GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです。 作:桐生 勇太
「せっかく設定があるのに出さないのもったいなくない?」と思い立ち、最終回のその後の物語を舞台にした「未公開話」の場を借りて登場していただきます。基本的にバトル描写は絶無の予定ですのでそこだけご容赦ください。
まさしく日常パートその物。
※現在は未公開話を不定期で書き続けますが、現在書いている三部作が終わったら、この作品「GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです」の『真の最終章』を書かせていただきます。その時までお楽しみに。
「はぁ………」
手の中で縦ロールの銀髪を弄びながら、私はため息をついた。
今日はお城で舞踏会。国中の貴族達が集まってそれぞれの婚約者、妻と踊る一年に一度の社交の場。
私も国で三本の指に入る侯爵貴族の長女『アルテ=フレンツェ・ベロニカ』として、あの輝かしい広間で婚約者のイーグル国第一王子のレオ=スパレッティ・イーグル様と踊るものと思っていた。
だけど、突き付けられたのは婚約破棄の知らせ。彼の傍らには美しい金髪の少女がいた。
それ自体は別にいい。あの人は正直に言うと傲慢で、何でも自分の思い通りにならないと癇癪を起こす人だったから、愛していたわけじゃない。親同士で決められていた政略結婚だったから、向こうも私の事が好きだった時なんてないだろう。
どうしていいか分からずに、周りにいた人に相談しようとしたけれど、私が友人だと思っていた人たちはどうやらたちの悪いウソつきだったみたい。「王子と結婚しないなら要はない」とでも言うように、皆が私の元から去っていった。
そしてそれは、両親も同じだったみたい。
騒ぎを聞きつけるとお父様もお母様も私なんていなかったかのように振舞っていた。
「所詮、私は家を大きくするための道具だったのね………」
愛されていると、思いあがっていた。何か努力して出来るようになると、両親は喜ぶふりをしていたし、私もうれしかった。友人などがトラブルに巻き込まれていた時には自分の地位と発言力を使って治め、感謝されていたと思っていた。
「何も………無かったのね………最初から………」
広間から逃げ出して、今は廊下で一人座り込んでいる。年頃の淑女としては最低の行為だけれど、私の事なんか誰も見ていないから構わない。そう思っていた。
「具合でも悪いのかい?」
急に呼ばれ、飛び上がるほど驚いた。いや、多分私は飛び上がっていた。
「えっ!? い、いえ、体調が優れないわけではないのです。申し訳ありません」
いつから見られていたんだろう……もしかして最初から?そう思うと、恥ずかしすぎる。
見ると、黒髪の男性が私を心配そうに見ていた。
「そんなに警戒しなくても大丈夫さ。私は檀黎斗。元は怪しかったけど今は怪しいものじゃない」
「は、はぁ………」
変な言い回しで、逆に緊張してしまう。だけど、ここは王宮。悪い人間は入ってこれないはずだから、危険な人ではない………と思いたい。
「何か………辛いことでもあったようだが?」
「………ええ、一人ぼっちになりましたの」
私はぽつり、ぽつりと檀黎斗と名乗った方に昔の自分を話し始めた。
お読みいただきありがとうございました。