僕のヒーローアカデミアwithスーパー戦隊&仮面ライダー 作:ガイコッツ
12月下旬、終業まで数日。善彦は初めて学校を休んでいた。
泥花市崩壊のニュースを寮のテレビで見た途端、突然吐いて倒れたのだ。
耳「あの吐き方、いつもと違かった」
上「あぁ、オレ達にはわかる」
耳郎と上鳴は寮の共有スペースでソファーにもたれかかりながらニュースを見ていた。
瀬「吐き方わかるとかあるんだ……」
飯「被害規模は神野以上らしいが地方だったため死傷者数は抑えられたそうだ」
飯田も泥花市のニュースに注目する。すると画面が切り替わり、上空からの映像が映し出された。
上「あの紋章を見た途端に吐いたんだよな」
テレビに映されていたのは地面に刻まれたキバの紋章だった。
切「保健室に運んでる時、アイツ小さい声でキバって言ってたな」
切島が呟くと上鳴が思い出す。
上「確か仮面ライダーにもキバっていたな……それにこの前キバットを無くしたって泣いていた」
飯「つまりこの被害は仮面ライダーによるものだというのか!?」
飯田が声を上げると耳郎が指を自分の口に当てる。
耳「しーー! 静かに! その可能性も否定できない、多分暴動を起こした連中は佐竹の無くしたって言ってた仮面ライダーのアイテムを拾って使ったのかもしれない」
上「それを勘付いた佐竹はパニックになって吐いて倒れたのかもな」
上鳴の言葉にA組全員が黙る。
善「うぅっ……ゲェェ! ガハッ……カ……」
上「っ! 起きたか! 大丈夫か!?」
上鳴が善彦の吐いた声を聞いた途端、善彦の部屋に向かい走り出した。
上「佐竹!」
上鳴が善彦の部屋の扉を開ける。そこにはベッドから落ち、倒れている善彦がいた。
善「くそぉ……また、また期待を裏切るのか……また全部……無になるのか」
上「おい! 大丈夫か!? しっかりしろ!」
倒れて伏せている善彦を上鳴が起こす。善彦の目に光はなかった。絶望や自責に飲まれた目をしている。
善「自分の……せいで……人が……たくさん人が死んで……」
善彦はボソボソと言葉を吐く。すると上鳴は善彦の手に握られたガシャコンスパローの片方に気がついた。その瞬間上鳴は善彦に掴みかかる。
上「おい、お前なにする気だった! 早まるのはよせ!」
上鳴は声を荒げるが善彦は虚ろな目をしたまま反応がない。
善「自分が消えれば……おそらく個性は消える……」
上「ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ! 誰がお前に消えろって言ったぁ!」
上鳴は善彦を引き寄せ身体を揺する。しかし善彦は人形のようにグラグラとするだけだった。
善「自分は……絶望を撒いてしまった……なにが希望を与えるヒーローだ……なにが仮面ライダーだ……自分なんて……」
上鳴の言葉は善彦に届かない。
上(ちくしょう情けねぇ……オレは目の前の友達一人救えねぇのかよ……!)
上鳴は善彦の服を掴んだまま強く歯を食いしばる。
爆「あーーーあ! こんな時オールマイトがいたらよぉ!」
突然善彦の部屋の外から爆豪の声が聞こえた。
上「爆豪?」
爆「オールマイトだったらよぉ! こんなザコ事件一瞬で片付けてんだろーなー! あーあーオールマイトが現役だったらなぁ!」
上鳴が善彦の部屋から出ると爆豪は部屋に背を向け大声でひとりごちているように見えた。
爆「あーーあーーめんどくせぇなぁ! ボケくそぉ!」
上「おい爆豪! いい加減に」
爆豪の無神経な言葉に上鳴は怒りを覚える。上鳴が爆豪に向かい肩を掴んだ瞬間。
爆「オレのせいだよ」
爆豪が自分から振り向き、親指を自分に指した。
上「は?」
爆豪は上鳴の手を払うと善彦の方に向かった。
爆「オレがヤツらに捕まったせいでオールマイトを終わらせちまった……オレが捕まらなきゃそんな事は起きなかった、センコーに頭も下げさせた」
爆豪は座り込む善彦の前に立つとギロリと善彦を睨みつけた。
爆「オレの方が……てめーの何十倍もの絶望と混乱を呼んでんだ……それなのにてめーはグチグチネチネチと腐りやがって……」
爆豪は善彦の胸ぐらを掴むと無理やり立ち上がらせる。
爆「ふざけんな! テメェの落とし前ぐれぇテメェで片付けろぉ!」
爆豪は善彦の胸ぐらを強く握ると部屋の外へ投げ飛ばした。
善「ぐあっ!」
部屋から投げ飛ばされ善彦は床に叩きつけられる。
善「なん……なんだよ」
善彦が起き上がろうとした瞬間。
耳「さた……け」
耳郎が善彦の目の前に立った。善彦を呼ぶその声は震えている。
善「え……」
善彦が顔を上げると、耳郎は大粒の涙を流していた。
耳「お願いだから……戻ってきてよ……ウチは……アンタと上鳴で……三人でヒーローになりたいの……だから……」
耳郎が涙を拭いながら善彦に話す。すると突然善彦の体が引っ張り起こされた。
切「漢気注入!」
バチィィィィ!
引っ張り起こされた直後、善彦の頬に切島の全力ビンタが叩き込まれた。
切「お前! あの時俺に勇気と漢気を教えてくれただろ! あの時、無力感に襲われた俺を救ってくれたのは佐竹じゃあねぇか! シャキッとしやがれぇ!」
切島は腕を組みながら大声を出す。ポカンとしている善彦の肩に、上鳴の手が置かれた。
上「みんな佐竹を大事に思っているし信頼している、絶望ばかり数えるな、俺らの先にある希望を見ろ!」
上鳴が善彦の目を見ながら説く。すると善彦の目に光が戻ってきた。
善「いいのかよ、本当に」
善彦が問いかけると上鳴は笑顔を見せる。
上「当たり前だろ! 友達じゃねぇか!」
上鳴は善彦の額に自分の額をつけると爽やかな笑顔を見せた。
耳「ウチも忘れんな」
耳郎も上鳴と善彦の間に入る。涙の筋の残る耳郎は善彦に優しく微笑む。
耳「おかえり、佐竹」
上「バイクトリオ再結成だ!」
耳郎と上鳴の言葉に善彦は涙を一筋流す。
善「ありがとう……みんな……ありがとう……」
善彦は涙を流すと二人の体を抱き寄せた。
爆「…………行くぞ」
爆豪は切島に向かい顎をしゃくると切島と共にその場を離れる。
切「珍しいな、お前が人を励ますなんて」
切島が爆豪に向かって微笑むと爆豪は舌打ちをしながら顔を逸らす。
爆「そんなんじゃねぇ、ただ……」
爆豪は顔を逸らすと同時に善彦の方を見る。
爆「オレを倒したヤツが、こんな所で折れて欲しくねぇだけだ」
爆豪はそう告げると足早に去っていく。
切「素直じゃねぇなぁ」
切島は爆豪の背中を見送ると後ろを振り向く。
そこには何よりも美しい友情の形があった。
今回はこのような話ですが次回は平和なものです