僕のヒーローアカデミアwithスーパー戦隊&仮面ライダー   作:ガイコッツ

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二回死んで

善「あり? ここどこ?」

 

 善彦が目を覚ますと、白い空間に立っていた。

 

善「あれ? 制服だわ自分」

 

 善彦は着ている衣服がヒーロースーツから雄英の制服になっていることに気づく。そしてある事を思い出した。

 

善「あっそうか……自分、死んじゃったんだ」

 

 善彦は白の空間にくる前の事を思い出すと、その場に座り込んだ。

 

善「あの感覚、一回死んだ時と同じだったのか」

 

 善彦は納得すると、大の字に寝そべった。

 

善「まぁ……今回は、綺麗な死に方だったかな」

 

 寝そべりながらため息混じりで呟く。すると、近くで足音が聞こえた。

 

「おーい、君が二代目で〜いいんだよなぁ?」

 

善「え?」

 

 突如聞こえた声に、善彦は起き上がる。そして声の主が見えた瞬間、瞬時に立ち上がった。

 

善「まさか……アナタは……」

 

 善彦の目に涙が浮かぶ。善彦の前に立つ男は、かけていたサングラスを上げると、爽やかな笑顔を見せた。

 

貴「お〜っす、九条貴利矢で〜す♪」

 

 仮面ライダーレーザーの変身者、"九条貴利矢"は、善彦にヒラヒラと手を振った。

 

 

耳「ヤダ……嫌だ嫌だ嫌だ!! 佐竹! 佐竹起きてぇ!!」

 

 イヤホンジャックを抜いた耳郎は、心臓の止まった善彦の肩を掴んだ。その瞬間、上鳴が耳郎を剥がす。

 

上「どけ耳郎! 確かこういう時は……呼吸を聞いて……」

 

 上鳴は授業で教わった応急手当てを必死で思い出す。そして善彦の口元に耳を傾けながら、胸と腹の動きを見た。

 

耳「途切れ途切れだけど……少し聞こえた……まだ間に合うかも!」

 

 落ち着きを取り戻した耳郎は、上鳴に告げる。それを聞いた上鳴は、自分の掌を重ね、左胸に添えた。

 

上「心臓マッサージだ! 確か回数は……」

 

八「胸骨圧迫は30回ですわ! その後に人工呼吸! それを繰り返しますわ!!」

 

 上鳴が心臓マッサージを開始する直前に、八百万が大声で告げた。

 

上「わ、わかった! って人工呼吸!? マウストゥマウス!?」

 

八「人口呼吸用のマスクがあるのでお使いになってくださいまし!!!」

 

 人工呼吸の言葉に戸惑う上鳴に八百万は人工呼吸用のマスクを投げつけた。

 

 

善「ようやく……ようやく貴方に会う事ができた……やっと、やっと……」

 

 一方、善彦は貴利矢と対面し、涙を流していた。

 

貴「おいおい、そんなに泣くほどかよ?」

 

 貴利矢は号泣する善彦を前に苦笑いを浮かべる。善彦は涙を拭うと、呼吸を整えた。

 

善「だって、ようやく憧れの人に会えたんですもの……でもなんで今? もっと早くてもよかったと思うのに」

 

 善彦が首を傾げると、貴利矢はサングラスをかけ直し、善彦の眼前に顔を近づけた。

 

貴「それはね、キミがいろんなのに変身しすぎたから自分が出るのが遅れたの!」

 

善「あ"っ」

 

 貴利矢の言葉に、善彦は一瞬で固まった。

 

貴「デカマスターにシンケンゴールド、スターニンジャーそれにトッキュウ6号や仮面ライダーW! 仮面ライダーウォズに仮面ライダーパラドクスに1番最近はゼンカイザーでその他もろもろetc、etc……」

 

善「あうあうあうあうぅ……」

 

 貴利矢はサングラスをカチャカチャさせながら善彦に歩み寄る。善彦は目を逸らしながら後ろ向きに歩いた。

 

善「すみません…当時は自分の個性が趣味と合致して調子に乗ってましたぁ」

 

貴「キミってば噂に違わぬ浮気者なんだねぇ〜」

 

 俯く善彦の肩に貴利矢は肘を乗せる。そしてサングラスを傾け、したり顔を浮かべた。

 

貴「ま、キミはオタクだし乗りに乗っちゃう気持ちはわからなくないけどね♪ 1番変身してくれてんのは自分だし、全然いいんだけどさ」

 

 貴利矢はサングラスを外すと、善彦の肩に腕を回した。

 

善「でも……自分は仮面ライダーレーザーの姿で、死んじゃいました……申し訳ないです」

 

貴「友達を守るためだろ? カッコイイじゃねーの監察医の自分が言っちゃいけないけど」

 

 貴利矢は善彦に笑顔を見せる。善彦は俯き、顔を合わせる事ができなかった。

 

 

上「ちくしょう! 起きろ! 起きてくれぇ!!」

 

 上鳴は、未だ息をしない善彦の心臓にマッサージを続けていた。

 

上「ぐ、ぐぅぅぅうううう!! なんで……なんで動かないんだよぉ!!」

 

 授業で学んだ心肺蘇生法を何度繰り返しても、善彦の心臓は動かない。長時間、心臓マッサージを続けていた上鳴の腕は力が入らなくなっていた。

 

八「AEDの構造は……仕組みは……覚えていたはずなのに…創れませんわ……」

 

 八百万は上鳴の後ろでAEDを創造しようとしている。しかし、目の前の状況に気が動転し、正確なAEDが創造できなかった。

 

八「早くしないと……佐竹さんの命が……」

 

 八百万は頭を抱え、一筋の涙が流れる。その時、耳郎が八百万の肩に手を置き、前に出た。

 

八「耳郎さん?」

 

 耳郎は何も言わずに善彦の元へ向かい、上鳴と対面する位置に座った。

 

上「くそっ……もう腕に力が……」

 

 善彦の心臓に添えた上鳴の手は、疲労で細かく震えている。耳郎は上鳴の手に自分の手を重ねた。

 

耳「諦めないで、上鳴」

 

上「耳郎……?」

 

 上鳴が顔を上げると、耳郎は自身の手の甲にイヤホンジャックを挿した。

 

耳「今から佐竹の心臓に、ウチのビートを流し込む! 上鳴はそこに強い電撃を流して! 即席のAEDにする!」

 

 耳郎は決意の眼差しで上鳴に告げる。その言葉に上鳴は目を見開いた。

 

上「な、何言ってんだよ! 俺は耳郎の衝撃慣れてっから平気だけど…お前が俺の電撃に耐えれるわけねぇだろ!!」

 

耳「でもやるしかねぇだろうがっ!!!」

 

 上鳴の惑いを耳郎の叫びが遮る。耳郎の怒声が響き、辺りが静寂に包まれる。

 

八「じ、耳郎さん……っ!」

 

 八百万が声をかけた刹那、耳郎の手の甲に、一粒の雫が落ちた。

 

耳「やんなきゃ……ウチらがやんなきゃ佐竹が……ウチらの親友が………死んじゃうよぉ……」

 

 耳郎の両目からは、大粒の涙が流れている。顔を下げ、歯を食いしばる耳郎の手に、上鳴は手を重ね、耳郎の手に挿さっていたイヤホンジャックを自身の手の甲に挿した。

 

上「やろう! ビビって止まってる場合じゃねぇ……MAXのビートを叩き込め!! 俺たちで起こしてやろうぜ!」

 

 上鳴は口角を上げながら目に涙を浮かべている。そして耳郎の手を強く握った。

 

耳「おうっ!! 行くぞ上鳴!」

 

 耳郎は涙を拭うと、上鳴の手に手を重ねる。そして二人は目を合わせ、共に頷いた。

 

耳「ハート…」

 

上「ビート…」

 

耳・上「「ショック!!」」

 

 二人の声に合わせ、耳郎の心音の衝撃、上鳴の電撃が善彦の心臓に叩き込まれた。

 

上「ガハッ!!」

 

耳「グゥウウッ!!」

 

 耳郎の強烈なビートが上鳴に、上鳴の電撃が耳郎に流れ、互いに顔を歪ませた。

 

上「さ、佐竹の心臓は!?」

 

耳「まだ動いてない……」

 

 息を切らしながら耳郎は耳を傾けるが、心臓の鼓動は聞こえなかった。

 

耳「もう一回だ!!」

 

上「あぁわかったぁ!!」

 

 二人は再び手を重ねると、強く歯を食いしばった。

 

 

善「ん?」

 

 白い空間の中、善彦は突然、自分の左胸を押さえた。

 

貴「どした?」

 

 貴利矢が首を傾げると、善彦は左胸をさすった。

 

善「いや……何か急にバクンッてきたような?」

 

貴「ふ〜ん……」

 

 貴利矢はサングラスをかけると、善彦の前に立った。

 

貴「そーいやさっ、君ってなんで自分と同じライダーに変身したの?」

 

善「へ?」

 

 貴利矢の質問に、善彦は目を丸くする。貴利矢は爆走バイクのガシャットを取り出すと、善彦に見せた。

 

貴「だってさ、ゲーマドライバーだったら名人のマイティアクションとかあるじゃないの、自分で言うのもなんだけど、何だってバイクに変身する爆走バイクを選んだのかなぁって思ってね」

 

善「ソレは……」

 

 善彦は今まで人にベルトやアイテムを貸す際、個人の個性や特性を考えて渡している。しかし自分が何故、仮面ライダーレーザーを選んだのかは誰にも話したことは無かった。

 

善「斬新でかっこいいなぁって思ったから……」

 

貴「ん?」

 

 善彦の答えに貴利矢のサングラスがズレる。しかし善彦は続けた。

 

善「ゲーマドライバーで変身するライダーは他のライダーと色々とデザインが違うのにレーザーは本当に他とは一線を画してて、レベル2がバイクになるって斬新だし、そこからレベルが上がると人型になったりするのがカッコいいし、それに蹴り技もスゴいスタイリッシュでパネルをセレクトするときのキックもメチャクチャ練習したんですから」 

 

貴「あーわかった、オッケーオッケー理解したから止まって、聞いてて恥ずかしくなっちゃったよもぅ」

 

 貴利矢はサングラスを外すのと同時に手で顔を隠す。そして小さく息を吐いた。

 

貴「まったく、そんなに自分のファンだったとはね、嬉しいことこの上ないよ」

  

 照れくさそうに笑うと、サングラスを服の襟にかける。そして、善彦の左胸に手をかざした。

 

善「うぉお! またバクンッて来た!」

 

 その時、再び善彦の胸に衝撃が走る。そして貴利矢は笑った。

 

貴「やっぱり、呼ばれてるみたいだね」

 

善「呼ばれてる?」

 

 善彦が言葉の意味を理解できずにいると、貴利矢は善彦の胸に手を置いた。

 

貴「君は自分が死んでると思ってるみたいだけど、アッチの方で君を死なせたくない人がいるみたいだよ」

 

善「へ……っ!」

 

 それを聞いた瞬間、善彦は目を見開いた。自分の胸に響いた鼓動と微かに走った電気の感覚。

 

善「まさか……まさか……」

 

 よく知っている二つの感覚。目の奥が急に熱くなり、涙が頬を伝う。その涙に、貴利矢は優しく微笑んだ。

 

貴「戻ってやんな、大切なパートナー達が待ってんだろ?」

 

善「はいっ……」

 

 善彦は涙をボロボロと流しながら頷く。その瞬間、善彦の体が黒いモヤに包まれた。

 

善「あれっ! なんで自分に!? みんなの話と違う!」

 

 白い空間では元の変身者が黒いモヤに包まれるが、今は善彦の体がモヤに包まれていく。それを前に貴利矢は言った。

 

貴「そりゃ君にお迎えが来てんだからね、早く行って安心させないと」

 

 善彦を包む黒いモヤはあと少しで全身に回る。全てが包まれる前に、善彦は手を伸ばした。

 

善「あのっ……! また! また会えますよね!?」

 

 善彦は必死の形相で貴利矢に叫ぶ。貴利矢は善彦に歩み寄ると、伸ばされた右手を強く握った。

 

貴「当然だよ、コレは君の個性が生み出した空間だ、また会えるよ」

 

 貴利矢は善彦に爽やかな笑顔を見せる。その笑顔に、善彦は安堵の表情を浮かべた。

 

貴「自分、今までの君の活躍見てきたけどノリノリで最高だったぜ♪ 自分も死んで生き返った、いい運転手もいるんだし、もう死ぬんじゃねーぜ! 佐竹善彦 仮面ライダーレーザー!」

 

 貴利矢は嘘のない言葉を善彦に送る。

 

善「自分……仮面ライダーレーザーで良かった」

 

 そして、善彦の体はモヤに包まれ、白い空間から消えた。

 

 

ドクンッ……

 

耳「え……」

 

 森林の中、耳郎は善彦の異変に気づく。

 

上「耳郎! まだ佐竹の心臓は動かねぇのか!?」

 

耳「ちょっと黙って!!」

 

 上鳴の声を耳郎が一喝する。そして善彦の胸に添えた手を退けた。

 

善「うぅ……ガバッ!! オエェ!!」

 

 突如、善彦は目を開き、激しく吐血した。

 

善「うぇっ……気持ち悪ぃ……」

 

 善彦は咳き込むと、瞳を動かして辺りを見回す。善彦の両脇には耳郎と上鳴が座っていた。

 

善「あ、おはようございます……」

 

 善彦がぎこちない笑顔を二人に見せる。その直後、上鳴と耳郎は善彦に飛びついた。

 

上「うわぁぁぁぁぁ! 佐竹!佐竹佐竹佐竹ぇぇぇぇ!!」

 

耳「よかった……ホントによかったぁぁ」

 

 二人は善彦に抱きつくと、二人して大粒の涙を流した。

 

八「えぇ……本当によかったですわ……ですがお二人とも」

 

 耳郎達の後ろには同じく涙を流す八百万が立っている。指で涙を拭うと、その指で善彦を指差した。

 

善「あの……上鳴きゅん耳郎さん……ハチャメチャ苦しい……」

 

 善彦は二人に覆い被さられ、呼吸が出来ずに顔を青くさせていた。

 

耳「あぁ!! ゴメン佐竹!」

 

 善彦の言葉で二人は一斉に善彦から離れる。

 

善「いや、いいんですけど……なんか呼吸が上手くできないのとアバラ?のあたりが痛いような」

 

上「すまねぇ! それオレが心臓マッサージしたからだ!! アバラ折る勢いじゃねぇとダメって授業でも言ってたからよぉ!!」

 

善「そうだったのねアリガト上鳴くん気にしないでゴバッ!!」

 

 善彦が頭を下げる上鳴に手を上げ、大丈夫と言おうとした瞬間、善彦は再び吐血した。

 

耳「わー! そっか心臓が動いたとはいえ呼吸とか脈は不安定なんだ! 早く救護班来ないの!?」

 

上「佐竹ー!! 気ぃしっかり持てよぉおぉ!!!」

 

善「はぁい……頑張るます……」

 

 善彦の吐血に二人は慌てふためく。その様子を見た八百万は涙を流しながら微笑んだ。

 

八「よかったですわ…やっぱりこの三人はこうでないと」

 




心臓止まった時の応急処置、結構調べましたこれからもよろしくお願いします
2ヶ月も開けるなんてごめんなさいでしたorz

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