GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです。 作:桐生 勇太
「さて、全員、準備はできたか?」
「「「「はい」」」」
朝になった…いやぁ、昨日はここ人生で一等疲れた日だったな。
「よし、じゃあ行くぞ」
今日でもうこの街ともお別れだ。最後に焼き鳥を少し買った。うまいんだよなこれ。
「檀様! 手をつなぎましょう!」
「ん? ああ、良いぞ」
アリアと手をつなぐが…下手に彼女の気持ちを知ってしまった以上、なんだかこっぱずかしいな。
「「「………」」」
またしても3人が般若になっている…と思ったらクライシィ片手を、クリスに左肩を、ミリカには右肩をつかまれた。………なあにこれぇ? どういう状況? 怖いというか、この状況whyな。
「まあいい…いくぞ」
進んでいくと、突然目の前に子供が現れた…ん?あれは…
「あの時のスラム街の子供か」
「えっと、おにーさん、あのときの、おれい…はい」
これは…綺麗な石だな。子供のころ、夢中になって集めた記憶がある。
「じゃあ、お礼のお礼だな。これをあげよう。神の恵みだ。ありがたく食え」
さっき買った焼き鳥を渡す。
「いいの?」
「ああ」
「ありがとーございました」
「ん、じゃあな」
そういってあの子はまた戻っていった。……元気でな。
「優しいねぇ。アンタはというか…そのバッグ? 何なんだい?」
言いながらミリカが私のマイティを指さした。
「これか? これは肩掛けマイティ財布で、自分で作ったものだ」
「え…でもそれ、アリアも……」
「あげたからな」
「「「いいなぁ」」」
「ほしいのか?」
「「「欲しい!」」」
そうかそうか。みんなそんなにマイティが好きか。嬉しいな。
「じゃあやろう…神の恵みをありがたく受け取れ!」
言いつつ、マイティブラザーズXXやドクターマイティXX、さらに特別版のゾンビマイティにゴールドマイティ(ハイパー無敵マイティ)を出した。
「好きなのを選べ。ただし1人1つだぞ」
「かわいい…」
「素敵です!」
「…いいな」
みんな迷っているな…ふふ、好きなのをお選び…
「せっかく2人のお揃いだと思ってたのに…ひどいです檀様」
何かアリアが言ったようだが、3人の声がうるさくて聞こえあかった。
「檀様、いつのまにこんなに作ったんですか?」
「ん? ああ………昨日の夜、少し特訓をしていてな…」
「特訓?」
「まあそんなところだ。で、お前たち、決まったか?」
「はい! 私はこの緑のを!」
「アタシはこのおでこに丸い円盤がついてる黒いのを」
「私はこのオレンジのを…」
ふむ、クライシィはマイティブラザーズの永夢側、クリスがパラド側、ミリカがドクターマイティの黒か。
その後、門の前でクリティカ神官長と挨拶をし、門番に預けてあった馬車を回収して旅を再開した。
そして、出発してしばらくして…
「よし、いったん休憩しよう。そこで、最後のテストだ」
「テスト?」
そう、少し前に爆走バイクの動きのチェックをしたのだが途中で邪魔が入って中断していたあれだ。
「090-9610ー2330っと…」
スマホに番号を入れ、操作する。あの時できなかったA、Bボタンのチェックだ。
「まずはAボタン…ほい」
押すと同時にライトが付く。よし完璧。後はBだが…正直一番これが不安だ………
「Bボタン…ほい!」
押すと同時に爆走バイクが人型になり、レーザーターボになった。改良を加えたので、「レーザーニトロ」だ。…そして…
「よし、完璧に動いた。さすがは……」
いうと同時にレーザーニトロも声を出す。
「さすがは………」
「私だあああああああぁぁぁぁぁ!!」
「黎斗神様だあああああああぁぁぁぁぁ!!」
「「ヴァーハッハッハ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」
…そう私は、このレーザーニトロにAIを取り付け、私の召使兼、お褒め係を作ったのだ!
と思っていたら……………………
「「「「うるさいのでやめてください」」」」
結局、レーザーニトロのボイス機能は、完全に削除されてしまった…はかない夢のような時間だった…
まあレーザーニトロはこれからも雑用係として大活躍していくことだろう。
お読みいただきありがとうございました。
本編でさんざんお世話になったレーザーを雑用係にするあたり、黎斗の心の闇が少し見えますね。