GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです。   作:桐生 勇太

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第11GAME:黎斗神、トキオウ街にて

 その後、こってりと怒られた。さすがに3人で変わりばんこに説教されるとは思ってなかったぞ。結構地獄だった…「「「次にやったら承知しない」」」そうで、まあ、何だ、ちょっとは自重してやらんこともない。とりあえずその日は近くの宿に1泊し、次の日の朝に全員で散歩をしていたが…

 

「何かしらね、あの男」

 

「いやだわ、黒髪かい?」

 

「早く出て行ってほしいねぇ」

 

 それにしても、ほんとに黒髪は嫌われているな…ちょっと想像以上だ。道行く人のほぼすべてがぎょっとした顔で見てくる。ええい、こっち見んな。

 

「黎斗神様、やはりカツラをつけたほうが…」

 

「却下」

 

「…はい…」

 

 こうなったら意地だ。ちくしょい。

 

「屋台で何か食べていくか…」

 

「あまり裏路地のほうにはいかないようにしてくださいね」

 

「? 何かあるのか?」

 

「スラムになっていまして…大人と子供合わせて50人ほどがいるそうです」

 

 やはりこの世界にもあったか…なんだかWで嫌な気持ちになってくるな…

 

 

 

 

 

 

「おお、この焼き鳥もうまいな! もう1つくれ!」

 

 おのれ、この辺の屋台、どれもこれも暴力的にうまいな。「腹八分目がちょうどいい」とよく言うが、おなか1杯に食べてしまいそうだ。その時、後ろで立っていたミリカに歩いてきた子供がぶつかった。

 

「む? 悪いね」

 

 そう言ってミリカは道を譲るが、ちょっと待っただ。

 

「待て」

 

 子供に駆け寄り、腕をつかんでひねりあげる。

 

「い、いたい、はなして…」

 

「ちょ、アンタ何して…」

 

「盗んだものを返せ」

 

 服の中にしまい込んでいた、革袋でできた財布を取り上げる。

 

「あ、それ、アタシの…」

 

「スリか、いい度胸してるな」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

 子供が泣きそうな顔になる。…まったく、身なりからしてスラムの子供だろう。同じタイミングで、子供の腹が鳴った。

 

「腹が減ってるのか?」

 

「もうなんにちもたべてなくて…それで、それでその、おねえちゃんのおかねを…ごめ、ごめんなさい…」

 

「もういい。分かった。こっちへ来い」

 

 腕を引っ張りながら連れ出す。いやに抵抗するな。こいつ。

 

「黎斗神様、相手は子供です! あまり乱暴は…」

 

「ごめんなさい… えぐっ ひっ ころさないで…」

 

 うおい、めっちゃ怖がられてるな私。

 

「…てやる」

 

「…え?」

 

「何でも買ってやる。好きなだけ食わせてやる。何が食いたい?」

 

 子供はきょとんとした顔をしている。まあ当然か。

 

「どうした? 腹が減っていたのは嘘か?」

 

「えと…じゃあ、あれ」

 

 焼き鳥屋か…あそこはうまいからな…よし、幸旅の支度金と言い割れてかなり金はある。買ってやるか。

 

「いくつだ?」

 

「ごじゅうさんこ…」

 

 いや、多いなおい。ん? いや、そういうことか…後、個じゃなくて本だ。

 

 

 

 

 

 

「ありがとーございました。やさしいおにーさん。ばいばい」

 

「うむ、神の恵みだ。ありがたく食え」

 

「よかったんですか?」

 

 子供と別れた後、クライシィに言われた。後ろのミリカとクリスも同意見のようだ。

 

「ちょっと甘やかしすぎたんじゃないかい?」

 

「あの子1人で53本などいくら何でも食えんだろう」

 

「甘やかして何が悪い?」

 

 思ったことが思わず口から出た。

 

「スラムで生きているくらいだ。あの子供たちは、これまで甘やかされたことなどないだろう。親の顔をお知らなかったり、死に分かれた子供も多いはずだ。あの程度の甘やかし、むしろ足りないぐらいだ。それに、さっきの53という数、それに近い数字をさっき聞いたが、何か思い出さないか?」

 

「…あっ、スラムの住人の数…」

 

 やはりクライシィが一番に気づいたようだな。

 

「おそらく、実際には53人いたということだろう。1人1人に配るつもりだろうな…さて、それで、話を戻すが、さっきの私の行動、まだ文句があるか?」

 

「「「…………………」」」

 

 む、なぜだかムキになってしまったな。

 

「まあいい、少し疲れた。私はもう宿に帰るぞ」

 

 後ろでクライシィ達の私への好感度が跳ね上がっていたらしいが、私はそんなことはつゆ知らず、微妙に落ち込んだまま宿に帰って、自部屋で「ガシャット製造用携帯端末」を使って、爆走バイクガシャットとスマホにちょっとした改造を施して1日を終えた。




お読みいただきありがとうございました。

次回は、新登場のヒロイン視点での話です。

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