ペルソナ3×仮面ライダーエグゼイド【ゲンムがほぼメイン】   作:K氏

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 ビルド、始まりましたね。
 正直あの武器のガンモードはそれでいいのかって感じだったり、日本全土に壁ができるという中々な設定なので、恐らく同じ世界観を共有しているであろうエグゼイド以前のライダーとは冬映画でどう絡ませるのかなと不思議だったりしますが、とりあえず今後に期待というところでしょうか(前作のエグゼイドで大分ハードルが上がった印象)


ゲームマスター、シャドウと戦う。【後】

「なんだ、あれは……」

 

 場所は変わって、作戦室。負傷した明彦を連れて戻ってきた美鶴達は、屋上に設置された監視カメラの映像でその一部始終を見ていた。

 

 檀黎斗が投げてよこした何かを手にしたミネルバが何かをした瞬間、まるでゲーム音楽のようなものと音声が聞こえ、次の瞬間にはミネルバは何か別のモノへと『変身』していた。

 

 彼女らが把握しているのはその程度だ。

 一体、檀黎斗が何を渡したのか。ミネルバは一体何をしたのか。あの三等身で大きな目の付いたゲームのキャラクターめいたものは何なのか。

 

 分からない事だらけだが、今分かる事は一つ。

 

「まさか、ペルソナ以外にシャドウに対抗する技術が存在するというのか……!?」

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「これより、『仮面ライダープロトスナイプ』の運用による、対シャドウ戦闘のテストプレイを開始します」

 

 三等身の寸胴ボディの戦士――『仮面ライダープロトスナイプ レベル1』となったミネルバは、そう宣言すると共に、再び周囲に先程のセレクト画面と同じようなサークルを出現させる。しかし、今度はアイコンが一つ――銃のような絵のそれしか現れない。

 

『ガシャコンマグナム!』

 

 それに触れると音声が流れ、プロトスナイプの手にAとBのボタンが側面に備えられた、大型の玩具めいた銃が出現する。プロトスナイプの専用武器、ガシャコンマグナムだ。

 ガシャコンマグナムを手にしたプロトスナイプは、銃身側面のBボタンを叩く。

 

「掃射!」

『バ・キューン!』

 

 プロトスナイプがトリガーを引くと、ガシャコンマグナムから光弾が高速連射される。

 光弾が着弾したシャドウは、しかし仰け反る事はない。

 

「やっぱり駄目――!?」

 

 正体不明の戦士の登場に困惑していたゆかりだったが、その攻撃が通用しないのを見て、絶望の表情を浮かべ――

 

「―――!?!?」

「う、嘘……効いてる!?」

 

――シャドウの腕だらけの肉体の内部から爆ぜたのを見て、驚愕の表情へと変わった。しかも、爆ぜた場所から『HIT!』という、如何にもゲームらしいエフェクトが発生する。なんなのだアレは。本当にゲームのつもりなんだろうか。

 

 だが、シャドウはそれでも止まらない。

 反撃とばかりに、構えた剣をプロトスナイプに向かって振るう。

 

「回避行動!」

 

 だが、プロトスナイプはその鈍重そうな見た目に反し、くるりと空中で前転し、軽やかに回避。更に、回避しながら銃撃を叩き込む。

 

 一見して、プロトスナイプの優勢に見える状況を、しかし黎斗はあまり嬉しそうな表情を浮かべない。

 

「……駄目だな。まだ奴には大したダメージを与えらえていな……グッ!?」

 

 そう呟いた途端、黎斗は胸が張り裂けそうな痛みを感じる。

 

 どこかで覚えのあるその苦しみを、しかし黎斗はこらえる。

 

(なんだ今のは……まるであのガシャットのような……まあ、いい。それは今は捨ておくとしよう)

「そこッ!」

 

 その間にも、プロトスナイプは恐ろしい程の精密射撃で、シャドウの持つ仮面を狙い定め撃つ。

 だが、シャドウもタダではやられないのか、剣でその銃撃を防ぐ。

 しかし、集中して弾丸を受けた剣は、半ばで折れ、砕けてしまう。

 

「…………」

 

 その剣を一瞥したシャドウは、もはや使い物にならない剣を捨て、身体に空いた手を中心に向かってめり込ませる。そして引き抜くと、そこには新しい剣が。

 

「厄介な奴だ……だが、それもどこまでできるかな」

 

 それを見ても、黎斗はなおも変わらない。彼には確信があったのだ。「自分の製作物が奴らを上回っている」と。

 

 だが、その慢心故に気付かない。

 

「……! 檀君、危ない!」

「……何だと!?」

 

 密かに、シャドウが黎斗を狙っていた事に。コンクリートの地面スレスレで、三本の黒い腕が黎斗の元へ向かう。

 

「黎斗さん!」

 

 下から急速に接近する黒い腕に、プロトスナイプは遅れて気づく。

 すぐさまBボタンを叩き、黎斗に向かう腕へと撃ちまくる。

 

 一本、二本と、数多の弾丸を受けて腕が消えていくが、最後の一本の進行を許してしまう。

 

「うぐッ」

 

 腕はそのまま黎斗を掴み上げ――

 

「グアァ!」

 

――屋上の柵を越え、建物の外へと吹っ飛ばす。

 

「――ッ! 黎斗さ――」

「私に構うなッ!」

 

 落ちる間際、黎斗はそう叫び、そして屋上から姿を消した。

 

「そ、そんな……」

 

 それを目の当たりにしたゆかりは、身体の震えが止まらなくなる。

 

――どうしよう。私が、私が彼を守らなきゃいけなかったはずなのに。

 

 圧倒的な自責の念が、彼女から動く気力を奪い去る。

 

 そんな彼女を次なる標的と定めたのか、シャドウは再び腕を伸ばそうとする。

 しかし、プロトスナイプがそれを許さない。

 

「貴方の相手は、私です!」

 

 そして、プロトスナイプは体を回転させ、その身に巨大な弾丸のエネルギーを纏い――

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 一方で、シャドウによって巌戸台分寮の屋上から落とされた黎斗は、運悪く頭から落下中だった。

 

(……やれやれ)

 

 そんな状況であっても、彼は酷く冷静だった。そして、彼の自称神の頭脳は、この状況をこう捉えていた。

 「むしろ好都合」と。

 

(ここにカメラが無い事は把握している。一時はどうなるかと思ったが、やはり運命は私に味方しているらしい)

 

 落下のスピードに反し、黎斗の体感時間は酷く遅い。それとも、単純に黎斗の思考速度がずば抜けているのか。

 どちらにせよ、彼の為すべき事は変わらない。

 

 黎斗は懐から素早く、見覚えのあるライトグリーンのバックルを取り出し――

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「クッ……硬直時間が……」

 

 唐突な解説になるが、プロトスナイプ、ひいては完成版バンバンシューティングで変身可能なスナイプには、レベル1のみにある技が備わっている。それは、先程プロトスナイプが行った、自らに弾丸状のエネルギーを纏い、高速回転して突撃するという技である。

 しかしこの技、()()()1()()()()()高威力を誇る攻撃だが、当然デメリットも存在する。

 それがこの反動による硬直だ。

 

 叩き出すダメージは相当なものだが、それでもシャドウは倒れない。

 

「…………!」

 

 その様子を見たシャドウは、先程の仕返しとばかりに、剣でプロトスナイプに斬撃を加える。

 

「くぅ……!」

 

 ダメージを受ける度に、プロトスナイプの胸部装甲の左胸に設けられたゲージが減少していく。ゲーマドライバーによって変身したライダーに存在するこのゲージ――ライダーゲージは、プロトスナイプとしての変身可能な残り体力を可視化したものであり、これが尽きる事は即ち、変身者の命の危機(ゲームオーバー)に繋がる。

 

「うぅ……ハァッ!」

 

 ライダーゲージが半分ほど削られたところで、先の技の硬直が解除され、プロトスナイプはガシャコンマグナムを乱射。逆にシャドウを怯ませる。

 

 その隙を突き、プロトスナイプは転がってその場を脱出すると、ドライバー前部を隠すレバーに指を掛ける。

 

「こうなれば、致し方ありません」

「何するつもり……?」

 

 最初こそ行けるとは思ったものの、このままではシャドウを倒す事はできない。そう思っていたゆかりは、突然の謎の行動に首を傾げる。

 

 そして。

 

「第弐戦術、であります!」

 

 その言葉を皮切りに、ドライバーのレバーを展開する。

 

『ガッチャーン! LEVEL UP!』

 

 ドライバーから音声が流れ、プロトスナイプは上空へ跳ぶ。

 

『ババンバン! ババンバン! バンバンバンバンシューティング!』

 

 ハイテンポな男の歌と音楽が流れたかと思うと、レベル1の白いボディが弾け飛び、中から現れたスリムな人影が振り返る。

 

「な……」

 

 これ以上一体何を驚く事があるのか。そう思っていた時期が、私にもありました。

 

 そう言わんばかりの表情を浮かべるゆかりの前で、その灰色の人影は降り立った。

 

 レベル1時の顔を背中に背負い、首元から黒いローブをたなびかせていたそのライダー――『仮面ライダープロトスナイプ レベル2』は、次いでガシャコンマグナムのAボタンを叩いた。

 

『ズ・キューン!』

 

 音声と共に、ガシャコンマグナム側面に折りたたまれていた長銃身が展開。ハンドガンモードからライフルモードへと変形する。

 

「そこです!」

 

 ガシャコンマグナムを両手で構えると、銃口にエネルギーが収束。そしてトリガーを引くと、チャージされていたエネルギー弾が発射される。

 

 それを、シャドウは剣を二本重ねる事で防ごうとする――が。

 

「………!?!?」

 

 ガシャコンマグナム・ライフルモードでチャージし発射された光弾1発の威力は、ハンドガンモードの50発分に相当する。その威力にさらされた剣は、HITエフェクトと同時に発生した爆風で呆気なく砕け散る。

 

 そして、間髪入れずプロトスナイプは銃撃を叩き込む。

 

「…………」

 

 これには耐えきれないと判断したのか、プロトスナイプの照準を振り切るべく、先程以上に素早く動きながら、なおかつ腕と剣を飛ばし、プロトスナイプの妨害を図る。

 しかし、プロトスナイプはあっさりとこれを回避せしめ、更に片手で銃撃を試みる。

 だというのに、その銃撃は――数発ほど外れたが――ほぼシャドウの身体に命中する。

 ガシャコンマグナム・ライフルモード時に展開された照準装置、サイドレンズスコープと、プロトスナイプの各種センサーの連動による照準補正、そして変身者たるミネルバ自身の素質が成せる技だ。

 

 高威力の銃撃を幾度も受け、シャドウは段々と穴だらけの悲惨な状態になっていく。しかし、そこで手を休めるような彼女ではなく、今度はその状態でBボタンを叩く。

 すると、それまでのチャージ以上にエネルギーが銃口に収束していく。

 それを見てもがくシャドウだが、抵抗も空しく、そのチャージは完了する。

 

「更に、駄目押しで!」

『ガシャットォ! キメワザ!』

 

 更に追い打ちをかけるように、ドライバーからガシャットを抜くと、ガシャコンマグナムのスロットにガシャットを装填。そう、音声が示す通り、決め技を撃つつもりなのだ。

 

「ゆかりさん、伏せていてください」

「へ?」

 

 プロトスナイプの忠告に抜けた声を上げるゆかり。

 

「ハァッ!」

 

 そして、忠告はしたぞと言わんばかりに発せられた掛け声と共に、プロトスナイプがトリガーを引くと、フルチャージされ、更にガシャットを装填された事でより強化された光弾が、爆音とも言うべき銃声と共に発射される。

 

『BANG BANG CRITICAL FINISH!』

 

 その破壊の光は、一直線にシャドウに殺到し――的確にシャドウの仮面を貫いた。

 

「ォォォ………」

『会心の一発ゥ!』

 

 シャドウが断末魔の声を上げ、ガシャコンマグナムからは決め技が決まった事を告げる音声が流れる。

 必殺技の直撃を受けたシャドウの仮面にぽっかりと穴が開き、やがて体ごと崩れ落ちる。

 

「ミッション、コンプリート。であります」

 

 その宣言、というより決め台詞の後、シャドウの身体が爆ぜ、黒い煙のように――

 

 

 

 

『ガッチャーン! LEVEL UP!』

『マイティジャンプ! マイティキック! マイティアクショーン、X!』

 

 

 

 

――消えるかに思われた時、プロトスナイプの変身時、そしてレベルアップ時と似たような歌と音楽が流れる。

 

「こ、今度は何!?」

 

 まだあるのぉ!? と言いたげなゆかり。

 それに対し、プロトスナイプはジッと、シャドウの消えた跡を見据える。

 

――はたして、そこにいたのはどことなくプロトスナイプに似た意匠を持つ、毒々しい黒さを持つライダー。

 

 プロトスナイプと違うのは、頭部がまるで逆立った頭髪のようになっている事と、マフラーも何もない、シンプルな姿な事だろうか。

 そしてその右腕の甲には、紫色のデヴァイスが装備されている。AとBというボタンに、両端にそれぞれチェーンソーの刃めいたものと、二門の銃口らしいものが見えるそれは、恐らくガシャコンマグナムと同種の装備だという事が見て取れる。

 

「誰……?」

 

 新たな仮面の戦士の登場に、もはや理解の追い付かないゆかり。そんな彼女の前で、プロトスナイプは――

 

「ゲンム……確認!」

 

 そのライダー――ゲンムに向かって、ガシャコンマグナムの銃口を向けた。

 

 




 ゲンム……一体何者なんだ……(すっとぼけ)

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