新訳女神転生(仮)   作:混沌の魔法使い

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チャプター12 近寄る悪夢

チャプター12 近寄る悪夢

 

てけてけを退ける事が出来た。その安心感と人が目の前で死んだその精神的なショックもあり、俺達はてけてけが消えると同時に殆ど気絶するように眠ってしまった……頭に異様な重さを感じながら目を開くと、外は赤く染まっていて夕暮れ時だと判った。ゆっくりと身体を起こすと、ずるりと身体から何が落ちる。なんだろう?とそれに手を伸ばすとそれは防災用の毛布……雄一郎や桃子にも同じ様な毛布が掛けられ全員横になって眠っているが、久遠教授の姿が無い

 

(久遠教授……どこへ?)

 

単独行動はあれだけ厳禁だと言っていたのに……リリムがいるから少し周囲を調べているんだろうか?と思いながら立ち上がり久遠教授を探していると、バックヤードの奥の方からリリムと久遠教授の声が聞こえて来た

 

【久遠様……いま……いる……イ……ラ様……貴女……】

 

「ご苦労……なら……も……しやすい……好……だ」

 

壁に空いている穴から吹き込んでくる風の所為でよく聞こえないが、久遠教授がこの先にいるのは間違いない

 

「久遠教授ー居ますかー?」

 

何か大事な話をしていたら申し訳ないと思い、近づかず呼びかけると

 

「楓君か?目が覚めたんだな?今行くから桃子達の方で待っていてくれ」

 

リリムがいるから大丈夫だからと言う久遠教授の言葉に判りましたと返事を返し、桃子達の方に戻る

 

「あ、あっあああ!!!」

 

「桃子!?どうした!?」

 

桃子が大粒の涙を流しながら魘されているのを見て慌てて駆け寄り肩を揺する。俺と桃子の悲鳴に雄一郎と美雪先輩も目を覚まして、これは只事じゃないと思ったのか

 

「桃子さん!桃子さん!どうしたんですか!!!」

 

「おい!桃子!しっかりしろ!どうしたんだ!!」

 

「桃!おい!桃起きろッ!!!」

 

3人で必死に声を掛けると桃がゆっくりと目を開き、呆然とした表情で周囲を見て良かったと小さく呟く

 

「どうした怖い夢でも見たのか?」

 

尋常じゃない怯えようだった。今も震えている姿を見て、背中を撫でながらどうしたんだ?と尋ねる

 

「凄く怖い夢だったんだ……でも夢だよね……うん。大丈夫、私は大丈夫だよ」

 

眠っていた筈なのに酷い疲労感を見せる桃。だけど夢だから大丈夫と繰り返し言う桃にそれ以上問い質す事も出来ず

 

「そっか、それなら良いんだけど……」

 

「全然大丈夫だよ!楓も、美雪先輩も雄一郎君もごめんね。私の所為で起しちゃったでしょ?」

 

明るく笑いながらごめんねと笑う桃にてけてけが殺した女の人の夢でも見たのだろうか?何にせよ、これ以上問いただして怖い夢を思い出させるのも可哀想だ。俺はそう判断し、久遠教授が来るまでに移動の準備をしようと桃達に声を掛け、毛布などを畳み始めたのだが

 

(夢……夢か)

 

怖い夢と聞いて、何かが頭の中に引っかかったのだがその何かを思い出すことが出来ず、ただの悪夢だったんだろうなと判断したのだが、それがてけてけよりも危険な都市伝説の悪魔からの攻撃だと気付いた俺達はその悪魔に囚われてしまっているのだった……

 

 

 

桃子さんがかなり魘されている姿を思い出し、私ももしかすると同じ様に魘されていたのかもしれない。いや私だけじゃない、楓君も笹野君も同じだったのかもしれないと思いながら毛布を畳んでいると母さんがバックヤードのほうから歩いてくるのが見えた

 

「母さん。どこに行っていたんですか?」

 

「ああ。ちょっとリリムとバックヤードをな。あそこから生存者が出て来ただろ?日記とかでもないかなって思ってな」

 

今の私達には生存者が何処に集まっているのか?とか、今までどんな状況だったのか?と言う情報が欠けているからなと呟く母さん。でも生存者と合流するつもりが無いのに、なんでそんな物を調べようとしていたのかと私達が首を傾げていると母さんは真剣な表情をして

 

「車で移動していればエンジン音がするだろ?それでどこかに停まったときに襲撃されても厄介だし、スーパーとかであるかもしれない食料や水を探している時に暗がりから襲われたりすると厄介だからな」

 

その厄介と言うのが私や桃子さん、母さんに対する危険と言う事だと判った。もし暗がりから押さえ込まれたら碌な抵抗も出来ず連れ去られたり、そのまま襲われる可能性が高い。もしどこかに生存者が集まっていると言う情報があるのならそこを避けて移動するのも必要になってくる

 

「だよな……あの男達の事を考えるとな……下手に停まるのは危険だよな」

 

「美雪先輩も桃も久遠教授も本当に単独行動だけは止めて下さいよ?何かあったら危ないですから」

 

さっきガソリンスタンドで私を見つめていた男達の下卑た視線を思い出し、思わず身震いする。好きでもなんでもない男性に触れられるのは嫌悪感もそうだが恐怖が凄まじい……触られるだけならまだしもその先をされたらと思うと恐ろしくて仕方なかった……桃子さんも同じなのか震えている姿を見て改めてどうしてこんな事になってしまったのか恐怖した。当たり前だと思っていた日常が壊れた、それだけで女性はいつ襲われるかも判らない恐怖を抱く事になるなんて……もし1人だったらと思うと本当に怖かった。楓君達と一緒で良かったと心の底から思った

 

「桃、お前が契約した悪魔の事を教えてくれよ?それで今後の戦いの方向が変わるかもしれないから」

 

「あ、そうだね。えーと……契約悪魔だよね」

 

桃子さんがスマホの契約悪魔の画面をタップして悪魔の画面を出す

 

 

ナジャ ランク☆ 変異種 

 

所持魔法

 

ディア

 

ポズムディ

 

スクカジャ

 

スクンダ

 

タルカジャ

 

ラクンダ

 

????

 

????

 

????

 

????

 

????

 

????

 

????

 

????

 

 

耐性 衝撃・光・闇

 

弱 物理・氷結

 

画面を見て初めて思ったのは????が多い事次に気になったのはランク☆っと言う所と変異種と言う種族だった

 

「☆と変異種ってなんだろ?」

 

「判らないな」

 

今まで見たことの無い表記に皆で首を傾げる。今までは数字と種族で星と変異種なんて見た事が無かった。それに聞いた事の無い魔法も多くそれについても聞きたいと思ったのですが、母さんがパンパンっと手を叩き

 

「気になるのは判るが、それは後回しだ。メルコムの店も覗いてみたいし、今日このホームセンターで一晩過ごすのか、別の場所に移動するのか?そう言うのも考えたい、ナジャと話をするのは今日の拠点を決めてからにしよう」

 

確かに日が暮れてから移動するのは危険だ。まだ明るい内にどうしようか決めようと言うのは当然の事ですね、私達はナジャと言う悪魔の事は気になりはした物の今は他にやるべき事がある。母さんの言葉に頷き、てけてけと戦う為に1度隠しておいた荷物を回収してから、1度メルコムの店へと引き返すことにした

 

【これはこれはいらっしゃいませ。お探しの物は見つかったようですね】

 

にこにこと笑うメルコム。悪魔じゃなければちょっと顔が怖いだけの人って感じなんですけど……悪魔だと思うとどうしても恐怖心を感じてしまう

 

「店の商品を見せて貰うが良いか?」

 

【勿論でございます、人間の方が来ると判ったのでしっかりと人間むけの商品も仕入れておきました。サービスプライスにてご提供いたしますので、どうぞごゆっくり】

 

そう笑って店の扉を開き、中に入っていくメルコムの後を付いて私達も店の中に足を踏み入れた

 

「あ、綺麗……」

 

桃子さんと声を揃えてそう呟く、悪魔の店だからとおどろおどろしい内装をしていると思っていたんですが、幻想的な光で満たされたファンタジーの世界その物の内装に正直驚いた

 

【そうでしょうとも、私どもメルコムはお客様に快適なお買い物を提供する事をモットーとしております】

 

椅子に腰掛け存分にご覧くださいと笑うメルコム。でも彼はお金次第と言った、高校とホームセンターで戦いマッカは拾って来たが額は判らない。私達が顔を見合わせていると母さんがマッカの袋をメルコムの机の上において

 

「すまないがマッカの数え方が判らない。額を教えて欲しい、それと色々素材か?それも拾って来た。それの換金も頼む」

 

【……畏まりました。そちらの椅子に座って暫くお待ちください】

 

椅子に座るように促され、私達はメルコムがマッカを数えてくれている間。椅子に腰掛け店の中に置かれていた商品を見ながら換金が終わるのを待つのだった

 

 

 

メルコムと名乗った悪魔にマッカの袋と悪魔を倒して拾った燃える皮や、透き通る羽を渡すと真剣な顔でそれを数えている姿を見ていると、最初に感じたもしかしたら誤魔化されると言う思いは消えていた。あの姿を見れば商人として強いプライドを持っているのが判り、嘘などはつかないと思ったのだ

 

(おい、雄一郎。あれ見てみろよ)

 

楓の視線の先を見るとそこには氷の山の中に保管されている牛肉のパックや、食パンの姿がある。あれがもしかして人間向きの商品って事か……!?値段次第だがもし買えるなら肉は食いたいな

 

「美雪先輩……あれ見てください」

 

「服ですね……あれも欲しいですね」

 

悪魔の店だから人間向きの商品など無いと思っていたが、かなりの数普通の店に置かれてもおかしくない品物があった。久遠先輩達が見ているほうに視線を向けると、無造作に置かれている服の中に下着が見えていかんいかんと頭を振る。俺だって健全な男子高校生だから女子に興味はあるが、その些細な興味で今の心地の良い空気を壊す訳にはいかない。楓も同じだろうと振り返ると

 

「あの赤い石なんですかね?チャクラドロップとは違うみたいですけど」

 

「青や緑の石もあるな……もしかすると役に立つ物かもしれないな」

 

人間の商品を俺に見るように言っておいて、なんで自分は悪魔の商品を見ながら久遠教授と話をしてるんだ?もっとこうあるだろ……色々と……楓らしいと言えば楓らしいんだが……と言うか

 

(久遠教授も久遠教授だよな)

 

久遠教授も楓の事を随分と気にしているように見える。外見こそ若々しいが、年齢は倍くらい違う筈だ。それなのに楓と話している時は酷く嬉しそうで……それこそ桃子と同じ様に見えて

 

(止めよう、これは考えるべきじゃない)

 

そんな邪見をしていてはいけない、俺が考えているような関係であるはずが無い。自分に言い聞かせるように心の中でそう呟いているとメルコムが眼鏡を外して

 

【大変お待たせしました。会計が終了しました、マッカのほうは1万と8000になります、それとこちらの素材で7000マッカ、合わせて25000マッカとなります】

 

2万5000!これはかなりの額なんじゃないのか?それこそ肉を買って、なおかつ服を買う余裕もあるかもしれない

 

【それと別口ですが、このブレスレットは良い怨みを溜め込んでおりますので後ほど物品交換をお願いしたいのですが】

 

メルコムの手の中のブレスレットを見て絶句する。あれって……てけてけの手首にあった物に似ていると思うんだが

 

「ああ、てけてけとか言う悪魔の遺品だ。良い物か?」

 

【勿論でございますよ、ただ買い取るとなると額のつけようが無いので物品交換と言う事でなにとぞ、その変わり当店の商品の値段をいくらか勉強させて頂きますので、今後ともごひいきの程を】

 

てけてけのブレスレットを拾って、それをさも当然のように売却しようとしている久遠教授に俺達は思わず絶句してしまうのだった……

 

「ふむ。安いな、桃子と美雪は服をいくつか選んでおけ、どれでも一律20マッカ。悪魔の価値観ではボロキレと同じだ、多いくらいで丁度いいだろう、サイズの合う下着と合わせて好きなのを選べ、あんまり派手なのは駄目だぞ。美雪」

 

「か、母さん!?」

 

下着を選べと言われて顔を赤く染めながら久遠教授の名前を呼ぶ久遠先輩。何となく気まずい気分になりながら、楓と共に久遠先輩達から目を逸らす

 

「こ、こっち見たら駄目だからね!雄一郎君!楓!」

 

慌てた様子でこっちを見たら駄目だと言う桃子に判ってると返事を返し、服が置いている場所から離れる

 

「初々しい事だ。別に誰に見せる訳でもあるまいし、なぁ?」

 

「「ソウデスネー」」

 

ああこっちも初々しい事だと笑う久遠教授は人間向けの商品を見ながら楽しそうに笑っている。皆で生き残ろうという話で意識しないようにしているのに、意識するような事を言うのは本当に止めて欲しい。桃子も久遠先輩も間違いなく美少女なのだから、一緒に居るだけでも俺は正直かなり緊張しているのだから

 

「旅行鞄とかもあるな……雄一郎。かなり安いぞ?」

 

「そ、そうだな」

 

意識を切り替える為か商品を見始めた楓の隣で商品を見る。確かにバッグとかでも5マッカとか書かれている辺り、人間の商品はかなり安いようだ……その中に愛用していたスポーツバッグと同じ物を見て、あえて考えないようにしていたお袋と親父の事を思い出す

 

(お袋と親父は大丈夫か……)

 

温泉旅行に行くと言って悪魔が現れる2日前に出かけた2人。温泉に向かった先で悪魔と遭遇して無ければいいんだがと思う。だがそれを言うと楓と桃子の両親は出雲だ……神無市にいないのだからきっと無事だ、そうに違いない

 

「雄一郎?どうかしたか?」

 

「あ、いやなんでもない。良いバッグだと思ってな、安いし買っておくか?探索に役立ちそうだ」

 

両親の事を心配しているのは楓達も同じだ、そんな弱気な事を口にする訳にはいかない。明るい口調でいい物を見つけたと俺は笑って誤魔化す事にした

 

「食料もあるか……肉は最近食べてないから買っておくか」

 

服や鞄の調達を一度終え、メルコムに預けた後今度は食料などを見る事にした。どうせこの状況だ、保存なんて聞く訳も無いので食べきれる量を選ぼうという話だ

 

「パンは少し欲しいかも……」

 

「ですね……母さん買っても?」

 

パンは賞味期限を良く見て選べと言う久遠教授の言葉に頷き、食パンを調べている桃子と久遠先輩。俺と楓は米が無いか?と探していたが

 

「やっぱりないか」

 

「パンだけでもよしとするべきだろ」

 

米があれば最高だったんだがな……だがそれは高望みしすぎかと笑い、乱雑に置かれている商品の中から、賞味期限などを見ながら楓と共に探し始める。ここの所、乾パンとかだったが今日は良い物が食べれそうだと思うと、俺も楓も自然と笑みを浮かべてしまうのだった……

 

 

 

メルコムに会った時適当に人間用の品を適当に集めておいてくれと頼んだが、ここまでやってくれるとは……流石メルコムだと心の中で呟く。食料に服、それに鞄等も恐ろしい数を集めてくれていた。服の山から自分の下着と服を何枚か選んでおく、何処かのデパート等で入手することも考えていたので、これは助かった

 

(ただ男女の服が適当と言うのは流石に頂けないが)

 

そこまでの配慮を頼むのは流石に酷だと思うが、楓君や雄一郎君が自分の着替えを探していてショーツやブラジャーを見て赤面しているのを見て可愛いと思ったが、少し可哀想だとも思った。特に楓君は可哀想だったな、桃子に頬を抓り上げられていたからなと苦笑しながら服を選び終える

 

「預かっておいてくれ」

 

【畏まりました】

 

まだ選ぶべき物がある寧ろ。今回の買い物のメインと言える……下着を含めた服をカウンターの上に預け

 

「待たせたな。じゃあそろそろ悪魔の品を見てみようか」

 

かなりの品揃えだったが、メインは悪魔の品。それを見てみようかと楓君達に声を掛け陳列されている棚へ向かう

 

「値段がかなり違いますね」

 

「ですね、文字通り桁が違います」

 

人間の品は高くても80マッカ。それに対して悪魔の品は安くて200マッカと根底から値段設定が違う

 

「久遠教授。もし買うとしたらどんな品を買うんですか?売り物で判るのチャクラドロップくらいなんですけど」

 

「そうだな。折角の店なのに、それでは勿体無いな、メルコム。簡単な商品の説明などは頼めるのか?」

 

【勿論でございます。少しお待ちください】

 

カウンターから笑顔で出て来たメルコムは私達の目の前に置かれている色とりどりの石を手にして

 

【こちらは魔法石でございます。赤い石はアギラオ、青い石はブフーラ、緑の石はザンマ、黄色の石はジオンガと言って、悪魔の魔法の力を封じ込めた物になります、こちらの装飾が施された物はマハ・ラギなどの全体魔法を封じ込めた物で使い捨てになりますがお役に立つと思いますよ】

 

魔法石か……使い捨てにはなるが、それなりに便利な物だな……ただ安くても1500マッカからか……資金が心元無い事もあり渋い顔をしているのに気付いたメルコムが開店記念キャンペーンですと笑い、小さな箱にマハのアギ・ブフ・ジオ・ザンの石を詰め込んで

 

【特別価格。今回に限り1500マッカ、魔法石の詰め合わせいかがでしょうか?】

 

商売上手だと苦笑する、これでは断れないな。素材にしてもそれなりの価格で買い取ってくれているし

 

「判った貰おう」

 

【お買い上げありがとうございます、ではこちらのほうは私の方でお預かりをいたします。続きまして解毒石、金の針などの状態異常に関する商品を全て5つほど詰め合わせにして、2000マッカ!おいかがですか?】

 

参った本当に商売上手だと苦笑しながらそれも貰うよと口にする。その内必要になるのは判っている、ならば安く買えるときに買っておくべきだ

 

「武器とかはあるのか?」

 

【武器ですか……あることはありますが、人間用の武器でして……それほど性能の良い物では……】

 

申し訳無さそうに言うメルコムだが、それで良かったと思う。行き成り性能の良い武器を手にしても扱いきれず、楓君達が怪我をする可能性を考えれば練習に適した武器。そう思えば丁度良い

 

「それで良い、見せてくれ」

 

【判りました。こちらです】

 

メルコムに案内された場所には数本の鉈と木刀。後はナイフがおかれていた、確かに武器としては心許ないが行き成り切れ味のいい武器を手にするよりかはよほど良いだろう

 

「試し振りはしてもいいのか?」

 

勿論です。私はカウンターでお待ちしておりますので、ごゆっくりと笑うメルコムはそのままカウンターへと戻って行く

 

「とりあえず、楓君と雄一郎君。鉈を持ってみてくれ」

 

木刀を使うくらいなら鉈を使ったほうがよほど効率が良い。2人にそう声を掛けて、私はナイフを見る

 

(まずまずか……10得ナイフとかではなく、普通のサバイバルナイフ……しかも鞘つきなら丁度良い)

 

鞘が無いのなら持ち運ぶのに不便だが、鞘があるなら持ち運びにも便利だ。それに値段も50マッカと良心的だ

 

「久遠教授。ちょっと重いですけど……使えない事は無いです」

 

「刃は刃こぼれしてるみたいで、切れ味は期待できないですけど、これなら重さで叩き切れるかも……」

 

試し振りをしていた楓君と雄一郎君が使えそうですと言うので、じゃあそれを買うかと呟き、美雪と桃子に丁度いいナイフを2本選んで

 

「美雪、桃子。護身用だ、持っておけ」

 

「で、でも母さん「美雪。何があるか判らないんだ、襲われたときの事を考えて持っておけ」

 

刃物を持つことを怖がっている美雪に強い口調で言うと、怖がりながらナイフを手にする美雪。桃子は銃を撃った事もあり、美雪ほどは怖がらずナイフを手にする

 

「後でそれの身につけ方を説明する。太ももとかにつけるタイプの鞘だから楓君達には刺激が強いだろうかな」

 

うっと呻く楓君と雄一郎君に笑いかけながらカウンターに向かい支払いだと言うとメルコムは算盤を叩きながら

 

【1万1540マッカとなります】

 

「では頼む」

 

マッカの袋を渡し、値段だけ受け取ってくれと言うと畏まりましたと頭を下げ、袋からマッカを取り出す

 

【お買い上げありがとうございます。メルコムの雑貨店は他の場所にもございますので是非別の店にもお足を向けていただければ幸いです】

 

それとこちらはあのブレスレットと交換の純度の高い魔石20個とチャクラドロップ30個でございますと言って差し出された木箱を受け取り、私達はそのホームセンターを後にし本日の寝床を探す為に移動を始めるのだった……

 

 

 

ホームセンターを後にして10分ほどで見つけたどこかの警備会社の3階建てのビルを見つけ、その中で一晩を過ごす事になった。地下駐車場なので車を止めて、いつものようにコロポックルの氷で出入り口を塞ぐ。他のビルもあったが、ピクシーとリリムの偵察で悪魔も人間の気配も無いと言うこのビルが1番安全だろうとなったのだ。それに不自然の氷を作ることで悪魔がいると教える事で、人間が侵入することも無いだろうとの事だ。車から家庭科室から持ち出したフライパンと調味料。そしてメルコムの店で買った肉とパンを手に、ビルの2階の守衛室で夕食の準備をする

 

「家庭科室の調味料を持ち出して正解だったな……」

 

ステーキ肉を慣れた手つきで焼いている久遠教授。全然食べてなかった肉に加え、ステーキ。俺も雄一郎も早く食べたいと思いながら身体を休める為のテントを用意する、俺は雄一郎は毛布だけで十分だが、久遠教授や桃に美雪先輩は女性なのでそこらへんの配慮は当然ながら必要だからだ

 

「カップラーメンはどうする?」

 

ヤカンで水を沸かしていた桃の問いかけに、醤油と返事を返しテントの骨組みを用意する。美雪先輩はパンをトースターに入れている。今日の夕食はステーキサンドらしいなと

 

「久しぶりの肉だから本当に楽しみだな」

 

「ほんとだな。出来れば米で食べたいけどな」

 

そう笑う雄一郎にそれは我侭が過ぎるぞ?と笑いながら俺と雄一郎で協力してテントをくみ上げる作業を進めるのだった……

 

「すまないが、私は少しばかり調べものがあるので2時間ばかりこのビルを出る」

 

ステーキサンドと暖かいカップラーメンと言う夕食を終えた辺りで久遠教授が突然そんな事を言い出す。一瞬呆けたが

 

「久遠教授!?あれだけ単独行動は駄目だって言ってたじゃないですか!調べ者なら俺達も一緒に行きますよ」

 

「そうですよ母さん!もう日が暮れてしまったんですよ?女性が動くのは危険すぎます」

 

俺と美雪先輩が真っ先に大きな声でそう叫び、それに続くように雄一郎と桃が口を開く

 

「久遠教授。調べ物があるなら明日皆で行きましょう」

 

「そうですよ、幾らリリムがいるからって1人で行動するのは危険すぎます」

 

皆でやめてくださいと久遠教授を止めるが、久遠教授は出来るならそうしたいんだけどなと呟きながら

 

「あいつは人嫌いでな。私の娘と教え子だと言っても嫌がって会ってもくれない可能性があるんだ、だがかなりの情報通だから話は聞いておきたい、もしかすると他の街の情報を知れるかもしれない」

 

ライフラインは通じているが、TVやラジオは使えない。だからどこへ向かえば助かるのか?そこを知る必要があると説明されたが、それでも納得出来る物ではない

 

「大丈夫だ。心配するな、2時間で戻る。楓君達は休んで居てくれ、状況次第では早朝から動く事になるから」

 

これは決定事項だから覆る事は無いと言い切られ、俺達は納得はしてない物の判りましたと返事を返した

 

「すまないな。心配を掛けるが、大丈夫だ。必ず私は戻る」

 

そう笑って出て行く久遠教授。俺達は納得出来ない物を感じながらも、美雪先輩と桃はテントで、俺と雄一郎は毛布を被ってカソ達に警戒を頼み眠る事にしたのだが、この眠りが最悪の悪夢を齎す事となるのだった……

 

次は~活造り~~活造り~

 

 

 




チャプター13 夢の中の殺戮者

次回はまたてけてけに続き、都市伝説の悪魔が出て来ます。最後の言葉と夢と言うキーワードでもう判ると思いますけどね、結構やばいあれです。もしかするとチャプターを2つくらい使うかもしれないです、それと単独行動をとっている久遠教授も何をするつもりなのか、楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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