゃうってなんかで言ってた」

 

 

「面白そうですね、もっとしてくださいよ」

 

 

もっと、うぅむ。

 

 

「じゃあ、恋愛だけど誰でも最初会ったときは少し人見知りして悪印象を与えるときがある、でも恋人には尽くすタイプ、執着心が強い、浮気とか絶対許さないタイプ、その代わり自分も浮気とか絶対しなくて結婚するときは考えすぎる、どうだ?」

 

 

「おお〜当たってる、なんでですか?」

 

 

素直なリアクションとともにパチパチと拍手をしてくれているのが可愛らしい。

 

 

「当たってるもクソも当然のことだって、シビアに考えて見たら浮気とか誰も許さんし結婚も誰しもちゃんと考えるやろ?」

 

 

 

「あぁでも最初人見知りとか、恋人のとことか執着とかは?」

 

 

「それは友人だからね、公園で俺がいたから来てくれるってのもあるし初めて会ったとき人見知りしてたしね、執着心はまぁこう言うタイプの人なら言ってる」

 

 

「おぉ〜本当にすごいですね、初めて先輩を尊敬しました」

 

 

おいなんだと?

 

今度から似たタイプの人見たら『冗談も言うタイプ』とか言っておくか・・・。

 

もしくは3Bに毒されたか?許せんなあのアホども。

 

 

 

「朝田さん意外と言うね」

 

 

 

「えぇ、そう言う友人がいますから」

 

 

やはりあいつらか。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ帰ろうかな、朝田さん送ってくよ」

 

 

「じゃあお言葉に甘えさせていただきますね」

 

 

身長差もあるがこの笑顔+上目遣いは・・・。

 

 

「・・・、社会出たら年上キラーとか言われそうだな」

 

 

「なんですか?」

 

 

「いや、明日何しようかなって」

 

 

「あぁ」

 

俺たちは公園を出て帰り道を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

あ、そうだ。

 

 

 

「心理テストのこと他の人にあんま言わないでね?」

 

 

 

「どうしてですか?」

 

 

 

「俺がネタに困るからね、中学の頃モテたくてやってたら皆が真似してダメになったからそれの二の舞いになるからね」

 

 

そう言うと朝田さんは情けないような、幻滅したような顔でこちらを見ていた。

 

 

「・・・はぁ、そう言うとこ先輩らしくて好きですよ」

 

 

「オチをつけとかないと落ち着かないんだよ、ダジャレじゃないよ?」

 

 

「それも言わなきゃいいんですけどね・・・あと先輩、聞きたいことがあるんですけど」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

振り向けば朝田さんは手をモジモジとさせて立ち止まっている、原因がわからない気持ちに対して答えを探しているような、そんな雰囲気。

 

 

俺も先程から手に違和感を感じている。

 

 

これは・・・まさか・・・もしかして。

 

 

 

朝田さんは心を決めたのか口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「手がベタつくのはあのかき氷のせいですか?」

 

 

 

「そう、それがあのかき氷の最大の欠点

 

 

 

やはり朝田さんは俺と同じ気持ちだった。




袋のかき氷とは九州ローカル?のアイスで袋にいちご味のかき氷が入っているシンプルなアイスです、最近ある漫画に取り上げられたことで知ったと言う方もいるかもしれません。


自分の地域ではぶっかき氷と呼んでました、これはただの方言みたいなものでカープのぶっかき氷とは違います、いや結局は同じ様なものです。


あとセリフだらけになって申し訳ありません。

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