GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです。   作:桐生 勇太

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第22GAME:黎斗神と黒龍ヘイロンと夢

「なら早速出そう…」

 

 言いながら、クリスが魔石を取り出して地面にたたきつけた。同時にヘイロンが出で来る。

 

「………気を失っていますね…出血もひどい…いきます、[ハイヒール]」

 

 おお、見る見るうちに治っていく、すごいな。閉じていたヘイロンの目が、ふと開いた。

 

「グルゥ?」

 

「ヘイロン! よかった………」

 

 どうやら完治したようだ。よしよし。その時、ヘイロンと目が合った。

 

「ギャフ! キュウ、キュウ」

 

 む、やはり嫌われているか…まあ当然だな。

 

「ヘイロン、コワイ!」

 

 ………ですよね

 

「コワイ! コワイ!」

 

 クリスの後ろに隠れようとしているのだろうが、15Mの巨体が隠れられるわけがない。見え見えだ。

 

「…あー…おほん、ほーら、怖くないぞーほれほれ、こっち来い」

 

 こういう時には、警戒心を付けさせたらダメだ。飛び切りの笑顔(ゲンムスマイル)を作って、ヘイロンに近づく…が

 

「ヒイィィィィィィィ」

 

 逃げられた…なぜだ…そんなに私の笑顔が怖いか?

 

「おのれ、待て!」

 

「ギャアァァァァァァァァァァ」

 

「ぐお、しまった…」

 

 変身して追いかけると、いよいよ泣き出した。いかん、トラウマを刺激してしまった。

 

 仕方ないな…よし、こうしよう。

 

「クリス、ヘイロンを1日私に貸せ1日も一緒にいれば、危険はないことを悟るだろう」

 

「…よし、わかった」

 

 その日は1日中怖がっていたヘイロンだったが、次の日ほどになるとだいぶ慣れてきたようだ。

 

…………まあ、いまだに変身すると少し怖がるが………

 

 

 

 

 

その日の夜、妙な夢を見た。

 

 たまに「これは夢だな」と夢の中で思う時がある。今回はまさにそれだった。真っ白な空間に、私は1人立っている。しばらくぼうっとしていると、突然目の前に女性が現れた。真っ白な髪だが、白髪というわけではなさそうだ。淡く光っている。歳は25そこらか。真面目そうな顔だ。綺麗というより、美しいといった感じだな。

 

「やはりこうなってしまいましたか…」

 

 私の姿を見ると、ひどく残念そうな顔をした。

 

「何がだ?」

 

「申し遅れました。私の名はゲムム。 この世界の神です」

 

 …ッ何だと? こいつが?

 

「この世界は、今魔神という存在によって危機を迎えています」

 

「魔神? 魔王ではないのか?」

 

「魔王はその手下。魔神は直接手は出しません。ですが、魔王を倒さぬ限り、魔神を倒すこともできません」

 

 魔神とな…また厄介な奴が出てきたものだ。

 

「魔神はいま部屋の中に閉じこもっている状態。魔王という扉を突破せねば、魔神のもとへたどり着けません」

 

 ………なるほどな。

 

「お判りいただけましたか」

 

「………まだ私は何も言っていないが?」

 

「心の声を聴いているのです」

 

 ………便利だな

 

「そこで問題があります。魔王を倒すにあたって、扉の鍵の役割を担っているのが「異世界からの勇者」です」

 

 …? なら問題なかろう。私は魔王を倒す気満々だし………

 

「いえ、あなたは勇者ではありません勇者は別にいます」

 

 ………は?

 

「あなたは「勇者の称号」を持っていないでしょう?」

 

 …確かに…いや、待て待て、なら、私はなぜこの世界にいる? 私は関係ないのだろう?

 

「私もそのつもりでした。子犬を守るために交通事故で死んだあなたと同じ世界で生きていた彼女を見込んでスカウトし、この世界のイーグル国の召喚魔法陣に出すはずでした」

 

 だがミスし、私を送ったと?

 

「いえ、同時刻にあなたが死に、おまけに蘇りを実行したため、勇者とあなた、2人の人間が私の設定した「世界の理を超える形で生き変えようとするものを別世界ゲイムに送る」という条件に当てはまってしまったのです。彼女は私の力で、あなたは自分が作ったコンテニューの力で」

 

 ………なら、なぜ勇者がいない? あの場には私しかいなかったぞ。

 

「あの魔法陣は1人の人間用です。2人は通れないのです。1つの扉が一杯になっていたら、ほかの入り口を探すでしょう?」

 

 ということは、勇者はこの世界のどこかに…?

 

「そうなります」

 

 どこにいるんだ?

 

「分かりません」

 

 あらっ………………………おい、お前は創世神って話だったが?

 

「私の神の力はこの世界を作った時に無くなりました。こうして会話などできますが、あまり万能ではありません」

 

 なるほどな…今度来る時があったら、もう少しこの殺風景な景色を何とかしろ。………ちなみに、魔王を私が倒したらどうなる?

 

「倒して、それで終わりです。魔神を倒すすべがなくなります」

 

 …面倒だな………まあいい。ようはその勇者とやらを見つければいいんだな?

 

「はい………!」

 

 どうした?

 

「この会話が、魔王にばれました! もうすぐ接続が切れます!」

 

 おいおい、ずいぶんと急だな。

 

「信じています! 檀! あなたの称号の「救世主」を! 必ず勇者を見つけ出してください! 彼女の…………名は………ス………ラ………カ………メ………」

 

 その時、私の目が覚めた。

 

 ……くそっせめてしっかり名前が聞ければまだ探しようもあったが…

 

とりあえず、一刻も早く勇者を見つけなくては。だが、姿も何もわからない。とりあえず全員のレベルを上げて、自分の行動に無理がきくようにしておこう。

 

 ………それにしても、創世神の計画を打ち破るとは、悪い意味だが、さすがは私だ。




お読みいただきありがとうございました。

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