クラン山猫
「早く見つけてよ、ランキング落ちちゃうでしょ?」
森林ステージ、ここは名の通り木がステージ中に生い茂っている、製作者の話には一昔前の潜入ゲームの狙撃戦で使われた森をイメージしているらしい。
木は多いが全く見えないほどではなく、しかし油断しているとすぐにステルスキルされる上級者向けのステージだ。
現在はThe Endイベントの試合中だ。
使用武器はなんでもよし、簡単に言えば森林ステージ全てでの1週間の総合得点勝負だ。
最終的にキルが多く、デスが少なければポイントは高くなる。
そのため皆潜伏メインでの試合展開となる。
チームは1チーム3人まで。
俺とシノンがペアを組み優勝を目指す。
今日は3日目ランキングは俺たちは5位、
二位まではどっこいどっこいだが一位はゼクシードがぶっちぎって一位となっている。
バレット持って木をぶち抜いてキルとって、トーラスアーマー着て即死防いで、リジェネパックジャブジャブ使って即回復、堂々たる一位だ。
反則じゃない、そらそうだ、チート使ってる訳じゃないからね。
本心からそう思う、そして心の底から知りたいのが幾ら課金したんだ?
「ちょっと、どこ触ってんのよ」
「せめぇから仕方ねぇだろ、なんでここ選んだんだよ」
「いいじゃない、これまで見つかってないんだから」
俺たちがいるところは倒木の下、確かに見つかっておらず一方的にキルを取れている。
まぁそのことに関して文句はないが。
「だから、そっち行ってって、さっきからハラスメントなってるんだからね、手が滑ったからってこっちの手が止まる訳じゃないんだから」
「お?脅迫か?いいぞ?やってやんぞR-18にしても俺は一向に構わんぞ!?」
「マジでやめてね?」
「する訳ねぇだろ」
「ヘタレ」
「おいガキ」
ここ3日これをずっと繰り返している。
クランを組んでから三ヶ月毎日同じ行動をして俺の扱い方を心得たようで暇になれば俺を弄り始める、まだ口で茶化すだけならよし、しかしわざわざ身動ぎしてこういう事を言ってくる。
正直ゲームの進歩をここまで恨んだことはない。
柔らかい、暖かい、いい匂いと三拍子揃っている、しかも当の本人も性格を除けば文句なしの美少女。
恨むぞザスカー。
お。
「一時の方向、1人」
低い声で俺が呟けば先ほどまでの弛んだ雰囲気から一変し一気に空気が張り詰める。
シノンを見ることはないがこいつは人を撃つって時は一端のスナイパーに変わってくれる、だから大丈夫、俺は俺の仕事をすればいい。
「距離315無風」
隣からはカチカチとクリック音が聞こえる、前回の射撃が600超だった為修正を行っている。
標的は迷彩服のDMR持ち、ゆっくりと足音を消し歩き続けている。
そして木の陰へと背を預け立ち止まる、おそらくあちらに敵の気配があるのだろう、しかし今回はこっちだ。
「ヘッドショットエイム」
チ、と引き金に指を掛ける音。
「ファイア」
俺のスコープの先では音と少しズレ、標的の頭が吹き飛んだ。
「お見事」
特に何かあったわけでもないように静かにコッキングを行うシノンは山猫のような顔だった。
ま、当然か。
山猫のような顔。
山猫は眠らないシリーズのイメージです。
でもあの人の顔ってわけではありません。